在庫管理の効率化や改善を喫緊の課題としている企業の中には、「在庫管理をデジタル化しようにも、何からはじめればよいか分からない」「どんなツールを選べばよいか分からない」と、お悩みの方もいるのではないでしょうか。
この記事では、あらためて在庫管理の目的と考え方、課題、効率化する手法をじっくりと振り返り、主にクラウド型/SaaS型在庫管理システムの導入をふまえたデジタル時代の管理方法、製品の選び方を分かりやすく解説します。
目次
在庫管理とは?
在庫管理とは、企業や組織が自社の商品や材料、資材、原材料、部品などの在庫数を把握し、適正な水準に保つことを指します。必要な時に必要な分の品物を供給できるようにしておく業務で、顧客の求める商品を提供するためには欠かせません。適切な在庫管理ができると在庫のムダがなくなり、利益の最大化を図れるようになります。
従来の在庫管理は、在庫数を人の手で数えて必要な量を発注するようなアナログな手法で行われていました。しかし、昨今の人手不足やリモートワークの増加、DX推進などさまざまな理由から、在庫管理をデジタル化して効率化する方法が一般的になっています。
在庫管理の方法
紙ベースの在庫管理表で管理する
紙ベースの在庫管理表は、最も基本的でコストがかからない方法です。在庫の入出庫を手書きで記録し、定期的に棚卸しを行って在庫数を確認します。初期投資がほぼ不要で簡単に始められますが、手作業によるヒューマンエラーや記録の紛失、更新の手間が大きなデメリットです。小規模なビジネスや在庫量が少ない場合に適しています。
エクセルで在庫管理表を作成する
エクセルを使用して在庫管理表を作成する方法も多くのシーン、小規模なビジネスや予算の限られた企業にも適する、オフィスシーンでPCを用いた基本的な方法です。PC操作で在庫データを入力し、関数やフィルター機能なども駆使しながらデータを記録し、管理します。初期コストが低く、カスタマイズも容易ですが、手動入力によるヒューマンエラーが発生するリスクは残り、また大量/大規模なデータの処理には限界があります。
バーコードやRFIDを使用する
バーコードとRFID(Radio Frequency Identification)技術を用いて在庫を管理する方法です。バーコードは手軽でコストも比較的低く抑えられることから、既に広く利用されています。RFIDは非接触での読み取りが可能で、一度に複数のアイテムを読み取ることができるため、在庫の精度とスピードが向上します。リアルタイムの在庫追跡なども可能となります。
在庫管理システムを活用する
在庫管理システムは、在庫の追跡、発注管理、レポート生成など多くの「在庫管理」に特化した機能を備えたソフトウェア、IT製品です。リアルタイムで在庫状況を把握でき、効率的な在庫管理が可能です。初期コスト、運用コストはかかりますが、長期的には在庫コスト削減や業務効率化に大きく貢献することが期待されます。
昨今は、中~大規模シーン向けであった自社専用設計のオンプレミス型だけでなく、小中規模の企業にも適するクラウド型/SaaS型の製品も急増し、一般的になってきています。
在庫管理を効率化する主な手法・分析手段
ABC分析
ABC分析は、在庫品目を重要度に応じてA、B、Cの3つのカテゴリに分類する手法です。Aカテゴリは最も価値が高く(例えば売上高が多い、など)、Bカテゴリは中程度、Cカテゴリは低価値と位置付けて分類します。この方法により、重要度に応じて効率的な在庫管理を行うことができます。
定量発注システムの構築
定量発注システムは、在庫が一定の水準を下回ったときに、あらかじめ決められた数量を発注する仕組みを構築し、運用する方法です。常に一定の在庫量を保つことができ、在庫切れを防ぎたいシーンに効果的です。発注点と発注量を適切に設定することで、効率的な在庫管理を実現できます。
定期発注システムの構築
定期発注システムは、一定の間隔で在庫をチェックし、必要な量を定期的に発注する仕組みを構築し、運用する方法です。例えば毎月末や毎週末といったタイミングで在庫を確認し、在庫が一定のレベルを下回っていたら自動発注します。この方法は予測が難しい需要に対して柔軟に対応したいシーンにメリットがあります。
