「営業フローが属人化しがちで困っている」「Excelでの顧客情報管理に限界を感じている」「顧客情報を有効活用して、効率化できないかな」。そんな課題を抱える企業は多いはずです。顧客管理システム/CRMは、自社が顧客と良い関係を築き、維持、発展していくことを目的とするIT製品です。
本記事では、顧客管理システムで実現する効果、導入メリットと主な機能、そして検討ポイントを詳しく解説します。あなたの会社とビジネスに適する顧客管理システムを見つけるための一助となれば幸いです。
目次
顧客管理システムの基礎知識
顧客管理システムは、顧客データの集約と分析を通じて、効率的な営業活動やカスタマーサービスの提供を可能にするIT製品です。CRM(Customer Relationship Management)とも呼ばれ、自社の「顧客」に関するあらゆる情報を一元管理するシステムとして活用されています。
●顧客管理システム/CRMとは?
顧客管理システムは、企業が顧客との関係を効果的に維持・管理し、戦略立案を支援します。顧客満足度を向上させ、長期的で良好な顧客関係を築き、業績を安定化、さらには向上させることを主目的に、顧客に関する情報を集約・統合し、営業、マーケティング、カスタマーサービスなどの各部門が隔てなくそれらの情報へ容易にアクセスし、活用できるようにします。
顧客管理システムのは主に以下の機能を備えます。
- 顧客情報管理機能
- 営業支援機能
- マーケティング支援機能
・顧客情報管理機能
顧客の氏名・連絡先などの個人情報から、取引履歴や問い合わせ履歴など多岐にわたる顧客情報を収集、一元管理します。
・営業支援機能
商談管理や案件管理、スケジュール管理や予実管理などを行うことができます。
・マーケティング支援機能
蓄積された顧客情報をもとに、顧客の購買傾向など多様な分析行うことができます。分析結果をもとにそれぞれの顧客に最適なアプローチを行うことや経営戦略に生かすことが可能です。メールマガジンの配信やDMの作成・発送管理が可能な製品もあります。
これらをMicrosoft Excelなどの汎用オフィスアプリケーションを用いて行っている人も多いことでしょう。しかし、多くの顧客データを正しく入力し、管理するのはとても手間がかかる作業です。その分、情報の抜け漏れや入力ミス/エラーが生じやすくなります。
また顧客台帳としての機能は果たせても、「情報を分析して販売戦略を立てる」のようなその先の活動へ活用していくには、さらなるプラスαの知識や工夫が必要です。仮にそれをできるメンバーがいるとしても、そのメンバーしか使えないようでは「属人化」してしまい、全体的な効果には結び付きにくいものとなります。
顧客管理システムはこれらの課題を解決します。リアルタイムで正確な、あらゆる顧客情報を集約し、隔てなく共有することで、効率的な顧客関係の構築と維持、発展、そしてさらなる戦略化を可能にします。
なぜ顧客管理が重要なのか? 顧客管理システムがビジネスに与える影響
企業競争が激化し、働き方の多様化なども一般化しつつある現在では、これまでのフローが通用しない新規顧客開拓の仕方や関係の持ち方も求められています。取引実績のある既存顧客に対して、製品・サービスを利用し続けてもらうために、さらに取引拡大につなげるために、顧客情報の蓄積と分析、その活用方法が重要になっています。
顧客管理システムの利点とビジネスに与える効果と影響は以下の通りです。
- 顧客情報の集約・統合・共有
- 顧客「個別」のニーズに合わせた戦略化
- 売上と収益を高める「機会」を増やす
- マーケティング戦略の最適化
- 顧客対応の効率化
- 競争力の向上
・顧客情報の集約・統合・共有
顧客管理システムは、手書きやMicrosoft Excelでの管理では属人化しがちな顧客データの集約・統合を可能にします。営業、マーケティング、カスタマーサービスなど各部門が一元的にアクセスできるようになり、情報の断片化を防ぎ、全体的な業務効率向上に寄与します。
・顧客「個別」のニーズに合わせた戦略化
