テレワークなどの多様な働き方が浸透してきた近年、勤怠管理業務はより煩雑になり、作業の負担も大きくなっています。Excelなどの表計算ソフトや、タイムカードでの勤怠管理に限界を感じ、勤怠管理システムの導入を検討している企業担当者も多いのではないでしょうか。
本記事では、まずは“無料”で始められる勤怠管理システムのおすすめ製品(全18製品/2024年7月時点)とともに、基礎機能とその効果、システム導入のポイントをじっくりと解説していきます。
無料で勤怠管理を行う主な方法
勤怠管理とは、従業員ごとの出退勤時刻や残業時間などを正確に把握し、管理することを指します。勤怠管理システムやタイムカード/タイムレコーダーなどを活用して行うのが一般的です。ここでは、無料で勤怠管理を行う主な方法についてご紹介します。
無料の勤怠管理システムを利用する
無料で使える勤怠管理システムは、昨今主流であるクラウド型/SaaS型製品を例に大きく分けると以下の2つがあります。
- 無料プランを用意し、特定の条件を満たせば月額利用料無料で使えるもの
- 無料トライアル期間のあるもの
無料の勤怠管理システムで利用できる主な機能として、打刻機能、データの自動集計・出力などが挙げられます。
ICカード打刻機、PC、スマートフォンなどで従業員が入力した勤怠情報をシステムに取り込み、労働時間や残業時間、出勤日数を集計することで、従業員の勤怠状況の一元管理が可能になります。製品によっては、予実管理、有休・残業申請、給与計算システムとの連携が可能なツールもあります。
Excelで勤怠管理表を作る
Microsoft Excelの表計算ソフトウェアで勤怠管理表を作成することによって、無料で勤怠管理ができます。エクセルで作成する際は、関数やマクロを活用します。自社で勤怠管理表を作成しなくても、すでにマクロや関数が設定されているExcel用テンプレートを活用するのも手軽なの方法です。
「Excelで実施する勤怠管理の仕方」についてはこちらの記事も参照ください。
グループウェアに付属する機能を活用する
スケジュールや業務の情報共有やコミュニケーションに活用できるグループウェアを導入している企業も多いでしょう。グループウェアに付属する機能を活用することでも、無料で勤怠管理ができる場合もあります。
グループウェア付属の勤怠管理機能では「出社」「外出」「戻り」「退社」などの一般的な打刻データを記録・集計できます。月、年ごとの就業実績集計や、CSVでデータをダウンロードできるものもあります。
タイムカードから手作業で転記・集計する
タイムカード/タイムレコーダーから手作業で転記、集計する従来型方法も、基本無料での勤怠管理方法の1つです。ノートに勤怠管理表を書き、タイムカードから出退勤情報を転記し、労働時間や残業時間を集計します。
もっとも、この方法は目に見えやすい月額利用料のような追加金額こそ発生しませんが、手間と時間がかかるのはご存じの通りです。タイムカードに記載された出勤時刻・退勤時刻を確認するだけでは、残業や休日出勤などの時間外労働かの判断などもなかなか困難です。シフト表で計画されている所定労働時間や出勤日と照らし合わせながら計算・集計を行う必要があります。この業務に時間や手間が過度にかかれば人件費に響きますし、この作業に管理者やマネージャー、担当者が忙殺されることで売上機会、ビジネスチャンスを失う可能性もあります。転記ミスなどのヒューマンエラーが発生する可能性、不正打刻などの可能性も根強く残ります。
人的エラー・時間・コストの増加、法令順守のリスク、効率的な自動化ツール/システムの普及を理由に、このようなアナログ方法から、デジタル型方法/勤怠管理システムなどへの早急な移行が勧められます。
無料の勤怠管理システムを選ぶポイント
エクセルやタイムカード/タイムレコーダーでの勤怠管理は手動作業が多くあるため、手間がかかったりミスが起こったりというリスクがあります。ミスはもちろん、不正防止をするためには、勤怠管理システムを導入するのがおすすめです。
ここでは、無料で始められる勤怠管理システムを選ぶ際のポイントについて解説します。
利用可能なユーザー数(アカウント数)
