帳票は企業や個人事業主にとって、日々の業務を円滑に進めるために欠かせない重要な文書です。本記事では、帳票の基礎知識と種類、管理方法や旧来型方法の課題をおさらいし、現在主流である電子化のメリットと具体的な導入方法を詳しく解説します。また、おすすめの電子帳票システムも紹介しますので、帳票管理の電子化とともに効率化やコスト削減を目指す人はぜひご覧ください。
目次
帳票とは? 帳票の基礎と重要性
帳票とは、企業や個人の取引や経営活動を記録・管理するための文書の総称です。取引の証拠となる伝票、財務状況を把握するための帳簿などが挙げられます。これらの帳票は業務の正確性を保ち、法的な要件を満たすために不可欠な役割を果たします。
帳票の適切な管理は、企業の信頼性を高めるだけでなく、経営判断を支える基礎データの整備にもつながります。適切に帳票を管理することで、業務プロセスの効率化やコスト削減が実現され、そして企業全体のパフォーマンス向上に寄与します。
帳票の目的と役割
帳票は、企業や事業の透明性を保ち、正確な情報を提供するために重要な文書です。帳票の主な目的は取引などの証拠として機能させることです。
具体的には、取引の詳細や金額、日時などの情報を正確に記録し、後から参照できるようにします。これにより取引の透明性が確保され、不正や誤りを防止することができます。
帳票は経営状況の把握や分析にも活用されます。定期的な帳簿の確認により資金繰りや売上状況、費用の実態などを把握し、適切な経営判断を行うための基礎データとして役立ちます。また、法的要件の順守にも帳票は欠かせず、税務申告や監査で求められる情報でもあります。
帳票の主な種類
業務内容や目的に応じて多岐にわたる帳票が存在し、それぞれが特定の役割を担っています。帳票は、その用途や内容に応じて様々な種類があります。ここでは、代表的な帳票について詳しく解説します。
- 請求書、納品書、領収書
- 伝票類(出金伝票や振替伝票)
- 帳簿類(仕訳帳や勘定元帳)
- 証憑書類(契約書や注文書)
請求書、納品書、領収書
請求書は、商品やサービスの提供に対する代金を請求するための帳票です。顧客との間での金銭のやり取りを明確にし、支払い期限や金額を確認するために使われます。
納品書は、商品やサービスが実際に提供されたことを証明するための帳票です。納品日や内容、数量などが記載され、取引の履歴として重要な役割を果たします。
領収書は、顧客からの支払いを受け取った際に発行する帳票です。支払いの証拠として機能し、後の確認や経費精算時に必要となります。
これらは皆さんにも身近なものですが、正確な取引記録と顧客との信頼関係を構築するために欠かせない帳票です。
伝票類(出金伝票や振替伝票)
伝票類は、企業内での資金の移動や取引を記録する帳票です。
出金伝票は、経費や支払いが発生した際に使われ、資金の出入りを明確に記録します。
振替伝票は、異なる勘定科目間での資金移動を記録するために使われます。これにより会計処理の整合性が保たれ、正確な財務状況の把握が可能となります。
これらの伝票類は、会計処理の基礎となる重要な帳票です。正確な資金管理と財務報告を支える役割を果たします。
帳簿類(仕訳帳や勘定元帳)
帳簿類は、企業の日々の取引を体系的に記録する帳票です。
仕訳帳は、各取引を日時順に記録し、取引内容を詳細に明示するために使われます。
勘定元帳は、仕訳帳に記録された取引を各勘定科目ごとにまとめた帳簿です。財務状況を総合的に把握するために使われます。
これらの帳簿類は、企業の財務状況を正確に反映し、経営判断や税務申告において重要な役割を果たします。
証憑書類(契約書や注文書)
証憑書類は、取引の真実性を確認するために必要な証拠資料となる帳票です。例えば、契約書や注文書、配送確認書など挙げられます。
証憑書類は、取引の内容や条件を明確にし、不明瞭な点やトラブルを防止するために極めて重要です。法的な要求に応じて証拠として提出する必要がある場合もあります。
証憑書類の適切な管理は、企業の信頼性を高め、法的リスクを低減するために欠かせません。
帳票の管理方法と課題
効果的な帳票管理には適切な保存方法とその際の課題への対応が求められます。
帳票の管理方法には現在、大きく分けて「紙媒体」での管理と「電子化」による管理があります。それぞれの方法にはメリットと課題があり、企業の規模や業務内容に応じて適切な管理方法を選択することが求められます。
以下では、法的な保存期間や紙媒体管理のメリット・課題、電子化による管理手法について詳しく解説します。
法的な保存期間と管理体制
帳票の保存期間は法律で定められています。まずこれを順守する必要があります。例えば、会計帳簿や財務帳簿は商法および会社法で10年、税務関連帳簿は法人税法や所得税法に基づき7年、給与関係書類は労働基準法で3年、所得税法関連(給与明細書など)で7年などです。
保存期間の誤認を含めたあやふやな管理体制では法的な問題を引き起こす可能性があります。また、保存する帳票を迅速に検索・参照できるよう、整理された管理体制を整えることが重要です。
紙媒体管理の課題
紙媒体での帳票管理は、物理的な存在として確実に保存できるメリットがあります。電子機器に依存しないため、電力供給やシステムのトラブルに左右されない安定性も挙げられます。
しかし紙媒体は保管スペースの確保とそれに伴って管理コストが増えていくこと、そして「情報を探しにくい」大きな課題があります。大量の紙帳票は場所を取るだけでなく、整理や情報の検索に時間と労力がかかります。紙媒体はコピーや盗難・紛失のリスクがあり、セキュリティ面での不安も残ります。
これらの課題を解決するために、昨今は電子化による管理手法が進んでいます。
電子化による管理手法
帳票を電子化することで、保管スペースと検索・共有の課題を一気に解消できます。電子帳票はデータとして保存されるため、物理的なスペースはいりません。大量の帳票も「データ」として効率的に管理、整理していけます。
