中小企業が抱える問題のひとつが勤怠管理です。頻繁に行われる法改正や多様な勤務体系への対応などを要因とする管理コストの増加に対応するため、近年では勤怠管理システムを導入する中小企業が増加しています。
勤怠管理システムは出勤や休暇取得、残業の有無といった勤怠にかかる管理を自動化し、一元管理するためのシステムです。省コストや法令への対応といった面が期待できますが、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。
今回は、中小企業が勤怠管理システムを導入するメリットと、おすすめ製品をご紹介します。
目次
勤怠管理をアナログで行う中小企業にありがちな課題
タイムカードや手書きの勤怠表などによるアナログな勤怠管理は、従業員が少ないうちは大丈夫だとしても、人数が増えるにしたがい次のような問題が表面化します。
勤務状況を把握しにくい
タイムカードなどを使ったアナログな勤怠管理は、週単位や月単位で集計されるまで勤怠の実態が明確になりません。労働基準法の上限を超えるほどの時間外労働が発生していても、検知までに時間がかかります。また、未取得の有給休暇に対するアラートが出るわけではないので、従業員や管理者が気付けない、未取得の有給休暇が発生することも起こります。
従業員の負担が大きい
手作業によるタイムカードや勤怠表の集計は、従業員数に比例して作業時間が伸びるため、大きな会社ほど手作業では対応できなくなります。ある程度の規模になると、勤怠の集計が集中する月末月初の残業が常態化し、担当者の健康トラブルやコスト増加といった問題に繋がるでしょう。
作業に熟練すれば労働時間の短縮はできるかもしれませんが、業務の属人化が進み担当者の欠員に対応できなくなるという別の問題が発生します。
不正を把握しにくい
アナログな勤怠管理では、勤務時間の書き換えや時間外労働の水増し、代理打刻といった不正行為が発生しやすくなります。これらの行為は人件費の増加に直結するため、経費が経営を圧迫する要因にもなりかねません。
また、不正の事実が他の企業や消費者に知られてしまい、コンプライアンスに甘い企業として評価を落とすリスクもあります。
中小企業が勤怠管理システムを導入するメリットと注意点
勤怠管理システムの導入は、中小企業に大きなメリットを生む一方、注意して導入しなければ別の問題を引き起こすリスクもあります。メリットと注意点の両方を意識し、適切なシステムを導入しましょう。
勤怠管理システムを導入する主なメリット
中小企業は、勤怠管理システムを導入することで以下の効果が期待できます。
- 効率化
- 法令順守
- コストカット
- 変化に対応できる
○業務の効率化に役立つ
これまでバックオフィス担当者が手作業で行っていた勤怠管理を自動化できるため、作業や確認のための時間を削減できるようになります。システムによっては給与計算や経費精算といったほかのシステムと連携ができるようになるため、バックオフィス業務全体の効率化が可能です。
また、勤怠管理のルールが法令やシステムに準拠した運営になるため、特定の担当者に属人化する作業を減らすことができます。
○法令を遵守した労務管理を行いやすい
システムの導入により、超過残業や有給休暇の取得状況をいつでも確認できるようになります。一定以上の時間外労働が発生したらアラートを出すといった設定もできますので、気がついたら時間外労働の法定上限を超過しているといった問題を防止しやすくなるでしょう。
○コストカットを期待できる
システム化により業務が効率化すると、コスト面にもよい影響が生まれます。目に見えてわかりやすい影響が、人的コストの削減です。月末月初の勤怠の締め日に発生していた長時間労働を減らすだけでも、長期的に見れば大きなコスト削減に繋がります。
また、システム化により紙の勤怠表やタイムカードが不要になりますので、紙資源の購入にかかっていた費用や管理のための場所の確保といった面のコストも削減できるでしょう。
○事業規模の拡大や人員増加などの変化に対応しやすい
勤怠管理システムは、従業員が入力した勤怠時間や各種申請を自動的に処理・集計するため、従業員数が増えてもバックオフィス担当者の工数は大きく変わりません。集計ルールを任意に変えることもできるため、事業部門や拠点の増加にも迅速に対応できるでしょう。
勤怠管理システムを導入する際の主な注意点
