電子帳票システムとは、請求書や見積書、納品書などの帳票を電子化し、一元管理するシステムです。従来は紙で行われていた帳票管理をデジタル型/システム上で行う行程に刷新することで、作業を効率化し、確実性をグッと高め、そしてコストの削減が可能になります。
2024年1月から義務付けられる電子帳簿保存法の改正に備え、電子帳簿システムは広く普及しました。今回は電子帳票システムの概要と種類、導入のメリットや注意点、おすすめのクラウド型電子帳票システム/製品(全10製品/2024年10月時点)をご紹介します。
「電子帳票システム」とは何か?
電子帳票システムとは、請求書や見積書など取引に使用する帳票を電子化し、一元管理するシステムです。帳票データを集約する場所になるだけでなく、他のシステムと連携し、帳票作成や送受信の自動化が可能となります。
電子帳票システムの基本的な機能
電子帳票システムには、主に以下の機能を備えています。
機能 |
内容 |
帳票作成 |
見積書や請求書などの帳票を電子データで作成する機能 |
帳票管理 |
作成した帳票を保存・管理する機能 |
帳票配信 |
帳票をメールやダウンロード形式で配信する機能
郵送やFAXなども対応している場合がある |
帳票の電子化 |
紙の帳票を電子化する機能 |
セキュリティ |
ユーザーのアカウント管理やアクセス制限などによりデータを保護する機能 |
電子帳票システムは、電子データで帳票を作成する機能や、電子データとして受け取った帳票を管理する機能が備わっています。また、紙で受け取った帳票も電子化して保存・管理できるため、すべての帳票をシステム上で一元管理することが可能です。
システム上で管理される帳票は集計や分析が可能になりますので、各種帳簿や決算書類などの作成効率化にも活用できます。
電子帳票システムのメリットとは?
電子帳票システムを導入する大きなメリットが、帳票管理業務の効率化です。帳票の作成・配信・管理といった一連の業務をPC上で行えるため、紙の帳票を現物で保存・管理する必要がなくなり業務の効率化につながります。取引先ごとに紙やデータで送られる帳票をすべて電子化し一元管理することで、帳票の紛失などのリスクを避けられるでしょう。
「電子帳票システム」の導入手段
電子帳票システムの導入手段は大きく「オンプレミス型」と「クラウド型」に分けられます。
オンプレミス型は、社内のサーバへシステムやアプリケーションを構築する従来型の形式です。クラウド型は、クラウドサーバ上に構築されたシステムへインターネット経由で利用する形式です。
オンプレミス型は自社サーバ内にシステムを独自に構築する形式のシステムです。導入には相応のコストと期間が必要ですが、自社のニーズ、業界の商慣習に適合するような特殊な機能にも対応するように作れる「カスタマイズ性の高さ」がポイントです。また、システムの利用範囲も自社でコントロールできるため、例えば「機密データは社外に出さない/クラウドには出せない」といった高いセキュリティ性が必要な業種やシステムにも従来通りに適用できます。
クラウド型は自社サーバではなくクラウドサーバ上に構築されたシステムを、インターネット経由で利用できる形式です。自社でサーバや周辺ハードウェア、設備を「準備」することなく、システムやアプリケーションの利用環境“だけ”を導入できるので、導入・運用にかかるコストが低く、短期間で利用を開始できることが魅力です。そして、初期コスト、運用コスト、リソース拡張時の負担や課題も抑えられることが大きな利点です。
業界のルールや企業の状況によって、自社に適するシステムは異なります。近年はクラウド型サービスの普及とともに、テレワークの普及といった社会環境の変化、会計システムなど他のITシステムとの連携しやすさ、そして「コスト面」「スピード感」を重視する需要が増えていることから、クラウド型の採用例が増えています。本記事では「クラウド型」の導入シーンを軸に解説していきます。
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電子帳票システムの選び方と注意点
電子帳票システムは、外部とのお金の流れを管理する重要な役割を担うシステムです。数あるシステムの中から最適なものを選ぶために、まず「導入検討前」にシステム導入の「要件」をしっかりと定義しましょう。参考として、要件として挙がる例の多いポイントを以下に示します。
- セキュリティとプライバシー保護
- スケーラビリティと柔軟性
- 日本語サポートとローカライゼーション
- 使いやすさとトレーニング体制
- コストと効率性
(1)セキュリティとプライバシー保護
セキュリティとプライバシー保護は、企業として重視すべき観点です。重要なデータを扱う電子帳票システムは、機密情報や個人情報を保護し、コンプライアンスに対応できる機能が必要です。データの暗号化、アクセス制御、監査機能など、セキュリティとプライバシー保護を強化する機能が備わっているのかを優先して確認しましょう。
(2)スケーラビリティと柔軟性
電子帳票システムは、企業規模に比例して扱うデータが増加します。企業の成長に合わせてシステムを拡張できなければ、帳票処理にトラブルが頻発することにもなりかねません。システムを選定する際には、企業規模の拡大に対応できるスケーラビリティやカスタマイズ性があるか、柔軟性に注目しましょう。システムそのものの改修を行わなくても、既存のシステムとの連携や統合機能に優れていると企業の変化へ柔軟に対応しやすくなるでしょう。
(3)日本語サポートとローカライゼーション
海外に拠点を持ち、グローバルビジネスを展開する企業ならば、多言語対応している海外製ツールの利用も視野に入るでしょう。海外製ツールは多機能である一方、日本語に対応していないものもあります。また日本の法律や規制に適応できるようなカスタマイズへの対応もシステム選択の要件となります。システムを選定する際には導入企業の拠点となる言語や法律に適応しているかを確認しましょう。
(4)使いやすさとトレーニング体制
