エクセルは、案件管理において多くの企業で利用されています。本記事では、案件管理にエクセルを用いるメリットと注意点、エクセルで管理する場合のテクニックなどをご紹介します。案件管理の方法にお悩みの方はぜひ最後までご覧ください。
目次
案件管理とは?
案件管理とは、顧客や現在の営業状況を管理することです。複数案件がさまざまなスケジュールで進行していると、各案件の状況が把握しづらかったり、対応のヌケモレが発生しやすくなってしまったりします。その際に、全案件を横串で案件管理することで、俯瞰的に状況把握がしやすく、進捗やヌケモレも分かりやすくなります。
案件管理にはさまざまなツールや手法がありますが、当記事ではエクセルを用いた案件管理の方法についてご紹介します。
案件管理でエクセルを使うメリット
エクセルは多くの企業で活用されているため、案件管理として活用しやすいシステムです。エクセルを使って案件管理を行うメリットとして、例えば以下が挙げられます。
- コストを抑えてすぐ対策できる
- カスタマイズの自由度
- 操作が簡単
コストを抑えてすぐ対策できる
エクセルは多くの企業で標準的に導入されており、追加の導入コストが不要です。また、既に多くの方がエクセルを使い慣れているため、エクセルで新たに案件管理を行うとなった場合でも、特別な研修やレクチャーはいらないでしょう。既に使い慣れたツールを使うことによる初期投資が抑えられることが大きなメリットです。
カスタマイズの自由度
エクセルは汎用的な表計算ソフトであり、用途に応じたカスタマイズが容易に行えます。セルやシートを自由に追加・削除できるだけでなく、関数を用いて複雑な計算やデータ管理も可能です。テンプレートを使用することで、案件管理の効率をさらに高めることができるでしょう。
操作が簡単
エクセルは直感的な操作が可能で、特別なスキルがなくても基本的な操作が容易です。エクセルを使った経験がある方が多いため、新しいツールに移行するよりもスムーズに案件の管理ができるでしょう。
案件管理でエクセルを使う際の注意点
メリットの多い、エクセルでの案件管理ですが、注意点もあります。エクセルで案件管理をする場合は、例えば以下のような点を考慮する必要があります。
- データの整合性管理
- セキュリティリスク
- ファイルのサイズとパフォーマンス
データの整合性管理
エクセルでは、手動でデータを入力する仕様にすると、誤入力やデータの重複が発生しやすくなります。特に複数人が同時に操作する場合、意図しない上書き保存やデータの破損が発生する可能性があります。このため、入力ルールを徹底し、データの整合性を保つための対策が必要です。加えて、同一ファイルを複数人が同時に編集することが難しく、利用人数によってはリアルタイムでの情報更新が困難な場合があります。
セキュリティリスク
エクセルファイルは、適切なセキュリティ対策を講じないと不正アクセスやデータ漏洩のリスクがあります。特に、メールでファイルをやり取りする際には、暗号化やパスワード保護などの対策を行うことが重要です。
ファイルのサイズとパフォーマンス
エクセルは大量のデータを扱うと動作が遅くなることも。データ量が増えると、ファイルの開閉に時間がかかるだけでなく、ファイルがフリーズするリスクも高まります。このため、データ量を適切に管理し、不要なシートやデータを削除するなどの工夫が必要です。
案件管理に必要な基本情報と項目設定
エクセルでの効果的な案件管理を行うためには、適切な情報と項目設定が不可欠です。ここでは、案件情報の基本項目と案件管理シートの作成方法について詳しく解説します。
案件情報の基本項目
案件管理の基本項目は、案件の進捗状況や担当者、期限などを明確に把握するために設定します。具体的には以下の項目を含めると良いでしょう。
- 案件名: 案件を一目で識別するための名称
- 担当者: 各案件の担当者名を記録し、責任の所在を明確にします
- 進捗状況: 案件がどの段階にあるのかを示します(例: 見積もり提出中、価格交渉中など)
- 期限: 各案件の締め切りや重要な日付を設定します
- 重要度: 案件の優先順位を明示します
- 予算: 各案件の予算額を記入します
- 連絡先: 関係者の連絡先情報(電話番号やメールアドレスなど)
- ミーティング記録: 関連する会議の記録やメモを保存します
これらの項目を管理することで、各案件の詳細情報を一元管理し、抜け漏れを防ぎ、円滑なプロジェクト進行を支援します。
案件管理シートの作成方法
案件管理シートを導入するのであれば、その後の運用や更新のしやすさにも着目したいところです。活用しやすい案件管理シートを作成するには、以下の手順で進めると良いでしょう。
