2023年10月にインボイス制度の開始、2024年1月に電子帳簿保存法における電子取引のデータ保存完全義務化。これらの法令に順守するために、企業は改めてどんな対策が必要でしょうか。本記事では、これらの新たな法令、制度のおさらいとともに、経理システム/経理ソフトの導入によって実現する効果や成果を解説していきます。
目次
経理ソフトとは
経理ソフトは、企業の経理・財務情報の記録と管理の効率化を目的に設計されたIT製品です。IT製品を大きく分けたカテゴリーでは「会計システム」に含まれることが多いです。
経理ソフトには、売上、支出、資産、負債などの追跡、請求書の作成、給与計算、税金の計算などの機能が備わります。正しく財務報告を行い、法令や規制を順守するのに役立ちます。これにより、企業が経済的な意思決定をより正しく、迅速に行えるようなります。
経理ソフトを導入する目的は、効率性、正確性、そしてコンプライアンスの向上にあります。デジタル化により紙の帳簿や領収書の物理保管が不要となり、検索や管理の手間を削減できます。また、経理処理の自動化によって人的ミスを減らせます。電子帳簿保存法に準拠したデータ管理とインボイス制度の対応を見越したシステムにより、税務調査時の対応などもスムーズになり税務リスクを低減できます。経理ソフトの導入は事業運営の効率化だけでなく、税務上の信頼度を確保する上でも重要な役割を果たします。
経理ソフトの基本機能
経理ソフトの主機能は売上、支出、資産、負債など、取引の記録、および分類、集計を行うことです。請求書や領収書の発行、送付、管理を行うフローにおいて「帳票類を電子化して保管し、管理」する機能も備えます。
従業員の経費申請を管理する機能も重要です。それらを承認し、記録する機能を設けます。
経理ソフトの多くには、税務申告を支援する機能も備えます。損益計算書や貸借対照表などの財務報告書を作成できます。製品によっては、予算と実績との比較分析なども可能です。
“失敗しない” 経理ソフトの選定ポイント
経理ソフトはどう選んでいくといのでしょう。選定プロジェクトをどのように進めていけばよいのでしょう。
まずは、「自社の要件をまとめる」から始めることをおすすめします。
経理ソフトには、前述した通りとても多くの機能が含まれます。その目的も、企業に取って極めて重要な「自社のお金の情報」を扱います。
しかし、いくら多機能でも、有名な製品であっても、それらのツールが自社の要件、使い方や需要に合っていなければ導入による効果や成果は見込めません。逆に「低価格」だけで見れば、自社の業務内容と合わず、機能が足りないことも起こり得ます。
「自社の要件まとめ」は、参考までに以下のフローで進めてみてください。だんだんと「要件」としてまとまっていきます。
- 自社のビジネスプロセスと需要を(改めて)把握する
- 遠慮なく「関係者を巻き込む」
- 「抱えている課題、目的」をできるだけ多くリストアップする
- 導入によって「どのような成果を得たいのか」を明確にする
このように、「自社は、改めてどんなビジネスフローなのか」と、「自社にはどんな課題や目的があるのか」を理解し、一人で抱えずに遠慮なく「関係者を巻き込んで」、できるだけ多く棚卸しします。そして、それらに対して「どう改善したいか、効果を望むか」が明確になるよう整理していくと、それが「自社の」要件としてまとまっていきます。
場合によってはとても大変で、大変で、難しい作業になるかもしれません。しかし、この作業はきっと成功へ向けた第一歩になるでしょう。
続いて、
- 予算の策定、初期コスト・ランニングコスト
- どんな製品があるのか
- 機能カスタマイズなどは可能か、柔軟に対応できるか
- セキュリティ体制はどうか
- サポート体制は整っているか
- 無料トライアル期間があるか
などを検討していきます。
例えば、従業員も誰もが使いやすいか、成長・業務・業態などの変化に応じて柔軟にカスタマイズできるか、データの保護やバックアップ、サポートの体制は大丈夫か、予算の範囲内か、などが挙げられます。
市場にはさまざまな経理ソフトが存在し、それぞれが異なる機能、特性や強みを持っています。たくさんある中からどれかを選定するのは至難の業です。「はじめて」ならばなおさら途方に暮れてしまうことでしょう。
