ビジネス誌やビジネスニュースを見渡すと、「企業の躍進にはDX(デジタルトランスフォーメーション)化が急務」などと声高に叫ばれています。我が社はどうするか、早くせねばと焦る気持ちも分かりますが、もちろんこれからでも遅くはありません。
この記事では、DX化に対応できる「業務システム」の基本から、現在主流のクラウド型業務システム/基幹システムのメリット、選定のポイントまでを詳しく紹介します。個人事業主から中小規模企業も含めて、あなたの会社とビジネスに適する業務システムを見つけるための一助となれば幸いです。では、早速解説していきましょう。
目次
業務システムとは?
業務システムとは、業務を円滑にまわす/効率化するために企業経営・活動における基幹業務を支援するITシステム/ソフトウェアのことです。
例えば、在庫管理、仕入管理、販売管理、生産管理、会計管理、人事給与管理、勤怠管理など、企業、組織の持つ資産である「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」における業務プロセスをサポートし、効率化し、経営課題を解決するためのシステム、またはそれら業務フローの個別ツールをまとめた統合システムを指します。広義では「ERP(Enterprise Resource Planning)」「基幹システム」「統合基幹業務システム」などとも呼ばれます。
なお、業務システムは総じて「業務を円滑にするためのシステム/ツール」ですが、「基幹以外」のシステムを指すことも多くなっています。この場合は基幹以外のものとして、例えば顧客管理、文書管理、営業支援システム、グループウェアやコミュニケーションツールといったシステムやツールが該当します。
いずれにせよ、業務プロセスを自動化し、監視、管理、効率化するために用いられ、組織内で情報の収集、処理、共有、保存などのタスクを強力に支援します。
業務システムのメリット
- 業務プロセスを自動化できる/効率化できる
- データの管理体制を効率化かつ厳重にできる
- 専用画面/アプリケーションで効率化できる
- データベース、データの統合・一元化を実現できる
- ビジネスルールとワークフローを効率化できる
- セキュリティを向上させられる
- 統合性、一貫性による効率化を実現する
- 「リアルタイム分析」などで戦略体制を強化できる
(1)業務プロセスを自動化できる/効率化できる
業務システムは「企業・組織の業務プロセスを自動化する、効率化する」ために設計されています。
例えば、「従業員の給与計算」「在庫管理」「顧客サービス」「財務業務」はいかがでしょう。紙ベース、手書き、ホワイトボードといった旧来のアナログ手法はさておき、Microsoft Excelなど従業員のPC単位で使う汎用ソフトウェアで記録、管理を行うシーンもまだかなり多いのではないでしょうか。
これが最適だと判断して採用する旧来の手法も「これまでの経験や知見」として大切にすべきです。しかし「重荷」「面倒」で「効果が薄い」のであれば、さまざまな業務プロセスを効率的に処理できるようになる業務システムの導入で、大きな効果が期待されるでしょう。
(2)データの管理体制を効率化かつ厳重にできる
業務システムは、業務で発生する「あらゆるデータ/情報」の収集、保存、整理、検索、そして分析などまでをサポートします。企業にとって業務システムに保管するデータは最重要。これらのデータを適切かつ効率的に、そして厳重に管理していく体制を確保できます。
(3)専用画面/アプリケーションで効率化できる
業務システムには、ユーザー(管理側と従業員)がシステムと対話し、データを入力し、取得し、分析していくための専用画面/ツール(管理ツールやダッシュボードなど)が用意されます。
これには、Webベースのアプリケーション、デスクトップアプリケーション、スマートフォン向けアプリケーションなども含まれます。昨今の業務形態や出社ルール、働き方などにあわせて柔軟に対応できる機能の有無もいま検討するならば重要な要件となるでしょう。
(4)データベース、データの統合・一元化できる
業務システムは、あらゆる業務データの格納と一元管理のためのデータベースを軸に構築されます。組織の情報を確実にかつ安全に保管するとともに、「必要なときにすぐ、最新で確実な情報にアクセスできる体制」を整えられます。
(5)ビジネスルールとワークフローを効率化できる
業務システムには、特定の業務プロセスに関連したビジネスルールやワークフローを組み込むことも可能です。これにより、タスクの自動化、承認プロセスの管理、エラーチェック体制なども実現できます。
(6)セキュリティを向上させられる
