近年、日本でも多様なワークスタイルが認められるようになり、勤怠管理の方法を見直す企業が増加しています。従業員の勤怠管理は企業にとって重要な要素ですが、会社、管理者や役職者はその管理や運用のためのコストに頭を悩ませるシーンも多いのではないでしょうか。ITシステムとして「勤怠管理システム」を導入するのが一案ですが、それより「すぐ」「ほぼ無料」で実践できる方法から試してみてはいかがでしょう。
本記事では、この先の勤怠管理システム導入を見据えつつ、エクセル(Microsoft Excel)、あるいはGoogle スプレッドシートで「すぐ」「ほぼ無料」で実践できる勤怠管理表の作り方をご紹介します。
目次
勤怠管理をエクセル(Excel)で行うメリット・デメリット
エクセルで勤怠管理を行う方法は、多くの中小企業によって実践されている方法です。エクセルでの勤怠管理には数多くのメリットが得られるその一方で、デメリットもいくつかあります。エクセルで勤怠管理を行う際には、メリットとデメリットの両方をしっかりと理解しておくことが大切です。
ここでは、エクセルで勤怠管理を行うメリット・デメリットについて詳しくご紹介します。なお、Googleのオンライン表計算ツール「Google Spredsheet(スプレッドシート)」でも同様のことが可能です。Google Spredsheetを使っている人は、適宜エクセル(Excel)をSpredsheetに置き換えて読み進めていただけます。
エクセルで勤怠管理を行う主なメリット
Microsoft Excelで勤怠管理を行うメリットは、以下の4つが挙げられます。
- コストがかからない
- 使い方をある程度知っている
- カスタマイズしやすい
- データを管理しやすい
1.コストがかからない
エクセル(Microsoft Excel)は、マイクロソフトが開発・販売する表計算ソフトウェアです。データの集計や分析を行ったり、さまざまな関数が利用できたりするため、多くの企業で標準オフィスツールとして導入されています。
そのため、エクセルで勤怠管理を行う場合は新たに費用がかかりません。勤怠管理のために新しくシステムを導入するならば相応の費用がかかりますが、エクセルで行えるならば、まずコストがかからず、すぐ活用できることがメリットになります。
2.使い方をある程度知っており、作る側の負担が少ない
前項でもお伝えした通りエクセルは多くの企業で日常的に使われている標準的なオフィスソフトウェアです。基本的なことはもちろん、エクセルへ豊富に備わる高度な機能を使いこなせる人も多いです。大抵の人にとって利用のハードルが低いソフトウェアです。これを活用して勤怠管理を行うにしても、スプレッドシートを作る人/管理する人も、それを使う人も、大きな負担は発生しにくいといえます。
3.カスタマイズしやすい
エクセルは数値、表管理や数式の管理に強く、要件や需要、使い方に応じてカスタマイズもしていきやすい汎用性や機能性もあります。また、インターネット上には無料でダウンロードできる勤怠管理のためのエクセル(Microsoft Excel)用テンプレートも数多くあります。それらをベースにさっとカスタマイズして使うのも“すぐできる”有用な方法の1つです。
4.ファイル/データを管理しやすい
エクセルファイルは共有ドライブへ格納しておくことで複数人で共有し、管理することもできます。クラウド型のストレージも含めてWindows PCの基本機能や無料ツールでも利用でき、会社のPCだけでなく、出先のPCやスマートフォンでも扱え、場所や時間を問わずにデータを扱うこともできます。
エクセルで勤怠管理を行う主な注意点
一方、エクセルで勤怠管理を行う際に生じるデメリット、注意点もかなりあります。昨今のビジネスシーンを踏まえ、よく挙がるデメリットを以下に3つ紹介します。
データの信頼性を確保しにくい
エクセルで作成した勤怠管理表は手軽に作りやすく扱いやすい反面、「データの信頼性」の担保が難しい課題が挙がります。
勤怠管理表においては例えば、出退勤時間を自由に入力できてしまうと、勤務時刻を改ざんするといった不正が起こる可能性が高まります。
エクセルといえど、厳正なアクセス管理、利用と入力制限、パスワード管理などのデータの信頼性確保に伴うセキュリティ対策は必須で、注意して設計していく必要があります。
