営業活動において、製品やサービスの魅力を効果的に伝える営業資料は非常に重要な役割を果たします。特にオンラインでの商談も主流となりつつある今、情報やポイントを視覚的により分かりやすく提供できるものが求められているといえるでしょう。
本記事では、営業資料の作成において押さえるべきポイントを詳しく解説します。構成やデザインの工夫、さらに、近年注目されているITツールの活用方法についても紹介します。
目次
営業資料がなぜ重要か?
営業資料は、商談や営業活動において製品やサービスの魅力を相手に伝える重要なものです。適切な資料を活用することで、営業担当者が伝える内容を統一でき、また営業スキルの均一化なども図れます。ここでは、営業資料の重要性について具体的に解説します。
顧客の意思決定をサポートできる
商談時には、口頭での説明だけでなく、視覚的に分かりやすい資料を併用することで、顧客が内容をより具体的にイメージできるでしょう。
また、商談相手がその場で決裁権を持っていないならば、社内の稟議にかけるための資料としても利用されます。こうした場面では、営業資料が詳細な情報を提供し、意思決定者が最適な選択を行えるようサポートする役割を果たします。
営業の属人化を防げる
営業活動において、担当者ごとに提案のスキルや伝え方にばらつきが出てしまうことを属人化といいます。特定の担当者に依存すると、営業の成果が担当者次第になり、営業全体のパフォーマンスが安定しないなどの課題も挙がってきます。
営業資料を共有し、商談の一部として取り入れることで、どの担当者でも一定の質で提案ができるようになるでしょう。
デジタルツールを使った営業が主流に
近年、オンライン商談やデジタルツールを活用した営業が増加しています。特に、リモートワークや遠隔地での商談も増える中、デジタル化された営業資料は特に活躍します。オンライン商談では、画面共有を通じて資料を表示しながら説明するスタイルが主流のため、資料の視覚的な分かりやすさはこれまでに増してとても重要になっているといえます。
デジタル営業資料には、紙の資料と異なり、動的な要素(動画やアニメーション、リンクなど)を組み込むことも可能です。これにより、より多くの情報を効率的に伝えることができます。また、デジタル形式の資料は、商談後にデータとしてすぐに共有でき、必要に応じて簡単に修正や更新が行えるというメリットもあります。
営業資料を作成する前に考慮すべきこと
営業資料を作成する際には、ただ製品やサービスの内容を説明するだけでなく、誰がその資料を使うのか、どんな場面で利用されるのかをよく考えることが重要です。
ここでは、営業資料を作成する前に必ず考慮しておきたい2つのポイントについて詳しく解説します。
- ターゲットを明確にする
- 利用シーンを想定する
1. ターゲットを明確にする
営業資料を作成する際、最初に考えるべきは「誰に向けて作るか」という点です。顧客の業種や役職、会社の規模などによって、求められる情報や説明の仕方が大きく異なります。例えば、製品の技術的な特徴を理解してもらう場合には、専門的な知識を持つ担当者向けの資料が必要です。一方で、経営層や決裁権者に向けた資料の場合、具体的な効果やコスト削減など、導入後のメリットに重点を置いた資料が求められます。
まずはターゲットの属性を把握し、ペルソナを設定しましょう。ペルソナを設定する際は、以下のような情報を考慮すると効果的です。
- 顧客の業種や業界
- 担当者の役職(現場担当者、管理職、経営層など)
- 顧客が抱える課題やニーズ
- 決裁までのプロセス(誰が決定権を持っているか)
これにより、ターゲットのニーズに応じた適切な資料を作成でき、相手に伝わりやすい資料を用意することができます。例えば、技術職の担当者には機能的な特徴を強調し、経営層には導入後の経済的なメリットやコスト削減効果を示すなど、役職に応じたアプローチが効果的です。
2. 利用シーンを想定する
営業資料がどのような場面で使われるかを考えることも重要です。資料は、オンライン商談や対面でのプレゼンテーションなど、様々な場面で利用されますが、それぞれに求められる内容やデザインが異なります。オンラインでの商談では、資料を画面共有することが多く、ビジュアルやグラフを多用した視覚的にわかりやすい資料が求められます。画面越しに説明するため、文字が多すぎる資料は避け、要点を絞った見やすいデザインにすることがポイントです。
一方で、対面での商談では、資料を手渡しながら細かく説明する機会が多いため、詳細な説明文や補足情報も含めた資料が適しています。特に後で見直してもわかりやすいように、情報量を増やしておくことが効果的です。
効果的な営業資料の構成