また「データ」であるため、複数の担当者が場所を問わず利用することも容易になります。これにより業務のスピードアップやリモートワークの推進にも貢献します。
さらに、電子化はセキュリティの強化にもつながります。データのバックアップやアクセス制限、システム単位の利用者制限などを適切に設定することで、紙媒体時代に存在した情報の漏洩や紛失リスクを低減できます。
帳票電子化の重要性と進め方
帳票の電子化は、業務の効率化やコスト削減、セキュリティ向上など多くのメリットが得られます。このパートでは、帳票電子化の主なメリットとその具体的な導入手法について詳しく解説します。
帳票電子化のメリット
帳票を電子化することで多くの利点が得られます。主なメリットは以下の通りです。
- 業務効率と正確性が向上する
- コスト削減を実現する
- データの検索と共有が簡単になる
- セキュリティの向上を実現する
- 環境負荷軽減を実践できる
業務効率と正確性が向上する
電子データの活用により、帳票の作成や管理が迅速かつ容易になります。手作業・人力での入力や検索・検証が不要となるので正確性、そして業務プロセスのスピードが大きく向上します。また、自動化ツールやテンプレートを活用することで、作業の標準化と効率化が図れます。
コスト削減を実現する
紙の使用量や保管スペースの削減により、経費の節約が可能です。印刷費用や保管設備のコストを削減するだけでなく、配送費や郵送費も不要となります。さらに、無駄な紙の使用を減らすことで環境コストの削減にも寄与します。
データの検索と共有が簡単になる
電子帳票はデジタルデータとして保存されるため、必要な情報を迅速に検索・抽出することが可能です。また、クラウドベースのシステムを利用することで、場所や時間を問わずにデータを共有・アクセスすることができます。これにより、チーム間の連携が強化され、業務のスピードが向上します。
セキュリティの向上を実現する
電子帳票はアクセス制限やパスワード保護、データの暗号化などのセキュリティ対策を施すことができます。これにより、情報の漏洩や不正アクセスのリスクを低減することが可能です。また、定期的なバックアップを行うことで、データの消失リスクも最小限に抑えることができます。
環境負荷軽減を実践できる
帳票の電子化により、紙の使用量を大幅に削減することができます。これにより、森林資源の保護や廃棄物の削減に貢献し、企業の環境負荷を軽減することが可能です。また、持続可能な経営を実現するための重要な一歩となります。
帳票電子化の手段
帳票の電子化をスムーズに進めるには、電子帳簿保存法の基礎実務対策を理解し、適切な方法、ツールやシステムを選定することが重要となるでしょう。
電子帳簿保存法(電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律(平成10年法律第25号/2022年1月1日施行))は、経済社会のデジタル化を踏まえ、経理の電子化による生産性の向上と記帳水準の向上を目的に、帳簿や書類などの電子データ管理を規定する法律です。「真実性の確保」と「可視性の確保」の2つを重要な要件としています。
真実性の確保とは、保存された電子データが改ざんされていないと証明できることです。可視性の確保とは、保存された電子データを検索できることです。
電子帳簿保存法は区分として「電子帳簿等保存」「スキャナ保存」「電子取引」の3つに分かれています。各税法でこれまで紙での保存が義務だった帳簿類を「電子データとして保存」できるよう緩和し、併せて電子データとして「取り引き情報の保存義務」のルールなどを定めています。2022年1月の改正で、電子データとしての定義と扱い方、帳簿類を電子的に保存する際のルールが抜本的に見直され、一部要件も緩和されました。
「何を電子化できるのか」「具体的にどうすればいいのか」「何が違反になるのか」など、詳細はぜひこちらの記事もご覧ください。
エクセル帳票のPDF化
既存のエクセル(Microsoft Excel)などで作成された帳票をPDF形式に変換して扱う方法です。既存の帳票フォーマットを維持しつつ、共有や保存ができます。パスワード保護や暗号化、編集制限などとともにPDF化することで帳票の改変を防ぎ、情報の一貫性を保つことが可能です。
スキャナ保存
領収書や請求書などの紙の書類を、カメラやスキャナーなどを使ってデジタルデータ化(PDF化など)し、その画像ないしデータのファイルを「主」として管理します。スマートフォンのカメラで書類を写し、それをアップロードして管理・蓄積できるIT製品も多くあります。
電子取引データ
メールや電子取引プラットフォームを通じて送受信される書類、取引情報は電子データのまま保存します。例えば、電子の注文書や契約書、電子インボイスなどが含まれます。
関連 インボイス制度に正しく対応できる経理・会計システムの選び方
電子帳票システムの活用
専用あるいはクラウド型/SaaS型の電子帳票システムを導入し、管理体制を効率化する方法も既に一般的になってきています。帳票システムを導入することで、帳票データとその管理全般のプロセスを一元化できるのが大きな利点です。帳票の作成、保存、検索、共有を統合的にサポートし、業務プロセスの自動化やデータ分析にも対応します。
また、システムに用意される機能や標準テンプレートを活用し、帳票の保存期間設定や管理、削除やアーカイブ化、アクセス制御、監査ログの記録といった機能、さらにクラウド型のため、法改正やルール変更などに伴って「最新版」へ自動アップデートする機能などをほとんどの製品で標準的に備えます。
おすすめ 電子帳票システムに備わる主な機能
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