まずは利用可能なユーザー数(アカウント数)を確認しましょう。ユーザー数は「従業員数」と考えて大丈夫です。一般的に、無料で勤怠システムを利用する場合はユーザー数に制限・上限がある傾向にあります。利用可能なユーザー数の上限はシステムにより異なり、数人から100人程度まで幅が広いため、現在の従業員数と照らし合わせて検討するとよいでしょう。
利用可能な機能の内容
有料プランと比較すると、多くの場合、無料プランは利用できる機能に制限があります。出勤・退勤の打刻機能などの基本機能は使えますが、そのほかの便利機能/自動化機能、他システムとの連携機能、レポート生成機能のような付随機能は有料プランで提供されるイメージです。
無料で利用できる機能の内容で自社の求める業務効率向上につながるか、の観点をじっくり確認しましょう。
データ保存期間
無料の勤怠管理システムでは、有料版と比べてデータの保存期間が短く、データを保存可能な容量も少なめとなる傾向にあります。出退勤時刻、休日出勤、欠勤の情報など、従業員の勤務状況をまとめた勤怠管理データは5年間(当面の間は3年間)保存する義務(労働基準法第109条)があります。勤怠管理システムのデータ保存期間(過去データの保存期間)は忘れずに確認しましょう。
無料版ではこれをカバーできないこともあります。自社の法令順守体制の強化を求めているのであれば、法令順守のための機能をふまえた別製品/有料版の検討が勧められます。
サポート内容と範囲
無料の勤怠管理システムは一般的に、サポート範囲が限られます。導入の際のサポート対応や、利用中の電話やメールでのサポートは有料となる、あるいはオプションとなる製品もあります。手厚いサポートには原則として料金が掛かると考えておくとよいでしょう。
無料プランでは、サポート範囲、制限を確認し、その上で使えそうかどうかを判断しましょう。不明点があれば遠慮なく製品のベンダーに問い合わせて回答を得るとよいでしょう。なお、無料プランではなく、「無料トライアル」を活用して「無料の範囲で試験的にスモールスタートして確認する」という考え方も有効です。
広告表示の有無
勤怠管理システムを無料で利用できる理由の1つとして、無料プランでは広告収入で運営費用を得ていることが挙げられます。
広告の有無はもちろん製品によって異なりますが、広告で無料プランを実現する製品は利用画面上に広告が表示されます。この場合、どこにどのように広告が表出されるのか、自社業務のうえでこれを許容できるか、業務に支障がないかどうかの確認は忘れず行いましょう。
これについては、上記と同様に「無料トライアル」を併用してみるのもよい方法です。無料トライアルは大抵の場合「有料版」を一定期間試用できるもので、有料版と無料版の違いを確かめられるでしょう。
導入形態
勤怠管理システムの導入形態には、「パッケージ型」「開発型」「クラウド型」の3種類が挙げられます。
- パッケージ型:ソフトウェアを購入し、自社のサーバやシステム、業務PCで利用する形態
- 独自開発型:自社に適したシステムを開発して利用する形態
- クラウド型:提供されるシステムをインターネット経由で使用する形態
上記のうち、無料で始められるのはクラウド型/SaaS型です(パッケージ型も可能性はありますが、昨今はより条件が限られるのでここでは除外して考えましょう)。
使いやすさ
勤怠管理は日次で行うため、実際に勤怠管理業務を行う社員だけでなく、他の社員にとってもストレスなく使いやすいものを選ぶこともポイントです。勤務時間の設定や日々の打刻操作がわかりやすく、使いやすいかということも口コミや導入事例などを見て確認しましょう。
無料プランのある勤怠管理システム4選
先述のとおり、無料で利用できる勤怠管理システムには、「特定の条件を満たせば、期間を問わずに完全無料で使えるもの」と「無料トライアル期間があるもの」の2種類があります。
まずは無料プランのある勤怠管理システムのおすすめ5製品(製品名 abcあいうえお順/2024年7月時点)を紹介します。
Teasy
ジョブカン勤怠管理
特徴 |
ジョブカン勤怠管理は、株式会社DONUTSが提供する、シリーズ累計導入実績20万社と、豊富な導入実績を誇るクラウド型勤怠管理システムです。無料プランで使えるユーザー数は10人までです。無料版と有料版の違いは、機能面では無料版は一部の印刷・データダウンロード機能の制限があることです。データ保存期間は30日間で、広告表示はありません。有料版の価格は、1機能につき月額料金220円(税込み)/人~となっており、月額最低利用料金として2200円(税込み)が設定されているため注意が必要です。
