ワークフローシステムを導入することで、業務の効率化と確実性を高め、また承認・確認工程のスピードアップが期待できます。自社全体の観点はもちろん、個々の具体的な業務にも直接関連するツールとして効果が期待されるものなので、選定に際しては企業の規模や業務の特性に合ったシステムを選ぶことが重要です。
本記事では、ワークフローシステムの選び方と導入によるメリット・デメリットを詳しく説明し、企業ごとのニーズに合わせた選定ポイントを解説します。おすすめのシステムも紹介しますので、参考にしてみてください。
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目次
ワークフローシステムを選ぶポイント
ワークフローシステムを導入する際には、業務効率を高めるためにも、自社のニーズや業務内容に合ったものを選ぶことが重要です。企業の規模や業務内容に応じて、求められる機能が異なるため、以下のポイントを踏まえた選定が効果的です。
- 自社の規模に合ったシステムであるか
- 申請フォームのカスタマイズができるか
- 自社の承認フローに対応できるか
- クラウド型かオンプレミス型か
- セキュリティ体制は十分か
1. 自社の規模に合ったシステムであるか
企業の規模によって、必要となるシステムの機能や操作性が変わります。中小企業では、シンプルで費用対効果に優れたシステムが適しています。少人数のチームでは、簡単に操作でき、無駄な機能が少ない方が運用がスムーズになります。
一方、大企業では、複数の部署やプロセスを跨ぐ複雑な承認フローに対応する必要が出てきます。このため、複数の承認ルートを管理できるシステムが望まれます。ただし、あまりにも多機能なシステムを導入すると、管理や運用にかかるコストが増すこともあるため、必要な機能を見極めることが大切です。
2. 申請フォームのカスタマイズができるか
業務内容に応じた申請フォームを使うため、システムがどれだけ柔軟にカスタマイズできるかは大事なポイントです。企業ごとに異なる申請書類や承認フローに対応するには、既存の書類フォーマット(WordやExcelなど)がそのまま使えるシステムや、レイアウトや入力項目を簡単に調整できるものが便利です。固定されたフォーマットしか使えないシステムだと、業務に合わせた柔軟な対応ができなくなる可能性があるため、注意が必要です。
3. 承認フローの複雑さに対応できるか
承認フローは、会社によって単純なものから複雑なものまでさまざまです。単純な承認だけでなく、部署間や役職を跨ぐプロセスを必要とする場合には、条件に応じて異なる承認者に回す「条件分岐機能」があると便利です。また、担当者が不在の際に代わりに承認できる「代理承認機能」や、承認順序を柔軟に設定できるシステムがあれば、複雑な業務フローでもスムーズに運用できます。
4. クラウド型かオンプレミス型か
ワークフローシステムには、クラウド型とオンプレミス型の2つの提供形態があります。それぞれに特徴があるため、自社の運用環境に合ったものを選びましょう。
クラウド型は、初期コストを抑えられ、インターネット環境さえあればどこからでも利用できるのが強みです。Webを通じてアップデートが適用されるため、システム更新の手間が省けます。
オンプレミス型は、社内で独自開発するシステムです。自社のニーズやセキュリティポリシーに沿ってシステムを柔軟に開発・調整できますが、初期導入やサーバー管理にかかるコスト、開発期間、手間はかなり多めに発生します。
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5. セキュリティ対策が充実しているか
ワークフローシステムでは、企業の重要な情報を扱うため、セキュリティ対策が十分であるかどうかは重要です。特にクラウド型を利用する場合、データの暗号化やアクセス制限がきちんとされているか確認する必要があります。
また、外部とのデータ共有が発生する際には、監査ログなど、誰がいつデータにアクセスしたかを追跡できる機能があると、情報漏洩のリスクを減らすことができます。社内外の不正アクセスに対しても、事前の対策が求められます。
6. サポート体制が整っているか
システム導入後のサポートやトラブル対応が充実しているかも、大切なポイントです。導入時にはトレーニングや操作説明が必要になることが多く、サポート体制が整っていれば、システムをスムーズに運用できます。また、問題が発生した際に迅速に対応してもらえるサポート窓口があるかどうかも確認しておきましょう。さらに、定期的なアップデートやメンテナンスが提供されるシステムであれば、安心して長期的に利用できます。
ワークフローシステムを導入するメリット
ワークフローシステムを導入することで、業務の効率化やコスト削減、コンプライアンスの強化など、多くの利点が得られます。ここでは、具体的なメリットを詳しく説明します。
- 申請・承認のスピードが上がる
- 内部統制が強化できる
- 管理コストを減らせる
- 業務の可視化と分析が可能になる
- 遠隔地や複数拠点での統一した業務が可能
申請・承認のスピードが上がる
ワークフローシステムを導入すると、紙やメールでの手動処理に比べて、申請から承認までの流れがスムーズになります。まず、申請書が自動的に適切な担当者に送られるため、手動で確認する手間が減り、対応が迅速になります。さらに、リアルタイムで承認待ちの状態を確認できるため、状況を即座に把握できます。