- カスタムフィールドの追加
- データ入力フォーマットの使用
- データバリデーションの設定
- テンプレートの活用
- ルールの周知
1.カスタムフィールドの追加
業種やプロジェクトの特性に応じて、必要なカスタムフィールドを設定します。例えば、「受注確度」や「流入チャネル」などが挙げられます。
2.データ入力フォーマットの使用
フォーマットを統一することで、データの入力ミスや重複を防ぎます。入力ルールを明確にし、担当者に周知徹底することが重要です。
3.データバリデーションの設定
プルダウンメニューやチェックボックスなどを使用して、入力データの整合性を保ちます。これにより、データ入力の際のエラーを減らすことができます。
4.テンプレートの活用
既存のテンプレートを活用すると、効率的に管理シートを作成できます。インターネット上で公開されている無料テンプレートを利用するのも一つの手です。
5.ルールの周知
管理シートの使用方法や入力ルールを全員に周知徹底します。事前にしっかりルールを浸透させることで、その後の活用もしやすくなります。
エクセルの関数を活用した案件管理効率化の方法
エクセルには、案件管理を効率化するための様々な関数が用意されています。ここでは基本的な関数の活用方法と、中級者向け関数の活用例について詳しく説明します。適切な関数を用いて、効率的に作成しましょう。
基本的な関数と活用例
基本的な関数として「SUM関数」と「IF関数」について紹介します。
SUM関数
SUM関数は、指定した範囲内の数値を合計するための基本的な関数です。例えば、案件ごとの予算を合計したり、進捗状況を合計して全体の進捗状況を把握するのに利用できます。使用方法は「=SUM(A1:A6)」のように範囲を指定します。
IF関数
IF関数は、特定の条件を満たすかどうかによって異なる値を返す条件分岐の関数です。例えば、案件の進捗が80%以上の場合は「良好」、それ以外は「遅延」と表示するなどの条件分岐ができます。「=IF(A1>=80, ‘良好’, ‘遅延’)」のように使います。
中級者向け関数の活用例
中級者向けの関数として「VLOOKUP関数」と「COUNTIF関数」をご紹介します。
VLOOKUP関数
VLOOKUP関数は、縦方向の検索を行い、指定した範囲から条件に一致するデータを抽出する関数です。例えば、案件リストから特定の案件番号に対応する顧客名や担当者を検索して表示するのに役立ちます。使用方法は「=VLOOKUP(検索値, 範囲, 列番号, 検索方法)」です。
COUNTIF関数
COUNTIF関数は、特定の条件に一致するセルの数を数える関数です。例えば、特定のステータス(「完了」や「未完了」など)を持つ案件の数を数えることができます。「=COUNTIF(A1:A10, ‘完了’)」のように使用します。
エクセルでの案件の進捗管理と可視化をするテクニック
案件の進捗を適切に管理し、可視化することで、効率的な案件管理をしやすくなります。ここでは、効率的な案件管理におすすめなガントチャートの作成方法と進捗状況のグラフ化について詳しく説明します。
ガントチャートの作成
ガントチャートは、プロジェクトの進捗を視覚的に管理するための表の一種です。横軸に時間を、縦軸にタスクやメンバーを配置し、各タスクの開始日と終了日を帯状のグラフで表します。これにより、タスクの進行状況や依存関係を一目で把握することができます。
基本の作成方法
- データの入力: A列に作業工程、B列に担当者、C列に開始日、D列に終了日を入力します。
- 日付の設定: E列以降に各日付を入力し、必要に応じてDATE関数を用いて自動入力。
- 条件付き書式: 作業開始日から終了日までの期間を色で塗りつぶすため、条件付き書式を設定します。例えば、「=AND(E$2>=C3, E$2<=D3)」という数式を用いると、E列の日付が開始日と終了日の間にある場合にセルを色付けできます。
- 土日の背景色変更: WEEKDAY関数を用いて、土日を自動的に色付けします。例えば、「=OR(WEEKDAY(E$2)=1, WEEKDAY(E$2)=7)」という条件を設定し、土日だけをグレーなどの別の色で表示します。
利便性と注意点
ガントチャートはプロジェクト全体のスケジュールを視覚化し、進捗を管理するのに非常に便利ですが、頻繁な変更には対応しにくいというデメリットもあります。プロジェクトの計画が頻繁に変更される場合、その都度ガントチャートを更新する手間がかかります。
進捗状況のグラフ化
ガントチャートの作成が難しい場合は、進捗状況をグラフ化して簡単に視覚的に見やすく管理する方法もあります。
折れ線グラフや棒グラフを利用する
