会計ソフトとは、経理業務を自動化して効率化するソフトウェアのことを指します。記帳や仕訳、帳簿の作成などの業務効率化に役立つため、導入を検討している方も多いのではないでしょうか。
法人と個人事業主の両方に対応しているソフトが一般的ですが、選ぶ際のポイントとして共通の事項もあれば、異なる事項もあります。本記事では、会計ソフトの主な種類や機能、導入することで得られるメリット、デメリット、選ぶポイントなどについて詳しく解説し、併せておすすめの会計システム(全11製品/2024年10月時点)をご紹介します。
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会計ソフトの主な種類や機能
近年、DXやテレワークが推進されています。会計業務においてもデジタル化や業務の効率化のために多くの企業が導入している会計ソフトですが詳しくわからないという方もいるのではないでしょうか。会計ソフトを導入する際には、会計ソフトについてしっかりと理解することが重要なポイントです。
ここでは、会計ソフトの主な種類や機能について詳しく紹介します。
会計ソフトの主な種類
ITシステムにおける会計ソフトは、大きく分けると「クラウド型」と「インストール型/オンプレミス型」があります。
クラウド型
クラウド型は、インターネット上でデータを扱う会計ソフトのことを指します。場所や端末を問わずに利用できることや、インターネットにさえつながっていれば社内の複数の担当者がリアルタイムで同一のデータを共有できる利点を持ちます。税理士と連携する際にもデータ共有が容易であり、またリモートワークにも適しています。
導入時の初期費用が比較的かからず、導入までの時間も迅速化できるケースが多いです。一方、利用料金として月や年単位で都度発生します。利用期間に応じたランニングコストはかかります。この記事では、現在主流の方法となっているこの「クラウド型」の導入シーンを想定して解説していきます。
インストール型/オンプレミス型
インストール型/オンプレミス型は、従来から広く使われている方法です。インストール型はPCに購入した会計ソフトをインストールして利用する方法です。オンプレミス型は、インストール型も包括し、自社サーバなどの自社資産システム上へアプリケーションを展開して使う方法です。データはPC上、サーバ内、いずれも「自社内」で管理される点がポイントで、自社セキュリティの要件に応じて「データはインターネットへは出ない」設計にもできます。自社専用に構築するので、相応に初期コストや開発期間、管理運用のためのコストがかかります。
会計ソフトの主な機能
会計ソフトの主な機能は、以下の表のとおりです。
機能 |
説明 |
伝票入力(自動仕訳) |
勘定科目と金額を入力することで自動的に仕訳される |
入金管理 |
請求書と連携し、売り上げ債権への追加や売り上げ債権の回収消込など、売掛金を中心とした債権管理を行う |
支払管理 |
請求書と連携し、仕入債務への追加や支払予定日を確認できるなど、買掛金を中心とした債務管理を行う |
帳簿作成 |
伝票入力により、自動的に総勘定元帳や現金出納帳などの必要な帳簿が作成される |
税務申告 |
税務申告で参考になる、消費税集計などの資料が自動で作成される |
経営分析 |
貸借対照表や損益計算書などからわかる数値を基に、経営や財政状態を分析できる |
資金管理 |
資金管理を円滑にするためのキャッシュフローを確認・管理できる |
予実管理 |
予算と実行結果を管理できる |
決算書作成 |
貸借対照表や損益計算書などの決算書が作成できる |
データ連携 |
銀行の入出金データ、クレジットカードの利用履歴など、外部のデータを会計ソフト上にデータとして取り込む |
データセキュリティ |
データが見られなくなることを防ぐために、登録した仕訳やデータのバックアップや通信の暗号化をする |
従来の会計業務では、転記漏れや計算・入力ミスなどの「人的ミス」が起こりやすい傾向にありました。しかし、会計ソフトに搭載されているさまざまな機能を活用することによって、人間が手作業で行う機会を最小限に抑えることができ、業務の効率化やミスの防止につながります。
会計ソフトのメリットとデメリット
会計ソフトを導入することにおいて、多くのメリットが得られる一方でデメリットもあります。ここでは、会計ソフトのメリットとデメリットについて解説します。
