タイムカードの電子化とは？　導入すべき時期とメリット、主な打刻方法

労働時間の管理に課題を抱える総務人事担当の方へ。従業員の出退勤を正確に把握し、給与計算のエラーをなくすために、タイムカードの電子化を考えることは今や必要不可欠といえるステップです。早期の業務DX化が叫ばれる昨今、クラウド型／SaaS型システムの導入を中心に多くの企業が導入・刷新を決め、早速多くの成果を出しています。しかし、それは分かっているけれど方法が分からず、どのシステムを選ぶべきか、導入にはどのようなステップが必要なのかを模索している人も多いかもしれません。

この記事では、タイムカード電子化の概要や背景、対策導入のタイミング、具体的な打刻方法、メリットや注意点などを総合的に解説します。企業導入例が急速に進んでいるクラウド型／SaaS型の勤怠管理システムをうまく活用し、自社の規模や業態に合わせた導入を検討することで、労務負担の軽減や働き方改革をスムーズに実現していきましょう。

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タイムカードの電子化とは？

まず、タイムカード電子化の概念と、なぜ従来の紙タイムカードのままでは課題が生じるのかを振り返って確認しておきましょう。

タイムカードの電子化は、紙に押印する打刻や人を介した勤怠の記録やチェックを電子的／自動的に行う仕組みに変えることを意味します。特に大人数を抱える職場や、在宅勤務や複数拠点を含んだ働き方を導入している企業にとって、管理の手間や無駄な時間・コストを削減し、業務効率や確実性・信頼性を高めます。

従来の紙・アナログベースの運用では、集計ミスや打刻漏れが発生しやすく、管理者が後から修正作業に追われるなど業務が属人的になりがちです。さらに保管スペースの確保や膨大な紙資料の管理など、従業員、企業規模が大きくなるほど課題が増えていきます。

これまでアナログで／手作業で行われていたことを電子化することで、正確な勤怠管理のみならず、不正打刻や過度の労働時間の見逃しを防ぎやすくなります。会社観点ではコンプライアンス面でも大きなメリットがあります。企業が時代に合わせたワークスタイルを推進するにあたって、タイムカードを含めて従業員の勤怠管理を電子化する意義が日に日に高まっています。

紙タイムカード運用の課題と背景

紙のタイムカード運用は、従業員が出退勤を手動で打刻し、それをまとめて人事担当者が手作業で集計します。こうした作業は単純に見えても意外と負担が大きく、膨大な時間と労力を要するケースが多いです。特に、異なる拠点や在宅勤務など多様な働き方と組み合わせる場合、紙による集計のままでは現実的な運用が難しくなります。

また、打刻漏れや打刻ミスが発生した場合、従業員自身が申告しなければ修正に気づきにくく、後から賃金トラブルや法令違反のリスクに発展する可能性があります。紙ならではの紛失リスクや保存・保管体制も的確に考慮しなければならず、管理コスト観点でも大きな課題として挙がります。

このような紙ベース・手作業が多い状況のままでは、いつになっても課題を解消できず、それどころか従業員数が増えるほど対策が後手に回るほど問題が大きくなってきてしまいます。複数拠点やテレワークなどの多様な働き方も広がる中で、もうアナログな手法だけでの管理はもう限界を迎えているといえます。

電子化の移行はこうした背景から、「より正確かつ効率的に勤怠データを扱う」ためのとても有効な手段としてニーズが高まっています。特に近年はクラウド技術の進歩やスマートフォンの普及によりコストと導入ハードルが下がり、より多くの企業が電子化に踏み切りやすくなっています。

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労働基準法、労働安全衛生法など労働関連法の順守

勤怠データを正確に記録・管理することは、労働関連の法令に正しく対応するうえで欠かせない要素です。従業員の労働時間が不明確であったり、作業側で集計にミスがあったりすると、会社と従業員の信頼関係を損ねるだけでなく、法律違反による罰則や是正勧告を受けるリスクも高まります。

例えば2019年の労働安全衛生法改正により、「労働時間の把握」が義務化されました。全ての企業へ、“客観的な方法”で労働時間を記録し、3年間保存することが求められます。具体的にはタイムカード、ICカード、PCのログイン・ログオフ時間などを活用することが推奨されています。

アナログな方法（紙の出勤簿や自己申告制）でも現時点違法にはなりませんが、“客観的な記録”が求められることに代わりはありません。分かりやすく、すぐ・比較的容易に実現でき得る対応の第一歩が「タイムカードの電子化（記録のデジタル化）」となるでしょう。

