ビジネスを運営する上で欠かせない業務の1つに「受発注管理」があります。本記事では、無料で利用できる受発注システムの選択肢と、それらを活用するメリットについて詳しくご紹介します。ビジネスの成長に合わせて最適な受発注システムを選択できるよう、まずは「無料で始められる」受発注システムから検討してみてはいかがでしょうか。
目次
「無料」で受発注管理を行う方法
受発注管理を「無料」で行う方法はいくつか存在します。「コスト」を極力抑えたい小規模企業や個人事業主にとって、やはりコスト面の考察はとても重要です。
・汎用表計算ソフトウェアを使う
Google SpredsheetやMicrosoft Excelなどの汎用表計算ソフトウェアを活用して、受発注データを管理しているシーンは多いでしょう。
例えば、「FAXや電話、電子メール」をベースに受発注を行いつつ、内容、注文の追跡、在庫管理、日付などの項目を表組みにし、情報を適宜記録して管理する手段です。
基本は無料/コスト増なく使え、大抵は誰でも使えるハードルの低さが利点です。マクロやデータ参照機能、データの自動更新など表計算ソフトウェアの持つ機能を使いこなし、駆使する工夫により、高度な管理機能を持つ社内アプリケーションにまで作り込まれることも多いです。
しかし、多くの場合は手作業となります。複雑になり量が増えるほど、効率化どころか……作業者への業務負担となりがちとなる課題、あるいは一部の担当者“しか”が分からないような「属人化されていく」課題が出てきます。
汎用表計算ソフトウェアでの管理は、個人単位、チーム単位くらいならばまだしも、部単位、部門単位、全社単位でとなると、業態やビジネスの成長に伴って処理能力やデータ量の制約に直面して使えなくなり、それが大きな問題となってしまう可能性があります。
・オープンソースのERPを使う
オープンソースシステムの活用も有効な選択肢です。例えば、「Odoo」や「ERPNext」などのオープンソースERPシステムが挙げられ、これを用いて社内向けの受発注システムを比較的低価格に自社構築する手段です。
オープンソースソフトウェアでのシステム構築は、設計、カスタマイズ、そして構築にいたるまでかなり高度なIT知識が必要となります。また、ソフトウェアは無料でも、サーバをはじめとするハードウェアや周辺機器類と運用環境の構築にはそれなりのコストと時間はかかります。
無料版では十分なサポートが提供されていないこともほとんどです。「自己責任で」になると考えると、自己解決ができる知識・技術力のあるIT部門/技術開発部門ではない、小規模シーンや業務部署単位での導入はよほどの知識や明確な需要がなければ難しいかもしれません。
・「受発注システム」を導入する
Excelでは機能・運用面で限界がある、オープンソース型では知識・構築面で難しい。そこでこれらの課題を手っ取り早く解決し、昨今多くの企業が導入しているのが「受発注」の機能を汎用的に備えたクラウド型の「受発注システム」です。
クラウド型として販売される受発注管理システムにも、以下のパターンで無料で利用できる製品があります。
- 小規模シーン向けに「無料プラン」を設け、一定の条件のもと無料で使える製品
- 一定期間、無料で“試用”できる「無料トライアル」を用意する製品
IT製品は原則として「有料」であることは念頭に置いてもらいつつ、「無料版」は個人事業主から小規模シーンでの導入に向け、または「選定・検討に向けた機能チェック/お試しのため」に用意されます。
「一定の条件」とは、利用できる機能が基本的なものに限られる/利用できるユーザー数に制限がある/保存できるデータ数に制限がある/保存期間に制限がある/広告が表出するなどがあります。
どんな機能があるのか、自社の課題をどう解消してくれそうか。どんな製品がよいか/自社に向いているのかどうかが分からない/料金プランがたくさんあって分からない、といった人は、まずは「無料版」から試してみてはいかがでしょう。「試した」上で無料プランでいけるのか、有料プランが向くのかを決めるのでも決して遅くはありません。IT製品の導入で課題解決、そして成果を上げていくための第一歩となるはずです。
受発注システムに求められる機能
受発注システムは、注文・在庫確認・請求書発行といった一連の業務を統一したシステム/画面上で進められます。「受発注システムの導入」を検討しており、自社に必要な「システム導入における要件を定めている」人に向け、受発注システムに求められる基本機能、あるとさらなる効率化につながる機能とポイントを以下に示します。