会計ソフトのメリット
会計業務において、日々の取引で発生した売り上げや経費などを帳簿に記録する記帳作業や、仕訳の分類は欠かせない業務です。会計ソフトには、入力した項目が自動的に仕訳される機能が搭載されているため、記帳や仕訳などの作業の効率化につながります。
「帳簿上で借方と貸方の金額に差がある」という問題が起こる場合は、大半が簿記を理解していないことによる入力ミスや転記漏れなどのヒューマンエラーが原因です。
会計ソフトでは、簿記の詳しい知識を持っていなくても入力を簡単に行えるため、ミスを大幅に削減し、正確に経理情報を処理できます。会計ソフトの中では、銀行口座との取引データの連動や、スマートフォンでの撮影、スキャンした領収書のデータを自動で仕訳してくれるものもあります。そのような会計ソフトを導入すれば、さらに会計業務の正確性が向上するでしょう。
また、会計ソフトの帳簿作成機能を活用することによって、仕訳などの入力したデータを基に、総勘定元帳や仕訳帳といった他の書類も自動作成されます。作業時間とミスを大幅に削減し、業務の効率化につながります。
会計ソフトのデメリット
会計ソフトを導入する際には、クラウド型であれば利用料金が、インストール型であれば導入費用が必要になります。導入するソフトの種類にもよりますが、インストール型を購入する場合は数万円程度~10万円を超えるものもあります。クラウド型の場合はサービスの種類によって異なりますが、月額数千円から数万円程度の利用料金がかかります。
会計ソフトは日々進化しているため、多くの会計ソフトにおいて画面を見ながら容易に入力ができるよう、さまざまな工夫が施されています。しかし、初めて会計ソフトを導入して使用する場合は、使いこなせるようになるまで時間がかかる点もデメリットとして挙げられるでしょう。
また、導入した会計ソフトが既存のシステムとうまく連携できず、データの移行ができないということも起こり得るため、連携の可否を導入前に確認する必要があります。
【法人向け】おすすめの会計ソフト8選
導入することでさまざまなメリットが得られる会計ソフトですが、何を選べば良いかわからないという方も多いのではないでしょうか。ここでは、日本企業に導入例の多い、ITセレクトおすすめの会計ソフトをご紹介します。(製品名 abcあいうえお順/2024年10月時点)
freee 会計
会計王
特徴 |
会計王は、ソリマチ株式会社が提供している、小規模事業者に特化したインストール型の会計ソフトです。ソフト購入の初期費用は4万4000円(税込)です。
会計王の特徴は、「かんたん操作、しっかり機能、しっかりサポート」です。特に、初年度サポートサービス(バリューサポート)が無料な点がおすすめポイントです。
搭載されている主な機能として、自動仕訳機能、データ連携機能、決算書作成機能、他社製品データ取込み機能が挙げられます。 |
ベンダーのWebサイト |
https://www.sorimachi.co.jp/products_gyou/acc/ |
勘定奉行クラウド
特徴 |
勘定奉行クラウドは、株式会社オービックビジネスコンサルタントが提供しているクラウド型の会計ソフトです。初期費用は5万5000円~(税込み)で、料金プランは下記の5つです。
- iEシステム:月額8525円(税込み)
- iJシステム:月額1万2925円(税込み)
- iAシステム:月額2万1450円(税込み)
- iBシステム:月額2万5850円(税込み)
- iSシステム:月額3万800円(税込み)</li>
企業の規模に適した豊富な料金プランが特徴で、上記以外にも中堅・成長企業向けの「奉行V ERPクラウド」、グループ企業向けの「奉行クラウド Group Shared Model」、グローバル企業向けの「勘定奉行クラウド Global Edition」があります。
また、税理士などの専門家と一緒に使える「専門家ライセンス」を標準で一つ、無償提供しているのもおすすめポイントです。
主な機能は、自動仕訳機能、データ連携機能、決算書作成機能、予実管理機能などが挙げられます。 |
ベンダーのWebサイト |
https://www.obc.co.jp/bugyo-cloud/kanjo |
財務大将
特徴 |