勤怠管理システムは非常に便利である一方、一切コストをかけずに導入できるわけではありません。費用、工数、時間それぞれにかかるコストに注意し、自社に必要なシステムの導入を検討しましょう。
×システムの導入・運用に費用が発生する
勤怠管理システムの導入には、一定の費用が必要です。近年の主流であるサブスクリプション型は、従業員数に応じた月額の利用料のほか、サービスによっては初期費用も必要です。
なお、サブスクリプション型は一般的にクラウド上でサービスが提供されます。システムは法改正にともなうアップデートが自動的に行われますので、気がつかないうちに違法状態になっていたとう事態にはなりにくいでしょう。
×導入前に業務フローの見直しと運用ルールの作成が必要になる
紙の勤怠表やタイムカードでの管理から勤怠管理システムへ切り替える際には、企業内の勤怠管理に関するルールを見直す必要があります。
有給休暇等の申請方法の見直しをすると同時に、社員側にも使い方をレクチャーしなければならないため、対応のための時間を確保しなければならないでしょう。
×システムによっては導入まで日数がかかる
勤怠管理システムのような全従業員が対象になるシステムならば、会社の規模によって導入プロジェクトが長期化することも想定しておきましょう。自社の事業内容や就業規則に合わせた調整、ベンダーとの打ち合わせなど、設計や検証のための時間も必要になります。
企業の規模によっては一度に全社へ導入せず、特定の部門から段階的に導入を進めるケースもあります。テストを繰り返しながら導入しなければならない場合には、全社の勤怠管理が統一されるまでに半年以上の時間を要することも考えられるでしょう。
中小企業が勤怠管理システムを選ぶ際のポイント
中小企業向けの勤怠管理システムには多くのサービスがあり、それぞれ特徴が異なります。長く使える勤怠管理システムを選ぶためにも、自社が求める条件を満たすサービスを選びましょう。
- 自社の勤務形態に合っているか
- 導入後のカスタマイズは可能か
- サポート体制は整っているか
- 従業員、管理者それぞれが使いやすいか
- 無料トライアルがあるか
自社の勤務形態に適しているか
勤務形態は、経営方針や業種によって企業ごとに異なります。シフト制やフレックスタイム制、テレワーク制などの制度を採用しているなら、自社が導入する勤務形態に対応できるサービスを選択しましょう。勤怠管理システムの中には、特定の業界向けに特化しているものもあります。
導入後のカスタマイズは可能か
システム導入後に会社のルールが変わるケースに備え、カスタマイズ可能なサービスの検討がおすすめです。従業員の増加や事業所の新設といったケースだけでなく、会社独自の休暇制度の開始に合わせたカスタマイズが可能なら、ルールが変わるたびに新たなシステムを検討する必要はなくなります。
サポート体制は整っているか
不具合の修正や使い方のレクチャーなどのサポート体制の内容は、システムの導入前に確認しておきましょう。サービスによってサポートの内容は異なり、質問はチャットボットのみの対応で、技術的なサポートは有料メニューに設定しているサービスがあります。
ただし、すべての導入企業が手厚いサポートを必要とするわけではありませんので、自社にあったサポート内容のサービスを選ぶとよいでしょう。
従業員および管理者にとって使いやすいか
勤怠管理システムは、管理のしやすさだけでなく従業員側の使いやすさも重要なチェックポイントです。従業員側は出退勤時の打刻や各種申請手続きが主な用途ですので、どちらもスムーズに使えるかを確認しましょう。
管理者側も出退勤や休暇の集計、労務状況の分析といった機能など、管理に必要な機能が使いやすい仕様になっているかチェックが必要です。
無料トライアル期間があるか
勤怠管理システムは、実際に使ってみなければ使い勝手がわかりません。必ずしも口コミで評価されているポイントが自社に適しているとは限りませんので、無料で試せるトライアル期間や、機能が制限された無料版を利用して評価しましょう。
中小企業におすすめの勤怠管理システム3選
勤怠管理システムはさまざまな種類があり、それぞれサービスに特徴があります。非常に豊富な機能を持つ一方で中小企業向けではないサービスもあるため、検討する際には企業別のおすすめサービスから選ぶと選択ミスをしにくいでしょう。
ここでは中小企業向けの勤怠管理システムからおすすめ製品をご紹介します。
ジョブカン勤怠管理
初期費用 | 0円 |