また、リモート環境や社外からでも承認作業が可能になるため、出張中や在宅勤務時でも業務が止まることがありません。さらに、システムが自動で催促通知を行うため、承認の遅れを防ぐことができ、全体の業務処理速度が向上します。
内部統制が強化できる
ワークフローシステムを導入することで、承認プロセスが統一され、透明性が高まります。誰がいつ承認したかを自動で記録するため、監査や調査の際に証拠として残るため安心です。
また、不正行為を防ぐために、アクセス制限や承認権限の管理が強化されます。複数の承認者や段階を設定することができ、重要な決裁プロセスの信頼性が高まります。すべての業務がデジタル化されるため、紙ベースの情報管理による紛失や漏洩リスクも軽減され、内部統制が強化されます。
管理コストを減らせる
ワークフローシステムを利用することで、ペーパーレス化が進み、印刷費や紙の保管費用を大幅に削減することが可能です。申請書や承認書類がデジタル化されるため、書類の保管や廃棄にかかる手間もなくなり、オフィススペースの有効活用にもつながります。
また、必要な書類はシステム内で簡単に検索・参照できるため、紙の紛失リスクが減り、作業効率も向上します。このようなペーパーレスの取り組みは、環境に配慮した経営を実現する一環として、企業の持続可能な活動にも貢献します。
業務の可視化と分析が可能になる
ワークフローシステムを活用すると、すべてのプロセスがデジタルで記録されるため、業務の進行状況やボトルネックをリアルタイムで把握することが可能です。例えば、どのプロセスで遅延が発生しているか、どの業務が停滞しているかをすぐに確認できるため、改善点を明確にできます。
さらに、承認履歴や申請状況をデータとして蓄積し、これを基に分析することで、業務フローの見直しや効率化を図ることができます。可視化されたデータを使って、部門間の業務の流れを把握し、無駄な手順や二度手間を削減することも可能です。
遠隔地や複数拠点での統一した業務が可能
ワークフローシステムを利用すれば、地理的な制約を超えて、遠隔地や複数拠点での統一した業務運用が可能です。オンラインでの申請や承認ができるため、どこにいても業務を進められます。
さらに、各拠点ごとの承認ルールを一元的に管理することができ、全社で統一された運用を実現できます。多国籍企業や、国内外に複数拠点を持つ企業でも、一貫した管理が可能となり、異なる地域での業務運用を効率化することができます。また、各拠点の申請状況やフローを一つのプラットフォームで集中管理できるため、全体の業務の透明性と効率が向上します。
ワークフローシステムを導入するデメリット
ワークフローシステムは業務効率を大幅に向上させる一方で、導入に際していくつかのデメリットがあります。これらを事前に理解しておくことで、導入後のトラブルを回避しやすくなります。
- 初期費用などのコストがかかる
- 社内ルールに則った管理や教育が必要
- システムの導入に時間がかかる場合がある
初期費用などのコストがかかる
ワークフローシステムの導入には、初期費用や月額の利用料金がかかる点に注意が必要です。
システムの購入にかかる費用や、導入時のカスタマイズ費用、初期設定の費用が発生します。クラウド型の場合は毎月の利用料が必要になり、オンプレミス型の場合はサーバーの購入費用や、セキュリティ対策、メンテナンス費用も考慮する必要があります。導入後も、定期的なシステム保守やアップデートが必要になることがあり、それらのコストも含めて予算を検討することが大切です。中小企業では、こうした導入費用が大きな負担と感じられる場合があるため、長期的なコストと効果を十分に見積もることが重要です。
社内ルールに則った管理や教育が必要
新しいシステムを導入する際には、それに合わせた業務フローの再設計や、従業員への教育が必要です。
ワークフローシステムに適応するためには、従来の業務ルールや手順を見直し、システムに適した形に変更する必要が出てきます。これには時間と労力がかかり、特に規模が大きい組織では、調整や適応が難航する場合もあります。また、新しいツールを使いこなすために、従業員への研修やトレーニングが必要になります。システムが複雑な場合、特に管理者には専門知識が求められることが多いため、全員がスムーズに活用できるよう、定期的なトレーニングや社内マニュアルの整備も必要です。
システムの導入に時間がかかる場合がある
システムを導入する際には、準備と調整に時間を要します。特に大規模な企業や、細かいカスタマイズが必要な場合は、導入プロセスが長引くことがあります。
社内の既存の業務フローに合わせたカスタマイズを行う場合、その調整作業に時間がかかることも少なくありません。また、他の既存システムとの連携が必要な場合は、システム統合に追加の時間や手間がかかる可能性があります。さらに、システムの運用を開始する前には、従業員への研修や準備が十分に行われる必要があり、導入後も初期段階で不具合が発生する場合もあるため、システムが安定するまでの期間を考慮することが大切です。
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