財務大将は、株式会社ミロク情報サービスが提供しているインストール型の会計ソフトです。初期費用や利用料金については別途問い合わせが必要です。財務大将はフレキシブルなマスタ設計が特徴で、勘定科目の体系や多段階の階層での集計設定が可能です。また、AIを活用した自動仕訳機能もおすすめポイントです。
搭載機能は、自動仕訳機能、データ連携機能、決算書作成機能、経営分析機能などが挙げられます。 |
ベンダーのWebサイト |
https://www.mjs.co.jp/products/mjslink/ |
ジョブカン会計
特徴 |
ジョブカン会計は、株式会社DONUTSが提供しているクラウド型会計ソフトです。初期費用は0円で、料金プランは以下の3つです。
- スタートアップ:2750円(税込み)
- ビジネス:5500円(税込み)
- エンタープライズ:5万5000円(税込み)</li>
上記のプランは、利用可能ユーザー数が異なり、スタートアップは3ユーザー、ビジネスは5ユーザー、エンタープライズは上限なしです。また、搭載されている機能もプランによって異なるため、選ぶ際には注意が必要です。
あらゆる規模の法人に対応しており、複数人で同時操作や共同編集ができるうえに、作業中のユーザーがひとめでわかるアクティブユーザー機能がついているのが特徴です。
主な機能としては、データ連携機能、決算書作成機能などがあり、エンタープライズプランを選べば、IPアドレス制限などのセキュリティ面においても安心できる機能がついてきます。 |
ベンダーのWebサイト |
https://www.jobcan.biz/ |
弥生会計オンライン
特徴 |
弥生会計オンラインは、弥生株式会社が提供しているクラウド型の会計ソフトです。初期費用は0円で、料金プランは下記の3つです。
- 無料体験プラン:最大2カ月間無料で体験可能
- セルフプラン:年額2万8600円(税込み)
- ベーシックプラン:年額3万8720円(税込み)</li>
簿記や会計の知識がなくても操作しやすいようにデザインが工夫されており、会計ソフトを使うのが初めてという方でも簡単に使うことができます。また、初年度無償のキャンペーンを利用して1年間無料でじっくり試せる点もおすすめポイントです。
主な機能としては、自動仕訳機能、銀行口座やクレジットカード、電子マネーなどのデータ連携機能、決算書作成機能が挙げられます。 |
ベンダーのWebサイト |
https://www.yayoi-kk.co.jp/kaikei/ |
【小規模事業者/個人事業主向け】おすすめの会計ソフト3選
会計ソフトの導入は小規模事業者、個人事業主の方にもおすすめです。会計ソフトを導入することで個人事業主の方に簿記の知識がなくても、スムーズに確定申告を行えます。ここでは、個人事業主向けとしても導入例がある会計ソフトをご紹介します。
freee 会計
マネーフォワードクラウド確定申告
特徴 |
マネーフォワードクラウドは、株式会社マネーフォワードが提供しているクラウド型の会計ソフトです。法人向けプランもありますが個人事業主の方が利用する際はプランが異なります。初期費用は0円で、料金プランは以下の3つです。
- パーソナルミニ:1078円(税込み)(※年額プランの場合は880円)
- パーソナル:1408円(税込み)(※年額プランの場合は1078円)
- パーソナルプラス:3278円(税込み)(※年額プランのみ)</li>
銀行口座、クレジットカードだけでなく、電子マネー、通販、クラウドソーシングなどともデータ連携が可能な点が特徴で、日々の帳簿入力の手間を大幅に削減できます。
選ぶプランによって機能は異なりますが、見積・納品・領収・請求書作成などの請求業務も対応可能です。 |
ベンダーのWebサイト |
https://biz.moneyforward.com/ |
やよいの青色申告オンライン
特徴 |
やよいの青色申告オンラインは、弥生株式会社が提供しているクラウド型の会計ソフトです。初期費用は0円で、料金プランは以下の3つです。プランの違いは、操作に関する質問や業務相談の可否になります。
- セルフプラン:初年度無料。次年度は年額9680円(税込み)
- ベーシックプラン:初年度無料。次年度は1万5180円
- トータルプラン:初年度は年額1万3200円(税込み)。次年度は2万6400円</li>
初年度は低コストで利用ができる点が特徴です。レシートや領収書のスキャンデータ、銀行・クレジットカードの利用明細などを自動で取込み、仕訳する機能があり、作業の効率化が期待できます。 |