業務システムには総じて、セキュリティを重視し、データへの不正アクセスや機密情報の漏えいを防ぐための「セキュリティ対策」も標準で組み込まれています。情報漏えいは企業の存続にも影響する重大な事件になります。システムの導入と合わせて改めて対策を行うことで、「セキュリティ対策を強固にしたい」目的にも効果があるでしょう。
(7)統合性、一貫性による効率化を実現する
業務システムは、さまざまな部門やプロセス間でデータを共有し、連携できる機能を持ちます。組織全体で一貫性のある情報を提供・管理できるようになります。
(8)「リアルタイム分析」などで戦略体制を強化できる
業務システムの中には、得たデータから「リアルタイム」でレポートや分析を生成できることを特長とするものも多くあります。これにより、他社に勝つ「迅速な意思決定」を行う強い力になるでしょう。このほか、組織単位、担当者単位、あるいは市況を踏まえたトレンドをふまえてデータを分析してレポートを生成するような機能を特長とするシステムもあります。
業務システムのデメリット
業務システム、ERPのデメリットとしては一般的に、初期導入コストが高いこと、導入に時間がかかること、カスタマイズが困難であることが挙げられます。自社の基幹業務をプロセスごと刷新するほどに大きなものになることも多いため、従業員のトレーニングや準備も必要であり、その過程で業務が停滞する可能性もあります。
そして、一度導入するとシステムの変更や更新が難しくなり、企業の柔軟性を損なう恐れがあります。これらのデメリットは、企業が業務システム、ERPを選択し、導入する際に十分に考慮する必要があるでしょう。
業務システムの主な種類と役割
業務システムは、「ERP」「統合基幹業務システム」とも呼ばれるように、企業活動全般──財務会計、総務・労務管理、人事・人材育成、法務、営業・顧客管理などの各部門に向けた個別のシステムやツールが多様に含まれます。それらをひとまとめにして提供する製品は「ERPパッケージ」と呼ばれ、導入例が多い代表的なIT製品の1つです。一方、導入企業のニーズに沿い、使うツールだけを取捨選択できる製品もあります。
業務システムとして備わる主要機能・ツールは以下の通りです。
- 財務管理
- 人事管理
- サプライチェーン管理
- 購買・販売・顧客管理
- 製造管理
- ビジネスインテリジェンス(BI)
- ワークフロー管理
- モバイル/マルチデバイス対応
- クラウド対応とセキュリティ/アクセス制御
- インテグレーションツール
財務管理
財務管理機能は、正確なデータと分析を提供し、複数通貨の管理、キャッシュフロー管理、銀行トランザクションを含む予算の監視を行います。収益の最適化、キャッシュフローの測定、納税義務に関する判断、コンプライアンスの確保、企業の長期的な持続可能性の維持といった機能も、求められる機能として上位に挙がります。もちろん、総じてデータとシステムのセキュリティも重要です。
人事管理
人事管理機能は、従業員の個人情報管理、給与計算、福利厚生管理、勤怠管理の効率化が軸となります。その上で、従業員の能力、スキル、ノウハウなども一元管理し、最適な人員配置や育成をこれらのデータ/情報をもとに支援する「タレントマネジメント」機能を持つ製品もあります。
サプライチェーン管理
サプライチェーン管理は、需給予測、在庫管理、調達計画、生産スケジューリング、物流と配送の最適化などを実現します。これらは全て、効率的な運用とコスト削減を目指し、顧客満足度を高めるために戦略的意識を持つ企業の重要な要件として挙がります。
購買・販売・顧客管理
販売・顧客管理機能は、顧客情報の管理、販売予測、受注管理、出荷管理、請求管理、顧客対応履歴管理などを包括して管理できます。これらは全て、顧客満足度を高め、長期的な顧客との良好な関係を築くために重要です。
製造管理
製造管理機能は、生産計画、生産スケジューリング、在庫管理、品質管理、設備管理などが包括されます。効率的な生産活動を実現し、製品の品質を確保し提供していくために重要と位置付けられる機能です。
ビジネスインテリジェンス(BI)
ビジネスインテリジェンス(BI)とは、日々生成・蓄積される「データや客観情報」を収集、分析して得られる知見を活用し、判断や意思決定に役立てる手法のことです。ツールとしてデータ収集、データ分析、レポート作成、ダッシュボード表示、予測分析などの機能が提供されます。
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ワークフロー管理
ワークフロー管理機能は、業務プロセスの自動化、タスクの追跡、承認フローの設定、進行状況の可視化、効率的なリソース配分などが主な要件として挙がります。これらの機能は、業務の透明性を確保し、エラーを減らすのに役立ちます。