顧客情報へのアクセスが容易になり、顧客理解が向上するため、個別のニーズに合わせたサービス・製品提供が可能となり、顧客満足度が向上します。ECサイトにおけるレコメンデーションをイメージするとわかりやすいでしょう。過去の購買履歴に基づいておすすめ商品を提案し、顧客の期待を満たすような営業活動が可能になります。
・売上と収益を高める「機会」を増やす
顧客管理システムは効果的なセールスサポートを提供し、販売プロセスの追跡と最適化を可能にします。クロージング率の向上やリピートビジネスの促進を通じて売上と収益の増加を図ることができます。
・マーケティング戦略の最適化
顧客情報の分析により、ターゲット市場や効果的な広告手法の特定が容易になります。顧客の行動履歴や嗜好を考慮したターゲティングは、広告費の最適化に寄与し、効果的なマーケティング戦略構築を可能にします。
・顧客対応の効率化
顧客管理システムには、顧客とのコミュニケーションを記録することが可能です。顧客からの問い合わせの際に、これまでの取引、問い合わせの内容、どのように対応したかの履歴を参照することで、素早く的確な対応が可能になり、信頼感の醸成、サービス品質向上が見込めます。
・競争力の向上
統合された顧客情報と効果的なビジネスプロセスは、企業の競争力を向上させます。迅速な意思決定、適切なリソース配置、競合他社との差別化が可能となり、市場での地位を強化することが可能です。
顧客管理システム/CRM 製品選定のポイント
顧客管理システム/CRMの導入を検討するにあたり、企業の選定者/導入プロジェクト担当者はまず何を準備しておくとよいでしょう。どの規模、業種の企業も該当し、事前準備を始めてほしい基礎の基礎ポイントを3つ紹介します。
- ビジネスの規模と要件の明確化
- 統合性とカスタマイズの可否/範囲
- 従業員トレーニングとその後の運用体制
ビジネスの規模と要件の明確化
どんなITシステム/SaaSの選定でも共通する準備事項です。具体的には、自社に「どんな課題や目的」があり、それを「どう改善したいか、効果を望むか」をできるだけ多く棚卸ししていきましょう。
具体的記には、システムの導入で実現する機能や期待できる効果と「自社のニーズ」とを合わせて「要件」にまとめます。自社のビジネスプロセスを改めて理解した上で、全社的に、部門や組織を横断して目的や要望を明確にリストアップし、定義化していく工程になるでしょう。
この作業は時間と労力がかかるかもしれません。しかし、ここが明確になっていれば、後の製品やベンダーの選定が容易になり、またベンダーも具体的に理解しやすくなります。一緒にプロジェクトを伴走する大きな力になります。導入後の活用がスムーズになり、何より無駄なコスト発生を避けることにもなるでしょう
統合性とカスタマイズの可否/範囲
業務プロセスやニーズは企業それぞれで異なります。システムの柔軟性やカスタマイズ可能な機能が十分であるか確認し、必要に応じて調整できるかどうかを検討していく行程も忘れないように、あらかじめイメージしておきましょう。
例えば、既存のシステムやデータとの統合がスムーズに行えるかどうか、企業独自のプロセスやワークフローに合わせて調整可能なシステムかどうか、などが挙がります。
従業員トレーニングとその後の運用体制
ITシステムはユーザーが適切に活用して効果を発揮します。ユーザーは「単なる使い方」だけでなく、目的と利点を理解することではじめてシステムを最大限に活用するようになります。
ユーザーに向けたトレーニング体制は「導入後、社内向け」のことになるので、導入検討時点で後回しとなって、導入間際や導入直後に焦ったりりしがちです。想像以上に期間やコストが掛かることも多々あるので、十分に余裕をもって初期段階で、忘れずに検討しておいてほしい事柄です。
顧客管理システムの主な種類
顧客管理システムにはさまざまな種類があり、企業のニーズや業界によって適する製品も異なります。以下2つへ大まかに分けて簡単に説明していきましょう。
