現在、勤怠管理システムへの刷新によって勤怠管理の課題解決を進める企業が増えています。理由はさまざまありますが、これまでタイムカードで勤怠を管理していたところ「管理に手間がかかる」「確実性を高めたい」「法令順守」「リモートワーク/柔軟な働き方への対応」などが多くの理由、計画の動機として挙げられます。
この記事では、タイムカードで勤怠管理を行っている企業に向け、あらためてタイムカード管理の課題を振り返り、デジタルで管理する勤怠管理システムとの比較、切り替え時の注意点、製品の選び方をじっくり解説していきます。
目次
タイムカードによる勤怠管理の主な課題
改めてタイムカードで勤怠管理をする際の問題点・デメリットはどこにあるのでしょうか。よく挙げられる課題を順に解説します。
管理に手間がかかる
タイムカード/タイムレコーダーによる勤怠管理はほとんどの場合、その後、手作業で集計します。手書きにせよ、エクセル(Microsoft Excel)などの汎用オフィスソフトウェアを使うにせよ、人の目検と手作業で転記する主行程は大きく変わりません。従業員それぞれの労働時間の集計と記録、確認に手間がかかり、総務人事部門や管理者は毎月、毎回負担を強いられます。
手間と時間、人手がかかるだけでなく、人の手で行うがゆえにどうしても人的ミスが発生するリスクがあります。
この手間やリスクは従業員数や従業員の働き方の種類に比例して増えていきます。
打刻方法に制限がある
タイムカードによる勤怠管理は、原則として打刻機がある場所で押さなければなりません。打刻手段と会社・事業所の場所がセットになっているならば、端的に直行直帰、客元で常駐して動くといった業務シーンに対応しにくいです。また、近年特にニーズ増えているテレワーク/自宅勤務のような従業員の柔軟な働き方の希望にもうまく対応できません。
こういった場合は、後から手書きで記入したり、上長への申請などで都度カバーする「例外」扱いで対処していることでしょう。もちろん一定のルールを定めているとは思いますが、例外的なタスクは従業員も、管理側も余計に手間がかかりますし、ミスが発生する可能性も上がります。不正が発生するリスクも高まってしまいます。
打刻の不正が行われるおそれがある
タイムカード打刻は紙カードやICカード社員証などで出勤・退勤などの日時を正確に記録します。しかし、本人以外の第三者がそれを不正に代行してしまうことも可能です。昔からある不正の手段です。
また、不正な記録を「あとから手書き/修正」する、「事前打刻・遅延打刻」などで不正に勤務時間を長くする、あるいは遅刻隠しをするといったことも挙げられます。これらは上記の「例外対応時」を悪用して発生しがちとされます。
保管スペースが必要になる
タイムカード(出勤簿、勤怠記録など)は保管期間が労働基準法で定められています。その期間は「5年間」です。2020年の改正(令和二年法律第十三号)でこれまでの3年間から5年間に延長されました。特に紙カード型のタイムカードであれば、これを正しく保管するための物理的なスペースが必要です。
リアルタイムで労働時間を把握できない
紙のタイムカードは多くの場合、出勤時刻と退勤時刻を記録するに留まるので、労働時間、休憩時間、時間外労働時間などは別途「計算」して、別途記録します。このことは管理面の大きな課題になります。
仮にその計算が「月末の1回だけ」であれば、あるいは従業員の労働状況を的確に把握できなければ、管理者は従業員の「働きすぎ」などに気付けません。時間外労働時間は、労働基準法および働き方改革関連方(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律)で上限(月45時間、年360時間)が定められており、原則としてこれを超える労働をさせることはできません。法令順守とともに、従業員の過労・健康などへの配慮は会社として極めて重要です。
勤怠情報をデジタルデータとして勤怠管理システムで管理することで、リアルタイムで状況を把握できるようになります。従業員が法定労働時間を超えて働くことを防ぎ、過労や健康問題を未然に防げます。また適正な賃金計算を可能にし、さらに労働時間のデータを即座に分析できることで、労働効率の向上や適切なシフト調整にも役立ちます。
タイムカードと勤怠管理システムの比較
タイムカード | 勤怠管理システム | |
---|---|---|
打刻方式 | 紙(アナログ) | デジタル(PC・スマートフォン・アプリ、ICカードなどで電子的に実施) |
打刻手段 | 原則、出社が必要 | どこでも可能 |
集計方法 | 手動 | 自動 |
管理・承認・集計の工数(手間・時間) | 多い | 少ない(容易、効率化) |
人的ミスのリスク | 課題あり | 大きく低減 |
不正のリスク | 課題あり(代理打刻・不正記入などの可能性) | 大きく低減 |
給与計算タスクとの連携 | アナログ手法の場合は特に連携に手間 | システム間でデータ連携が可能 |
打刻漏れの対応 | 困難(紙ベースでの確認) | 容易 |
リアルタイムでのデータ確認 | 困難(即時・任意のタイミングでは難しい) | 対応 |
物理的な保管スペース | 必要 | 不要(基本はデータ保管のみのため) |
タイムカードから勤怠管理システムに切り替えたほうが良い理由
タイムカードから勤怠管理システムに移行するとどのようなメリットがあるのでしょうか。順を追って解説していきます。
勤怠管理システムとは何か
勤怠管理システムとは、従業員の出勤・退勤時間や労働時間、休暇情報などを一元的に管理するためのソフトウェアやIT製品のことです。従業員はこのシステムを使って、自分の出勤や退勤を打刻し、管理者はそのデータをリアルタイムで確認・管理することができます。