先入先出法(FIFO)
FIFO(First In, First Out)は、最初に入庫した商品から順に出庫する在庫管理手法です。食品や医薬品のような消費期限や有効期限がある商品の管理に適しています。古い在庫を先に使用し、在庫の陳腐化を防ぎます。
安全在庫
安全在庫は、需要の変動や供給の遅延に対するリスクを軽減するために、追加の在庫量を保持しておく考え方、ないしその手法です。適切な安全在庫の値を設定することで欠品のリスクを最小化できます。安全在庫のレベルは需要予測の精度やリードタイムのばらつきに基づいて定めます。
バーコードやRFIDの活用
バーコードとRFIDは在庫の追跡と管理を効率化するための技術、機能です。バーコード機器やRFIDの仕組みは既に広く普及しており、導入方法やシステムへの連携性も大抵の場合は考慮されていることから、選択肢も幅広くあります。特にRFIDは非接触での読み取りが可能で多くの情報を一度に処理できるため、在庫管理の精度とスピードを向上させる効果が期待できます。
経済的発注量(EOQ)
経済的発注量(EOQ/Economic Order Quantity)は、発注コストと在庫保有コストを最小化するための理想的な発注量を算出する分析手法です。このモデルを使いて適切な発注タイミングと数量を決定することで、過剰在庫や欠品を防ぎます。EOQの計算式は、発注コスト、年間需要量、在庫保有コストのデータをもとに算出されます。
需要予測
需要予測は、将来の需要を分析し、在庫の適正量を計画する手法です。過去の販売データ、季節的な変動、トレンド分析など、さまざまなデータを活用して需要を予測します。この需要予測に基づいて在庫を調整することで、過剰在庫や欠品をのリスクを最小化し、効率的な在庫管理を実現します。
キッティング
キッティングは、必要な部品や材料を1つのキットとしてまとめ、組み立てや生産ラインへ供給する手法です。この方法により組み立ての効率が向上し、作業時間の短縮やミスの減少が期待できます。特に、製造業や組み立てラインでよく使用されます。
ランダムロケーション方式
ランダムロケーション方式は、在庫品の置き場所を特定の位置に固定せず、空いているスペースへランダムに保管する方法で、それを計算し、指示するシステムと共に、倉庫のスペースを最大限に活用するために用いられます。大規模な倉庫や多品種少量生産の業種に向いています。
ジャストインタイム(JIT)
ジャストインタイム(JIT)は、必要なものを必要なときに、必要な量だけ生産・供給する在庫管理の手法です。在庫の保有量を最小限に抑え、無駄を削減することを目指すシーンで用いられます。製造業を中心に広く採用されており、供給の安定性とコスト削減に寄与します。供給チェーン全体での高い協力と精密なタイミングが求められますが、効率的に運用できれば在庫コストの大幅な削減が見込めます。
このほかに、サプライヤーが顧客の在庫を管理する「ベンダー管理在庫(VMI)」、ビッグデータや機械学習を活用して未来の需要をより高度に予測する「予測分析」、最後に入庫した商品から順に出庫する「先入後出法(LIFO)」、在庫を持たずにサプライヤーから直接顧客へ配送する「ドロップシッピング」といった手法もそれぞれのシーンで用いられています。
在庫管理の課題
多くの企業が在庫管理で抱える課題には、過剰在庫によるコスト増加と在庫不足による販売機会の損失が挙げられ、それを解消する方法や手段が求められています。これらの問題は、手動での管理やエクセルによるデータ入力の限界から生じるヒューマンエラーやタイムラグ、データの確実性が低いことが原因です。
これらの課題を解決するために、デジタルデータで一元管理し、リアルタイムで正確な在庫情報を提供し、効率的な在庫管理を実現するITシステムである、在庫管理システムを導入する企業が増えています。
在庫管理システムとは?