スマートフォンやPCでの打刻、ICカード、指静脈認証、LINE・Slack打刻など多彩な打刻手段がある点が特徴です。また有料版では、出勤管理、シフト管理、休暇・申請管理、工数管理(※単独利用不可)の機能を必要に応じて組み合わせて利用できるため、自社に適したプランで無駄なく使えます。 |
ベンダーのWebサイト |
https://jobcan.ne.jp/ |
スマレジ・タイムカード
特徴 |
スマレジ・タイムカードは株式会社スマレジが提供している、クラウド型勤怠管理システムです。
無料で使えるユーザー数は30人と多めで、データの保存期間に制限もありません。ただ、無料版で利用できる機能は勤怠管理のみで、シフト管理や給与計算機能などを利用したい場合には、有料版の登録が必要です。無料版の利用でもメールやチャットサポートがあり、広告表示はありません。
有料版の価格は、利用ユーザー数が31人を超えた場合、月額料金1210円(税込み)/人~となっています。
PCやスマートフォン、タブレットでのWeb打刻はもちろん、iOSのスマホアプリにも対応しています。また、「出勤、退勤、休憩、復帰」など柔軟な打刻方法に加え、顔写真を撮影すれば顔認証も可能な点もおすすめポイントの一つです。 |
ベンダーのWebサイト |
https://timecard.smaregi.jp |
ハーモス勤怠by IEYASU
特徴 |
ハーモス勤怠by IEYASUは、IEYASU株式会社が提供する、クラウド型勤怠管理システムです。
無料で使えるユーザー数は30人と多めで、データの保存期間も1年間と比較的長めに設定されています。有料版との違いは、機能面では有給休暇管理・届出申請機能が使用不可、有料版では常時可能なCSV出力が1時間に1度のみであることです。また、無料版ではメールでのサポートが不可で、広告表示があります。有料版の価格は、月額料金110円(税込み)/人~となっています。
利用者の画面は全てスマホに対応しており、iOS、Androidアプリもあり簡単な操作で使いやすい点が特徴です。また、API連携が可能なため、ハーモス勤怠で打刻した勤怠データを給与計算システムや人事労務ソフトなどと連携することで、業務効率化が実現します。 |
ベンダーのWebサイト |
https://hrmos.co/kintai/ |
【参考】無料プランのある勤怠管理システムの比較表
サービス名称
提供会社 |
利用人数制限 |
データ保存期間 |
サポート内容 |
(参考)有料プランの価格 |
広告表示 |
ジョブカン勤怠管理
株式会社DONUTS |
10人 |
30日間 |
メール
電話
チャット |
初期費用無料
1機能につき月額220円(税込み)/人~
※月額最低利用料金は2200円(税込み) |
なし |
ハーモス勤怠by IEYASU
IEYASU株式会社 |
30人 |
1年間 |
各種マニュアル
FAQ |
初期費用無料
月額110円(税込み)/人~
(31人以上) |
あり |
スマレジ・タイムカード
株式会社スマレジ |
30人 |
制限なし |
メール
チャット
FAQ |
初期費用無料
月額1210円(税込み)/人~
(31人以上) |
なし |
無料トライアルを用意する勤怠管理システム10選
続いて、無料トライアルを用意するおすすめの勤怠管理システムを10製品(製品名 abcあいうえお順/2024年7月時点)ご紹介します。
e-就業OasiS
マネーフォワード クラウド勤怠
特徴 |
マネーフォワード クラウド勤怠は、株式会社マネーフォワードが提供するクラウド型勤怠管理システムです。無料トライアル期間は1カ月で、全ての機能を実際の操作画面で体験することが可能です。
有料版の料金プランは、小規模事業者向けのスモールビジネスプランが3278円/月(税込み・年額プランの場合)、中小企業向けのビジネスプランが5478円/月(税込み・年額プランの場合)〜となっています。
有料プランに申し込むことで、勤怠管理だけでなく会計業務や給与計算などの機能も利用できるのが特徴です。また、不正な打刻や残業時間が一定時間を超えた場合のアラート機能も搭載している点がおすすめポイントです。 |