そして、これを同様にすぐ・比較的容易に実現する具体的な方法が「勤怠管理システムやシフト管理システムを導入すること」となります。

結果的に、不正の温床を削減しつつ、万一の監査やトラブル発生時に確実な証拠を残せるという点で、電子化が法令順守に寄与します。企業にとってはコンプライアンス面を強化し、従業員の安心安全を守る取り組みとしても注目されているのです。

　参考：厚生労働省資料（客観的な記録による労働自動時間のは空くが法的義務になりました」（2019年4月）

 

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タイムカードの電子化を検討する適切なタイミング

続いて、どのような状況でタイムカードの電子化を実践するのが望ましいか、自社のニーズに合わせて考えていきましょう。

勤怠管理における問題点や課題は、企業の規模や業種にかかわらず発生しがちです。導入コストは気になるところですが、煩雑な紙管理を続けていたり、長時間労働の対策を迫られている企業にとっては、まず速やかに電子化を検討することで、現場の工数削減や労務リスク低減につながります。

働き方改革やペーパーレス化が叫ばれる昨今、紙のタイムカードと併用しながら「段階的」に電子化する企業も多くあります。はじめから“全てを解決してしまう”ほど大掛かりな計画は多くの場合難しいので、自社の現状に合ったスモールスタートでシステム導入を進め、徐々に対策課題や利用範囲を拡大する──ような考え方で大丈夫です。まずはスタートを切ることから始めるのでも遅くはありません。

勤怠管理にかかるコストを削減したいとき

従来の紙タイムカードでは、集計作業や紙そのもののコストがかかるため、業務効率化・コストダウンを真剣に考える企業にとっては電子化が有力な選択肢となります。特に、毎月何百枚ものタイムカードを処理するような規模以上の企業では、コスト削減効果が顕著に現れやすいでしょう。

さらに電子化は集計ミスや二重計上を減らし、給与計算に至るまでの作業を省力化できます。管理部門の業務負担だけでなく、従業員側の打刻や修正の手間も大幅に減らせることで、組織全体の生産性向上に寄与します。

コスト面の見積もりを行う際には、初期導入費用のほかに運用費も含め、紙の消耗品費や人件費などの削減幅を比較検討することが大切です。

ペーパーレス化への取り組みを始めたとき

企業内の書類をデジタル化するペーパーレス推進の一環として、タイムカードの電子化を検討するケースも多くあります。特に、契約書や請求書の電子化を進める中で、勤怠管理だけが紙のままでは不便と感じる場面が増えことも理解しやすいことだと思います。

紙のタイムカードは物理的な保管スペースも必要とするので、紛失リスクやセキュリティ面での懸念も拭えません。こうした課題をまとめて解消できるのが電子化のメリットであり、一貫性をもって社内の書類管理をデジタル化することで、業務効率全体の底上げが期待できます。

ペーパーレスを進めるときは、関連するシステムやツールの連携性も検討し、総合的なデジタル環境の整備を目指すことがスムーズな運用への近道です。

テレワークなどの多様な働き方へ対応するとき

在宅勤務やリモートワークのような働き方も一般化した中、紙のタイムカードを押すためだけに出社するのは非効率的で、非現実的です。電子化された勤怠管理システムであれば、ネット環境があればどこでもリアルタイムで打刻でできる環境も提供でき、離れた場所で働く従業員の労働時間を正確に把握できます。

管理者側もシステムを通じて出欠や残業時間を即時に確認できるため、入力ミスや不正打刻とともに、メンタル観点のトラブルを早期発見できる体制づくりにもつながります。従業員自身もログイン・ログアウトのタイミングを意識しやすくなるため、労働時間の可視化が進む利点があります。

タイムカードを電子化する主な方法

タイムカードを電子化する具体的な手段には、従来型のタイムレコーダーを進化させた方法から、PCやスマートフォンを活用した方法までいくつかの方法があります。

PCログ打刻

オフィスワーク主体の企業に向いている方法で、業務PCのログイン・ログアウト時刻を勤怠管理に連携させる方法です。作業を始めると同時にPCにログインする習慣があるならば、打刻漏れを防ぎやすく、従業員の手間も少なく済む点が魅力です。

ただし、PCを使わずに仕事をする職種・業種や、外出の多い社員には向かないケースもあります。また、システム連携の設定やソフトウェアの導入が必要になるため、導入初期の動作テストと社員への周知が欠かせません。

タイムレコーダー

従来のタイムレコーダーにICカードや指紋認証などを組み合わせ、打刻情報を電子データとして蓄積する方式です。紙に押印するタイプからの移行もスムーズで、打刻機をオフィスや工場入り口に設置すれば運用しやすいでしょう。

