今まではどの顧客にも同じ手法でアプローチしていく画一的な営業方法が一般的でしたが、市場の成熟化に伴い、それぞれの顧客に合わせて適切な営業活動を行うことの重要性が高まっています。
本記事では、顧客管理を的確に行うことで得られるメリットと必要なツール、顧客管理で失敗しないためのコツについて紹介します。
目次
顧客管理についての基礎知識
まずは、顧客管理の概要や重要性について紹介します。
顧客管理とは?
顧客管理とは、自社の顧客に関する情報を的確に管理することです。顧客の会社名や連絡先といった属性情報はもちろん、これまでの接触履歴や購買行動なども含めた顧客の情報をデータとして一元的に管理していくのが理想です。
市場が成熟し顧客のニーズが多様化した現代では、画一的な営業方法ではなく、それぞれの顧客に合わせて適切なアプローチをしなければいけません。顧客管理を行うことで、顧客が抱えているニーズや状況を的確に把握し、営業活動、マーケティング活動へ生かせるようになります。
顧客管理が重要な理由
では、顧客管理は営業活動でどのように役立つのでしょうか。具体的に見ていきましょう。
・営業効率や売上の向上が期待できる
顧客情報を一元管理すると、「必要なときに欲しい情報をすぐに探せる」ようになります。例えば、「成約になる可能性の高い顧客を分析し、そのことを把握できる」といかがでしょう。営業活動にとても役立つはずです。
併せて顧客のニーズや置かれている状況に合わせた提案を行うことで、顧客満足度アップやリピート率の向上も期待できます。
・見込み顧客の興味関心を把握できる
展示会やイベントなど、行った施策への反応を分析できるとどうでしょう。見込み顧客が持つ興味関心の傾向を理解できれば、その後どうすべきかとするマーケティング戦略を立てられるようになります。またその時は契約につながらなかったとしても、過去に蓄積されている情報から、タイミングを見計らって違うアプローチで再提案したり、新しいサービスを紹介したりするといった方法を戦略として取れるようになります。
・休眠顧客に再度アプローチできる
長く企業活動していれば、取引がなくなってしまった顧客、過去に取引があったものの長く取り引きがない休眠顧客も多くいることでしょう。「それならば仕方ない」と諦めるか、「また契約してくれるにはどうするか」を取り組むかどうかでその後の成果は大きく変わってくるはずです。
例えば再契約になりそうな顧客データを分析し、これまでなかった傾向や情報を再度つかめればどうでしょう。もう一度アプローチできるかもしれません。同じ商品の再契約は難しいとしても、他の商品やサービスに興味を持ってもらえるかもしれません。蓄積されるデータは、顧客のニーズや置かれている状況を「改めて知る」ことも可能になります。
営業の顧客管理で必要な項目
顧客管理が重要な理由を紹介しましたが、ではどのような情報が営業活動に役立つのでしょうか。顧客管理に必要な項目を4つ紹介します。
(1)顧客の属性情報
顧客の属性情報は、顧客管理のベースとなるものです。顧客が企業の場合は、下記のような内容を属性情報として管理します。
- 企業名
- 企業の業種・事業内容
- 企業の所在地
- 企業の規模感(資本金や社員数など)
- 担当者の名前・役職
- 担当者の連絡先(電話番号やメールアドレスなど)
また、担当者の趣味など、雑談の中で得られた情報を記録しておくのもよいかもしれません。コミュニケーションが取りやすくなり、関係構築に役立ちます。
(2)顧客との接触履歴
顧客としたやり取り・接点に関する情報(接触履歴)を管理します。具体的には下記のような情報を正しく記録しておきます。
- 商談の履歴
- 電話でのやり取り
- メールでのやり取り
- 問い合わせ履歴
- セミナーや展示会への来訪履歴
- ネクストアクション
接触履歴を記録し、これまでのやり取りをいつでも確認できるようにすると、次に接触する際のコミュニケーションが円滑に進められます。
例えば「月末は忙しい」「担当者は午前中、社外に出ていることが多い」などの情報も含めて記録してあれば、「月末は連絡をなるべく避けたほうがいい」「この時間帯なら担当者につながりやすい」ことが分かります。