在庫管理システムは、企業が在庫の入出庫、追跡、最適化を効率的に行うためのITシステム/IT製品です。デジタルデータを軸に在庫管理の効率向上に特化した機能で在庫管理を効率化し、リアルタイムで正確な在庫管理を行える体制を強力に支援します。バーコードやRFIDデバイスとも自然に連携でき、自動的に発注点を設定したり、在庫レポートを生成したりする機能も備えることで、在庫不足や過剰在庫を防ぎ、業務の効率化とコスト削減を実現します。
在庫管理システムの機能
在庫管理システムの機能には、従来のアナログ手法を効率化できるものが搭載されています。標準的な機能について紹介します。
物品登録
在庫数や保管場所を確認するために、在庫物品データを登録する機能です。スマートフォンや二次元コード入力等によるデータ入力機能を使って登録します。既存のエクセルデータや社内システム内のデータを転送できるようになっているため、従来の方法からの移行もスムーズに行えます。
二次元コードを生成し、ラベルシールを印刷して貼付できる機能がついていると、倉庫の現場作業者がその場でスキャンするだけで、在庫数や保管場所を確認できます。その他、視覚的に在庫や備品を確認できるよう、画像を登録できる機能を搭載したシステムもあります。
入出庫の記録・共有
入庫や出庫の記録を二次元コードなどのスキャンで入力し、情報を更新する機能です。倉庫での荷受けや出荷を行う際、検品完了後にデータを反映すれば、その場で数量の増減を記録できます。記録はリアルタイムで更新、共有されるため、報告書を作成する手間が省けるうえ、あらためて共有する必要もありません。
在庫管理システムによっては入庫データから発注書を、出庫データから納品書を自動で作成する機能もついており、書類を作成する手間が省けるため、業務効率が大幅に効率化されます。
在庫検索
多くの在庫管理システムに搭載されているのが、今ある在庫を検索できる機能です。
検索方法には絞り込みやフィルターによる検索、二次元コードスキャンによる検索があります。リアルタイムで情報が更新されているので、デスクや倉庫、工場など、どこからでも最新のデータをその場で確認できます。在庫確認の手間が省かれるのはもちろん、すばやく確認できるため、顧客や他部署からの問い合わせの返答もスムーズに対応できます。
在庫管理
現在の在庫数に加え、入出庫予定を加味した在庫管理ができます。将来的に利用できる在庫数も把握できるため、在庫数の設定しきい値を監視してその数を下回ったら新たに発注を促す自動アラートや自動設定を設けることも可能です。
この機能を活用すれば、補充すべき商品の数量やタイミングを把握できるようになり、在庫不足を回避できます。過剰在庫の抑制にもつながるため、売り上げの改善を図れます。
在庫データを操作・変更した履歴は自動的に記録されるため、実際の在庫数と在庫データに違いがある場合、原因調査にも活用できます。
外部システムとの連携
在庫管理システムとEC一元管理ツールやPOSレジシステムなどの外部サービスと連携できる機能です。
販売データを取り込んで在庫減少を反映させることができるため、ECサイトや小売店などを持つ企業に適しています。在庫管理システムと外部システムを連携すれば、より正確な在庫データをリアルタイムで確認、共有できるようになります。
在庫管理のデジタル化/効率化で得られる効果
在庫管理をデジタル化することによって、以下のような効果を得られます。
(1)在庫コストの削減
在庫管理では、常に適切な在庫を維持し続けることが重要です。過剰在庫が起こると保管や廃棄にコストがかかりますし、逆に在庫切れが生じると、供給が停滞して顧客への商品・サービスの提供に影響を与えてしまいます。
デジタル化した在庫管理システムで適切な在庫レベルを維持することにより、過剰な在庫や在庫切れの最小化を図れます。
さらに、適切な在庫管理ができれば在庫コストも削減されます。これまで在庫管理にかけていた資本を他の重要なプロジェクトに投資できるようになり、結果として収益性の向上につなげることもできます。
(2)生産効率の向上
在庫管理は、需要予測とリードタイムの管理と密接な関わりがあります。在庫管理システムでは過去の需要データや市場の変化を考慮して需給を予測し、リアルタイムの情報と照らし合わせることができます。
