「経費・交通費の精算が面倒」「なんとかしてよ!」──。こんな従業員の声が挙がる事態に頭を悩ませる総務・経理担当者はとても多いことでしょう。企業として、フローに沿って正確に管理・処理し、時に不正チェックも必須なども必須。「はいこれ領収書。処理しておいて」などと手渡される旧来型のフローでは今やコンプライアンス順守も怪しくなってしまいます。
この記事では、「経費精算をとにかく楽にしたい」を課題に据える企業に向け、経費精算の基礎から、現在主流のクラウド型でスマートデバイス対応アプリも当然とするおすすめの製品、そして選定のポイントまでを詳しく紹介します。個人事業主から中小規模企業も含めて、あなたの会社とビジネスに適する経費精算システム、経費精算アプリを見つけるための一助となれば幸いです。
経費清算システムの基礎知識
経費精算システムとは、会社・組織が効率的に経費を管理し、また従業員の経費発生業務を効率化し、適切に報告・申告できるITシステムのことです。以下より、経費精算システム/経費精算アプリの機能、役割、メリット、導入で得られる効果を簡単に解説していきます。
●経費清算システムの役割
従業員が計上する経費として、「交通費」「交際費」「資料・物品購入費」などがあるのは皆さんもご存じの通りです。このような経費は「従業員が一時立て替えて、領収書とともに会社へ申請し、清算する」、あるいは「請求書を受領し、必要書類とともに会社へ申請する」のが基本的な流れです。従業員は「都度経費申請の書類を作成」して、「各部門の承認、捺印をもらう」ことで精算する仕組みでした。
従業員の「面倒」の声はここでしょう。「経費精算システム」があればそういった旧来型の仕組みを大幅に効率化できます。
また、経費精算システムを導入すれば経理システムとの連携もできるため、経理業務の手間も軽減可能です。会計処理の上で扱われる領収書は、税法上の「帳簿書類」に分類され、法により7年の保管が義務付けられます。経費計上の負担を感じている、そして、企業としてコンプライアンスの順守を望む管理側にも、経費精算システムの導入は大きな効果があるといえるでしょう。
経費精算システムの主な機能と、導入による期待できる効果を以下に3つ紹介します。
- 経費の記録と分類、情報のデジタル化
- 承認ワークフロー
- 管理とレポーティング
・機能(1):経費の記録と分類、情報のデジタル化
経費精算システムは従業員が発生させた経費を容易に記録・管理できるようにします。主に、領収書や請求書の情報を「デジタル」で保存し、同時に適切に経費のカテゴリに分類する機能が含まれます。これにより適切な記録・管理、経費の詳細なレポートも作成しやすくなります。
同時に、出社せずとも「交通系ICカード」「クレジットカード」などから交通費、経費を精算したり、「紙領収書をスマホカメラで撮る」とその内容を自動認識して申請内容をあらかた入力できる機能など、領収書の電子保存とともに「スマートデバイス」との連携機能を持つシステムも当たり前になりつつあります。
2023年の税制改正によりデジタル/電子的に領収書などを申請・保存する「スキャナ保存」の要件が緩和されました。2024年1月1日より、改正電子帳簿保存法にて「電子取引データのデータ保存も義務化」されます。
経費精算システムの多くは、専門のシステムだけに法的処置も当然対応・想定済みであることも踏まえて、従業員側、管理側、双方において、リモートワーク対応、ペーパレス化、書類作成の効率化まで期待できるといえるでしょう。
・機能(2)承認ワークフロー
経費精算システムは大抵の場合、経費の承認プロセスを経るように設計されています。従業員が経費を申請すると、上位の管理者や承認者がそれを審査し、承認または却下の決定を下すようなフローです。これにより会社は支出を正しく管理し、不正や誤りを防ぐことにもつながります。
・機能(3)管理とレポーティング
経費精算システムは管理側機能として詳細なレポートを生成できる機能も備えます。
組織として特定の期間やプロジェクトごとの経費を把握しやすくなり、また、会計や予算編成の意思決定をサポートする情報にもなります。
そして、税務上の要件や法的な規制に正しく対応するための「関連法の順守/報告支援機能」も大抵のシステムには備わっています。
【スマホ対応】おすすめの経費精算システム、経費精算アプリ 6選
従業員への「楽」な作業を促進するならば、いまや「スマホ対応」が必須でしょう。ここでは、スマートフォンアプリ対応のおすすめの経費精算システムをご紹介します。(製品名 abcあいうえお順)
freee支出管理_経費精算Plus
HRMOS経費
特徴 |
HRMOS経費は、イージーソフトが提供している経費精算システムです。初期費用は0円、費用はユーザー数に応じて変動し、月額3万1900円(税込み)から。
基本プラン内で利用できる機能が豊富で、現状の運用や今後の企業の成長、社会変化、法改正に合わせて柔軟な設定変更も可能としています。主な付加機能は、経路検索サービス連携、交通系ICカードの読み込み機能、AI機能付きの領収書OCR機能など。OCR機能対応の専用スマートフォンアプリも用意します。 |
ベンダーのWebサイト |
https://www.ezsoft.co.jp/ekeihi/ |
TOKIUM経費精算
特徴 |
TOKIUM経費精算は、TOKIUM社が提供している経費精算システムです。料金は月額1万1000円(税込み)からで、「領収書の件数」によってに料金が変動する従量課金制となっています。
主な機能は、オペレータ入力代行機能、交通系ICカードの読み取り対応スマホアプリ、領主書画像の自動データ化など。
