MAツール(マーケティングオートメーションツール)とは、見込み客の獲得から育成、リードの抽出までの一連のマーケティング活動を自動化しするIT製品です。B2B(企業対企業)、B2C(企業対個人)いずれのマーケティングでも広く利用されており、企業のマーケティングにおいてなくてはならない存在となっています。
本記事では、MAツールの市場規模とシェア率から「なぜ多くの企業が導入を進めているのか。どんな製品を撰んでいるのか」を確認し、この上でMAツールのビジネスメリットと選定ポイントを解説していきます。あなたの会社とビジネスに適するMAツールを見つけるための一助となれば幸いです。
目次
MAツールの市場規模
デジタルマーケティングの重要性の増大をはじめ、顧客データの活用やパーソナライズ戦略意向の強化、ROI(Return On Investment/投資利益率)最適化と効率的なリソース配分の意識向上によってMAツールの市場規模は国内、世界ともに拡大しており、今後も大きく成長すると見込まれています。
調査会社 矢野経済研究所のレポートによると、国内の2020年MAツール市場規模は447億3500万円で、2025年までに737億円規模に拡大すると予測されています。Grand View Reserchなどの調査による世界のMAツール市場規模は、2020~2027年のCAGR(年成長率)約9.8%で2026年までに63億ドル(約9800億円/2024年12月時点のレート換算)規模に達するとされています。
出典 Grand View Reserch「Marketing Automation Market Size, Share & Trends Report 2020 – 2027」
出典 MARKETS AND MARKETS「Marketing Automation Market worth $9.5 billion by 2027」
MAツールのシェア率
MAツールを提供する会社は世界中に数多く存在しますが、その中でも高いシェアのある製品は以下の通りです。
MAツールの世界シェア
- HubSpot(34.72%)
- Oracle Marketing Cloud(7.31%)
- Welcome(7.24%)
- Adobe Experience Cloud(7.05%)
HubSpotの特徴
- 世界135か国以上で21万社を超える顧客が利用
- ゼロから自社開発されているため、あらゆるツールが1つにつながり、一貫性とカスタマイズ性に長けている
- 総所有コスト(TCO)を抑えられる
Oracle Marketing Cloudの特徴
- 関連するエクスペリエンスをリアルタイムで提供できる
- カスタマー・ロイヤルティと顧客維持の向上
- Oracle Universityをはじめ無料トレーニングが提供されている
Welcomeの特徴
- ホスピタリティ業界、医療業界を中心に世界中で6万社以上が利用
Adobe Experience Cloudの特徴
- ジェネレーティブAI(生成型AI)とリアルタイムのインサイトを活用
- ンテンツ制作と配信のプロセス全体を最適化するエンドツーエンドのソリューションを提供
- 米リサーチ企業のGartnerが定義するDXPを評価するレポートにおいて、7年連続でリーダーに選出
MAツールの国内シェア
- Salesforce Marketing Cloud Account Engagement(20.77%)
- HubSpot(19.43%)
- BowNow(17.13%)
Salesforce Marketing Cloud Account Engagementの特徴
- SFAで定評のあるSalesforceが提供するMAツール
- AIスコアリングによるデータ収集・管理・活用機能
- 無料の学習コンテンツTrailheadでスキル習得が可能
HubSpotの特徴
- 世界135か国以上で21万社を超える顧客が利用
- ゼロから自社開発されているため、あらゆるツールが1つにつながり、一貫性とカスタマイズ性に長けている
- 総所有コスト(TCO)を抑えられる
BowNowの特徴
- 中小企業を中心に導入されており、少数精鋭の部署でも効果を実感できる
- 専任担当がつく手厚いサポート体制
- 1万4000社以上に導入支援
MAツールの導入メリット
MAツールを導入することでマーケティング活動を効率化し、より質が高いサービスの提供を行うことができます。
ここからは、MAツールの導入によって実現できることを具体的に解説します。
- 業務効率が向上する
- リード(見込み客)の管理・発掘体制を強化できる
- パーソナライズマーケティングを実践できるようになる
- マーケティング活動の効果測定精度が上がる
- 顧客体験・満足度を高められる
業務効率が向上する
MAツールは、見込み客の獲得から育成、リードの抽出までの一連のマーケティング活動を自動化するため、業務効率が向上します。