ベンダーのWebサイト |
https://biz.moneyforward.com/ |
会計ソフトを選ぶポイント
会計ソフトを導入する際は、選び方が重要です。選ぶポイントについては、法人と個人事業主に共通する事項と異なる事項があります。ここでは、会計ソフトを選ぶポイントについて共通事項、法人向け、個人事業主向けに分けて詳しくご紹介します。
法人・個人事業主に共通する会計ソフトを選ぶポイント
まず、改正電子帳簿保存法へ対応しているものを選ぶことが挙げられます。改正電子帳簿保存法は、2021年1月より施行されており、2024年1月までに対応が必要です。正しく電子帳簿の作成・保存が可能なものを選びましょう。
購入前に無料で試せる会計ソフトもあるため、実際に操作して操作性を確かめることも重要なポイントの一つです。
また、導入時や使用時に不明点が発生した際にはサポートが必要になります。会計ソフトの提供会社のサポート体制についても詳細を確認しましょう。
法人が会計ソフトを選ぶポイント
法人が会計ソフトを選ぶ場合のポイントは、法人向けの機能を持つ会計ソフトを選ぶことです。貸借対照表や株主資本等変動計算書、個別注記表など、法人は個人事業主では使わない帳簿が必要です。業務に活用するためにも、対応する機能を確認して選ぶようにしましょう。
個人事業主が会計ソフトを選ぶポイント
個人事業主が会計ソフトを選ぶ合のポイントは、確定申告書の作成に対応している会計ソフトを選ぶことです。青色申告や白色申告への対応を確認しましょう。個人事業主の決算書においては貸借対照表と損益計算書が使えれば概ね問題ありません。高性能で高額な会計ソフトを導入しても、個人事業主では不要な機能が多く、コストが嵩む傾向にあるため注意が必要です。
会計ソフトを導入する流れ
会計ソフトの導入を成功させるためには、導入する流れも重要です。会計ソフトを導入する流れのステップをご紹介します。
- 導入の目的を明確化する
- 導入のスケジュールを立てる
- 会計ソフトを試用し、評価する
- 会計ソフトの導入後レビュー/改良改善していく
Step1.導入の目的を明確化する
会計ソフトを導入する前に、必ず自社の会計処理における課題を洗い出ししましょう。例えば、会計処理の負担軽減や会計情報の共有などが挙げられます。課題を洗い出すことによって、導入の目的が明確になります。また、解決したい課題の優先順位の決定にも役立ちます。
Step2.導入のスケジュールを立て、進行する
会計ソフトの導入後、実際に体制や操作に慣れるまでは時間を要します。業務を担当する従業員が慣れるまでの期間も見越して導入のスケジュールを立てることが大切です。
会計ソフトの導入時期は、期中からでも問題ありません。期中から導入する際には、期首分からのデータ入力も必要になるため、それも考慮したうえでの導入スケジュールを組みましょう。従来の会計処理と会計ソフトの過年度比較を会計ソフト上で行う場合は、過去のデータを移行する作業も必要になります。入力作業だけでも多くの時間が必要になるため、業務が忙しくない時期での移行がおすすめです。
また、導入する会計ソフトの種類によっても利用開始できるまでの期間が異なります。それぞれの種類の特徴を把握して、スケジュールを立てましょう。
Step3.会計ソフトを試用し、評価する
Step1で明確化した導入目的をクリアできる会計ソフトを複数ピックアップしましょう。その中でも3~5種類程度に絞り、細かい観点で比較していくのがおすすめです。
トライアル版やお試しでの利用ができるものがあれば、この段階で使用感や操作方法を確認しておくとなお良いです。
Step4.会計ソフトの導入後レビュー/改良改善していく
複数の会計システムの比較検討が完了したら、導入するソフトを選定しましょう。
自社に適した会計ソフトは、事業内容や業務内容によって異なるため、十分な比較検討を行ったうえで選定することが大切です。
会計ソフトの特徴を理解し、十分に比較検討して選定しよう
会計ソフトを導入することで、会計業務の効率化だけでなく正確性の向上にもつながります。会計ソフトにはさまざまな機能が搭載されており、法人向け、個人事業主向けでは適したソフトが異なるため、注意しましょう。
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