病院やクリニックでは日勤・夜勤・当直などの勤務形態が複雑で、勤怠管理の負担が大きくなりがちです。さらに2024年から「医師の働き方改革」が適用され、正確な労働時間の記録が求められるようになっています。本記事では、医療機関・リラクゼーション業などにおける勤怠管理の課題と、システム導入による解決策を詳しく解説します。
機能で比較「勤怠管理システム」おすすめ製品一覧
目次
病院向け勤怠管理システムの必要性
医療機関では、医師や看護師をはじめ多くの職種が働いていますので、勤務形態が複雑になりやすいです。また、患者の命を預かる仕事であるため長時間労働等が発生しやすく、さらなる適切な労働時間の管理が重要になってくるでしょう。従来のような手作業が主の勤怠管理では正確な労働時間の把握が難しく、法令対応にも課題が生じやすいです。勤怠管理システムを導入することで、業務負担を軽減し、より正確で効率的な管理を実現できます。
医療機関における勤怠管理の課題
- 勤務体系が多様
- 労働時間の正確な把握が難しい
- 手作業による「様式9」の作成の負担
- 法令への適切な対応
勤務体系が多様
病院やクリニックでは、日勤・夜勤・当直・オンコール勤務など、複数の勤務形態が混在しています。特に大規模病院では、さまざまな職種の勤務パターンが絡み合い、シフト管理が複雑になりやすいです。
加えて、医師や看護師は長時間勤務が発生しやすく、休憩時間や残業時間にばらつきが出ることも多いです。シフトが変更になったらその都度適切に勤怠管理を更新する行程があり、また訪問診療や外部研修などの時間管理も必要です。従来の方法では対応しきれないことがあります。
労働時間の正確な把握が難しい
手書きの出勤簿やエクセル管理のような管理方法は、労働時間の記録が自己申告に依存しやすいです。その結果、申請内容と実際の勤務状況に食い違いが生じることがあります。
また、人手による作業が主なので入力ミスや計算ミスが発生しやすくなります。労働基準法に則した適正な労働時間の管理は記録・データが正確であることから始まります。特に長時間労働の常態化が問題視されている業界では正確な労働時間の把握が不可欠です。
手作業による「様式9」の作成の負担
病院やクリニックでは「様式9」の作成が求められます。様式9は、入院基本料等を算定するために看護師等の配置や勤務状況（日々の人数や勤務時間数）を記録し提出する、施設基準の中でも特に重要な書類・帳票です。記入における細かなルールを把握しておく必要性とともに、正しい勤怠データを適切に参照できる環境が求められます。
この勤怠データの集計に手作業やエクセル管理のような人手による行程が主のままだと、参照や確認に手間と時間がかかったり、転記ミスが発生したりする可能性とともに、作成作業そのものの負担が大きくなります。病棟ごとに個別管理されているならば、全体の勤務状況を横断して把握することも難しくなっているかもしれません。様式9への対応が課題・負担となっているシーンにも、やはり勤怠情報を正しく唯一のデジタルデータとして一元管理する仕様を整え、「様式9など必要書類の作成効率化機能」も備えた勤怠管理システムの活用が効果的とされます。
法令への対応が求められる
2019年4月より順次施行された働き方改革関連法（働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律）／改正労働基準法に沿い、医師にも「医師の働き方改革（2024年4月開始）」として時間外労働の上限が設けられるようになりました。つまり医療機関（企業）として、勤務間インターバルの確保や長時間労働を抑制する管理や体制の順守が求められています。
時間外労働の上限
- A水準（一般労働者と同程度）：年960時間まで
- B水準（救急医療等）：年1860時間まで
- C-1水準（臨床・専門研修）：年1860時間まで
- C-2水準（高度技能の修得研修）：年1860時間まで
また、病院では労働基準監督署の監査を受ける可能性があり、その際には客観的な労働時間の記録が求められます。36協定の順守も必要です。これらの対応を適切に行うためには、正確な勤怠管理と記録が重要です。
参考：「医師の勤務間インターバルの仕組みについて」（厚生労働省）
医療法人が勤怠管理システムを導入するメリット
医療機関では、医師や看護師、事務職員など、多くの職種が異なる勤務形態で働いています。そのため、労働時間の管理やシフト調整が複雑になりやすい傾向があります。さらに、法令順守や診療報酬請求のための記録管理も求められるため、従来の手作業では負担が大きくなりがちです。勤怠管理システムを導入すれば、業務の効率化や労務管理の精度向上が期待できます。
- 勤務時間の記録を正確に管理できる
- 残業時間の管理がしやすくなる
- 複雑なシフトの管理が容易になる
- 様式9の作成を効率化できる
- 給与計算との連携で業務を効率化できる
勤務時間の記録を正確に管理できる