例えば、データ収集や管理、分析など手作業で行っていた定型業務を自動化することでより早く正確な情報を得ることができます。
さらに、顧客のアクションに応じたフォローアップをリアルタイムで実行できるため、顧客満足度の向上につながります。時間に余裕ができることで、担当者はより重要なタスク、戦略を練ったり、クリエイティブな活動に充てたりすることができるようになります。
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リード管理・発掘・育成体制を強化できる
見込み客の発掘・育成・管理を行い、いかにアプローチするか、その戦略がマーケティング活動の起点になります。
MAツールでは、SFAやCRMなどで管理する営業・顧客情報などとも連携して見込み客の情報を含めて一元化し、客それぞれに合った手段で戦略的にアプローチしていけるようになります。的確かつ適切に顧客との関係を強化でき、機会を逃さず商談し、売上につなげることが可能になります。
同時に、リード(見込み客)を特定の条件下でスコアリングすることで、より質の高い(成約率が高いと位置付けられる)リードを認識・把握する機能もあります。成約率が高いと位置付けられた客へ集中的にアプローチすることで、販売チームの生産性や成約率を引き上げることができます。
パーソナライズマーケティングを実践できるようになる
仮にB2C向けの商材で幅広くたくさんの数の顧客を対象にできるとしても、バンバンCMを打って数打ちゃ当たる戦略だけで勝ち残っていくには厳しい時代と言われます。
顧客一人ひとりのニーズや購買意識レベルはそれぞれです。そのためMAツールでは、顧客の購買履歴や興味関心のような情報もデータとして蓄積して、それのデータ分析結果に基づいて「個別の内容に特化(パーソナライズ)」された広告、メールやコンテンツを配信する機能が特に重宝されます。それぞれの顧客へ価値のある情報/客が欲しいと思っていることを先読みしてピンポイントに提供することで、購買意欲や顧客満足度を高める成果が期待できます。
マーケティング活動の効果測定精度が上がる
MAツールは、各キャンペーンや販売チャネル別のパフォーマンスを把握し、分析し、データにもとづいて定量化することで、それぞれの施策が目標達成へどれだけ貢献したかといった評価指針も表出できます。クリック率、コンバージョン率、顧客獲得コストなどの指標を使用し、どのマーケティング活動が効果的であるかを判断します。また、顧客の行動データやフィードバックを収集し、マーケティング戦略を継続的に改善するためのインサイトを得ることができます。
この自動化された効果測定を通じて予算を最適化し、より効果のある施策を繰り返すことで持続可能な成長を目指せます。
顧客体験・満足度を高められる
企業の競争力を高め、長期的に成功するために、顧客体験と満足度の向上、端的には自社そのものや自社製品・サービスの「ファン」になってもらうための取り組みもビジネスの躍進に不可欠です。例えば身近なECサイトでも、A社はちょっと高いが便利で使いやすい、B社は安いが売り切れも多く広告がうるさい……など、差や好みがあると思います。ここでどちらを選ぶのかは、好み=ファンである度合いも大きな要素となってきます。
顧客体験の向上には、まず顧客のニーズや期待を理解し、それに合ったサービスや製品を提供し続けていくことが重要です。また、顧客接点での円滑なコミュニケーションや迅速な対応、問題解決能力の向上といった信頼性も大きな要素になるでしょう。
MAツールを活用した定期的なフィードバックの収集と分析を通じて、顧客の声を反映させサービスの改善を進めることが長期的に企業の成長と競争力の強化につながります。
MAツールを選ぶ際のポイント
MAツールには多くの製品が存在するため、それぞれの特徴を把握し、自社に合った製品を導入する必要があります。ここからは、MAツールを選定する際に押さえておきたいポイントを解説します。
- 自社に必要な機能の有無と統合性
- カスタマイズと拡張性・柔軟さ
- サポート体制、トレーニングメニュー
- コストとROI
- 無料トライアルの有無
- ベンダーとのパートナーシップ
自社に必要な機能の有無、統合性
製品によって機能や特徴が異なるため、自社の課題点に対してカバーできる製品を選ぶ必要があります。そのためには、自社の課題解決できる機能が備わっていることが重要です。
MAツールを検討するにあたってはまず自社の課題を整理し、何が足りていないのか、何を改善したいのかを要件としてまとめ、これを軸に機能を確認していくとよいでしょう。
カスタマイズと拡張性
