営業成績の伸び悩み、リードの獲得から顧客化までのプロセスの遅延、これらは多くの営業担当者や管理職が直面している課題です。顧客とのコミュニケーションを効率化し、質を向上させることが急務である人はとても多いはずです。そんな悩みや課題に応えるIT製品の1つが「MAツール」です。本記事ではMAの検討に向けた基礎知識から、主要機能とできること、期待できるビジネス成果と導入シーンをじっくり解説します。
目次
MAでできること 基礎知識と基本機能
MA(マーケティングオートメーション/Marketing Automation)とは、データを軸にマーケティング活動の自動化と効率化を行い、成果を上げるためのITツール、IT製品のことです。集約した顧客の情報をもとに活動履歴、興味や関心のような傾向を見いだし、それを分析することでより精度の高いマーケティング活動に生かすことが目的です。
例えば「ある条件を満たした顧客を区分し、適切なタイミングで“自動的に”メールを送信して購買を促す」といった自動化が可能です。
近年のマーケティング活動では、データドリブンのアプローチが特に重要になっています。
データドリブンとは、意思決定や戦略立案をデータとその分析にもとづいて行うアプローチのことです。直感や経験だけに頼るのではなく、具体的で正しい数字(データ)とそれに基づく分析に沿って計画された戦略を実行することは、マーケティング活動の向上と安定に必要不可欠です。
MAを活用することで、日々の業務効率化だけでなく、データドリブンな意思決定を、そしてそれらを自動化できるようになることが大きな強みです。その結果、マーケティング成果の向上への大きな貢献が期待できます。
ここからは、MAに備わる基本機能について解説します。
Eメールマーケティング機能
Eメールマーケティングは、顧客の行動や属性にもとづいて、あらかじめ設定したメールを自動的に送信する機能です。
「この人は何時にこの製品ページへ何回アクセスした」「この人は半年ほど購買記録がないが、いつも半年おきに買ってくれている」……このようなユーザーの細かな動きもデータ化して区分したり、分析したりすることで、その人それぞれに合わせたアプローチを可能にします。
また、後ほど紹介するリードスコアリング機能に沿い、ユーザーのスコアが一定以上になったら自動的メール送信、のような目的にもよく使われます。
自社に興味を持った顧客を把握し、データを根拠に的確かつ効率的に訴求することで、顧客エンゲージメント(信頼関係)とブランドロイヤリティ(自社ブランドへのファン度)を向上させることに寄与します。
リードスコアリング
リードスコアリングは、見込み客(リード)の行動や属性などを点数化(スコアリング)し、一覧化する機能です。
具体的には、顧客の下記のような行動をトリガーとして設定できます。
- Webサイトの特定ページを閲覧した
- 資料問い合わせなどのフォームを送信した
- 案内メールの特定URLをクリックした
このようなポイントを設定し、これらを達成するとスコアが高くなっていきます。スコアが高いほど、自社に興味を持っている優良な見込み客である可能性が高いことになります。
こうして把握できた「優良な見込み客」を営業チームと連携すれば、グッと確度を上げていけます。
ユーザーがどのような行動をしてスコアを上げたのかの履歴も追えます。その人の欲しい情報を的確に提供することで、顧客とのよりよい関係を構築する活動にも活用できます。
ランディングページ/フォームの作成
MAには、ランディングページ(ユーザーがクリックした先に用意するマーケティングのための特設ページ)やフォームを容易に作成し、管理する機能を備えます。
MAで作成したランディングページやフォームは、キャンペーンやプロモーションに必要なデータを効率的に収集できるようあらかじめ設計されているのがポイントです。
このランディングページにユーザーが訪れて行った行動を記録したり、フォームに入力した情報を記録するなどして、必要な情報をMAに蓄積していきます。
キャンペーン管理
キャンペーン管理機能は、マーケティングキャンペーンの計画、実行、追跡を一元管理する機能です。
目的はマーケティング活動の効果を可視化することと、キャンペーンのROI(投資収益率)を最大化することです。改善点を明確にし、データを根拠とした改善策や戦略の立案、意思決定を支援します。
CRMとの連携、統合
「営業部門」が関わるIT製品には、MAのほかに、例えばCRM(顧客管理システム)、SFA(営業支援システム)があります。
端的には、MAは「見込み客を発掘」、SFAは「商談と受注」、CRMは「顧客管理、継続関係性の維持と強化」のように役割と段階が少し違い、主に利用する部署、担当者もマーケティング担当と営業担当などとして分かれます。しかし、それぞれが参照する「1つの顧客情報単位」では同じです。「データとして一元化」し、顧客の情報をそれぞれでシームレスに連携できてこそ成果を最大化できるといえます。