従業員が慣れ親しんだ機器を使いつつ電子化できるため、比較的抵抗感が少なく導入できる点が利点です。ただし機器の設置場所や利用シーンを事前に検討しないと、混雑やスムーズな打刻を妨げる要因になる恐れがあります。

ICカード／生体認証

ICカードをかざすことで打刻できる仕組みは、大規模オフィスや店舗など、人の出入りが多い場所で便利です。社員証としても兼用できるので入退室管理と勤怠管理を一元化できるのがメリットです。活用シーンにも既にかなり長い歴史があります。

一方で、新たにICカードシステムを導入するならば相応の初期投資が必要となり、運用コストもかかります。また打刻には「出社が必須」であるデメリットは前述した2つと変わりません。紛失リスクやセキュリティ対策としてのルール整備も並行して行うことも望まれます。

生体認証は、指紋や顔認証などの生体情報を使って個人認証を行い、打刻データを記録する方法です。不正が起こりにくく、本人確認の精度を高められるので、セキュリティ面を最重視する企業に需要があります。昨今は、後述する「Web／アプリ打刻」のシステムと連携する、PCやスマートフォンなど手元のデバイスに備わるカメラや生体認証機能を活用することで、“出社が必須”となるデメリットをすっきりと解消できるようにもなってきています。

ただしこちらも導入やメンテナンスにかかるコストが他の方法と比べて高くなる傾向があるため、企業規模や必要なセキュリティレベルをよく検討する必要があります。社員のプライバシー保護に対して十分な配慮を行い、運用ルールを明確化することが不可欠です。

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Web／アプリ打刻（勤怠管理システムの導入）

テレワークや在宅勤務といった働き方が多様化するにつれてニーズが急増したのが、ネットやアプリを利用する打刻方法です。場所を選ばず、リアルタイムで打刻できるのが最大の特徴です。自宅や出先からでもすぐにアクセスできるため、テレワークや外出の多い営業職など幅広い働き方に対応可能です。

導入企業側は、専用の打刻用サイトを用意する、あるいはその機能を標準的に備える「勤怠管理システム」を導入し、従業員にIDやパスワードを配布して運用します。システムを自社開発する手段もありますが、導入のハードルを特に低く抑えられるクラウド型／SaaS型システム・製品を活用する方法を選択する企業がとても増えています。

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業務SNS連携

昨今は業務連絡やコミュニケーションの手段として、電子メールなどだけでなく、SlackやLINE（LINEビジネス）のようなビジネス向けSNSツールを用いることも一般的になってきています。

例えばSlackでは、Slackの専用チャットボットを使って出勤・退勤の打刻が可能です。同様にLINE打刻もLINEの公式アカウントやボットを使って勤怠記録が行えます。

この方法の魅力は、従業員が普段から使い慣れているツールを活用するため、新たなシステムに慣れる必要がないことです。リモートワークとの相性もよく、どこからでも簡単に打刻できることももちろん大きなメリットで、勤怠管理システムへ機能として含まれている例も増えています。

タイムカードを電子化する主なメリット

電子化の利点は、単なるペーパーレス化だけにとどまりません。正確な労働時間の集計を自動で行えるため、給与計算や残業時間管理にも役立ちます。不正防止やコスト削減など多面的なメリットが存在し、企業の経営改善につながります。主なメリットは以下の通りです。

労働時間を正確に把握・管理できる

タイムカードを電子化する最大のメリットは、出退勤時刻を正確かつ自動的に記録できる点にあります。手書きや打刻漏れによる誤差が少なく、管理者の目が行き届きにくい深夜や休日も含めて正確なデータを得やすいのです。

たとえば従業員が残業をしすぎている、あるいは休憩をとっていないなどの問題もリアルタイムで把握できます。こうした早期発見が、適切な労務管理や従業員の健康管理を可能にします。

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集計業務の負担が減る

従来の紙タイムカードでは、月末や給与計算時に管理者が大量のカードをチェックし、出退勤時間や残業時間などを手作業で集計する必要がありました。電子化によって自動集計機能を活用すれば、これらの時間を大幅に削減できます。

集計の誤りによる修正作業も減り、給与計算との連携をスムーズに行えるようになるため、管理担当者の労力が軽減される点も魅力です。結果的に、労務管理部門の生産性を高め、本来注力すべき業務に集中しやすくなります。