システムの使いやすさは、電子帳票システムを効果的に利用するうえで大切な要素です。従業員が短期間で操作方法を習得できるほどに使いやすいツールは導入期間が短く済み、利用開始後も操作ミスによるトラブルを減らすことができます。トレーニング資料やトレーニングプログラムの提供に力を入れているベンダーを選べば、導入のプロセスをスムーズに進められることが期待できます。
(5)コストと効率性
システムを選定するうえで、導入にかかるコストも重視したい要件です。初期費用、月額費用、保守費用など、システムによってかかるコストは異なるため、費用対効果を念頭においた選定を進める必要があります。必ずしも高コストのシステムが自社にあっているとは限りませんので、自社に必要な機能を満たし、コストにあったシステムを選択しましょう。
「電子帳票システム」の導入事例
近年、電子帳簿保存法の改正などに後押しされ電子帳票システムの導入が進んでいます。ここでは電子帳票システムを採用して課題を解決した企業の導入事例をご紹介します。
中小企業向け「電子帳票システム」の導入事例
メンタルヘルスや医療サービスを展開する株式会社フィスメック。顧客に提出するストレスチェック調査票は帳票をベースに発行していました。取引先企業数が20倍、利用者数が10倍という顧客数の爆発的な増加にともない、ストレスチェック調査票の出力数が急増、従来のシステムでは追いつかなくなる課題が発生しました。
そこでクラウド型電子帳票システム「Create!Form」を導入したところ、帳票の作成速度が飛躍的に向上。これまで帳票1000枚の出力に1時間を要していたところ、10分の1である5分程度までの時間短縮を実現しました。帳票の作成速度が向上したことによりストレスチェック調査票の発行速度も向上し、人件費削減や社員の負荷減少にもつながっています。
大企業向け「電子帳票システム」の導入事例
音響機器・楽器・自動車用品などの販売製造大手のヤマハ株式会社は、2016年のシステム移行をきっかけに、見積書発行システムを刷新する必要がありました。
営業支援システムのSalesforceと連携可能な電子帳票システムの中からOPROARTSを採用。約3カ月と短期間で導入しましたが、Salesforce上のデータとの連携を実現し、従来と変わらないフォーマットの見積書の自動作成に成功しました。
「電子帳票システム」に関する最新トピックス、技術動向
近年、電子帳票を取り巻く環境は法改正や新制度の導入、最新技術の利活用により大きく変化をしています。利用者側は最新情報をキャッチし、適切に利用できるような心がけをするのが望ましいでしょう。
「電子帳票システム」に関する最新法律動向
2023年10月1日にインボイス制度がスタートしました。適格請求書発行事業者が発行した適格請求書(インボイス)のみ消費税の仕入税額控除が認められるようになり、事業者別の請求書管理や税率ごとの管理が重要になりました。
2024年1月に改正電子帳簿保存法への対応が義務付けられました。具体的には、取引先との間で取り交わした電子帳票は、電子データとしての保存が義務化されます。検索性を確保した保存も求められるため、電子帳票システムでの管理が重要となっていきます。
その他、電子帳票類には、電子署名法、e-文章法など多くの法律・法令が関係してきます。それらに正しく対応できる電子帳票システムが重視されています。
「電子帳票システム」に関する最新技術動向
電子帳票システムの多くは、「導入後」もさまざまなアップデートが行われ、進化していきます。前述した改正法などへ対応する機能のほかに、例えば、データの取り込みや分類にAI(Artificial Intelligence:人工知能)を用いた高精度化機能、作業の自動化をより進める機能などが追加されています。
また、データ保護のためのセキュリティ機能も進化を続けています。定期的なデータの自動バックアップ機能、通信の暗号化をはじめ、アクセス制限の強化や厳格な権限管理といった機能はほぼ標準装備となるシステムが増えています。
「電子帳票システム」と類似するIT製品
電子帳票システムの他にも、社内業務を電子化・自動化・効率化するツールには多くの種類があります。電子化で効率化となると、ITシステムの一般的なカテゴリーとして「請求書発行システム」「経費精算システム」がよく挙げられます。これらと電子帳票システムはどんな違いがあるのでしょう。参考までに簡単に解説します。
請求書発行システムは、請求書発行にかかる業務を自動化・効率化するためのシステムです。取引関連のデータを基に請求書を自動で発行し、取引先への送付や入金状態の管理などを行います。請求書発行業務における漏れや誤りの防止と業務の効率化が期待できます。
経費精算システムは、従業員への仮払いや経費精算の申請、承認の業務を効率化するシステムです。従業員の経費精算作業を「楽」にするとともに、経費承認フローの構築と迅速化、不正申請の防止、「会計システム」への連携機能などで経費精算まわりの業務を確実に、かつ効率化します。「請求書まわりの業務」「経費精算まわりの業務」に特化し、主に「社内・内部向け」の機能もあることに若干の違いがあります。
また、電子帳票も、請求書発行も、経費精算のシステムもまとめて統合する基幹業務パッケージ「ERP」もあります。「特化型」か「統合型」か、導入プロジェクトの規模や予算、自社のニーズに応じて、製品やベンダーと相談しながら選択していくとよいでしょう。
電子帳票システムを導入し、効率アップと法令への対応を両立させよう
電子帳票システムは、煩雑になりがちな社外との帳票のやりとりを自動化・効率化できます。すでに施行されたインボイス制度や義務化を間近に控えた電子帳簿保存法の改正対応など、法令遵守のためにも欠かせないシステムです。
対応できる帳票の種類や枚数など、システムによって機能に違いがありますので、適切なコストで自社が求める機能を自動化できる電子帳票システムを選び、作業の効率化と安全性を高めましょう。
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