経費精算の主流機能である「領収書の写真データ申請」については、申請されたものを人力視認して入力を代行する「オペレーター入力代行機能」の体制が特徴です。OCR機能より精度が高く、確実なデータ化を実現すると謳います。 |
ベンダーのWebサイト |
https://www.keihi.com/ |
チムスピ経費
特徴 |
チムスピ経費は、チームスピリットが提供している経費精算システムです。料金体系は初期登録料+利用人数に応じた月額課金制で、月額330円/人(税込み)から、基本サポート費はライセンス料金×20%/月から。
明細の複数一括作成や日付指定作成など、日々の経費精算入力を「楽」にするための工夫と機能、操作性をウリにしています。 |
ベンダーのWebサイト |
https://www.teamspirit.com/ |
バクラク経費精算
特徴 |
バクラク経費精算は、LayerXが提供している経費精算システムです。初期費用は0円、費用は月額2万2000円(税込み)から。
ミスの防止機能やアプリだけで完結する申請・承認機能を軸に、収書一括自動読み取り機能、交通経路検索自動記入機能、会計ソフトとのAPI連携機能などを備えます。2週間の無料トライアル期間を用意します。 |
ベンダーのWebサイト |
https://bakuraku.jp/expense/ |
マネーフォワード クラウド経費
特徴 |
マネーフォワード クラウド経費は、マネーフォワードが提供している経費精算システムです。マネーフォワードシリーズには企業のバックオフィス業務に関わる機能が多彩にあり、「自社に必要な機能」をレストランのアラカルトメニューのように選んで追加、拡張していけるクラウドサービスです。
クラウド経費の主な機能には、経費明細の自動取得機能や領収書画像データの自動取得機能、オペレーター入力・OCR入力機能、ICカードや経路検索からの交通費入力機能があります。
料金は小規模事業者向けのスモールビジネスプランで2980円/月から、中小企業向けのビジネスプランで4980円/月から。ビジネスプランには1カ月の無料トライアル期間も用意します。 |
ベンダーのWebサイト |
https://biz.moneyforward.com/ |
経費清算システムの選定ポイント
「従業員の経費精算をとにかく楽にしたい」「電子保存を踏まえた改正電子帳簿保存法にも確実に対応したい」と考える個人事業主から中小規模企業に向け、クラウド型経費精算システムの選定のチェックポイントは以下の通りです。
- 自社の業種や勤務体系に対応しているか
- 無料プランと有料プランの違いを理解する
- 他システムと連携しやすいか
- サポート体制は十分か
- モバイル対応かどうか
●自社の業種や勤務体系に対応しているか
クラウド型経費精算システムは多くの場面や導入シーンを想定して開発し、提供されます。概ね基本的機能は備え、どの業種にも適用できるよう万能に作られていることは多いです。しかし選ぶシステムによって、業種や勤務体系によって機能が足りない、カスタマイズを擁するといった場合もあります。
その一方で、特定の業種やシーンに向けた適合・特化を特長とするシステムもあります。
●無料プランと有料プランにどんな機能差・違いがあるか
クラウド型経費精算システムは多くの場合、ユーザー数や利用できる機能の有無などに応じて選びやすいよう、複数の料金体系/料金プランを用意しています。クラウド型経費精算システムは、「利用人数」に応じた月額課金制が多いです。
コストを抑えたい個人事業主や小規模導入に向け、機能やユーザー数は限られるが基本料金無料で使える「基本無料プラン」を用意するシステムもあります。
●他システムと連携しやすいか
経費は、企業戦略、販売活動などにも深く関わる要素です。例えば他の企業システムである、経理システム、人事・労務システム、販売管理システムなどと「データ連携が可能か」を確認するのも重要な選定要件です。
例えば、APIの提供はあるか、標準的なデータフォーマット(CSVなど)で出力は可能か、などでシステム間の連携のしやすさを判断していきます。
●サポート体制は十分か
サポート体制も「導入後も安心して利用できるかどうか」を確認するための重要な選定要件です。
具体的には、問い合わせ対応の迅速さ、導入支援、操作説明会の有無、マニュアルの充実度、アップデートの頻度と内容、障害発生時の対応体制などを確認しましょう。これにより、システムを円滑に運用し、利用者の利便性を高めることが可能となるでしょう。
●モバイル/マルチデバイス対応かどうか
自社の従業員の働き方や状況を踏まえつつ、スマートフォンやタブレットからでもシステムを利用できるかどうかも重要な選定要件になるでしょう。
具体的には「スマホアプリの用意があるかどうか」、またはスマートフォンやタブレットなどからでも使いやすいUIが提供されているかどうか、を確認しましょう。
これにより、出張先や外出先からでも経費精算の申請や承認が可能となり、業務の効率化を図ることができます。
経費精算システムによる「利用者=従業員の楽/簡単」を提供し、ビジネス成果につなげましょう
以上、「楽にする」「スマホ対応」を軸にクラウド型経費精算システムの特徴と選び方について解説しました。個人事業主から一般企業全般を対象にできる経費精算システム/経費精算アプリのチェックポイントとともに、システムを選ぶ際には、自社のニーズに合った機能を優先したうえでコスト対効果を検討し、他のシステムとの連携やUI/UXの利便性なども評価することが大切です。
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