需要予測とリードタイムを考慮しながら在庫を調整できれば、生産スケジュールとリソースの割り当てを最適化し、生産ラインの停止や過度の在庫処分を回避できるようになります。
これによって生産効率が向上し、生産コストの削減につながります。
(3)サプライチェーンの最適化
在庫管理システムは、リードタイムを短縮し、需要と供給を的確に調整できます。サプライチェーン全体の過剰在庫や不足を防ぐことができれば、企業の生産体制そのものをまるごと最適化することもできるのです。サプライチェーン全体の効率化によって顧客満足度が向上すれば、競争力の維持にも貢献します。
在庫管理を人の手で行うか自動化するかによって、企業の収益性や効率性、競争力を大きく左右することが分かります。
在庫管理システム導入のメリット
- 在庫コストを削減できる
- 生産効率を高められる
- サプライチェーンの最適化を図れる
- 顧客満足度の向上に寄与する
- 在庫精度を高められる
- ビジネス判断/意思決定を迅速化できる
在庫コストを削減できる
在庫管理システムを導入することで、適切な在庫量を維持し、過剰在庫や不足在庫を防ぐことができます。これにより、在庫保有コストや保管スペースの無駄を削減し、キャッシュフローの改善が期待できます。また、リアルタイムで在庫状況を把握することで、必要なタイミングでの発注が可能となり、無駄なコストを抑えることができます。
生産効率を高められる
在庫管理システムは、必要な部品や材料を迅速に特定し、供給することで生産プロセスの効率を向上させます。これにより、部品の欠品や過剰供給を防ぎ、生産ラインの停止を回避できます。さらに、システムにより作業者の手間が減り、作業時間が短縮されるため、全体の生産効率が向上します。
作業効率を高められる
在庫管理システムは在庫の入出庫や棚卸し作業を自動化し、手動作業の手間を削減します。バーコードやRFID技術を活用することで、在庫の追跡が迅速かつ正確に行えます。結果として、作業員の負担が軽減され、他の重要な業務に集中できるため、全体の作業効率が向上します。
サプライチェーンの最適化を図れる
在庫管理システムは、サプライチェーン全体の可視性を高め、供給元から顧客までの流れを最適化します。これにより、サプライヤーとの連携が強化され、リードタイムの短縮や供給の安定化が実現します。正確な在庫情報を共有することで、サプライチェーン全体の効率が向上します。
顧客満足度の向上に寄与する
在庫管理システムにより、欠品や納期遅延を防ぐことで、顧客への迅速な対応が可能になります。正確な在庫情報を基にした迅速な発注と配送が実現し、顧客満足度が向上します。これにより、リピーターの増加や顧客の信頼性向上に寄与します。
在庫精度を高められる
在庫管理システムは、リアルタイムで在庫データを更新し、正確な在庫情報を提供します。これにより、手動での在庫管理に伴うヒューマンエラーを減少させ、在庫精度が向上します。正確な在庫情報は、発注計画や生産計画の精度を高め、効率的な在庫管理をサポートします。
ビジネス判断/意思決定を迅速化できる
在庫管理システムは、在庫データの収集と分析を容易にし、経営判断の質を向上させます。過去のデータを基に需要予測やトレンド分析を行うことで、より的確な発注や生産計画が可能となります。また、データに基づいた意思決定が迅速に行えるため、ビジネスの柔軟性と競争力が高まります。
在庫管理システムの種類、導入に向けた選定ポイント
自社に適した在庫管理システムを選定するポイントは、やはり「自社の業種や規模に適しているかどうか」と「その機能を使いやすく備えているかどうか」となるでしょう。ここからは、在庫管理システムの種類とともに「クラウド型」の在庫管理システムに備わる主要な機能をおさらいしましょう。
在庫管理システムの種類
在庫管理システムには、基本機能を備えたスタートアップや小規模企業向けのシステム、高度な機能がついた大規模企業向けのシステムまで、さまざまなタイプがあります。
基本機能型システム/汎用ソフトウェア