チーム内や複数の部署から同じ顧客へ連絡する機会があるならば、接触履歴を残すことは特に重要となるでしょう。例えば「この時間帯の連絡は避けてほしい」と要望していた顧客に対して、無神経に連絡した場合と、情報を連携していて適切なタイミングで連絡した場合と、どちらが心象がよいのかは言うまでもありません。また、部署間の連携ができていなくてミスが起きたならば、顧客からの信頼を損ねてしまいます。
(3)顧客の購買行動
顧客の購買行動としては、次のような情報を記録します。
- 顧客が購入した商品やサービス
- 購入した日
- 購入数や契約期間
- 購入単価
- 支払い方法
これらのデータを分析することで、平均購入単価や購入頻度、契約期間を把握できます。ここから平均購入単価と購入頻度と契約期間を掛けることで「LTV」と呼ばれる指標を算出できます。LTVとは顧客生涯価値の意味で、LTVとして数値化されることで優先順位の高い優良顧客の管理や認識が明確になります。
購入した日や個数、契約期間の管理も重要です。例えば「商品を使い切りそうなタイミング」や「契約が終了になる前」などのタイミングとともに次のアプローチが行えるようになります。
(4)重要事項
顧客の属性情報や接触履歴、購入行動だけでなく、下記の項目も記録しておきましょう。
- いただいた意見や要望
- クレーム、発生したトラブル
- お褒めの言葉
要望や意見などが社内で共有されておらず、トラブルや賠償のあるクレームが再発したといったミスが起これば、確実に今後の取引に影響を及ぼします。当事者以外も内容を把握できるように管理していくことが望ましいでしょう。
「いただいたお褒めの言葉」も記録しておくのも大切です。どういった対応が好まれやすいか、顧客ごとにデータを蓄積していくことで、顧客との良好な関係づくりに役立てられます。
顧客管理を行う際の主なツール
顧客管理に使われるのは大きく分けて紙ベース、表計算ソフトベース、業務支援ツールの3つがあります。業務支援ツールの代表的なものとして、「CRM(顧客管理システム)」、「SFA(営業支援システム)」、「MA(マーケティングオートメーション)」が挙げられます。
この記事は、顧客管理に用いるツールとして業務に特化したCRMを用いたIT製品の活用をベースに話を進めますが、改めて、これまでの他の方法も含めた特徴とメリット、デメリットも確認しておきましょう。
紙・アナログ方法
「紙・アナログ方法」での管理は、主に顧客に関する情報を紙やOfficeファイルの書類として作成・記録し、印刷してファイルやバインダーなどで整理して保管していく従来型の方法です。導入コストや管理の仕方そのもののハードルは低く抑えられますが、検索を軸にした「都度活用・参照」のシーンには昨今大きな手間がかかります。契約書や納品書、請求書、支払明細といった数年的確に保管することが求められるような書類を除き、おそらくこの方法は用いてはいないでしょう。
表計算ソフトベース
Microsoft Excelなどの汎用オフィスソフトウェアで顧客情報を管理していく方法です。専用/特化型のIT製品を導入していないシーンでは大抵はこの方法を用いていると思います。
「顧客管理」のシーンにおいても、Microsoft Excelで必要な項目やフォーマットを設定し、顧客情報を入力することで情報として記録し、管理できます。Microsoft Excelで使える「顧客管理表テンプレート」なども無料配布されているので、こちらをベースに自社で使いやすい形にカスタマイズして使うのもよいでしょう。
Microsoft Excelのメリットは、使い慣れている人が多く、操作を新たに覚える必要が少ないことです。既に社内でMicrosoft Officeを使用しているならば導入コストも新たにかかりません。
しかし、運用シーンにおいては、蓄積するデータがどんどん増えていくに従って「処理が重くなる」「ファイルが破損する」「意図せず更新、削除されてしまう」「ファイルの管理者や更新、運用ルールがあやふやなまま進んでしまう」といった担当者/会社PC/単体ソフトウェア単位で運用する制約や課題がどうしても残ります。
もっともMicrosoft Officeは、複数人でデータを一元化するオンラインファイル共有機能、そして詳しい人がマクロや別途連携ツールを駆使することで高度な顧客管理基盤を構築できたりもします。実際にそうしている企業も多いことでしょう。しかしそれには相応に高い知識やノウハウが必要です。「その詳しい人が退社したら勝手が分からず、運用できなくなる」といった属人化のリスクもあります。