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打刻ミスの修正の手間が減る

電子化システムは打刻漏れや二重打刻などのエラーを検知し、アラートを出す機能を備えているケースが多く見られます。これにより、小さなミスを早期に発見して修正できるため、トラブルが大きくなる前に対処可能です。

また、従業員から打刻ミスの報告があった場合も、システム管理画面で該当データを簡単に修正できるのが電子化ならではのメリットです。手書きや紙のタイムカードでは修正内容がわかりにくく、不正疑惑を招く可能性があるため、この点でも電子化が優位に立ちます。

紙より保管コストを削減しやすい

紙のタイムカードを長期間保管していると、膨れ上がった紙資料のファイリングや倉庫での管理コストがかさんでいきます。電子化を行えば、クラウド上などにデータを蓄積できるため、スペースが不要になり、ペーパーレス化の推進にもつながります。

過去の勤怠データを検索する場合でも、紙の山を探すのではなくデジタルデータをキーワードなどで瞬時に呼び出せるため、業務時間を削減できる点も魅力です。

不正を防ぎやすい

電子化によって打刻データの改ざんや代理打刻などの不正を防止しやすくなります。生体認証を導入していれば、本人しか打刻できない仕組みが強化され、セキュリティレベルを高めることができます。

他にも、打刻履歴が自動的にシステムに記録されるため、不審な変更やアクセスの履歴を追跡しやすくなります。法令順守だけでなく、コンプライアンスや企業価値向上の観点からも重要なメリットです。

タイムカードを電子化する際の主な注意点

メリットが多い一方で、導入には初期コストやシステムの選定、周知などの課題も存在します。よく挙げられる注意点は以下の通りです。電子化にあたっては、どのシステムを選ぶか、どの打刻方法を採用するか、そして従業員がスムーズに運用を開始できるかが要となります。メリットだけに目を奪われず、社内インフラや従業員のITリテラシー、導入コストなどを総合的に検討しましょう。

導入・運用に一定の費用がかかる

システムの導入には初期設定費用やライセンス料など、ある程度のコストがかかります。タイムレコーダーやICカードリーダーなどの機器を導入する場合も、台数やメンテナンス費などのランニングコストを考慮しなければなりません。

ただし、長期的には紙の印刷代や手作業の人件費などを削減できるため、トータルで見るとコストメリットが大きいケースが多いです。導入前に、見積もりや費用対効果のシミュレーションを十分行うと安心です。

職場環境に合う打刻方法かどうかの確認が必要になる

ICカード、生体認証、Web打刻など、多様な電子化の方法がありますが、どれが自社の働き方やセキュリティ要件に合うのか見極めることが重要です。合わない方法を選んでしまうと、従業員が打刻しにくくなり、かえってミスが増える可能性もあります。

打刻デバイスの設置場所やネットワーク環境の整備、夜勤やシフト制への対応など、実際の運用を想定した細かな点まで確認し、最善の方法を選択しましょう。

参考テレワークに有効な勤怠管理方法｜効率的な手段と検討のポイント

業務フローの変更に従業員が慣れるまで一定の時間がかかる

新しいシステムを導入する際には、操作方法やルールを従業員に浸透させる期間が必要です。特にITツールになじみのない従業員が多い職場では、十分な説明会や研修、サポート体制を整備することが大切となります。

導入初期は予期せぬトラブルも発生しやすいため、当面は紙タイムカードを併用するなどの並行稼働を行う企業も多いです。業務フローの安定化を焦らずに進めることで、最終的にスムーズで効率的な勤怠管理が実現しやすくなります。

課題解決に成功した導入事例

北九州の観光名所・門司港エリアを中心に、門司港の名物・焼きカレーで“行列のできる人気店”を展開する企業が特に課題としていたのは、勤務体系が多様に各スタッフの勤怠状況を的確かつ正しく把握しつつ、“これまで手作業”だった給与計算の大変さと不確実性を解消することでした。具体的にどのような方法・手段で対策し、成果を生み出したのでしょうか。詳しくは以下をご覧ください。

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タイムカードの電子化は、SaaS／勤怠システムでの対策が近道　「早・安・楽」観点で選定を進めよう

デジタル化による業務改革の波が押し寄せている今、労働時間管理の効率化と徹底は避けて通れない課題です。ただ、この中でも「タイムカードの電子化」は、比較的容易に実践できる／第一歩に設定しやすい対策と言えます。

導入計画を「早く」「（比較的）安価に」「楽になる」ような成果を得ることを観点に、慎重に自社のニーズや課題を解決できる勤怠管理方法を導入することが成功の鍵となるでしょう。

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