基本機能型は、在庫トラッキングや在庫管理を記録する基本機能のある導入シーンで、在庫管理のパッケージソフトウェアあるいはMicrosoft Excelを併用する運用シーンが該当します。
小規模・個人事業主単位の活用シーンや、今できていることさえできればこのままでOKとする業務シーンならば、コストを抑えたい/自社の業務フローに合わせた基本機能を利用できればよいといったニーズになります。基本機能型/汎用ソフトウェアで十分であることも多いでしょう。
一方で、今後事業を拡大する予定のある場合や拠点を複数持つ企業ならば、事業シーンや業務拡大に伴って機能が足りなくなることもあります。
これから事業を拡大する、複数の拠点展開を控えているといった「これから」の計画も多く抱える企業ならば、必要な機能を柔軟に取捨選択でき、また機能の仕様もある程度柔軟にカスタマイズできるクラウド型の製品がすすめられます。
中規模向け在庫管理システム
中規模シーン向けの在庫管理システムは、入出荷データを管理する基本的な機能とともに、発注動向などから在庫を自動管理したり、リードタイム管理をサポートしたりといった、高度な管理機能も備えるシステムが該当します。これらはクラウド型として提供されるのが一般的で、現場やオフィスはもちろん、出先のPCや担当者のスマートフォンなど、さまざまな場所やデバイスでアクセスでき、情報共有ができるようになっています。
必要な機能を選んでカスタマイズできるシステムが続々と登場しており、複雑な在庫プロセスを持つ企業や中規模の企業、成長中の企業に向いています。クラウド型の利点を生かし、業種や規模に合わせて複数の、かつ柔軟な料金プランやオプションメニューを設定する製品が多く、成長などに応じたプラン変更も比較的容易で、柔軟です。これからIT製品を選定するならば、基本機能型より自社に適した製品がみつかる可能性が高いといえるでしょう。
大規模シーン向け在庫管理システム
大規模シーン向けの在庫管理システムは、在庫管理とともに、エリア管理や複数拠点の管理、棚卸機能などの高度機能も備え、大規模な組織や複雑なサプライチェーンを持つ業種、業態に適応できるように作られています。グローバル企業向けに多言語対応機能を備えた製品も多いです。
このような大規模企業向けシステムは、在庫管理だけでなく、製造、流通、販売、財務会計、人事管理などを統合的に取り扱うERP(企業資源計画)パッケージと統合されることもあります。
在庫管理システムをERPと統合すると、製品を製造した際に自動で在庫情報や会計情報を更新できるようになります。販売を行った際も同様で、販売データに基づき、自動で在庫情報を減少させることができます。
在庫管理システムの選定ポイント
ここからは、在庫管理システムを選ぶ際に検討すべきポイントを解説していきます。
- 機能・ビジネスニーズの適合性の評価
- 機能の要件
- 拡張性・カスタマイズ性
- ユーザーフレンドリー性
- 互換性
- 可用性と信頼性
- コストとROI
(1)機能・ビジネスニーズの適合性の評価
その在庫管理システムが自社の業務に役立つ機能か、どの業種に特化して作られたかを確認しましょう。在庫の規模や管理の複雑さ、需要予測などを考慮したうえで、有効活用できるかを検討する必要があります。
ITセレクトは、貴社の課題・目的・予算に合わせてピッタリの在庫管理システムをご紹介しています。
(2)機能の要件
在庫トラッキングや自動再発注、需給管理、リードタイム管理など、どの機能が必要かを定めます。導入したい在庫管理システムが、必要な機能だけを選定して柔軟にカスタマイズできるかもチェックしておくと、導入コストを抑えられる可能性があります。
(3)拡張性・カスタマイズ性
低コストで導入できるからと言って、最低限の機能だけを備えた在庫管理システムを安易に選ぶのは早計です。将来的にビジネスが成長することも考慮して、システムの拡張可能範囲なども確認しておきましょう。規模の拡大のみならず、複数の業種展開などの複雑な管理を見据え、カスタマイズ性が高いかもチェックしましょう。
(4)ユーザーフレンドリー性
社内にシステムを浸透させ、いち早く業務効率を高めるためにも、従業員がシステムをスムーズに操作できるかは重要です。インタフェースが使いやすく、トレーニングや導入に時間がかからないかどうかを検討します。クラウド型システムの場合、在庫管理の担当者だけでなくオフィスや営業など、他部署の従業員が使いやすいかも確認しましょう。