既存のITシステムとデータ連携を行う機能、あるいはそれぞれの機能が統合されていることで、今回の例では、一元化した顧客情報とともにマーケティングと営業の担当者間連携も円滑に進みます。
MAによっては搭載している効果的な機能
基本機能以外にも、製品によってさまざまな機能が備わっています。
特定のニーズに特化した機能を使うことで、さらなるマーケティングの差別化や効率化が行えます。
ここからは、製品によっては搭載されているかもしれない、効果的な機能について解説します。
ソーシャルメディア統合管理機能
ソーシャルメディア統合管理機能は、Facebook、X(旧:Twitter)、LinkedInなどのソーシャルメディアと連携し、複数のソーシャルメディアを使用したキャンペーンの管理と追跡を一元化する機能です。
この機能により、ソーシャルメディア上で行動分析や、効果的なコンテンツの展開が容易になり、全体のマーケティング戦略の効率化を図ることができます。
行動追跡
顧客がWebサイトやアプリ内でどのような行動を取っているかを詳細に追跡し、そのデータをもとにパーソナライズされた(顧客一人ひとりに合わせた)顧客体験を提供する機能です。
多くのMAツールでは特定のアクションに沿ってリードスコアリングを行いますが、さらに細かい行動追跡を実現する機能を備え、それを売りにする製品も多くあります。
これにより、顧客の関心やニーズに合わせてさらに深化したマーケティングが可能となり、顧客満足度の向上やコンバージョン(成果)率の増加が期待できます。
A/Bテスト機能
メールキャンペーンやランディングページで「複数のパターン」を実際にテストし、どちらがより効果的であるかどうかを判断するための支援機能です。
この機能を活用することで、大きな成果を得られるパターンを特定し、効率的なリソース配分とROIの最大化が期待できます。
マルチチャネルマーケティング
マルチチャネルマーケティング機能は、メール、ソーシャルメディア、Webサイト、広告など、複数のチャネルで一貫した顧客体験を提供するための機能です。
複数のチャネルからのデータを管理して分析できるため、例えばWebサイトで商品を閲覧した顧客に対して、メールで関連商品の詳細情報を送るといった体験の提供が可能です。
顧客がどのチャネルを利用していても、一貫した顧客体験が受けられるようになり、エンゲージメント(信頼関係)を高める効果があります。
リアルタイム分析
リアルタイム分析機能は、Webサイト訪問者の行動、メールの開封率、クリック率、ソーシャルメディアの反応などのさまざまなデータを収集して、リアルタイムな分析・状況を表示する機能です。
マーケティング担当者はこのデータを活用して、必要に応じてマーケティング戦略やキャンペーンの調整を行い、成果を最大化することができます。
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MAの機能で実現するビジネス成果
MAの機能を活用することで、企業はより戦略的なマーケティング活動を行えます。
顧客の獲得からエンゲージメントの向上、最終的な売上の増加に至るまで、MAはマーケティング活動の全体を通じて重要な役割を果たします。
ここからは、MAの機能を使うことで具体的にどのようなことができるようになるのかを解説します。
一人ひとりに最適化した顧客体験を提供できる
MAの機能とともに、顧客の行動や属性にもとづいたメール送信を行ったり、自社Webサイトのコンテンツを顧客に合わせてカスタマイズしたりできます。
例えば、下記のようなカスタマイズが可能です。
- 何度もWebサイトに訪れている人にのみキャンペーンを表示する
- プランや特徴ページを読んでいる人に資料問い合わせを促す
このように顧客に合わせた個別の体験を提供することで、顧客が求めるタイミングでの情報提供ができ、エンゲージメントの増加が期待できます。
優良リードの発掘と育成
リードスコアリング機能を使うと、行動や興味にもとづいて確度の高い見込み客(優良リード)を効率的に特定できます。
スコアの高いユーザーは、自社に興味を持った見込み客である可能性が高くなります。営業チームは、その見込みのある顧客にフォーカスして営業活動を行えるようになります。
ま顧客が過去にどのようなアクションをしてスコアを上げていったのかも確認できます。
ある顧客が過去に資料請求をしていたり、Webサイトの閲覧時間が長い(じっくり検証、確認している)ような人であれば、営業担当者はどうアプローチするとよいでしょう。すでに資料に書かれてあることは理解しており「その先のことを望んでいる」と推定し、商談では最初から長々と説明するより、具体的で詳細な内容、その人が望んでいると推定された情報をズバリ的確に提供すると、確度はさらに高まるかもしれません。