そこに「自社の要件を明確にした」ことが生きてきます。「これが必要だ!」と自社の要件が明確になっていれば、その要件を軸に数ある製品から自社に合う製品を絞っていけます。
そして、それならば当社の製品をぜひ! と声を挙げてくれるベンダーもきっとあります。ベンダーとの協力を通じて伴走していける体制を取れる──。このことも成功へ近づく近道になります。
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経理ソフトと会計ソフトの違い
経理ソフトと会計ソフト、どちらも企業の財務管理のために活用するIT製品ですが、何が違うのでしょうか。
経理ソフトは、日常の財務取引記録、経費管理、請求管理など、「日々」の経理業務の効率化を目的としています。使いやすさと迅速な情報処理が重視されます。
一方の会計ソフトは、財務報告の作成、会計監査の準備、税務申告の支援など、会計規則に基づいた「全体」の財務情報の管理を目的としています。会計基準の遵守と正確性が重視されます。
簡単にまとめると、経理ソフトは日々の経理業務をスムーズに行うため、会計ソフトは全体を見渡した会計情報の正確な記録、分析、報告のために使うイメージです。
なお、経理、会計(財務会計、管理会計)の機能を1つにまとめて「会計システム」として提供する製品も多々あります。
【確認しましょう】電子帳簿保存法/インボイス制度への対応
経理ソフトを新たに導入するならば、改正電子帳簿保存法とインボイス制度の対応についても改めて確認しておきましょう。
インボイス制度の概要
インボイス制度(適格請求書等保存方式)とは、消費税の適正な課税を目的として導入された制度です。売上時点で発行されるインボイス(請求書)に消費税額を明記し、税額控除の根拠とする仕組みで、消費税の透明性を高め、適正な税額の収受を目的としています。
会社は、適格なインボイス(適格請求書)を発行し、また受け取る必要があります。これにより消費税の適切な計算が可能となり、税務調査時の根拠資料ともなります。
電子帳簿保存法の概要
電子帳簿保存法は「電子データ」として帳簿や書類の保存を定義した法律です。この法律の目的は、経理業務の効率化と環境負担の軽減を図ることです。
事業者は、電子帳簿や電子書類も、従来のような紙・印刷したものでなくとも適切な形式の電子的な保存で認められるようになります。同時に、2024年1月より「電子取引における電子データの保存」が完全義務化されました。そして、データとして検索でき、提示が可能な状態に保つ必要もあります。
これらの法令が経理ソフトに与える影響
インボイス制度と電子帳簿保存法は、経理ソフトの重要性をより大きく高めています。インボイス制度および電子帳簿保存法に対応した経理ソフトにより、会社としても適格なインボイスの発行と管理を正しく行いやすくなります。電子データの適正な保存と管理をサポートします。
なお、中小事業者に向けた「製品導入の補助金制度」もあります。申請によってソフトウェアの購入額やクラウドサービスの利用額の一部を補てんできる補助金が出ます。IT導入補助金(デジタル化基盤導入類型)に安価なツールも対象にできるよう、これまで存在した「補助下限額の設定」がなくなりました(2024年3月現在)。
具体的には、「中小企業、小規模事業者等」を対象に、
- ITツール:50万円まで(補助率3/4以内)、50万~350万円(補助率2/3以内)
- PCやタブレットなどの業務用デバイス類:10万円まで(補助率1/2以内)
- レジ、券売機など:20万円まで(補助率1/2以内)
のソフトウェア購入費、クラウド利用費(最大2年分)、ハードウェア購入費などが対象になります。
なお、補助金は「クラウド型製品の利用料」も対象です。最大で2年間350万円分の補助となればかなりの額になります。予算、コストを検討する材料として、対象であれば積極的に活用、検討していきたいところです。
経理ソフトは必要性の高まり、機能の強化とともに、事業運営の効率化だけでなく、税務上のコンプライアンス確保においても不可欠なツールといえます。業務に当たってはこれら法令の要件を的確に満たす製品を選択することで、業務の効率化と法的リスクの管理の両方を実現できるでしょう。
「電子帳簿保存法&インボイス制度対応」経理ソフト 5選
「電子帳簿保存法とインボイス制度に対応」する、主要な経理ソフトは以下の通りです。(製品名 abcあいうえお順)