(5)互換性
社内の既存システムとの互換性がないと、システムの移行に時間がかかるばかりか、移行作業のために業務負担を増やすことにもなりかねません。
既存システムと互換性があるか、EC一元管理システムやPOSレジなどの外部サービスとの連携や、ERPとの統合が必要かを確認し、スムーズに不導入できるかをチェックします。
(6)可用性と信頼性
在庫管理システムはあくまでも仕組みであり、提供されるソリューションです。いつどのようなエラーが起きるかは予測できませんし、導入後に思わぬトラブルが起こる可能性もあります。
障害などのトラブルが起きた際にも、迅速に対処してくれるサポート体制が整ったシステムを選定するようにしましょう。
(7)コストとROI
在庫管理システムは、多機能なほどコストがかかります。自社に必要のない機能や複雑で使いきれない機能までにコストをかけていると、費用対効果を得られなくなります。長期的な運用や得られる効果を踏まえ、投資対効果(ROI)を見極めたうえで予算内に収めることが重要です。
在庫管理システムの効果的な活用ポイント
1.在庫管理の効果的な戦略
企業の経営や業績に悪影響を与える過剰在庫や在庫不足。適正な在庫水準を実現するためには、まず自社に最適な在庫戦略を策定することからはじめます。
顧客が必要な時に、迅速に部品を提供するのを強みにする企業であれば、常に在庫を一定の水準に保つ必要がありますし、部品の種類が豊富な点を強みにするのであれば少量の在庫を数多く揃えておくことが必要となります。販売をメインに行う企業であれば、なるべく自社では在庫を抱えず、最適なタイミングで卸業者に提供できるかが求められるでしょう。
在庫を持つ・持たない理由を明確にすることで、過剰在庫や在庫不足を防げるようになります。
2.在庫最適化のための技術の活用
適切な在庫を実現するために、IoTやAI、予測分析などの新たな技術を用いるのもひとつの手です。在庫管理システムの中には、AIで顧客の需要を予測し、発注業務の効率化や在庫管理の高精度化を図れるものが登場しています。過去のデータから発注量を計算するのはもちろん、季節要因や気候など、より細かな条件を反映させることができるシステムもあり、欠品や在庫過多を防止することができます。
3.リアルタイムデータ分析とレポート機能
日々変動する在庫データを分析すれば、自社の適正在庫を割り出すことができますし、自社の在庫管理に問題が無いかをチェックし、問題点を見つけて改善することも可能です。
これまで、在庫データ分析は目視や人の手によって確認し、計算が行われていました。しかし、そこで不備があると在庫分析の結果にも影響が出てしまい、業務改善にはつながりません。
在庫管理システムでリアルタイムデータ分析ができれば、人為的なミスを防ぎながら細かなデータ分析ができます。また、レポート機能で在庫の動向や売上データ、発注履歴などの過去のデータを基にして、戦略的な判断ができるようになります。
在庫管理システムの導入事例
実際に在庫管理システムを導入し、抱えていた課題を解決した企業の事例を紹介します。
在庫管理の効果的な戦略や在庫を最適化するための技術活用など、在庫管理システムを最大限に活用するための参考にもなります。
名古屋ボデー株式会社の場合:「Smart Mat Croud」を導入し、発注・棚卸の円滑化を実現
商用トラックの荷台製造を行う名古屋ボデー株式会社では、車両製造におけるボルトなどの部品管理に課題を抱えていました。これまでは、従業員2人が毎朝30分をかけて目視で在庫を確認し、表に在庫数を記入する作業をしていました。毎月の棚卸し時には、3人がかりで丸2日間もかかるほど手間を要していたのです。在庫管理システムを導入し、稼働在庫のみの部品管理を行い、在庫データを可視化したところ、作業時間が約半分に減少。よく使う部品と使わないデータも明確になり、発注と棚卸業務がスムーズになりました。
循環器系医療機器輸入販売企業の場合:「glan system」を導入し、預託先の在庫状況をリアルタイムに把握