このように、見込み客(優良リード)を把握し、そこへフォーカスして営業活動が行えることは、成果に直結するとても強力なメリットです。
効果的なランディングページの作成
ランディングページは、単なる訪問者を見込み客(リード)に育成する重要な役割を担っています。
MAツールを使用することで、効果的なランディングページを作成できます。
多くのMAツールでは、専門的な知識がなくてもテキストボックス、画像、ボタン、フォームなどの要素をドラッグアンドドロップで並べる、テンプレートから撰ぶなどでページを容易に作成できる機能が用意されています。
作成したランディングページで、訪問者の行動、ページのパフォーマンスに関するデータをリアルタイムで得られます。どの要素がうまく機能しているのか、もしくは改善が必要かといった意思決定も強力に支援します。
顧客情報の一元化
CRM(顧客管理システム)、SFA(営業支援システム)、あるいはERP(基幹システム)との統合、データ連携を通じた「顧客情報の一元化」もMAの機能として重要となるでしょう。
一元化された、つまり誰が見ても、何で参照しても、いつ見ても、正しい1つの顧客情報データ基盤を整えることで、担当者、部門、チームを隔てずに情報を共有できる体制を整えられます。
顧客情報の一元管理は、戦略的なマーケティングの実施と効果的な顧客対応を可能にします。
マーケティングキャンペーンの効果的な管理
キャンペーン管理ツールを利用することで、マーケティングキャンペーンの計画、実行、そして追跡が一元的に行えます。
これにより、各キャンペーンのROIを効果的に評価し、戦略的な意思決定を行うための具体的なデータを提供します。
結果として、マーケティングの効率と収益性が向上し、ビジネス全体の成長を支援します。
MAはこれらの機能とともに、全体的にビジネス製超や収益性の向上を支援します。
MAとCRMの違い
MAとCRM(は、どちらも顧客の情報を管理し、活用することでビジネスの成長を支えるツールですが、その役割と機能にはいくつか違いがあります。
ここからは、MAとCRMの主な違いについて詳しく解説し、それぞれがビジネスにどのように貢献するかを掘り下げていきます。
MAの主な目的
MAは、効率的なマーケティングキャンペーンの実行と自動化を目的に、顧客の行動データをもとにターゲティングやパーソナライズされたコミュニケーションを行います。
リードの生成と育成を自動化し、最終的には販売機会へとつなげるプロセス強化が主な目的です。
CRMの主な目的
CRMは、顧客情報の集約と管理、関係性の構築が目的です。顧客とのやりとりの全履歴を一元化して保管し、これを営業チーム、マーケティングチーム、カスタマーサービスなどの部門が活用します。
そのために、CRMは顧客に関する詳細情報を一元管理することが主な機能です。
情報が一元管理されることで、チーム内での情報共有や営業活動が円滑になり、顧客との関係を強化し、満足度を高める効果があります。
MAとCRMの違い
MAとCRMの大きな違いは、MAが主にマーケティングの自動化と効率化に注力しているのに対して、CRMは顧客情報の管理と関係強化にフォーカスしている点です。
MAはマーケティングプロセスをデジタル化し、大量のリードを効果的に扱って優良リードを得ることが目的です。CRMは(リードから顧客になった)既存の顧客との長期的な関係構築を目指しています。
MAとCRMの併用で期待できる相乗効果
MAとCRMを併用することで、顧客情報を一元化し、マーケティングチームと営業チームのギャップを埋めることができます。MAとCRMを併用、連携することでさらなる成果が期待できます。
例えば、MAで生成されたリード情報をCRMに統合し、顧客情報を一元化することで、営業チームがリードの質や成熟度にもとづいて営業活動を行い、より1人ひとりに合わせた顧客対応を実現することが可能です。
逆にCRMの顧客情報をMAにフィードバックすることで、分析に必要な情報を追加し、さらに個別化されたマーケティング戦略へ生かすことも可能です。
このように、お互いが補完的なツールとして機能することで、それぞれの質が大きく向上します。
また、顧客は営業とマーケティングで一貫した体験が提供されるため、顧客満足度の向上が期待できます。
MAの機能は、マーケティング活動の「確実性」を高める即効手段
本記事では、MAの基本機能と具体期に何ができるのか、それで得られるビジネス成果の基礎を解説しました。
MAは、マーケティング活動の確実性を高め、そして営業活動、顧客獲得の成功率向上につなぎます。適切に活用し、顧客満足度を高め、売上増加やビジネスの成長につなげましょう。
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