医療機関では、勤務時間の記録が自己申告に頼ることが多く、申請内容と実際の勤務状況にずれが生じることがあります。勤怠管理システムを活用することで、出退勤のデータを自動で記録し、勤務実績を正確に把握できます。
例えば、スマートフォンやGPS、ICカードによる打刻支援・連携機能を利用すれば、出勤・退勤の記録が正確に残り、手作業による記録ミスや忘却、不正な申告を防げます。訪問診療や研修などの外勤時でも、位置情報とともに勤務時間を記録できるため、外出先での労働時間管理が容易になります。
残業時間の管理がしやすくなる
医療機関では、業務の特性上長時間労働が発生しやすいです。労働基準法の順守、医師の働き方改革への対応とともにスタッフの健康を守り、長時間労働の常態化を改善するために、適切な残業管理が必要になります。
勤怠管理システムの多くには、法令の基準やあらかじめ設定した時間外労働の上限を超えると、あるいは近づくと警告が出るアラート機能が備わっています。長時間労働を把握し、また未然に防ぐ体制の構築をシステムで支援できます。各職員の時間外労働の累積時間を一覧確認できることで、負担の偏りなども把握しやすくなります。
また、申請された残業時間と実際の勤務時間を自動で照合できる機能もあります。過剰な残業申請や記録の食い違いを防ぐことが可能です。
複雑なシフトの管理が容易になる
病院では、日勤・夜勤・当直・オンコール対応など、勤務形態が複雑になりがちです。手作業でのシフト作成では調整に時間と手間がかかるのでミスが発生しやすく、緊急時対応も必然として行いにくくなります。
勤怠管理システムには例えば、職員の勤務条件を考慮しながら交代制勤務やオンコール対応のシフト作成を支援する機能が備わります。急な欠勤が発生した場合でも、代替要員をシステム上で検索し、適切な人員配置を素早く行うこともできます。
希望シフトや休暇の申請をデジタル化すれば、紙やエクセル作業のような手作業管理の手間とミス発生の可能性をなくし、また業務の混乱も防げます。シフト調整作業を大きく効率化できることでしょう。
様式9の作成を効率化できる
正しい勤務データが自動集計されていることで、「様式9」に必要なデータも整理され、適切に抽出できます。製品によってはボタン1つで自動算出された結果を届出様式の形で出力する機能を備えるものもあります。手作業作成時と比べて、大きな正確性の向上、そして手間と時間の軽減が期待できます。監査時指摘リスクのようなことも軽減できます。
給与計算との連携で業務を効率化できる
勤怠管理システムは給与計算システムなどの他システムとシームレスに連携できる製品も多くあります。自動で正しく集計された勤怠データを同様に給与計算へつなぐことで、正しいデータのまま正しくスムーズに処理が進みます。給与計算においても、手入力・手作業に由来するミスを防ぎ、正確な給与支払いが可能になります。
特に、医療機関では夜勤手当や時間外手当の計算が複雑になりがちですが、勤怠管理システムを利用すれば、各種手当の計算を自動化できます。さらに、職員ごとの勤務状況を可視化することで、人件費の適正な管理にも役立ちます。
病院向け勤怠管理システムの選び方
医療機関では、日勤や夜勤、当直、オンコール対応など勤務形態が多岐にわたります。さらに、働き方改革関連法の対応や診療報酬請求のためのデータ管理も求められるため、適切な勤怠管理システムの導入が重要になります。病院の規模や業務内容に応じたシステムを選ぶことで、管理の負担を減らし、業務の効率化につなげられます。
- 自社の規模・ニーズに合わせたシステムを選ぶ
- 操作のしやすさを重視
- 導入後のサポートが充実しているか
自社の規模・ニーズに合わせたシステムを選ぶ
自社の規模によって必要な機能が異なります。小規模のクリニックと、大規模な病院では管理する職員数やシフトの複雑さが異なるため、導入するシステムも使い勝手や対応機能を考慮する必要があるでしょう。
導入の第一歩として、自社のプロセスをあらためて見直して、どの業務や管理に問題があるのか、どのプロセスを改善したいのかを明確にしましょう。例えば勤怠管理ならば、「正確な勤怠情報の記録と管理のため」「法令順守とリスク管理の強化のため」「従業員のモチベーション向上や働き方改革の推進のため」「人事・給与計算プロセスの精度向上のため」……など、企業によって主目的、実現したい成果、優先順位は異なると思います。
なお、導入を担当者であるあなたひとりで選定・決定するのは……多くの場合困難です。ニーズや課題は会社別、部門別、担当者別でもそれぞれ違います。さまざまな視点で、できるだけ多くの課題を拾い上げて製品を選定するために、別部署や管理部門、現場、経営層・上層部なども遠慮なく巻き込みながらプロジェクトを進めましょう。
こうした要素をできるだけ具体的にリストアップし、得たい成果や目標値、期日を可能な限り定め、優先順位を付けることで、自社独自の「要件」としてまとまってきます。このプロセスをできるだけ丁寧に行うことが、製品選定フローの効率と確実性、そして運用後の実成果へ大きく効いてくるポイントの1つです。