データは、簡単にアクセスでき、更新でき、常に最新の正しい情報として1つに集約されている=一元化されていることが望ましい体制といえます。もし「これから」顧客管理の強化に注力していくならば、顧客管理の目的に特化した以下IT製品の導入を検討することが近道です。
CRM(顧客管理システム)
CRMはカスタマーリレーションシップマネジメント(Customer Relationship Management)の略で、顧客との関係最大化と効率化を目的にするIT製品です。CRMには下記のような機能が備わっています。
- 顧客情報の管理機能
- 顧客分析機能
- マーケティング支援機能
- カスタマーサポート機能
CRMは、顧客との関係構築に特化したIT製品です。顧客の属性情報・接触履歴・購買行動を蓄積することで、個々の顧客に合わせた最適な営業活動が行えるようになるのが大きなメリットです。顧客満足度が高まることで、契約の継続やクロスセル・アップセルを実現でき、LTVの向上にも繋がります。
なお、次に説明するSFA(営業支援システム)は主に営業部門向け、MA(マーケティングオートメーション)は主にマーケティング部門向けに使われますが、CRMは顧客と関わる部署全般で使われます。部署間の情報共有がスムーズになり、連携強化にも役立てられます。
SFA(営業支援システム)
SFAはセールスフォースオートメーション(Sales Force Automation)の略で、営業支援に特化したツールです。SFAには下記のような機能が備わっています。
- 顧客情報の管理機能
- 案件管理機能
- 商談管理機能
- 行動管理機能
- 売り上げ予測・予実管理
- レポート管理機能
SFAは、商談に関するさまざまなデータを記録し、一部業務を自動化できる機能とともに営業活動の効率化を図れます。自動化できる業務は、契約書や見積もり書の作成、顧客リストの作成、商談日程のスケジュール登録、定期的なフォローアップなど多岐にわたります。これらの作業を効率化しつつ、商談や顧客とのやりとりや商品開発のようなコア業務に集中できるようになります。
MA(マーケティングオートメーション)
MAはマーケティングオートメーション(Marketing Automation)の略で、マーケティング活動の効率化・自動化に特化したツールです。MAには下記のような機能が備わっています。
- リード管理機能
- メールマーケティング機能
- フォーム作成機能
- スコアリング機能
- 分析・レポート機能
MAツールによって、マーケティング活動を最適化し、リードから商談につげやすくなる成果を最大化できるようになります。見込み顧客の選別や顧客へのメール配信、顧客リストの作成や営業チームへの情報共有といったことを自動化でき、これまでかかっていた工数を短縮できるのもMAを導入するメリットです。
顧客管理で失敗しないためのコツ
適切な顧客管理を行うためには、従業員一人ひとりが顧客管理の重要性、メリットを認識し、情報を正しく集めて管理入力していかなければなりません。ここでは、顧客管理に失敗しないためのコツを紹介します。
管理する情報を明確に定める
まずは、管理すべき情報を見極めて、最小限に絞ることが大切です。管理する情報が多くなるほど、入力作業に時間がかかり、本来集中すべきコア業務の妨げになってしまいます。また、忙しいから、入力が面倒だからと後回しにすると、せっかくの情報が現場で活用されなくなってしまうかもしれません。自社が抱えている課題やマーケティング戦略に沿って、重要度の高い情報を取捨選択しましょう。
入力フォーマットを統一する
顧客情報の整合性と検索性を向上させるために、入力ルールを確立し、統一することが重要です。
例えば同じ「会社名」の登録なのに、「アイティメディア株式会社」「IT media株式会社」「アイティメディア(株)」のように表記揺れがあれば異なる別の会社として登録され、正しい管理や分析ができなくなる恐れがあります。
もちろん「名寄せ」機能が使いやすい製品もあります。また、データの基礎となる会社情報は「名刺管理システム」と連携して入力フォーマットを統一するといった方法もあります。
情報更新体制を整える
顧客情報を都度最新版へ更新していく体制づくりも重要となるでしょう。誤った情報のまま顧客とやり取りを行うと、「情報を社内で共有できていない会社」「情報をキャッチするのが遅い会社」などと思われてしまうかもしれません。正確な情報でないために適切なタイミングでアプローチできなければ、顧客管理システムで顧客管理する効果の多くが損なわれてしまいます。