営業資料を作成する際には、ただ情報を羅列するのではなく、ターゲットとなる顧客の関心や状況に応じて構成を工夫することが重要です。ここでは、効果的な営業資料の構成について説明します。
- 表紙
- サービス・製品の概要
- 顧客の課題の提示
- サービス導入によるメリット
- 競合との比較
- 導入事例
- 料金プランと費用対効果
- 問い合わせ情報
1. 表紙
表紙は資料全体の第一印象を決める重要な要素です。資料を手に取った瞬間に、何について書かれているのかがすぐにわかるように、簡潔で明確なタイトルをつけましょう。例えば「〇〇サービス導入提案書」といった形で、製品やサービス名、提案の目的を一目で伝えるようにします。また、会社名やロゴを入れて、信頼感を高める工夫も必要です。
2. サービス・製品の概要
次に、サービスや製品の要点を簡潔にまとめます。ここでは、提供するサービスがどのようなもので、どんな課題を解決できるのかをわかりやすく説明することが大切です。例えば、製品の特徴を列挙するだけでなく、具体的な利用シーンや写真を使うことで、顧客がサービスのイメージを持ちやすくなります。
3. 顧客の課題の提示
顧客が現在抱えている問題や課題を的確に指摘することで、顧客が自社のニーズに気付くように促します。具体的な事例を用いながら、「現場でよく起こりがちなトラブル」「管理業務にかかる時間の増加」といった課題を提示しましょう。課題の提示が具体的であればあるほど、顧客が「自分の会社の問題だ」と感じやすくなります。
また、顧客が気付いていない潜在的な課題にも触れることが効果的です。例えば、「業務効率が上がっていない原因」や「隠れたコストの増加」など、普段は見過ごされがちな部分を指摘することで、顧客の興味を引くことができます。
4. サービス導入によるメリット
次に、サービスを導入することで顧客が得られるメリットをわかりやすく説明します。顧客にとって一番関心があるのは「どのようにして課題が解決されるのか」という点です。導入後に得られる具体的な成果を数字やデータを用いて示すことで、説得力を高めることができます。
例えば、「導入後にかかるコストが10%削減される」「売上が5%増加する」など、実際のデータに基づいたメリットを示すと、顧客が導入後の姿を具体的にイメージしやすくなります。また、具体的な数字を使うことで、説明が曖昧にならず、信頼性が向上します。
5. 競合との比較
顧客は、あなたのサービスや製品だけでなく、他社のものとも比較して検討します。したがって、競合他社との違いを明確に示すことが重要です。ここでは、他社の製品やサービスと比較し、どの点で優れているのかを視覚的に伝えるために、表やグラフを活用しましょう。
6. 導入事例
過去の成功事例を紹介することで、顧客に安心感を与えます。自社と似た業界や規模の企業が実際にサービスを導入し、どのような結果を得たのかを具体的に示すことで、顧客が「自分たちも同じように成功できる」というイメージを持ちやすくなります。
7. 料金プランと費用対効果
それぞれのプランで提供される内容や、どの程度の効果が期待できるのかを明確に説明しましょう。
また、料金だけでなく、費用対効果を示すことも大切です。「このプランを選ぶことでどれだけの利益が得られるか」「どれだけコストが削減できるか」といった情報を具体的に伝えることが重要です。
8. 問い合わせ情報
最後に、顧客が興味を持ったときにすぐに行動に移せるように、問い合わせ先をしっかりと記載しましょう。
メールアドレス、電話番号、WebフォームのURLなどを明記し、わかりやすく提示。可能であれば、資料の最後に「次のステップ」や「行動を促す一言」を加えることで、顧客が次のアクションを取りやすくなります。
営業資料を作る際のポイント
営業資料を作成する際には、内容だけでなく、その伝え方やデザインにも工夫が必要です。資料を読みやすく、伝わりやすくするためには、どのような点に気をつければよいのかを具体的に説明します。
- 1スライド1メッセージ
- グラフや図形などのビジュアルを活用
- 色は3色までを意識
- フォントの統一
- 数字で説得力を持たせる
ポイント1: 1スライド/1メッセージ
1枚のスライドに多くの情報を詰め込んでしまうと、メッセージが分かりづらくなり、顧客も内容を理解するのが難しくなります。そのため、1スライドにつき伝える内容は1つに絞ることがポイントです。例えば、商品の機能を説明するスライドであれば、複数の機能を一度に盛り込むのではなく、各機能ごとにスライドを分けて、それぞれの特徴を丁寧に説明しましょう。
ポイント2:グラフや図形などのビジュアルを活用する
営業資料は、文字だけで説明するのではなく、視覚的に伝えることが大切です。顧客は文章を読むのではなく、パッと見て内容を理解できる資料の方が負担を感じず、興味を持ってくれます。そこで、グラフやイラスト、図表などを積極的に活用しましょう。
