CRM(Customer Relationship Management/顧客関係管理)と広告は、どちらも成長に欠かせない企業活動ですが、それぞれの役割や目的に違いがあります。本記事では、CRMと広告の違いを詳しく解説し、CRMを広告にどのように活用できるか、そのメリットについても紹介します。
目次
CRMと広告の違い
CRMと広告は、どちらも企業にとって重要なマーケティング手法ですが、それぞれの目的や役割が異なります。これらの違いを理解することで、企業はそれぞれの強みを活かしたマーケティング戦略を設計することができます。
CRM=顧客関係管理は顧客との信頼関係を強化し、継続的な売上を確保するための管理手法です。顧客関係管理を行うツールをCRMシステムと呼称されます。
CRMは、顧客の購買履歴や過去の問い合わせ、好みの傾向をデータとして蓄積できます。その情報が各種の戦略を練る基盤、データとなります。顧客が求めているサービスや商品を適切に紹介あるいは提供できれば、成約の成功率を高められ、結果として満足度が高まり、ファンやリピーターになってくれる率が高まる。それが繰り返されて正のスパイラルになる……ことが理想イメージです。
身近なところでは、客が過去に購入した商品に基づいて次に興味を持ちそうな商品を提案する、誕生日などの特定タイミングでクーポンを配布して来店を促す、などが一例です。CRMはこうした顧客一人ひとりに合わせた対応を通じて、長期的な利益を目指すします。
CRMの基本的な機能には、顧客データの収集、分析、個別対応、コミュニケーションの促進などが含まれます。これにより、顧客との関係を深め、信頼を築くことができ、長期間にわたって安定した売上を生み出すことが期待されます。
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一方の広告とは、商品やサービスを広く知らせて新規顧客を獲得するための手段です。テレビ、ラジオ、新聞、そしてインターネットなど多くの媒体が利用されており、主に新しい顧客層に向けてアプローチします。目的は、短期間で商品やサービスの認知度を高め、興味を持ってもらい、購買行動に結びつけることです。
広告はターゲットが広範囲で、より多くの人々に一度にアプローチできる特徴を持っています。例えば、テレビやラジオを使った広告では、多くの人が一度にその商品やサービスに触れる機会があります。インターネット広告では、Webサイトの訪問履歴や検索履歴に基づいて、興味を持つ可能性がある人に対してピンポイントで広告を表示することも可能です。
一方で、広告はあくまで短期間の効果を狙ったものであり、顧客との長期的な関係を築くことまでは目的としていません。商品の認知を拡大し、特定の期間内に成果を求めるため、展開する媒体やタイミング、ターゲティングの戦略が非常に重要です。
CRMを用いるアドレサブル広告とは
もちろん昨今はCRMと広告の目的を融合し、CRM(顧客関係管理)を活用するアドレサブル広告も一般的になってきています。
アドレサブル(addressable)とはアドレスが分かる、つまり「ユーザーを特定できる」ことを意味します。アドレサブル広告とは、特定された顧客データをもとに特定の個人やグループに向けて広告を配信する手法です。CRMで得られた顧客の行動履歴や購入履歴をもとにターゲットを絞り、そのターゲットへ個別に工夫した広告を適切なタイミングで届ける──といったイメージです。この手法では、必要な情報を求めている顧客へ狙い撃ちするように提供できるため、無駄が少なく効率的な広告配信が可能となります。
例えば過去にスキンケア商品を購入した顧客には、その商品に関連する新商品を提案する広告を表示するなど、顧客のニーズに沿った情報を提供することができます。一般的な広告と異なり、アドレサブル広告は顧客一人ひとりのデータをもとに、個別対応ができるため、より効果的で購買意欲を引き出しやすい手法です。
このように、CRMデータを活用したアドレサブル広告は、ターゲティング精度が高く、広告費用の無駄を抑えながら、顧客満足度の向上や売上増加に繋げる効果的なマーケティング手法です。
CRMを広告に活用する主なメリット
ここでは、CRMを広告に活用することで得られる具体的なメリットを5つ紹介します。
- ターゲティングの精度を高められる
- 広告の無駄を減らしコストを抑えることができる
- リピーター獲得を促進する
- 競合との差別化を図る
- 広告戦略の改善に役立てられる
ターゲティングの精度を高められる
CRMを活用することで、年齢や性別、過去の購買履歴や関心に基づいて、広告を細かくターゲティングできます。これにより、広告を必要としている人にだけ届けることができ、無駄な配信を避けて効果的なマーケティングを実現します。個別に対応することで、広告の効果が高まり、反応を得やすくなります。
広告の無駄を減らしコストを抑えることができる