顧客管理システム導入のポイント
顧客管理システムにはマーケティング活動や営業活動の最適化に繋がる機能が備わっており、顧客満足度の向上や売上の拡大、LTVの向上が期待できます。複数の顧客情報を一元管理することで情報の共有も容易になり、部署間の連携強化も図れるでしょう。
主要7つの「顧客管理システムの選定ポイント」は以下の通りです。
- 誰でも使いやすいか
- 自社の運用・営業活動スタイルに適しているか
- データを正しく活用できるか
- 予算に合っているか
- 外部システムとの連携はしやすいか
- セキュリティ対策は十分か
- サポート体制は整っているか
(1)誰でも使いやすいか
顧客管理システムは営業チームだけでなく、組織のさまざまな部門で使用されます。直感的に操作できない、使い慣れるまでに時間がかかる、となると、現場で定着せず、導入が失敗に終わってしまうかもしれません。
画面がシンプルで、はじめて使う方でも直感的に使用できるような、操作性の良いシステムを選ぶことが大切です。
(2)自社の営業スタイルに適しているか
顧客管理システムには、アウトバウンド型の営業に特化しているもの、インバウンド型の営業に特化しているもので機能が分けられていることもあります。
自社の営業プロセスに沿った顧客情報の項目やステータスを設定できるか、自社の営業戦略に基づいて分析やレポートを作成できるか、といった点に着目し、自社の営業スタイルに合ったシステムを選ぶことで、機能を最大限に活用できるでしょう。
(3)収集したデータを正しく活用できるか
顧客情報を記録しても、うまく活用できなければ期待した効果は得られません。データの分析が簡単に行える機能、収集したデータをグラフやダッシュボードなどで分かりやすく可視化できる機能など、「分析・レポート」機能の使いやすさもポイントにするとよいでしょう。
(4)予算に合っているか
顧客管理システムを始め、IT製品の導入には初期費用とランニングコストがかかります。費用相場はシステムによって異なり、スモールスタートで始めるシーンには機能を抑えた「月額無料プラン」、あるいは一定期間(30日など)無料で試用できる「無料トライアル」を用意する製品も多くあります。
なお、機能は多ければ多いほどよいわけではありません。たくさん機能があっても結局使わないならば、その分余計なコストになります。本当に必要な機能は何か、費用対効果が見合うかどうかを比較検討しながらシステムを選定しましょう。
(5)外部システムとの連携はしやすいか
前述した通り、顧客管理システムで蓄積する顧客情報は、SFA、MA、名刺管理システム、さらには帳票管理や請求書発行システムなど、事業活動全般の業務とも連携できるものです。顧客管理システムの選定においては、現在使っているシステムも棚卸しし、親和性、連携のしやすさなどのポイントも忘れずにチェックするようにしましょう。
(6)セキュリティ対策は十分か
顧客管理システムは、最も重要なデータの1つである顧客情報を扱います。新システムの導入においては、再度セキュリティ対策の状況や方針を確認し、古かったり、足りなかったりすれば強化することも折り込みましょう。
(7)サポート体制は整っているか
顧客管理システムにはさまざまな機能が搭載されていますが、いきなりそれらを使いこなすには困難です。従業員の「新システムを学ぶ期間、確認する期間」の確保とともに、導入する製品のベンダーには「自社が望むサポート体制があるか/どんなサポートメニューがあるか」は忘れずに確認しましょう。
例えば、データ移行やカスタマイズといった導入時のサポートサービスがあるか、操作確認のためのサポート窓口があるか、障害や不具合が生じたときの支援・解決体制などを確認するとよいでしょう。
顧客管理システムで営業活動の成果を最適化/最大化しよう
顧客管理システムは、あらゆる顧客情報の一元管理を実現するとともに、その「正しく最新のデータ」をさまざまな業務へ活用することで売上の向上、営業活動の効率化につなげられるようになります。顧客の「今欲しい」ニーズや置かれている状況を把握、予測できれば、より効果的な営業活動を展開できるようになるでしょう。
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