モバイル/マルチデバイス対応
モバイル対応機能は、場所や時間、端末を選ばない方法での、リアルタイムでの情報アクセス、データ入力と更新、通知とアラート、レポートとダッシュボードの表示、オフラインでの作業環境が要件として挙がります。ユーザーは場所を問わずに業務を行うことができ、生産性と効率性が向上が期待できます。
クラウド対応とセキュリティ/アクセス制御
クラウド対応とセキュリティ・アクセス制御機能は、リモートアクセス、データの暗号化、ユーザー認証、アクセス権限の管理、セキュリティ監査、データバックアップとリカバリなどが要件として挙がります。これにより、データの安全性とプライバシーが確保され、組織の業務運用がスムーズに行えます。これらの機能はクラウド環境での安全なデータ管理を可能にします。
インテグレーションツール
インテグレーション機能は、異なるシステム間のデータ共有、APIの利用、リアルタイム同期、自動化されたデータフロー、エラーハンドリングなどが要件として挙がります。これにより、組織内の異なるシステムも効率的に連携でき、情報の一貫性と正確性が保たれます。
業務システムの選定・導入時に考慮すべき5つのポイント
いよいよ「選定」を検討し始める段階にきました。業務システム、ERP(Enterprise Resource Planning)の導入は、企業にとって重要な決定であり、成功・成果を出していくにはやはりいくつか注意が必要です。慎重に行っていくべきでしょう。ここからは、クラウド型「業務システム」を例に、初期の参考となる検討・導入時の注意点を紹介します。
- 自社の「ビジネスプロセス」をできるだけ詳細に分析する
- (1)を叶えてくれる・支援してくれる製品/ベンダーを選ぶ
- プロジェクトの計画と管理は余裕を持って行う
- ユーザーのトレーニング支援/サポート体制を確認する
- データの移行とともにセキュリティを改めて意識し強化する
(1)自社の「ビジネスプロセス」をできるだけ詳細に分析する
業務システム、ERPパッケージは、とても多機能で多くのツールを包括します。しかし、いくら多機能でも、有名な製品でも、それらのツールが自社の要件、使い方や需要に合っていなければ導入による効果は見込めません。
そのため、自社のビジネスプロセスと需要を把握し、得たい機能や効果をできるだけ明確に洗い出しましょう。どのプロセスを自動化・改善したいか、されるべきかとともに「自社独自の要件」を定めましょう。とても大変で難しい作業になるかもしれません。しかし、この作業はきっと成功へ向けた第一歩になります。
(2)(1)を叶えてくれる・支援してくれる製品/ベンダーを選ぶ
市場にはさまざまな業務システム、ERPパッケージが存在し、それぞれが異なる特性や強みを持っています。たくさんある中からどれかを選定するのは至難の業です。「はじめて」ならばなおさら途方に暮れてしまうことでしょう。
そこに、(1)の「自社の要件、希望を明確にする」ことが生きてきます。「これが必要」と要件が明確ならば、要件を軸に数ある製品から自社に合う製品を絞っていけます。
そして、それならば当社の製品をぜひ! と声を挙げてくれるベンダーもきっとあります。ベンダーとの協力を通じてカスタマイズしていける体制を取れる──。このことも成功へ近づく一歩になります。
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(3)プロジェクトの計画と管理は余裕を持って行う
導入プロジェクトとして適切かつ慎重に計画し、進行していくことも必要です。具体的には、予算、スケジュール、リスク管理を適切に管理し、プロジェクトの進行を追跡する体制をじっくり整えていきましょう。その上で、プロジェクトを伴走・支援してくれるベンダーがみつかれば、それは心強いパートナーとなるでしょう。
(4)ユーザーのトレーニング支援/サポート体制を確認する
システムはユーザーに正しく使われてはじめて効果を生みます。ユーザーが新しいシステムを受け入れるためのサポートを提供し、トラブルシューティングを行う体制なども忘れずに計画しましょう。
(5)データの移行とともにセキュリティを改めて意識し強化する
業務システムは、企業活動の根幹となる重要なデータを扱います。「既存のデータを新しいシステムに移行するプロセス」は極めて慎重に計画しましょう。併せて、改めてこの機会にセキュリティ対策を十分に考慮し、データの機密性と整合性を保つための適切な対策を再度講じるフローも取り入れるとよいでしょう。
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