人的ミスが起こりやすい
エクセルによる勤怠管理は、従業員が押したタイムカードをベースに、管理者・店長などが「人の目で見て、人力」でエクセルへ入力作業をしていくフロー、あるいは従業員が「人力」でエクセルへ転記し、管理者・店長などが確認するフローが基本になると想像されます。
この「人力」での作業は入力漏れや誤入力がどうしても発生してしまいます。勤怠管理の基本データの誤りは、そのまま給与計算の誤りにも連鎖してしまいます。人的ミスを防ぐチェック体制の構築も必要となるでしょう。
法改正に適応しにくい
エクセルは汎用オフィスソフトウェアのため、例えば「法改正」への対応など、環境や時期などに応じた修正、カスタマイズは自身でそれぞれ個別に行っていかなければなりません。2019年4月の働き方改革関連法の順次施行を筆頭に、労働に関する法律は比較的頻繁に改正されます。その都度対応していくことに迫られることになります。
エクセルで勤怠管理を行う方法
エクセルを活用した勤怠管理表の作成には、以下の2つが主な方法として挙げられます。
- テンプレートを利用する
- マクロを組んで自作する
それぞれの方法について、具体的に解説します。
エクセル(Excel)テンプレートを利用する
エクセルで勤怠管理表を作るをすぐ実現したいならば「エクセルテンプレートを利用する方法」が特に簡単です。
エクセル(Excel)テンプレートが配布されている/ダウンロードできるWebサイトを参照すると、「勤怠管理表」のテンプレートが多くあります。その中から自社・自身の目的に合うものを選ぶとよいでしょう。主なサイト例は後述します。
マクロを組んで自作する
エクセルの扱いに長けているならば、自身でマクロを組んだり、関数で工夫したりして勤怠管理表を自作することもできます。
マクロとは、ごく端的に説明するとスクリプト/プログラムを組んでエクセル作業や動作を自動化する機能のことです。
エクセルの勤怠管理表テンプレートをダウンロードできるサイト
エクセルで勤怠管理を行う、特に容易な方法は「無料のエクセル(Excel)テンプレートを使う」ことです。ここでは、無料でエクセル用勤怠管理表テンプレートをダウンロードできるサイトを紹介します。
Officeテンプレート
Officeテンプレートはエクセルの開発元であるマイクロソフト運営のテンプレートサイトです。2000点以上のOfficeテンプレートが公開されています。他サイトのテンプレートに比べると家庭向け/シンプル機能のタイプが多い傾向ですが、デザインのクオリティと公式サイト発のテンプレートであることに安心感があります。
タイムシート(勤務記録表)、欠勤管理表、従業員タイムカード、在宅勤務対応出勤表などをダウンロードできます。
ビズオーシャン(bizocean)
ビズオーシャン(bizocean)は、トライベックが運営するエクセル/Microsoft Office向けテンプレート配布サイトです。勤怠管理表をはじめ、契約書や請求書など、ビジネスですぐ活用できそうなテンプレート/サンプルが数万点掲載されています。
勤怠管理表テンプレートにも、値を入力して出退勤時間を算出するだけのシンプル型から、残業時間や給与計算なども含めて管理できるような多機能型まで豊富にそろっています。
エクセルで勤怠管理表を作成する際に押さえておくべき知識
エクセルで勤怠管理表を作成する際には、エクセルの機能を無駄なく機能的に活用するために、以下の2つの点も把握しておきましょう。
- 勤怠管理業務の流れに関する知識
- エクセル(Excel)関数に関する知識
エクセルで勤怠管理表を作成する際には、以下のポイントをあらかじめ押さえておきましょう。
勤怠管理業務のフロー
勤怠管理のステップは以下の3つです。
- 勤怠状況を記録する
- 勤怠状況から勤務時間を集計する
- 勤務時間から給与を計算する
ステップごとにみていきましょう。
Step1. 勤怠状況を記録する
勤怠管理業務には、従業員の正確な勤怠情報の記録が必要になります。例として、出勤時刻や退勤時刻、残業、労働時間、有給取得日数などが挙げられます。
記録方法は「勤怠管理表に従業員自らが直接入力する方法」「タイムカードの情報を管理者がエクセルの勤怠管理表へ転記する方法」の2通りがあります。どちらにすべきかを決めておきましょう。
