「稟議のプロセス」に課題を抱えている人へ。稟議はビジネスプロセスの中で極めて重要な工程です。しかし現場では昔から、作成から承認までに時間と手間がかかるので「面倒」「非効率」などと頭を悩ませている工程でもあります。
そこで注目され、導入意向が特に高まっているのが、稟議プロセスを「電子化/デジタル化」し、文書と承認フローを一元管理するIT製品「ワークフローシステム」を活用する手段です。事業運営の上で、誰がどのような理由で承認や拒否をしたのか「決定の過程を明確」にし、事業やビジネスにおいて「透明で公平な意思決定」をより高度化するために活用する企業が増えています。
本記事では、稟議が面倒で非効率と感じられる原因やワークフローシステム導入のメリット、具体的な改善ステップ、さらには無料で試せるシステムの例を挙げながら、効率的かつ透明性の高い意思決定体制の整備方法を解説します。併せて、ハードルを低く抑えてすぐに検討できる“無料で使える”おすすめワークフローシステム11選(2025年3月時点)もご紹介します。あなたの会社の課題解決やビジネス躍進に向けた具体的な参考情報になれば幸いです。
機能で比較「ワークフローシステム」おすすめ製品一覧
目次
稟議の非効率を解決するワークフローシステムの基本
稟議の作成・承認・決済、そのプロセスには“時間が限られる中”で時間や手間がかかり、また承認者のスケジュール調整や書類の準備など様々な手間も発生することで、企業全体の業務効率を損ねる課題としてよく挙がります。中にはいまだ紙書類ベースでの運用や多段階すぎる承認プロセスによって承認が滞ってしまうケースも少なくないようです。
そこでワークフローシステムを導入することで、オンライン上で稟議書を回覧し自動的にフローを進めるなど、承認作業の大部分を効率化することが可能になります。
ビジネスユーザーは「稟議」を重要ながら、煩雑で効率が悪いと思っている
現場では稟議を、どのように感じているのでしょう。多くの場合、以下のように「重要」とは理解していつつも、「煩雑で効率が悪い」と思っているのではないでしょうか。
書類作成や承認依頼のような手続きが複雑だったり時間が掛かったりする作業は、本来の業務に注力する時間を奪われて面倒と感じます。併せて承認者・決裁者から見ても、全てのステップを紙やエクセル(Microsoft Excel)・メール程度のアナログ作業ベースの工程では、戻りやダブルチェックが増え、同様に面倒と感じています。こうした煩雑さが企業全体の生産性を落とし、意思決定のスピードにも悪影響を及ぼしてしまっているかもしれません。
× 手続きが煩雑
稟議は、稟議書を作成し、印刷し、承認者・複数の関連部署や上長へ順番に回覧し、都度説明し、都度承認印をもらうことで「承認」「決済」を得る工程です。不備や不足事項があれば手戻り・差し戻しが発生しますし、承認を得る順番、準備・手回しのような工程も必要です。
またアナログな工程では、いつどの承認者で承認待ちの状態なのかも把握しづらいです。このように現場担当者は稟議の進捗確認にも多くの時間を割かなければなりません。これらの煩雑さが積み重なり、現場の負担を増大させています。
× 効率が悪い
稟議は書類やその内容によって、直近の上長、部長、総務・法務、事業部長、取締役、社長…などと承認すべきルートが多段階に設定されます。順番に承認していくので、どこかで1人の承認が遅れると全体の承認完了まで遅れが波及します。
紙ベースの稟議では途中の承認者・決裁者が何かを見落としたり、書類が紛失してしまうリスクすらあります。明確なルール化、あるいはシステム化されていない状態では修正や再申請にも余計な時間がかかってしまうのです。
○ 透明性を確保できる
とはいえ現場も、稟議プロセスを適切に行うことで自社の意思決定の過程が詳細に記録される、つまり「透明性を確保するために重要」であることは理解しています。