ITセレクトでは、適切なIT製品・サービス選定を最後までサポートする専門スタッフに聞ける「ITセレクトのコンシェルジュ相談サービス（無料）」も用意しています。こちらもぜひ有効にご活用ください。
小規模病院・クリニック向け
少人数で運営するクリニックや小規模病院では、院長や事務担当者が勤怠管理を兼任することが多いため、できるだけ簡単に操作できるシステムが望まれることが多いようです。シフト作成や休暇管理の機能がわかりやすく、スタッフも管理側も少ない手間で入力・管理できるものが望ましいです。
また、給与計算ソフトとの連携ができると、労務管理の負担が軽減できます。さらに、初期費用を抑えた導入が可能で、少人数の勤務体系に適した機能が備わっているシステムが向いています。
中規模病院向け
夜勤や当直、オンコール対応など、さまざまな勤務形態に対応できるシステムが必要になります。職員の勤務時間や手当の計算が手作業では煩雑になりやすいため、勤務表の自動作成機能や手当の自動計算機能があると便利です。
また、長時間労働の防止や労働基準法の遵守が求められるため、残業時間や休暇取得状況を自動で集計し、管理者が一目で確認できる機能があると管理がしやすいです。
大規模病院向け
多くの職員が勤務する大規模病院では、各施設や部門の勤務データを一元管理し、全体を統括できるシステムが求められるでしょう。医師や看護師の労働時間を正確に把握し、病院全体の人員配置を最適化するため、より高度な機能が求められます。
また、診療報酬請求に必要となる様式9の作成支援機能があると、看護部門の勤務実績を適切に記録でき、事務作業の負担を減らせます。電子カルテや給与計算システムと連携できるシステムなら、病院全体の業務を効率的に運用できます。
操作のしやすさを重視
勤怠管理システムは、多くの職員が日常的に使いますので、直感的に操作できるものが望ましいです。画面のデザインや機能がわかりやすく、勤怠管理に慣れていない職員でも簡単に利用できるかどうかが重要になります。
導入時に専門的な知識が必要なく、設定や運用を院内で完結できるかを事前に確認すると良いでしょう。シフト管理や残業申請など、日常的に使用する機能が簡単に入力・確認できるかも重要なポイントです。
また、デモ版や無料トライアルを提供しているシステムなら、事前に操作性を確認できるため、実際の業務に適しているかを判断しやすいです。スマートフォンやタブレットで職員の勤怠情報を入力・確認できる機能があれば、病棟や外出先でも手軽に勤怠管理ができます。
導入後のサポートが充実しているか
システムを導入した後も、適切なサポートが受けられるかを確認することも重要です。導入時の設定や操作方法について、説明やサポートを提供しているシステムを選ぶと、スムーズに運用を開始しやすいです。
トラブル発生時にすぐに問い合わせができるヘルプデスクがあると安心できます。24時間対応の窓口があると、夜勤や早朝勤務のある病院でも迅速な対応が可能になります。
また、操作マニュアルや研修動画が用意されているシステムなら、職員が自分で学びながら運用を進めることができます。
病院・医療機関向け機能も備える勤怠管理システム7選
（製品名abcあいうえお順／2025年3月時点）
ADVANCE勤怠クラウド Hospital Edition
ADVANCE勤怠クラウドHospital Editionは、病院特有の複雑な勤務形態に対応したクラウド型勤怠管理システムです。2交代制や3交代制、夜勤や当直といった勤務パターンはもちろんのこと、医療機関で特に重要となる医師の時間外労働管理機能も搭載しています。クラウド型であるため、比較的に導入しやすい点も特徴です。
CAERU勤怠 医療
CAERU勤怠 医療は、医療業界に特化した勤怠管理システムです。退勤後のオンコール対応や、当直（宿日直）勤務など、多様な勤務形態に対応できる柔軟性が魅力です。また、医療機関で発生する日をまたぐ勤務についても、柔軟に管理することが可能です。
CWS就業管理システム
CWS就業管理システムは、医療機関に特化して開発されたシステムです。多くの医療機関で導入されている電子カルテとの連携が可能なため、既存システムとの親和性が高いのが特徴です。また、医療機関から提出が求められる「様式9」の自動作成にも対応しており、事務作業の効率化に貢献します。
Vicsell病院向け勤怠管理（SCP.SOFT）
Vicsell病院向け勤怠管理は、9999通りのシフトマスタを作成できる点が特徴です。これにより病院個々の複雑なシフトパターンにも柔軟に対応できます。また、給与ソフトや電子カルテとの連携機能も備えており、データ連携による業務効率化が期待できます。
快決！シフト君NEO メディカル
病院など医療業界向けのシフト管理サービスです。施設基準を守った勤務計画の立案とスタッフへの配付や、様式9など各種法定帳票の作成ができるなど医療業界に特化した機能を備えます。