Step2. 勤怠状況から勤務時間を集計する
続いて、勤怠状況から勤務時間を集計します。Step1で記録した情報をもとに、従業員ごとの勤務日数や欠勤日数、遅刻早退の有無、残業時間数や深夜労働時間数などを集計するようにします。
集計すべき項目や計算式は従業員の雇用形態や勤務パターンなどで異なるでしょう。自社に適した集計方法で行うことが重要なポイントです。
Step3.勤務時間から給与を計算する
Step2で集計した勤務時間から給与を計算します。時給や月給計算以外に、課税支給額、社会保険料などの計算、源泉所得税の差し引き、通勤手当などの各種手当を算出する必要もあるでしょう。
「エクセル(Excel)関数」の基礎知識
エクセル(Excel)関数とは、エクセルのスプレッドシートで特定の計算やデータ操作を簡単に行うために使われる事前定義された式のことです。「必要な情報を入力すると合計値が自動計算される」といったように特定のタスクを自動化し、複雑な計算を簡単に実行することで、データの整理や分析を効率化します。
関数には例えば、指定された範囲の数値の合計する「SUM関数」、範囲の平均を計算して示す「AVERAGE関数」などがあり、等号(=)に続いて関数名と括弧内に引数(関数が作用するデータ)を指定することで使用されます。
ここでは「勤怠管理を作成する」ために使われる基礎関数を一例として解説します。
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SUM関数
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IF関数
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OR関数
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TIME関数
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DATE関数
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TEXT関数
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WEEKDAY関数
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IFERROR関数
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COUNTIF関数
SUM関数
SUMは、指定した範囲の数値を合計する関数です。例えば、「=SUM(B6:B22)」という関数を入力すると、B列6行目からB列22行目までに入力された数字を合計した数が表示されます。勤務時間や残業時間を足し算する際に役立ちます。
IF関数
IFは、特定の条件を指定して条件に合う場合、条件に合わない場合で計算を分けることができる関数です。所定労働時間を超えている場合や深夜残業をした場合、休日出勤した場合など、割増賃金が適用される場面でよく使われます。
OR関数
ORは、論理式を複数指定して、いずれかの条件が満たされている場合にTRUEを返す関数です。OR関数を前項のIF関数の論理式として使用することによって、複数条件のいずれかを満たしているかを判定することが可能になります。
勤務管理表での使い方の例として、B列9行目が「土」か「日」と入力されていたら「休業日」、それ以外であれば「営業日」と表示される数式は以下のとおりです。
「=IF(OR(B9=”土”,B9=”日”),”休業日”,”営業日”)」
B列9行目が「土」もしくは「日」と入力があった場合、数式を入力したセルに「休業日」が反映されます。
TIME関数
TIMEとは、時刻を表す値を変換できる関数です。勤務時刻は9:30や18:00といった60進数で表記されますが、エクセルはそのままでは60進数をうまく扱えません。そこで、TIME関数を使って時刻として表すことで、その時刻を元に時間経過を計れるようになります。