折れ線グラフは、進捗状況を時系列で表示するのに適しています。各タスクの進捗率を時間ごとにプロットすることで、プロジェクト全体の進行状況を一目で確認できます。
棒グラフは、各タスクの進捗状況を比較するのに適しています。例えば、各タスクの予定進捗率と実際の進捗率を棒グラフで表示し、進捗の遅れや早まりを視覚的に把握します。
グラフの作成手順
- データの準備: タスク名、予定進捗率、実際の進捗率を表形式で入力します。
- グラフの挿入: エクセルの「挿入」タブから「折れ線グラフ」または「棒グラフ」を選択し、データ範囲を指定します。
- 書式設定: グラフのタイトル、軸ラベル、データラベルを適宜設定し、見やすくカスタマイズします。
チーム内での情報共有と更新の仕組み作り
エクセルを使った案件管理の課題の一つに、チーム内での情報共有と更新があります。ここでは、共同編集の設定とバージョン管理の重要性について詳しく解説します。
共同編集の設定
エクセルファイルの共同編集を実現するためには、クラウドストレージサービスを利用するのが効果的です。例えば、OneDriveやSharePointを活用することで、チーム全員が常に最新のファイルにアクセス可能な環境を整えることができます。以下はその具体的な手順です。
- ファイルのアップロード
- 共有設定
- 共同編集
1.ファイルのアップロード
エクセルファイルをOneDriveまたはSharePointにアップロードします。
2.共有設定
アップロードしたファイルを開き、「共有」ボタンをクリックして、共同編集を行うメンバーのメールアドレスを入力します。
共有設定では、編集権限を付与することができ、特定のユーザーのみ編集を許可する設定も可能です。
3.共同編集
共有リンクを受け取ったメンバーがリンクをクリックすると、ファイルがWeb用エクセルまたはデスクトップアプリで開かれ、リアルタイムで編集が可能になります。
編集中のセルは色付きの枠線で表示され、誰が編集しているかが一目で分かります。
バージョン管理の重要性
共同編集では、ファイルのバージョン管理が非常に重要です。更新ルールを明確に定めることで、誰がいつどの情報を更新するかを把握し、混乱を防ぐことができます。以下のポイントに注意してバージョン管理を行いましょう。
- バージョン履歴の活用
- 更新ルールの周知
- 編集権限の設定
バージョン履歴の活用
エクセルやクラウドストレージサービスには、バージョン履歴機能が備わっています。これを利用して、過去のバージョンに戻すことができるため、誤って上書き保存してしまうリスクを軽減できます。
更新ルールの周知
チームメンバー全員に更新ルールを周知徹底します。例えば、「変更を加える際は必ずコメントを残す」、「重要な変更は事前に全員に通知する」などのルールを設定します。
編集権限の設定
編集権限を持つメンバーを制限することで、誤った編集や意図しない変更を防ぎます。特に機密性の高い情報が含まれるファイルでは、アクセス権限を厳格に管理することが重要です。
これらの方法を実践することで、エクセルを用いた案件管理の際に発生しがちな情報共有と更新の課題を効果的に解決できます。チーム全体の効率を向上させるために、適切なツールとルールを活用していきましょう。
データ分析と改善策の立案
案件管理において、エクセルにデータを単に記録するだけでなく、そのデータを分析し、業務改善に活かすことが重要です。以下では、データ分析の基本手法と改善策の立案と実行について説明します。
データ分析の基本手法
データ分析の基本手法として「ピボットテーブル」と「データフィルター」の活用方法をご紹介します。
ピボットテーブルの活用
ピボットテーブルは、データの集計、分析、探索を行うための強力なツールです。これにより、複雑なデータセットから簡単に意味のある情報を抽出可能。例えば、案件ごとの売上や進捗状況をカテゴリー別に集計し、どの案件が最も利益を生み出しているかを迅速に把握できます。
データフィルターの活用
データフィルターを使うことで、大量のデータから必要な情報を素早く抽出できます。特定の条件に一致するデータのみを表示することで、分析作業が効率化されます。例えば、特定の担当者が関わっている案件のみを表示して、パフォーマンスを評価することなどが可能です。
その他の基本手法
その他の方法としては、「グラフ」や「統計分析」もあります。
- グラフ作成: データを視覚化するために、折れ線グラフや棒グラフを使用します。これにより、進捗や売上の傾向を視覚的に把握できます。
- 統計分析: 平均、中央値、標準偏差などの統計手法を用いてデータの傾向を分析。
改善策の立案と実行