CRMを使うことで、ターゲットを絞った広告配信が可能になり、無駄な広告費を抑えつつ効果的な広告運用ができます。特定の顧客層にメッセージを届けることで、少ない予算でも効果を最大化し、他の施策にリソースを回すことが可能になります。また、正確なデータに基づく運用により、予算の適切な管理も実現できます。
リピーター獲得を促進する
CRMを活用すると、顧客のニーズや興味に応じたパーソナライズされた広告が配信できるため、顧客満足度が向上し、リピート購入やロイヤルカスタマーの育成が促進されます。過去の購入データに基づく提案を行うことで、顧客は自分に合った情報を受け取り、購入意欲が高まります。これにより、顧客との長期的な関係を築くことが可能です。
競合との差別化を図る
CRMを活用すると、他社とは異なる個別対応が可能になり、差別化を実現できます。顧客ごとのニーズに合わせた広告を配信することで、特別な体験を提供でき、顧客に印象を残すことができます。こうしたパーソナライズされた対応は、ブランドイメージを向上させ、競争力を強化します。
広告戦略の改善に役立てられる
CRMデータを活用すると、広告の効果を詳細に分析することができ、次回の広告戦略に活かせます。どの顧客層が反応しやすいか、広告配信の最適なタイミングはいつかなど、細かなデータを収集し、広告運用の改善が可能です。これにより、広告の精度が高まり、継続的に成果を上げられる広告運用が実現します。
CRMを活用した広告を導入する際の注意点
CRMを活用した広告を成功させるためには、いくつか重要なポイントがあります。これらを適切に管理することで、広告の効果を最大限に引き出し、同時にリスクを回避することが可能です。データの正確な管理や、プライバシー保護、社内教育などが特に重要な要素となります。
- データが一元化されていない
- プライバシー保護の配慮が十分でない
- データの更新/メンテナンスが不十分
- ユーザー教育・理解度が不十分
データの一元化と正確な分析を行う
CRM広告を成功させるためには、まず顧客データを一元化することが必要です。データが散在していると、顧客の行動やニーズを把握するのが難しく、適切なターゲティングができなくなります。顧客情報を一か所に集約することで、データの管理が容易になり、正確な分析が可能になります。また、定期的にデータを見直し、不要なデータや誤った情報を削除することで、データの質を維持します。
例えば、顧客が購入した商品の履歴や関心のあるカテゴリーなどを正確に把握できれば、次にどのような広告を配信すべきかが明確になります。データの質を保ち、分析を丁寧に行うことで、効果的な広告戦略が実現します。
プライバシーの保護に配慮する
CRMを活用する際には、顧客のプライバシー保護が最も重要です。顧客データの取り扱いには、個人情報保護法を遵守し、法律に違反しないよう注意を払いましょう。特に、データ管理や広告配信を行う場合、顧客の同意を得ることが不可欠です。また、データの暗号化やアクセス制限など、セキュリティ対策を徹底することも重要です。さらに、顧客に対してはデータの利用方法を明確に伝え、透明性を保つことが信頼を築くためのポイントとなります。
定期的にプライバシー保護の対策を見直し、最新の法律や技術に対応することも忘れずに行うべきです。
データの更新とメンテナンスを行う
顧客データは時間とともに変化します。正確なターゲティングを行うためには、常に最新のデータを保持することが大切です。古いデータや誤った情報を使い続けると、広告の効果が低下し、顧客に対して適切なアプローチができなくなります。そのため、定期的にデータを更新し、必要に応じてメンテナンスを行うことが欠かせません。不要なデータは削除し、データベースを常に最適な状態に保つようにします。
また、顧客情報の確認や修正が簡単にできる仕組みを整備し、データの精度を維持することも重要です。
システム導入と社内教育の充実
CRMシステムを効果的に活用するためには、導入時のサポートだけでなく、社内スタッフへの教育が不可欠です。どんなに優れたシステムを導入しても、使いこなせなければ十分な効果は得られません。操作が分かりやすく、現場の社員が簡単に使えるシステムを選ぶことが重要です。また、システム導入後はサポート体制を整え、問題が発生した際に迅速に対応できるようにしておきます。
CRMと広告の違いを理解し、効果的なマーケティング戦略をSaaSで実践
CRMと広告は、それぞれ異なる目的で活用されますが、どちらも企業にとって重要な役割を担っています。CRMを広告に活用することで、ターゲットの精度を高め、費用対効果を向上させることが可能です。また、顧客満足度を高めることで、リピート率の向上や他社との差別化にも繋がります。CRMを活用した広告を導入する際には、データの一元化やプライバシーへの配慮が重要です。
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