TIME関数の表記は、半角英数字で「=TIME(時,分,秒)」です。例えば、「=TIME(1,0,0)」と入力すれば「1時」を表すことができます。60進数で表記された時刻から労働時間や残業時間を算出するために役立つ関数です。
DATE関数
DATEは、日付を表すシリアル値として返す関数です。DATE関数を活用することによって、毎月の勤怠管理表の日付更新を簡単にすることができます。
DATE関数の表記例は「=DATE(年,月,日)」です。例えば、「2023/10/1」としたい場合は「=DATE(2023,10,1)」と入力します。
TEXT関数
TEXTは、数値や日付を指定した表示形式の文字列に変換する関数です。TEXT関数の表記は、半角英数字で「=TEXT(シリアル値, “表示形式”)」です。例えば、シリアル値に日付のセルを、表示形式に「”土曜日”」などとと入力すると「土曜日」や「日曜日」のような表示を誤りなく容易に表記できます。
WEEKDAY関数
WEEKDAYは、日付に対応する曜日を返す関数です。WEEKDAY関数でこちらも「曜日」を表示できます。それを活用した書式設定をすることで、土日の日付や指定の曜日に色を付けるといった応用に使えます。
WEEKDAY関数の表記は、「=WEEKDAY(シリアル値,[週の基準])」です。シリアル値に表の中で日付が入力されたセルの選択か日付の文字列を、週の基準には1、2のいずれかを入力します。週の基準とは何曜日が週の始まりかを指します。「1」の場合は日曜日が週の始まり、「2」の場合は月曜日が週の始まりであることを指します。
IFERROR関数
IFERRORは、数式や参照値がエラーだった場合に指定した値を返す関数です。例えば、参照すべきセルに正しい値が入力されていなければ関数でも正しく計算できなません。「#VALUE!」という固有のエラー文字列となり、そのままでは正しいデータになりません。IFERROR関数を活用することで、こういったエラーを回避する応用ができます。
COUNTIF関数
COUNTIFは、指定した条件を満たしたセルの数を数える関数です。例えば、遅刻や早退、出勤日数・欠勤日数・有給休暇を取得した日数を算出する際に役立ちます。
例えば、B列9行目から38行目内の遅刻の回数を算出したい場合は「=COUNTIF(B9:B38,”遅刻”)」のように入力します。
エクセルで勤怠管理表を作成する方法
では、実際にエクセルで勤怠管理表を作成していきましょう。ステップは以下の通りです。
- 勤怠管理表に用いる必須項目を洗い出す
- 洗い出した項目をExcelに設定する
- 日付を表示する
- 曜日を表示する
- 営業日と休業日の区別を付け、色分けする
- 1日の勤務時間を算出する
- 法定外労働時間、深夜残業時間を算出する
- 合計の労働時間を算出する
- 休暇取得日数を算出する
- 遅刻・早退回数を算出する
Step1. 勤怠管理表に用いる必須項目を洗い出す
まず、勤怠管理表を作成するにあたり必要な項目を洗い出しましょう。下記の例を参考に企業にあった項目を確認します。
必ず作成する項目は以下のとおりです。
- 年月日
- 曜日
- 営業日
- 開始・終了時刻
- 1日の勤務時間
- 休憩時間
- 法定外労働時間
- 深夜残業時間
- 備考欄
以下の項目は作成しておくと便利な項目です。
- 所定の勤務時間
- 有休休暇の取得日数
- 遅刻・早退回数
Step2. 洗い出した項目をエクセルに設定する
洗い出した必須項目をエクセルに設定しましょう。ここでは例として、「2023年10月の勤務管理表」として項目名を入力しています。
年月の表示形式を「2023年」「10月」と設定するには、「●年」と表示したいセル『F3』を選択した状態で右クリック→【セルの書式設定】→【表示形式】→【ユーザー定義】で種類を「0 “年”」と書き換え、【OK】を押します。同様の手順で「●月」と表示したいセル『G3』では書式の種類を「0 “月”」と書き換えましょう。
次に、『C6』セルに「10:00」『E6』セルに「19:00」と入力しましょう。Step.2で勤務表の大枠が完成します。
Step3. エクセルで日付を表示する