各ステップで誰がどのような理由で承認または拒否をしたのかが明確に文書化されます。この記録は後から参照でき、意思決定の背景やプロセスを第三者も確認できるため、不正や偏りが発生しにくくなります。また複数の承認者が関与することで、公平性が保たれ、透明性が強化されます。これにより、企業全体の信頼性が向上します。
○ 責任の所在が明確になる
稟議のプロセスによって、各ステップで誰が承認または拒否を行ったかが詳細に記録されます。
この記録により、意思決定に関わった全ての人物が特定でき、どの段階でどのような判断が行われたかが明確になります。結果として、問題が発生した際にその責任の所在を迅速に特定でき、適切な対応が可能となります。透明性と責任分担がクリアに示されることは、組織のリスク管理や内部統制に必要です。
稟議の目的
改めて稟議は、組織全体の意思決定プロセスを整え、リスクの低減や業務の適正化を図るために欠かせないプロセスです。稟議書という文書を用いて、提案や計画を複数の関係者に回覧し、承認を得ます。
その目的は、まず意思決定の透明性を確保することです。誰がどの段階でどのような理由で承認したかが明確に記録されます。次に責任の所在を明確にすることです。各承認者・決裁者が記録されることで、問題発生時の責任の特定が容易になります。最後に、コンプライアンスの強化です。企業の規定やポリシーに従った意思決定が保証され、不正や規定違反を防止します。
意思決定の透明性の確保
意思決定の透明性の確保は、企業内での信頼性と公平性を保つために必要です。透明性があることで、誰がどのような理由で何を決定したのかが明確に記録され、後からその過程を確認することができます。これにより、不正や偏った判断が防止され、全員が納得できる形での意思決定が行われます。透明性は従業員の信頼感を高め、また企業の健全な運営に寄与します。
責任の明確化
責任が明確になっていることで、問題が発生した際の迅速な対応を可能にします。稟議のプロセスでは、各段階で誰が承認や拒否を行ったかが記録され、意思決定に関わった全ての人物が特定されます。これにより、問題が起きた際にその責任の所在を迅速に特定でき、適切な対応が取れます。責任の明確化はリスク管理を強化し、企業の信頼性を高める重要な要素です。
組織全体のコンプライアンスの強化
適切な手続きや承認プロセスを踏むことは、法令や社内規定の順守を徹底するうえで重要です。稟議プロセスを通じて、すべての意思決定が企業の規定やポリシーに従って行われることが保証されます。これにより、不正行為や規定違反が防止され、法的なトラブルを回避することができます。また、コンプライアンスの強化は、企業の信頼性を高め、社会的な信用を維持するためにも重要です。
稟議事項とは?
稟議事項とは、企業や組織内で正式な承認を必要とする重要な決定や提案のことを指します。具体的には、以下のような項目が稟議事項に該当します。
- 予算の承認
- 重要な契約の締結
- 組織変更
- 規定やポリシーの変更
- 新規事業の立ち上げ
- その他の重要な意思決定
予算の承認
新しいプロジェクトや事業に必要な資金の割り当てを決定する際には、予算の承認が必要です。これには、設備投資、広告宣伝費、人件費などが含まれます。
重要な契約の締結
サプライヤーとの取引契約や顧客との販売契約など、企業の運営に大きな影響を与える契約は稟議事項として扱われます。これにより、契約内容の妥当性が確認されます。
組織変更
部門の新設や統合、役職の変更など、組織構造に関する変更も稟議事項に含まれます。これにより、組織全体のバランスや効率が保たれます。
規定やポリシーの変更
企業の内部規定やポリシーを変更する際には、稟議を通じて承認を得る必要があります。これにより、変更内容が適切であり、全社員に周知されることが保証されます。
新規事業の立ち上げ
新しい製品やサービスの開発、マーケットへの参入なども稟議事項です。これにより、事業のリスクや市場調査の結果が慎重に検討されます。
その他の重要な意思決定
企業の方針や戦略に重大な影響を与えるその他の事項も稟議を通じて承認されます。これには、リストラや大規模なプロジェクトの開始などが含まれます。
ワークフローとは?