月額費用 | 200~500円 / 1ユーザー |
利用可能な機能 | ・打刻 ※PC、モバイル、ICカード、GPS、LINE、Slackなど) ・出勤管理 ・シフト管理 ・休暇申請管理 ・工数管理・集計 ・超過労働対策(36協定対応アラート) ・外国語表示 ※英語、韓国語、スペイン語、タイ語、ベトナム語、中国語(簡・繁) |
無料トライアルの有無 | あり(30日間全機能利用可能) ※機能制限付きの無料版あり |
サービスの特徴 | ・出金管理・シフト管理・休暇申請管理・工数管理の4機能を自由に組み合わせて利用可能
・打刻が豊富で出先からでも安心 |
ポイント | ジョブカン勤怠管理は、多彩な打刻方法や柔軟なシフト管理に対応する勤怠管理システムです。あらゆる従業員の勤務形態や出退勤状況に応じた管理が可能であるため、一般的なオフィスワークから飲食業、製造業や医療業界など、さまざまな業態で利用できます。
必要な費用は1ユーザーあたりの月額料金のみ。利用機能の数に応じて料金が決まりますので、必要な機能だけを選べばランニングコストを抑えた勤怠管理が可能です。 |
ベンダーのWebサイト | https://jobcan.ne.jp/ |
Money Forward クラウド勤怠
初期費用 | 0円 |
月額費用 | 小規模事業者向け:2,980円 / 月 中小企業向け:4,980円 |
利用可能な機能 | ・勤怠管理 ・ワークフロー ・異動履歴管理 ・休暇管理 ・アラート機能 ・打刻丸め機能 ・就業形態対応 ・各種スマホ操作 |
無料トライアルの有無 | あり(1ヶ月) |
サービスの特徴 | ・マネーフォワード クラウドの各サービスと連携可能 ・法令改正や税率変更等へ無料アップデートで対応 |
ポイント | Money Forward クラウド勤怠は、出退勤から各種申請、異動記録まで勤怠に関するさまざまな管理機能を実装。社員の勤務状態を記録・確認するワークフロー管理を活用すれば、申請や承認がスムーズに進められます。Money Forward クラウドの各種サービスと連携すれば、社内業務システムの隅々まで連携が可能となり、各部署とスムーズでシームレスな管理業務が実現できます。 |
ベンダーのWebサイト | https://biz.moneyforward.com/attendance/ |
kincone
初期費用 | 0円 |
月額費用 | 200円 / 1ユーザー ※最低5名から |
利用可能な機能 | ・打刻(アプリ、ICカード、チャットなど) ・交通費自動登録 ・訪問先企業の自動登録 ・従業員の労働条件設定 ・打刻忘れ、承認待ちなどのアラート ・個人 / 部署単位での出退勤状況確認 ・自動集計 ・休暇タイプの設定・管理 |
無料トライアルの有無 | あり(最大2ヶ月) |
サービスの特徴 | ・1ユーザーあたりの費用が低コスト ・打刻機能がSlack、Chatwork、LINE WORKSなどチャットツールと連携 |
ポイント | kinconeは多彩な連携機能が魅力の勤怠管理システム。Slack、Chatwork、LINE WORKSなどメジャーなチャットツールと連携した打刻、Googleカレンダー、Outlook、Garoon(サイボウズ)と連携した交通費精算など、あらゆる手続きにかかる人的コストを削減します。ワークフロー構築もkintone(サイボウズ)やコラボフロー(コラボスタイル)と連携。給与システムや会計システムも外部ツールと連携し、業務や人事管理のスムーズな進行に貢献します。 |
ベンダーのWebサイト | https://www.kincone.com/ |
中小企業の勤怠管理も手作業からシステムへ
中小企業にとって、アナログな手法での勤怠管理にかかるさまざまなコストは大きな負担となります。事業が拡大し、人員や部門が増加したときには、勤怠管理システムを導入してコスト削減を図りましょう。勤怠管理システムの導入は、コストだけでなく従業員の働きやすさ向上にも繋がります。労働効率をアップし高いパフォーマンスを発揮してもらうためにも、自社にあった勤怠管理システムの導入がおすすめです。
「自社に合うIT製品・サービスが分からない」「時間をかけずに効率的にサービスを検討したい」というご担当者様は、ぜひITセレクトの専門スタッフまでお問い合わせください。適切なIT製品・サービス選定を最後までサポートいたします。