カテーテルなどの循環器系医療機器の預託販売を行うある企業では、預託販売先の在庫把握で情報のギャップが生じ、自社在庫と預託在庫の管理や運用に課題を抱えていました。そこで、クラウド型の在庫管理システムglan systemを導入。預託先の販売代理店とクラウドで在庫情報の共有を行ったところ、正確な在庫把握と作業全体の効率化を実現しました。
グローブライド株式会社の場合:「Dynamics 365 Business Central」を導入し、アジア圏の販売会社と連携した在庫管理を実現
アジアを中心に国内外でスポーツ用品の販売会社を持つこの企業では、メールとFAXをメインに輸出入業務を行っていました。すべての受発注を手作業でオンラインシステムに入力していたため作業に時間がかかっていたほか、在庫管理がシステム化されていなかったため、在庫の調整や在庫確認を共有できず、アジア販社からの注文や問い合わせに対して、返答が遅くなる課題がありました。
そこで、多言語対応でグローバルに連携ができ、在庫管理も行えるERPシステム「Dynamics 365 Business Central(旧Dynamics NAV)」を導入。受発注がシステム化され、業務効率が大幅に改善されました。在庫情報が可視化されたことで問い合わせに対するレスポンスも改善し、売上向上にもつながりました。
在庫管理システム、今後のトレンド
低コストで導入しやすい<strong>クラウド型在庫管理システム</strong>が登場し、浸透してきた昨今。ECサイトやPOSレジなどの外部サービスと連携して一元管理するサポート機能も充実してきました。
在庫管理システムが進化を続けると、今後はどのような発展が考えられるのでしょうか。ここからは、在庫管理システムの今後のトレンドについて紹介します。
グリーン在庫管理の台頭
持続可能性(サステナビリティ)への関心が高まる中、温暖化対策や資源の有効利用など、地球環境に配慮した「グリーン在庫管理」も企業戦略として重要になっていきています。適正な在庫管理ができれば廃棄ロスの削減につながりますし、物流の段階においても輸送によって排出されるCO2を減らすことができ、環境問題への対応が可能です。
ブロックチェーンと在庫管理
在庫管理にブロックチェーンの仕組みを活用することで、商品がどこにいくつあるのかが正確に管理できるようになります。ブロックチェーンを活用したシステムで物流を管理することで、将来的には仮想通貨による商品決済も可能になります。
また、ブロックチェーンが持つ、情報が改ざんされにくい特性を活用すれば、貿易の税関向けの提出書類や業務中に発生する実績証明、エビデンスなどもブロックチェーン上で管理できるようになります。
高い正確性と透明性を確保できる手段として、今後はブロックチェーン技術が物流の現場にも普及してくると考えられています。
AIと機械学習の活用
AIが搭載された在庫管理システムはすでに登場しており、幅広い業務改善に役立てられています。画像認識ができるAIカメラを使えば棚の状況をリアルタイムで確認・管理ができますし、在庫の検知や発注ミスを防いでくれます。これまでは当たり前だった二次元コードによる入力作業も、AIの登場によって省人化が進んでいます。
機械学習の進化にも目を見張るものがあります。過去の売り上げや季節によるニーズの変動、顧客属性から、より高精度な需要予測ができるようになってきています。
担当者の経験や勘といった主観的な予測ではなく、客観的な予測分析に基づいた適正な在庫管理は、競争優位性の確立にも役立つでしょう。
クラウド型在庫管理システムの導入で、「効率的」かつ「適正」な在庫管理の実現を
過剰在庫や在庫不足は、業務の停滞はもちろん、企業の経営そのものに影響を及ぼす可能性のある重要な課題です。目視による在庫管理は人手や時間を割くだけでなく、従業員への負担増大から人為的なミスも招きかねません。
在庫管理業務の負担を減らしつつ、適正在庫を維持して利益を最大化するなら在庫管理システムの導入がおすすめです。自社の業種や規模、費用対効果に見合った在庫管理システムを導入し、生産効率の向上を図りましょう。
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