勤怠管理システムのメリット
- 勤怠管理業務の効率化を図れる
- 労働時間を正確に把握できる
- 多様な働き方に対応しやすい
- コストの削減につながる
- コンプライアンスを徹底しやすい
- 不正を防ぎやすい
勤怠管理業務の効率化を図れる
勤怠管理システムを導入すると、勤務時間の集計や給与計算などが自動化できるため、管理業務の効率化が図られます。また手作業でないため、集計作業のミスを減らすことができます。
労働時間を正確に把握できる
勤怠管理システムには、管理者が従業員の労働状況、残業・時間外労働時間などをリアルタイムに可視化できる機能も特徴の1つです。従業員の勤怠状況をリアルタイムに把握できれば、残業・時間外労働時間の超過、あるいは従業員が心身疲労とならないよう未然に防ぐ策を講じられます。また、チームメンバーの負荷のばらつきも気づきやすく、業務を適切に割り振りするための情報としても機能します。
多様な働き方に対応しやすい
勤怠管理システムはPCやスマートフォンでの打刻が可能なため、勤怠管理がよりスムーズになります。タイムカードへの打刻のために出社する必要もなく、テレワークなどの柔軟な働き方を実現できます。
コストの削減につながる
勤怠管理システムにより、まず物理的なタイムカードとその保管スペースの確保が必要なくなります。
さらに、効率化や自動化によって必要な人手が減少すれば、端的に人件費の削減が可能になります。自動化し、確実性を高められば、手作業に由来する入力ミスやその修正や対応にかかる人手も不要となります。その分余裕ができた従業員を他の重要な業務へ割り当てるといった適切な人員配置によるコスト効果も期待できます。
コンプライアンスを徹底しやすい
勤怠管理システムの導入により、企業は労働法規や労働基準法に基づく適正な労働時間管理を徹底しやすくなります。例えば、法定の労働時間や休憩時間を超過した/あるいは超過しそうな場合にアラートを発する機能により、従業員が法定の労働時間を超えて働くことを未然に防ぎ、過労や違法な労働を避けることができます。
さらに、システムで定期的にデータを保存し、監査や法的要件に対応できるよう勤怠記録を保持できます。これにより労働基準監督署の監査にも迅速かつ正確に対応でき、法令順守の証明が容易になります。
不正を防ぎやすい
勤怠管理システムは、本人のIDログインなどの基本機能に加え、指紋認証や顔認証のような生体認証デバイスなどの連携も想定した機能を持つ製品も多くあります。
また、システムは自動的に時間を記録し、変更ができないように設定することもできるため、後からの改ざんも防ぎやすくなります。また、監査ログ機能を活用することで、誰がいつどのような操作を行ったかを追跡でき、不正行為が発生した場合には迅速に発見し対応することもできます。
勤怠管理システムを選ぶ際のポイント
- 他のシステムとの連携性
- サポート体制の充実度
- 自社に適した機能の有無
- 社員にとっての使いやすさ
- 法改正に対応するアップデートの有無
(1)他のシステムとの連携性
勤怠管理システムは給与計算システムや人事管理システムと連携することが多く、データの一元管理や業務効率化に大きく寄与します。このためシステム間のデータ連携をスムーズにするためのAPIが提供されているか)、既に導入している他のシステムと問題なく連携できるか、データのインポートやエクスポートが簡単にできるかを考慮する必要があります。
(2)サポート体制の充実度
導入後のトラブル対応や疑問解決のために、しっかりとしたサポート体制が必要です。
サポートが利用できる時間帯や曜日を確認するとともに、電話、メール、チャットなど、どのような方法でサポートが提供されるか、導入時にどの程度のトレーニングが提供されるか、詳細なマニュアルがあるかを確認しておきましょう。
(3)自社に適した機能の有無
自社の業務フローに合った機能がなければ、システムの導入効果が半減します。自社の業務フローに合わせてカスタマイズできるか、必要な機能が揃っているかどうか、企業の成長に伴って追加機能が必要になった場合に対応できるかを考える必要があります。
に最も適した勤怠管理システムを選ぶことが重要です。
(4)社員にとっての使いやすさ
社員が日常的に使用するため、使いやすさは非常に重要です。、ユーザーフレンドリーなインターフェースであるか、スマートフォンやタブレットからもアクセスできるか、操作がシンプルで直感的かどうかをチェックしましょう。
(5)法改正に対応するアップデートの有無
労働基準法などの法改正に適切に対応するためには、システムのアップデートが必要です。法改正があった際に迅速に対応するアップデートが行われるか、システムが自動的に最新バージョンにアップデートされるか、過去に法改正があった際の対応実績がどうであったかを考えましょう。
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タイムカードの課題は勤怠管理システムの導入で一気に解消
紙のタイムカード管理から勤怠管理システムへ移行することで、正確性が向上し、人為的なミスや不正を減らすことができます。業務効率が向上し、データの自動集計やリアルタイム管理が可能になります。コンプライアンスを徹底しやすくなり、労働法規を順守する管理体制も実現します。結果として労働環境が改善され、企業の信頼性も向上させられることが大きく期待できます。勤怠管理システムで「総務のDX」を実現していきましょう。
(初稿執筆:合同会社伝心)
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