例えば、売上の増加やコスト削減の効果を説明する際には、単純に「〇%増加」と書くだけでなく、実際の数値をグラフにして視覚的に示すと、変化が一目でわかりやすくなります。また、複雑なプロセスを説明する場合には、フローチャートや図解を用いて、流れを視覚的に伝えることで、理解がスムーズになります。
ビジュアルを活用する際には次の点に注意しましょう。
- 説明したい内容に合ったグラフや図表を選ぶ
- 情報量を減らし、シンプルなデザインを心がける
- 必要に応じて、補足説明のテキストを添える
ポイント3:使う色は3色までを意識する
資料の中で使う色は、なるべく少なくするのもポイントです。色を多く使いすぎると、かえって見にくくなったり、どの部分が重要なのかがわかりにくくなることがあります。そのため、文字カラー(通常は黒や濃いグレー)、メインカラー(資料全体のトーンとなる色)、アクセントカラー(強調したい部分に使う色)の3色に絞りましょう。
シンプルな配色にすることで、資料全体のデザインが統一され、見やすくなります。また、アクセントカラーを使って強調したい部分を目立たせることで、顧客に伝えたいメッセージが自然と引き立ちます。
ポイント4:フォントを統一する
資料内で使用するフォントがバラバラだと、統一感がなく、見た目が散らかった印象を与えてしまいます。また、フォントの種類が違うと、読み手がどこに注目すべきか迷ってしまうこともあります。そこで、資料全体で使うフォントを統一し、サイズや強調の仕方も一貫性を持たせることが大切です。
ポイント5:数値で説得力を持たせる
営業資料で顧客に信頼感を与えるためには、具体的な数字を使って説明することが効果的です。数字を使うことで、説明が曖昧にならず、説得力が増します。例えば、単に「売上が増加しました」と書くよりも、「売上が10%増加しました」と具体的な数値を提示することで、顧客はその効果を実感しやすくなります。
以上のポイントを押さえて、効果的な営業資料を作成することで、顧客にとってわかりやすく、印象に残る資料を作成しましょう。
営業資料を活かすためにITツールを活用する
営業資料をただ作成して終わりにするのではなく、それを効果的に活用するために、適切なITツールを導入することが重要です。ITツールを使うことで、資料の共有や顧客情報の管理、営業活動の進捗を効率よく追跡できるため、業務の流れがスムーズになり、営業成果の向上につながります。ここでは、営業資料を最大限に活かすために役立つ代表的なITツールについて紹介します。
CRM(顧客管理システム)を導入する
CRM(Customer Relationship Management/顧客関係管理システム)は、顧客の情報を一元的に管理し、営業活動を支援するためのツールです。
CRMを使うことで、顧客の基本情報はもちろん、過去の商談履歴や問い合わせ内容なども一括して管理できます。
これにより、次のようなメリットがあります。
- 顧客の興味やニーズを把握しやすくなる:顧客が過去にどのようなサービスに興味を持ったのか、どのような質問をしてきたのかが一目でわかるため、提案内容を顧客の状況に合わせてカスタマイズすることが可能。
- 営業活動の進捗を追跡できる:各顧客に対する営業の進捗状況を簡単に確認でき、次に取るべきアクションが明確になります。例えば、商談が進んでいる顧客に対しては次のステップを検討し、まだ興味を持ち始めた段階の顧客にはフォローアップの連絡を入れる、といった具体的な対応がしやすくなります。
SFA(営業支援システム)を導入する
SFA(Sales Force Automation/営業支援システム)は、営業活動を効率化し、業務の自動化を進めるためのツールです。見込み顧客の管理やフォローアップ、資料送付の自動化が可能です。
SFAの導入により、次のような効果が期待できます。
- 営業活動の自動化:例えば、商談後に自動でフォローアップのメールを送ったり、顧客に合わせた提案書を自動で送付する機能を活用することで、手作業での負担が減ります。これにより、営業担当者は本来の商談や戦略的な業務に集中できるでしょう。
- 資料の管理と分析が簡単に:どの資料がどの顧客に使われたのか、どの資料が商談の成功に寄与したのかをSFAで追跡することができます。こうしたデータを分析することで、より効果的な営業資料の作成や、顧客ごとの最適な提案が可能になります。
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ベンダーのWebサイト | https://www.fullfree.jp/ |