ベンダーのWebサイト |
https://biz.moneyforward.com/attendance/ |
1人月額500円以内から使える勤怠管理システム9選
勤怠管理システムの多くは「有料プラン」であっても、利用するユーザー数=従業員数に応じた、比較的分かりやすい料金設定で提供されます。例えば、1人あたり月額300円の料金プランならば、従業員10人で月額3000円、50人で月額1万5000円。このくらいのランニングコストであればいかがでしょう。ここでは、1人月額500円以内の料金プランを用意する勤怠管理システムを9製品(製品名 abcあいうえお順/2024年7月時点)ご紹介します。
freee勤怠管理Plus
月100円~/人
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無料で使える勤怠管理システムのメリット・デメリット
無料で利用できる勤怠システムを導入することによって得られるメリットは数多くあります。しかしその一方でデメリットもあるため、しっかりと把握したうえで利用することが重要です。
ここでは、無料で使える勤怠管理システムのメリットとデメリットについてご紹介します。
無料で使える勤怠管理システムの主なメリット
無料で使える勤怠管理システムはまず、月額利用料がかからないため、コストを抑えることができます。特にスタートアップや中小企業にとって、予算を抑えつつも基本的なデジタルでの勤怠管理を実現できることが大きな利点です。
次に、クラウド型/SaaS型であればシステムの導入と運用も比較的簡単で、多くは専門知識がなくても始めやすいよう工夫して設計されています。無料プランでも基本的な機能は備わっており、出勤・退勤の記録や基本的なレポート作成などは可能です。また、無料プランを利用することで「システムの使い勝手をさっと実際に試す」こともでき、将来的に有料プランへのアップグレードを検討する際の判断材料にできます。
クラウド型/SaaS型の勤怠管理システムであれば、インターネット接続と適当なデバイスがあればどこからでもアクセスできることも利点です。リモートワークや複数拠点での利用にも柔軟に対応できます。
無料で使える勤怠管理システムのデメリット/主な注意点
無料プランの勤怠管理システムはまず、機能が制限されていることが多く、基本的な勤怠管理機能しか使えないことが挙げられます。例えば、高度なレポート機能やカスタマイズオプションなどはなく、サポート体制も不十分なことが多いです。無料プランでは、顧客サポートがない、あるいはメール対応のみで、即時対応してもらえる電話サポートやマンツーマンサポートは利用できないことがあります。
また、システムのアップデートやメンテナンスの頻度なども有料プランに比べて低いことがあり、セキュリティリスクが高まる可能性があります。無料プランでは広告が表示されたり、データの保存期間が短かったりすることもあります。
そして最後に、「ユーザー数が範囲を超えた」「急に無料プランの提供が終了する」など将来的に有料プランへの移行を強制される可能性もあるため、「無料」だけにとらわれない長期的な視野での計画が求められます。これらのデメリットを踏まえ、自社のニーズに合ったシステムを選定することが重要です。
無料の勤怠管理システムは「自社の目的・成果」の理解から 有料版も含めて検討を
無料勤怠管理システムは、「特定の条件を満たせば、期間を問わずに完全無料で使えるもの」「無料トライアル期間のあるもの」に分けられます。それぞれ機能などにおいて制限があるケースが多いため、サービスの詳細を把握し、自社が求める条件に適したシステムを選定できるよう「無料版」は有効に活用していきましょう。また「有料版」も比較的低価格で導入できる製品があるので、「早期にDX化したい」「よりビジネス成果を求める」ならばこちらも含めて検討することをお勧めします。
「自社に合うIT製品・サービスが分からない」「時間をかけずに効率的にサービスを検討したい」というご担当者様は、ぜひITセレクトのコンシェルジュサービス(無料)までお問い合わせください。適切なIT製品・サービスのご紹介や各種資料を分かりやすくご提供します。