受注業務の主な機能
機能 | 概要 |
受注管理機能 | 最も基幹となる機能。受注情報を一元管理する |
受注アラート | 受注をメールや通知で通知する機能 |
在庫管理 | 在庫の数や状態を整理する機能 |
出荷管理 | 出荷状況を明示する機能 |
顧客管理 | 受注履歴や商談の記録を残す機能 |
帳票の発行 | 受注情報から納品書や請求書を自動発行できる機能 |
データ出力 | 書類をCSVやPDFの形式で出力できる機能 |
発注業務の主な機能
機能 | 概要 |
発注管理機能 | アラートやリマインド、発注内容の流用機能など |
発注状況の確認 | 出荷状況を通知し、到着時期の予測に利用できる機能 |
発注先管理 | 発注先の企業情報を整理する機能 |
帳票発行 | 発注情報から発注書や伝票を自動発行する機能 |
データ出力 | 書類や分析データをCSV・PDFで出力する機能 |
レポート | 発注個数や金額をデータにまとめる機能 |
さらなる効率化につながる付随機能
機能 | 詳細 |
SNS連携通知機能 | LINEやSlackなどと連携して受発注を通知 |
メッセージ・メール | 受注者・発注者間でメッセージやメールのやり取りができる機能 |
ワークフロー(発注側) | 発行した発注書の社内申請をスムーズに行う機能 |
その他、受発注システム選定のチェックポイント
ポイント | チェック要素 |
自社の業種・業態にあった機能や実績があるか | 受発注システムによって、得意とする業種・業態が異なります。製造業向けか卸売業者向けか、BtoBかBtoCかなど、自社が該当する業種・業態での導入実績はあるか、適した機能があるかは必ずチェックします |
カスタマイズ性、カスタマイズ可能な範囲 | 「自社の業務や要件」に適応できるよう、機能や仕様を必要に応じてカスタマイズできるか、自由度はどれほどかを確認します |
システム連携性 | 在庫管理システムや顧客管理システムなど、自社の既存システムと、どれだけシームレスにデータ連携ができるかどうかを確認します |
操作性 | 受発注システムは自社だけでなく取引先にも使ってもらう可能性もあるでしょう。これらも踏まえて、操作性に問題がないか、また、取引先にも業務効率化などのメリットがあるかを確認しておきましょう |
対応デバイス | スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末でも扱えれば、担当者の利便性、機動性が格段に上がります。リモートワークや出張時などへの対応にも効果的ですし、PCに不慣れな人でも扱えます。昨今、確認しておくべきポイントの1つです。 |
サポート体制 | 導入時や導入後に何かあった場合にどんなサポートを、どこまで、どのように受けられるのかどうかを確認しておきましょう |
無料で始められる受発注システム5選
無料トライアル、あるいは無料プランを用意する、評価の高いクラウド型受発注システム」を5つピックアップしました。ビジネスの効率化を図る最初の一歩として、これらのシステムより「試用」してみてはいかがでしょうか。
Bカート
製品の特徴 | BtoBのEC受発注業務に特化しているため、カスタマイズが不要。連携可能サービスが豊富で柔軟性が高い。最短3日で利用開始可能 |
主な機能 | 価格管理、販路管理、決裁管理など |
提供形態 | クラウド |
無料期間 | 30日間 |
対応機種 | モバイル対応 |
アカウント数 | 無料期間:10
有料プラン:50~ |
サポート体制 | あり |
有料プラン | 初期費用:80,000円
月額:9,800円~ |
ベンダーのWebサイト | https://bcart.jp/ |
CO-NECT
製品の特徴 | FAX/電話からの受発注を脱却し、販売管理・請求書発行の効率向上を図る機能備えた製品。「LINEからの発注」に対応する機能なども搭載 |
主な機能 | 販売管理・請求書発行、取引先への販促メール送信など |
提供形態 | クラウド |
無料期間 | 2週間のトライアルトライアル無料で使えるフリープランあり |
対応機種 | スマートフォン
タブレット パソコン各種 |
アカウント数 | フリープラン:1
有料プラン:99~ |
サポート体制 | メール対応、電話対応もあり |
有料プラン | 初期費用:0円
月額は要問合せ |
ベンダーのWebサイト | https://conct.co.jp/service/ |
freee販売