Step.3では、日付を表示します。『B9』セルに「=DATE(F3,G3,1)」と入力すると、「2023/10/1」と表示されます。続いて『B10』セルに「=B9+1」と入力し、数式を下のセルまでコピーすれば日付の列が完成します。表示がうまくいかない場合、セルの選択をし、右クリックから「書式設定」を日付形式に変更しましょう。
Step4. エクセルで曜日を表示する
Step.4では、曜日を表示します。多くの場合、営業日か休業日かを容易に判断・視認できることも望まれます。そのため日付だけでなく曜日も明示するよう定義しておくとよいでしょう。今回はTEXT関数を使って曜日を表示します。
『C9』セルに「=TEXT(B9,”aaa”)」と入力すると、曜日が表示されました。
数式を『C9』セルから下のセルまでコピーすると、曜日の列が完成します。
Step5. エクセルで営業日と休業日の区別を付け、色分けする
Step.5では、営業日と休業の区別を付け、色分けをします。
今回は、IF関数とOR関数を組み合わせて、【C列】が土か日だったら「休業日」、それ以外であれば「営業日」と表示されるように数式を作成します。
まず『D9』セルに「=IF(OR(C9=”土”,C9=”日”),”休業日”,”営業日”)」と入力します。『C9』セルは日曜日のため、『D9』セルに休業日と表示されました。表示を確認したら、数式を『D9』セルから下のセルまでコピーしましょう。
次に休業日であることを分かりやすくするために、【D列】が休業日であれば行がグレーに表示されるように設定をします。
まず勤怠管理表の表の箇所に該当するセル範囲『B9:L39』を選択します。次に【ホーム】タブから【スタイル】→【条件付き書式】→【新しいルール】をクリックします。
【ルールの種類】では【数式を使用して、書式設定するセルを決定】を選択し、【次の数式を満たす場合に値を書式設定】に「=$D9=”休業日”」と入力します。【書式】のタブ【塗りつぶし】をクリックし、塗りつぶしたい色を選択したらプレビューが反映されていることを確認し【完了】をクリックします。今回は、グレーを選択しました。
休業日を行ごと指定した色に変更できました。
Step6. エクセルで1日の勤務時間を算出する
Step.6では、1日の勤務時間を算出しましょう。1日あたりの稼働時間は「終了時刻-開始時刻-休憩」で算出します。
まず、『I9』セルに「=IF(OR(F9=””,G9=””),””,G9-F9-H9)」と入力します。ここでは、IF関数とOR関数を組み合わせることによって、開始・終了のいずれかが空欄なら稼働時間のセルが空欄になるように設定されます。この数式を下のセルまでをコピーします。
平日である『F10』セルの開始時刻に「9:45」、『G10』セルの終了時刻に「22:45」、『H10』セルの休憩時間に「1:00」と入力すると、入力された時刻から稼働時間が算出され表示されます。
稼働時間の表示がうまくいかない場合、I列のセルを選択し、右クリックから「書式設定」をユーザー定義の「[h]:mm」に変更しましょう。
Step7. エクセルで法定外労働時間、深夜残業時間を算出する
勤怠管理においては、法定外労働時間の管理も必要です。法定労働時間は8時間のため、稼働時間と8時間の差が法定外の時間となります。時間の計算にはTIME関数を使用し、法定労働時間をTIME関数で表すと「=TIME(8,0,0)」となります。
まず、『J9』セルに「=IFERROR(IF(I9-TIME(8,0,0)>0,I9-TIME(8,0,0),””),””)」と入力します。I列に値が未入力の場合に「#VALUE!」エラー表示にならないようにIFERROR関数を使用します。『J10』セルの下も同様、数式をコピーしました。すると、『J10』セルに法定外労働時間が表示されました。
続いて、深夜残業時間を算出します。今回は22時以降を深夜残業時間とし、『K9』セルに「=IFERROR(IF(G9<=TIME(22,0,0),””,(G9-TIME(22,0,0))),””)」と入力しましょう。『K9』セルの数式を下のセルにコピーすると、勤務時間の入力がある『K10』セルに深夜残業時間が算出されます。
Step8. エクセルで合計の労働時間を算出する