ワークフローとは、前述した稟議のような業務プロセスや作業手順を一連のステップとして視覚化し定義すること、およびそれを効率的に管理するための考え方のことです。このワークフローの自動化・最適化を支援するIT製品を「ワークフローシステム」などと呼びます。
一般的には、稟議のような複数段の承認が必須のプロセスから、休暇申請、経費精算などのように複数関係者とのやり取りを伴うフローを効率化するために活用されます。
ワークフローシステムの導入により、申請や承認、督促といった作業をスムーズかつシンプルに進めることが可能となり、ビジネス全体のスピードアップと透明性の向上が期待できます。
この1ページで解決ワークフローシステムの目的・基本機能から、製品の選び方までを徹底解説|ワークフローシステム製品おすすめ11選
稟議プロセスの改善に必要なステップ
稟議の面倒とされる課題を解消するには、まず自社の現状を客観的に分析し、問題点を明確化することが求められます。次に具体的な改善策を検討して運用段階に落とし込み、導入後は効果を観察しながら継続的なアップデートを行うことが成功のカギとなります。
- 問題点の洗い出しと現状分析
- 改善策の設計と導入
- 効果観察と継続的改善
問題点の洗い出しと現状分析
稟議プロセスが複雑化しているシーンでは、どの段階で承認が滞るのかを把握できていないケースが多く見受けられます。まずは関係者へのヒアリングや稟議書のチェックを通じて、ボトルネックになっている部分や余計な手順がないかを洗い出します。現状分析を徹底して行うことで、次に進む改善策の精度が高まります。
ヒアリングとアンケート
現場担当者や承認者へ直接質問し、実務で頻発する具体的な問題や不満点を集めることが特に有効です。実際に稟議を扱うユーザーの声は、システム的には見つけづらい問題点を浮き彫りにしてくれます。アンケートを通じて定量的なデータを取得し、課題をより明確に把握することが大切です。
プロセスの可視化
現状の稟議フローを図式化し、申請から最終承認までの流れを一目で把握できる形にしてみてください。どの段階で時間がかかっているのかがはっきりみえてくるでしょう。関係者全員が同じ視点でプロセスを理解することで、問題点に対する認識が共有され、改善策を議論しやすくなります。
改善策の設計と導入
洗い出した問題点に対して、具体的にどのように解決していくかプランを作成します。ワークフローシステム導入の前に、まずは稟議に関わる規定やルールを再整備し、それが運用面でどのように適用されるかを明確化しましょう。導入時には、システムの仕様だけでなく、ユーザーの使いやすさも考慮することが重要です。
ワークフローシステム/自動化の導入
稟議の多段階承認や書類管理の負担を解消するために、ワークフローシステムによる効率化+自動化機能を有効に活用していきましょう。
システム導入にあたってはクラウド型/オンプレミス型などの形態や、他システムとの連携性、利用者数に応じた費用対効果も検討しましょう。
承認フローの簡素化
承認者の人数や段階が多すぎることで複雑化しているならば、不要なステップを理解・分類して削除・省力化する策を検討します。
ワークフローシステムを使うと、例えば書類によって、金額に応じて「承認ルートを変える」など、リスクや費用規模に合わせたフローに最適化する設計・設定を容易に行えます。プロセスを最適化することで迅速な承認が可能となり、業務全体のスピードを上げることにつながります。
ドキュメント管理の整備
紙ベースの稟議では、承認後の書類保管やファイリングに大きなリソースとコストを割かなければならない問題とともに、欲しい情報へ即アクセスする「検索性」を効率化できません。
ワークフローを「電子化/デジタル化」することで、記入漏れや書類紛失のリスクを抑えながら一元管理ができ、検索性も高まります。これによって過去の稟議内容や承認履歴を速やかに確認し、後工程の業務にもスムーズに活かすことができます。
効果観察と継続的改善
システム導入後は運用状況を定期的に確認し、当初想定していた効果を達成できているかをチェックしていきましょう。トラブルが発生した場合の原因分析や利用者からのフィードバックをもとに、さらなる改修や運用方法の見直しを検討することが継続的な改善につながります。
定期的なレビュー
運用開始から一定期間が経過したら、総括を行い、承認スピードやシステムの活用度合いを再評価します。もし想定よりも効率が上がっていないならばフロー設定やシステム操作上の課題を洗い出し、関係者間で再度共有するといった対策が有効です。
トレーニングとサポート
新たな仕組みはユーザー(従業員、承認者・決裁者それぞれ)には操作方法や利用フローへの理解が求められます。会社として、トレーニング用資料の作成やQ&A対応、ヘルプデスクの設置などを適切に行うことで、スムーズな定着を促進できます。
継続的な改善
ビジネス環境や組織体制は常に変化します。新しい法律が追加になったり、事業戦略が変わることによって承認フローを見直す必要も出てくることでしょう。1度整えたら終わりではなく、定期的にシステムや運用ルールをアップデートする体制を整えておきましょう。
ちなみにクラウド型/SaaS型製品の大きな利点の1つとして「自動アップデート」があります。例えば法令の施行に準じて「ツールの機能」として書類テンプレートや機能が自動アップデートされる製品が多くあります。これを有効に活用すると、自社で特段の準備を抑えつつも法令に対応しやすく、コンプライアンスの順守・強化が行いやすくなります。