フィードバックの収集
データ分析の結果をもとに、定期的にフィードバックを収集します。営業部門や関係者からの意見を反映させ、改善できる箇所を特定しましょう。
改善施策の策定
分析結果から明らかになった課題に対して具体的な改善策を立案。例えば、特定のフェーズでの案件進捗が遅れている場合、その原因を特定し、プロセスの見直しや追加リソースの投入などを検討します。
実行と評価
策定した改善策を実行に移し、その効果を評価。KPI(重要業績評価指標)を設定し、継続的に改善の進捗を監視します。これにより、案件管理の効率を向上させ、業務全体の最適化を図ることが可能に。
エクセルの限界と専用ツールへの移行検討
エクセルは汎用性が高く使いやすいツールですが、案件数が増加したり、より複雑な管理が必要になったりした場合、限界を感じることがあるでしょう。そのような場合、専用の案件管理ツールへの移行を検討する必要があります。
エクセルの限界点
エクセルでの案件管理の限界点としては、例えば以下の点が挙げられます。
- データ量とパフォーマンスの問題
- コラボレーションの制約
- データの整合性と管理の難しさ
エクセルは大量のデータを扱う際にパフォーマンスが低下することがあります。多くの案件を管理したり、複雑な計算や多くの関数を使用したりすると、エクセルの処理速度に限界が生じることがあります。
また、エクセルファイルは同時に複数人が編集することが難しく、リアルタイムでの情報共有が制限されます。共同編集が可能なクラウド版エクセルを使用する場合でも、複数の編集者が同時に操作することで複数ファイルが発生してしまうことがあります。
これらの点を踏まえて、案件管理の専用ツールを導入する企業も少なくありません。
専用ツールのメリット
案件管理に関する専用のツールを導入するとどのようなメリットがあるのでしょうか。ツールによって機能は様々ですが、以下で代表的なメリットをご紹介します。
- リアルタイムで正確性を高めた情報共有が可能となる
- 自動化された通知機能で効率化できる
- 高度なデータ分析が行える
- 統合性と連携性を強化できる
リアルタイムで正確性を高めた情報共有が可能となる
専用の案件管理ツールは、リアルタイムでの情報共有が可能です。複数のユーザーが同時にアクセスし、編集を行うことができるため、チーム全体で最新の情報を共有しやすくなります。これにより、コミュニケーションの効率が向上し、情報のズレが防止されます。
自動化された通知機能で効率化できる
専用ツールには、自動化された通知機能が搭載されていることが多く、重要なイベントや期限が近づいた際に自動でアラートを発することが可能。これにより、担当者がタイムリーに対応することが可能となり、遅延や抜け漏れを防ぐことができます。
高度なデータ分析が行える
専用ツールは高度なデータ分析機能を提供しており、複雑なデータ分析やレポート作成が簡単に行う事が可能。グラフやチャートを使った視覚的なデータ表示が可能で、経営判断に必要な情報を迅速に得ることができます。また、機械学習やAIを活用した予測分析機能を持つツールもあり、将来の売上予測やリスク評価に役立てることができます。
統合性と連携性を強化できる
専用ツールは他の業務システム(CRM、ERP、MAツールなど)と連携できるため、データの一元管理が可能です。これにより、データの入力や更新が自動化され、手動作業の負担が軽減されます。さらに、統合されたデータをもとにした分析やレポート作成が容易になります。
エクセルから専用ツールへの移行を検討する際は、ツールの導入コストや運用方法、チームのスキルレベルなどを総合的に考慮することが重要です。専用ツールの導入により、業務効率の向上やデータ管理の精度向上が期待できるため、案件数の増加や複雑化に対応しやすくなります。案件管理を行う際は専用ツールの導入も検討してみてください。
案件管理はエクセルでも可能、しかし限界も|専用ツールの導入計画も視野に入れましょう
案件管理はエクセルでも可能です。エクセルはコストパフォーマンスや操作性で優れていますが、データの整合性管理やリアルタイム共有に課題が残り、大量データや複雑な案件で運用するには限界が出てきます。
このため、より効率的に効果的な案件管理を行いたい場合は専用ツールの導入がおすすめです。専用ツールを取り入れることにより、大量のデータ処理や活用が簡単にできるだけでなく、案件管理を半自動化することも可能です。効率的に案件管理を行うことができるでしょう。自社に合った案件管理の方法を吟味して、導入をご検討ください。
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