39行目に1カ月の総稼働時間、法定外労働時間、深夜時間帯の労働時間の合計を計算します。まず、『I40』セルに「=SUM(I9:I39)」と入力します。これにより、『I9』セルから『I39』セルに入力されている稼働時間の合計時間が算出されます。同様に、合計値を出したい『J40』セルと『K40』セルにも関数をコピーします。
このとき、合計値を出したいセルの値に注意します。合計の労働時間を算出する場合、23時間より大きい値は24で除算されて正しい時間を表示できません。23より大きい値であっても除算されないようにするため、表示形式を変更しましょう。
合計値を出したいセルを選択した状態で右クリック→【セルの書式設定】→【表示形式】→【ユーザー定義】を開いて進み、種類を「[h]:mm」と書き換え、【OK】を押します。設定ができると正しい合計時間が表示されます。
Step9. エクセルで休暇取得日数を算出する
休暇取得日数を算出するため、E列の勤怠状況を算出できるようにします。
まず、E列に勤怠(有給休暇、午前有給、午後有給、遅刻、早退など)を入力します。通常の勤務であれば空欄にします。次に『N8』セルに「休暇計算」の項目を追加し、『N9』セルに「=IF(OR(E9=”午前有給”,E9=”午後有給”),0.5,IF(E9=”有給休暇”,1,0))」と入力します。これを月末の下のセル横までコピーしましょう。
値が反映されたのを確認したら、『J6』セルに「=SUM(N9:N39)」と入力すると休暇取得日数の合計が算出されます。
Step10. エクセルで遅刻・早退回数を算出する
Step10では、遅刻・早退回数を算出します。遅刻、早退の回数はCOUNTIF関数で算出できます。
まず、『K6』セルに「=COUNTIF(E9:E38,”遅刻”)」と入力します。次に、『L6』セルに「=COUNTIF(E9:E38,”早退”)」と入力しましょう。
遅刻、早退の回数が算出されました。
エクセルでの勤怠管理で済むシーン、「勤怠管理システム」の導入が向くシーン
このように、エクセルでも「無料」「比較的すぐ」に勤怠管理表の仕組みを構築できます。個人事業主、あるいは個人商店や小規模企業、あるいは部署単位で従業員は数人くらい、そして「まだ紙ベース」で勤怠管理行っているならば、まずエクセルで実践するのは効率化と確実性の向上に向けた改善の第一歩です。
しかしそれでも、従業員数や業態によっては特に「逆に複雑/それでも面倒/大変」となるシーンが出てきます。
例えば、正社員、アルバイト、パートなど、さまざまな給与体系別に従業員の勤務データをまとめて管理するシーンとなるといかがでしょう。従業員数が2人、5人、10人、30人……と増えるにつれてエクセルでは荷が重くなり、管理者の作業が煩雑になり、データ入力ミス、人的ミスが発生する可能性が高くなります。また、月給制の従業員の場合は社会保険料や各種手当などの複雑な給与計算も必要となるため、どうしてもエクセルでの管理では複雑で難しく、エクセル管理の限界が見えてきます。
エクセルでは少し不安……と感じるようだったら、あるいは既にエクセルでやっているが、エクセルでは面倒・大変といった課題を大枠から解消したいのであれば、「勤怠管理の効率化と自動化」に特化したクラウド型の勤怠管理システムの検討をぜひ視野に入れてください。小規模ならば「無料プラン」で始められる勤怠管理システムもあります。
「勤怠管理システム」製品一覧はこちらから。
「勤怠管理システム」の主な機能や効果についてはこちらもぜひ参照ください。
エクセルの活用で勤怠管理を効率化 限界や課題が見えたら勤怠管理システムの検討を
エクセルでの勤怠管理は、コストをかけずに、会社の需要や勤怠規則などに応じてある程度自由に項目もカスタマイズできるため、「当初の対応」として多くの企業で使われています。その一方で「データの正確性」と「従業員、管理側、双方の効率」を考えると、昨今の勤怠管理手段としてはそこそこ多くの注意点があります。
そのため「従業員の勤怠登録作業も」容易にしつつ、「管理側の効率化も」両立して実現し、比較的「すぐ/安価」に導入できる方法・可能性も多々ある、そして、より「ビジネス成果」につながる可能性が高い、クラウド型/SaaS型勤怠管理システムの導入を検討するのもお勧めしたい方法です。
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