稟議の面倒・大変・正確性向上を効率化するワークフローシステム
稟議プロセスで「面倒・大変」だった多くの課題は、ワークフローシステムの導入で一気に解消されます。ここからはワークフローシステムの機能、利点、導入・検討のポイントを解説します。
ワークフローシステムの主な機能
- プロセスの自動化
- リアルタイムの進捗状況追跡
- 柔軟な承認フローの設定
- 通知とリマインダー
- ドキュメント管理
- レポート/分析
プロセスの自動化
稟議書が提出されると、あらかじめ設定した承認者や部署に自動的に通知が飛び、承認や差し戻しが行われます。人の手を介さない自動化ステップによって、必要な情報が関係者に迅速かつ的確に伝わるメリットがあります。
リアルタイムの進捗状況追跡
システム上でどの段階まで承認が済んでいるかがすぐに分かります。担当者は次のアクションをどうすべきか早期に把握できます。稟議が滞っている場合でも、誰がどこで止まっているのかを速やかに確認でき、対策が取りやすくなります。
柔軟な承認フローの設定
案件の重要度やコスト規模に応じた承認ルートを適切に設定、あるいは柔軟に切り替えられる機能は、経営判断のスピードを上げるうえで非常に重要です。ワークフローシステムでは申請フォームのテンプレート化も同時に進むため、申請者がその都度個別に申請フローを考案するような手間は(ほぼ)なくなります。
通知とリマインダー
担当者、承認者・決裁者は、システムからの通知やリマインドを受け取ることで対応の抜け漏れを防げます。メールやプッシュ通知と連携しているシステムは多く、多忙で承認数も多く忘れがちになる上長や多忙なマネージャーにとって便利な仕組みです。
ドキュメント管理
申請書類や添付ファイルをオンライン上で一括管理する機能です。デジタルデータなので検索性が大きく向上し、また紙での管理を廃することによるペーパーレス化・コストカット、アナログ管理による紛失リスク低減なども実現します。
同時に、書類のバージョン管理機能を備えるシステムであれば、何度でも修正履歴を追跡し、以前の状態に戻すことも可能です。
レポート/分析
稟議の承認に要した時間や、どこのフローにボトルネックが発生しやすいかを視覚化・分析する会社・管理部門向けの機能です。例えば、稟議が最も多く発生する時期や承認に特に時間のかかる部署、フロー、問題を特定できれば、今後の対策をより効果的に打ち出すことができます。
おすすめワークフローシステムの選び方、電子化のメリットと思わぬ落とし穴
ワークフローシステムの導入メリット
ワークフローシステムを導入することで、ビジネス全体の効率化と同時に、組織内のコンプライアンスや透明性も向上します。承認ルートを可視化できるため管理者の負担が軽減され、従業員は面倒な手続きから解放されます。結果として意思決定のスピードが上がり、企業としても競争力の向上が期待できます。
企業・管理者視点のメリット
- 業務効率が向上する
- 透明性とコンプライアンスを強化できる
- 迅速な意思決定を支援する
業務効率が向上する
紙書類の作成や手動での回覧が不要になり、申請から承認までのプロセスを一元的に管理できるため、対応スピードが格段に速くなります。浮いた時間をコア業務に充てられることが、企業の生産性向上に直結します。
透明性とコンプライアンスを強化できる
承認ルートが明確に設定され、承認履歴についてもシステム内にデータとして蓄積されるため、内部統制が取りやすくなります。監査や調査が必要な場合でも、デジタルデータをすぐに検索・抽出できるので、確認作業がスムーズに進みます。
迅速な意思決定を支援する
システム上でリアルタイムに情報が共有されることで、誰がどの承認段階にいるかを常に把握することができます。必要に応じて承認者を追いかけたり代替承認を活用したりできるため、従来に比べて圧倒的に早いタイミングで意思決定が可能となります。
従業員視点のメリット
- 作業負担が軽減する
- 役割と責任が明確になる
作業負担が軽減する
テンプレート化されたフォームで必要項目を記入するだけで申請が完了するため、書類作成にかける時間が削減できます。過去の申請を参照しながら入力することも容易になるため、新規稟議作成時のミスや手戻りも減少します。
役割と責任が明確になる
誰がどのタイミングで承認すべきかがシステム上で定義されるため、うっかり誰かを通し忘れるというトラブルが起こりにくくなります。承認フローに関わるメンバーの責任範囲がはっきりすることで、合意形成もスピーディに進めやすくなるのです。
「無料」で試せるワークフローシステム11選
稟議プロセスのデジタル化は、昨今の企業に早期のDX化が求められている背景、そして自社の業務・従業員全員に関わることから「なるべく早く」対策したい一方で、確実性観点の慎重な調査とそしてコスト面の考慮も必要となるでしょう。これにはクラウド型/SaaS型製品で検討する手段が推奨できます。IT製品、特にクラウド型製品には「無料版」を用意するものが多くあります。無料版とは、一定の条件のもとで個人事業主から中小規模シーンでの導入に向け、または選定・検討に向けたお試しのために用意される「無料プランのある製品」あるいは「無料トライアルを用意する製品」のことを差します。「サクッとスモールスタートできる」あるいは「有料版の機能をタダで試用できる」ことがメリットです。
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