- システムを構築する場所/方法別
- ビジネスの性質や目的別
システムを構築する場所/方法別の製品種別
・オンプレミス型
オンプレミス型は、自社保有のサーバや自社管理・契約するデータセンターへシステムを構築・導入する、従来型の形態です。導入には相応のコストと期間が必要ですが、自社のニーズ、業界の商慣習に適合するような特殊な機能にも対応するように作れる「カスタマイズ性の高さ」がポイントです。また、システムの利用範囲も自社でコントロールできるため、例えば「機密データは社外に出さない/クラウドには出せない」といった高いセキュリティ性が必要な業種やシステムにも従来通りに適用できます。
メリット | 自社のニーズに合わせて設計、構築できる
インターネットに依存する通信障害やサービス停止などの影響を受けにくい セキュリティ/アクセス制御観点で自社ニーズ/独自の制御が可能 |
デメリット | 初期費、スケーラビリティ面でコスト(特にハードウェア費)が多くかかる傾向
一般的に長期の導入期間を要する 運用や保守のための専門知識を持つ人員が必要 サーバ、ソフトウェア、システムの構築から運用まで、コスト、そして責任などもすべて自社にかかる |
・クラウド型
クラウド型は自社サーバではなくクラウドサーバ上に構築されたシステムを、インターネット経由で利用できる形式です。自社でサーバや周辺ハードウェア、設備を「準備」することなく、システムやアプリケーションの利用環境“だけ”を導入できるので、導入・運用にかかるコストが低く、短期間で利用を開始できることが魅力です。そして、初期コスト、運用コスト、リソース拡張時の負担や課題も抑えられることが大きな利点です。
メリット | 短期間で導入できる
システム拡張の柔軟性(スケーラビリティ)がある 導入・運用にかかるコストを抑えられる 「スマホ対応」などユーザーの利便性・柔軟性を高める機能が豊富にある アクセス制御/セキュリティの基礎対策は製品・ベンダー側で行える |
デメリット | カスタマイズ対応に限りがあり、自社ニーズに合わない/すべては叶えられない可能性がある
使い続ける限り月額/年額料金が発生し続ける データ保管/アクセス制御/セキュリティ対策の多くをベンダーの体制に委ねることになる |
・ハイブリッド型
ハイブリッド型は、クラウド型とオンプレミス型の要素やニーズを組み合わせた設計、あるいはカスタマイズが可能なもので、どちらかというとクラウド型寄りの製品です。
例えば、「ユーザーの柔軟な利便性/アクセス性」といったクラウド型のメリットを生かしつつ、「機密データは社外に出さない/クラウドには出せない」といった高いセキュリティ性やアクセス制御が必要な業種に向けて、データそのものは自社環境で持つようなシステムに仕立てられる製品があります。
ビジネスの性質/目的別の製品種別
B toB 向け
企業同士の取引に焦点を当てた顧客管理システムです。主な機能としては、顧客とのビジネス取引、取引履歴の管理、見積もりや請求書の作成、カスタマーサポート、契約管理などがあります。
B to C向け
店と客、のような消費者との購買関係強化に焦点を当てた顧客管理システムです。主な機能には、顧客個別のプロファイル作成と管理、購買履歴の追跡、キャンペーン管理、マーケティング自動化、顧客応対の最適化などがあります。
対企業向け、対消費者向けとして、それぞれの製品は、ビジネス環境や顧客との関係の特性に合わせて、また「業種別」に機能を特化した設計がなされています。例えば、BtoB向けは取引先の複雑な組織構造に対応する一方、BtoC向けは多様な顧客セグメントに対応し、パーソナライズされたマーケティングを強化する機能が用意されます。
おすすめ顧客管理システム9選
ここまで顧客管理システムの概要からその種類、選定の際のポイントなどを解説してきました。では、実際に使われている顧客管理システムにはどのような製品があるのか。日本企業でも導入例が多い主要顧客管理システム/CRMの中からおすすめ製品を紹介します。(製品名abcあいうえお順)