製品の特徴 | 営業管理から受発注管理・入出金管理までを一元化し業務を効率化する販売管理システム。案件別収支も可視化可能 |
主な機能 | 受発注状況や商談情報、取引先情報をまとめて管理 |
提供形態 | クラウド |
無料期間 | 30日間 |
対応機種 | 要問合せ |
アカウント数 | 要問合せ |
サポート体制 | チャット、メール対応、電話対応もあり |
有料プラン | 初期費用:要問合せ
月額:1,300円 ユーザー追加:260円 |
ベンダーのWebサイト | https://www.freee.co.jp/sales-management/ |
COREC
製品の特徴 | WebでBtoB取引を行うクラウド受発注システム。発注者は、カンタン操作で発注書を作成し、メールやFAXで送信が可能 |
主な機能 | Webで簡単に注文フォームを作成して受注可能 |
提供形態 | クラウド |
無料期間 | 無料プランあり |
対応機種 | スマートフォン
タブレット可能 |
アカウント数 | 要問合せ |
サポート体制 | 要問合せ |
有料プラン | 初期費用:0円
ビジネスプラン 受注側月額:2,980円 発注側月額:1,980円 |
ベンダーのWebサイト | https://corec.jp/ |
楽楽B2B
製品の特徴 | BtoB向け受発注システム。取引先別に表示商品や価格を設定可能。掛け率や指値、ロットごとの割り引き設定もできる柔軟性が特徴 |
主な機能 | 取引先別に表示商品や価格を設定可能 |
提供形態 | クラウド |
無料期間 | 無料デモンストレーションあり |
対応機種 | スマートフォン
パソコン |
アカウント数 | 要問合せ |
サポート体制 | あり |
有料プラン | 初期費用:100,000円〜
月額:50,000円〜 |
ベンダーのWebサイト | https://raku2bb.com/ |
無料で始められる受発注システムのメリット・デメリット
現代の「速さ」「正確性」「柔軟性」を求めるビジネスにおいて受発注システムは不可欠といえるIT製品ですが、これまでの方法を捨て、刷新していくのには超えるべきいくつかのハードルがあるのも事実です。ここでは、「無料」ではじめられる受発注システムの利点と注意点を紹介します。
●クラウド型製品のメリット
無料で始められる受発注システムは、特に「コスト」を抑えたい企業に大きな利点があります。機能や期待できる効果・成果が分からないのに、いくら初期投資費を抑えられ、サインアップすればすぐ使えてしまうクラウド型だといっても、本契約に伴って月額/年額の利用料が発生します。
この点、無料プラン、あるいは無料トライアルを用意する製品ならば「お試し」ができます。本格的に導入する前に、システムの使い勝手や適合性などを大きなリスクなく試すことができます。
またクラウド型であれば、最初は無料プランでスモールスタートしつつも、導入による成果状況やビジネスの拡大、ユーザー数の増加、業態の変化、機能増のニーズなどに応じて切り替えたい、といった需要に沿い、多くの製品はプラン変更や機能追加もある程度柔軟にできるよう設計されています。
●クラウド型製品の主な注意点
一方で、「無料」ならではの注意点も理解しておきましょう。
最も顕著なのは「利用できる人数や機能に制限がある」ことです。例えば、利用できる機能が基本的なものに限られる/利用できるユーザー数に制限がある/保存できるデータ数に制限がある/保存期間に制限がある/サポートはなし/広告が表出する──などがあります。
IT製品は原則として「有料」であることは念頭に置きつつも、無料トライアルを含むシステム選択においては、自社の具体的な要望やニーズを理解し、それらを叶えてくれるサポート体制の整った製品、ベンダーを選ぶことが成功への鍵となるでしょう。
受発注システム導入の「コスト」が課題、それならば「無料」からスモールスタートしよう
デジタル時代において、受発注システムはビジネスの効率化と進化の鍵を握ります。無料で始められる受発注システムは、リスクを最小限に抑えつつ、業務の自動化と最適化を可能にします。この記事では、無料で利用できるシステムの主な方法、機能の確認方法、おすすめの5つのシステム、そしてそれらのメリットとデメリットを紹介しました。適切なシステムを選び、効率的な受発注管理を行うことで、ビジネスの可能性を広げましょう。
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(執筆:合同会社伝心)