IT製品のニーズは企業や組織それぞれで異なります。製品の標準機能で済むならば話は早いのですが、多くの場合は多少なりとも「ここがこうなっていないと業務へ適合できない」「ここはこうしたい」といった自社独自のカスタマイズ要望が出てくるのが一般的です。製品のカスタマイズ性が高い、設計・構築に柔軟性があることで、自社特有のビジネスニーズやマーケティング戦略に合わせてツールを調整・設定することがしやすくなります。ニーズの高い機能には例えば、カスタムワークフロー、特定のフィールド追加、ダッシュボードの表示カスタマイズなどがあります。
また、MAツールで管理する情報は顧客視点のため、基幹業務を統合管理するERP、顧客情報を統合管理するCRM、営業活動を高度化するSFA、商材の受発注や在庫状況を管理する受発注システムや在庫管理システム、請求書を管理する請求書管理システムなどとデータ連携したいシーンは多く、当然システムの刷新・更新においてもそのニーズは高いです。このことから、データ連携・統合はできるか、あるならばどんな方法か、どんなAPIが用意されるのかといったシステム拡張性の観点も忘れずに確認しておくとよいでしょう。
将来的な拡張性や運用の容易さを見極めることで、これらは企業の成長戦略に適応した製品選択を行い、マーケティング戦略の一貫性を保つことが可能になります。
サポート体制、トレーニングメニュー
サポート体制とトレーニングメニューの充実度も忘れずに確認しましょう。
ベンダーや製品によって、24時間対応や専門家によるサポートなど、さまざまなサポート体制が準備されています。しかし同じ製品でも、無料で付くのか、有料なのかオプションなのか、どの程度のサポートを利用できるのかなど、料金プランなどによって大きく差がある例は珍しくありません。SaaS型製品は特に、不要なものは省いて安価に、必要なものだけを厳選して追加、といったように導入者のニーズ別に応じて項目が分かりやすく分離される傾向にあります。自社のニーズに沿い、利用者、チーム全体がそのツールを最大限に活用できるかどうか観点で考えていくとよいでしょう
コストとROI
コストとROI(投資対効果)のバランスを考慮することも重要です。ツールの導入コストだけでなく、維持管理やサポートの費用も含めた総コストを評価します。低コストのツールでも十分な機能とサポートが提供されるかを確認し、適切な予算配分を行います。
また、ROIを見込むためには、ツールがどれだけ効率的に業務を支援し、売上増加やコスト削減に寄与できるかがポイントです。効果測定機能やレポーティングツールが充実しているか、データの可視化や分析にどれだけ役立つかも考慮しましょう。
「無料版」を有効活用する
クラウド型/SaaS型製品には「無料版」を用意する製品もたくさんあります。無料版とは、機能を絞った小規模シーン向けの「月額無料プラン」、あるいは一定期間無料で使える「無料トライアル」のある製品のことを指します。コスト面を深く気にせず、気負うことなくサッと検討できる「無料版」から考えるられるのはクラウド型/SaaS型IT製品の大きな利点で、改善に向けて導入計画を開始する手軽な第一歩になるはずです。
無料版のメリットは、コストを抑えて「スモールスタートできる」「試用できる」ことです。小規模企業、あるいは社内チーム/グループ単位ならば、無料プランで十分と判断できることもあります。また無料プランは有料プランに比べて機能が絞られる分、導入簡単、専門知識不要で使えてしまう場合もあるでしょう。
もし「無料トライアル」のある製品ならば、自社のニーズに合う機能があるかどうか、この先使っていけそうかどうかを遠慮なく「お試し」して確認しましょう。まず試用した上で、自社にはどのような製品が必要か、どんな機能がなければならないのか、自社はどこを目指すのか、などを確認しつつ本契約/料金プランを定めるのもよい方法の1つです。
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ベンダーとのパートナーシップ
信頼できるベンダーを選定し、長期的なパートナーシップを構築することもIT製品導入成功の鍵です。MAツールは長期的な運用とともに戦略や効果に応じて改良改善・試行錯誤が求められるので、そのためにも信頼できるベンダーによる支援は不可欠です。適切なベンダー選定を通じて、MAツールの有効活用と持続的な成長を支援してくれるよい関係を築いていきましょう。
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MAツールのシェアはあくまで選定材料の1つ 自社に適する製品をじっくり見極めよう
MAツール市場は世界的に拡大しており、マーケティング活動の自動化による業務効率化の流れが進んでいます。その中でシェア率の高い製品は、選ばれる理由が多くあるためと推定できます。しかし「それが自社にも適しているかどうか」は別の話です。シェア率は選定材料の1つとしつつ、あくまで自社の課題解決やビジネス目的、成果創出の目的・目標に沿って適切に製品を選定していくことが成功へつなぐ一歩になります。
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