「この数字の根拠は?」「あのデータは一体どこにあるんだ」「これを今すぐ知りたい。え? 3日もかかるの?」──。経営者や管理者は、経営、事業戦略の意思決定に必要な情報が得られず、業績管理に日々頭を悩ませています。「管理会計システム」により、そんな経営者や管理者が意思決定を行うための情報を提供し、業績管理を効率化できるでしょう。
本記事では、管理会計システムの基本概念、主な種類、導入のメリット、そして適切なシステムを選択するための検討ポイントについて詳しく解説。併せておすすめの管理会計システム/会計システム 10選(2024年7月時点)を紹介します。
目次
管理会計システムとは?
管理会計システムは、企業内部での意思決定を支援するために設計された情報管理ツールです。企業は経営資源を最適に活用するために、正確かつ迅速な情報が求められます。財務データや業務プロセスデータを効果的に分析し、経営判断をサポートします。例えば、製品別の利益分析や部門別のコスト管理など、詳細なデータをリアルタイムで提供することで、最適なリソース配分が可能になります。管理会計システムを導入することで、企業は迅速かつ効率的な意思決定ができるようになります。
大きく分類すると「会計システム」の一種ですが、会計システムにおける機能や目的の中で、財務会計が外部の利害関係者(株主、債権者、税務当局など)に対する報告を目的としているのに対し、管理会計は組織の内部で使用され、経営者や管理者が組織の業績を理解し、効果的な意思決定を行うために必要な情報を提供することを目的としています。
- 管理会計=内部向け
- 財務会計=外部向け
管理会計システムに含まれる主な機能
管理会計システムには、企業経営に必要となる以下の機能が含まれています。
- 予算管理(予算編成)
- 財務分析(予実比較)
- コスト管理
- リスク管理
- 意思決定支援
- 内部報告
これらの機能により、企業の経営情報を効果的に管理し、意思決定の迅速化やリスクの低減が可能となります。具体的な機能としては、予算管理、財務分析、コスト管理、リスク管理などが挙げられます。これにより企業全体の透明性を確保し、経営判断をサポートします。
予算管理機能により、年度や月ごとの予算を設定し、その進捗状況をリアルタイムで把握することを可能にします。財務分析機能では、財務データをもとにした多角的な分析が行い、企業の現在の経営状況を正確な評価を支援します。コスト管理機能は、各部門やプロジェクトごとのコストを詳細に追跡し、効率的な経費配分を支援します。リスク管理機能は、潜在的なビジネスリスクをデータを軸に予測し、その回避策を計画する役割を果たします。
管理会計システムの持つ機能は、ほぼ全てが自社の経営効率を高めるために設計されています。これにより経営者や管理者/マネージャーは「タイムリーで正確な情報をもと」に意思決定を行うことができ、企業戦略の実行における成功確率を高めます。また、データ品質の向上やアクセス制御の強化により、企業内の情報セキュリティも確保されます。
管理会計システムの主なタイプ
管理会計システムにはいくつかのタイプがあり、それぞれ特定のニーズや機能に応じています。自社・組織に適したタイプの選定は、業績向上や効率化に不可欠といえます。
代表的な管理会計システムのタイプは以下の通りです。経営管理型、予実管理中心型、会計ソフトとの統合型、活動基準コスティング(ABC)型、バランス・スコアカード型、リーン会計型の6つに分類されます。これらのシステムそれぞれの特徴とその活用方法を見ていきましょう。
経営管理型
経営管理型は、主に企業全体の経営戦略と運営効率を向上させるために利用されます。経営層に必要な情報を迅速かつ正確に提供することを主目的に、戦略的な意思決定を支援する役割を果たします。また、各部署間の情報共有を促進し、組織全体のパフォーマンスを向上させる効果もあります。
例えば、統計データや財務レポートのリアルタイム更新により、経営者は即時に現状を把握し、必要な対策を迅速に講じることができます。このシステムの導入により、企業の競争力が向上し、業績の向上が期待できます。さらに、経営管理型システムはデータの可視化や分析機能が充実しているため、部門ごとのパフォーマンス評価や改善点の特定に役立ちます。
予実管理中心型
予実管理中心型は、企業が計画と実績を詳細に比較し、パフォーマンスを適切に管理・評価するために使われます。予算計画通りに進んでいるかどうか、収益やコストが適切に管理されているかどうかを評価するために有用です。
例えば、営業部門が年間目標売上を設定し、それに対する月次の実績をシステムで容易に見比べ、差異を的確に把握することができます。これにより、どのタイミングで目標から逸れていたか、課題は何かなどをを早期に発見し、適切な修正行動を迅速に取ることが可能となります。その結果、企業は計画と実績の差異を早期に認識し、迅速な意思決定と修正が可能となります。
会計ソフトとの統合型
前述したように管理会計システムの機能は、会計ソフト/会計システムへ統合されている・標準で機能が備わっている例も多くあります。このような統合型製品は、複数の会計機能を一元管理するためにとても有効です。
統合型は企業のさまざまな会計情報を1つのプラットフォームで管理できるます。同じ製品あるいは同じシリーズの製品であればデータ連携性は設計段階であらかじめ考慮されており、総じてデータの整合性が保ちやすく、管理効率を高められます。会計処理の重複や手入力によるミスが大幅に削減される上、リアルタイムで正確な会計情報が提供され、経営判断が迅速に行えるようになります。
例えば、販売管理システムや給与計算システムなどとも連携統合されることで、逐次発生する取引データや給与計算結果なども自動的に管理会計システムへ取り込まれて管理できます。会計管理担当者も含めて会計まわりの業務効率を大きく向上させることに寄与するでしょう。
活動基準コスティング(ABC)型
活動基準コスティング(ABC/Activity Based Costing)とは、企業の全活動にコストを割り振る/間接費を明確に配賦する手法のことで、そのプロセスに特化した、あるいはそのプロセスを踏まえた機能を備える製品も存在します。従来のコスト計算方法と異なり、ABC型では細かい活動ごとにコストを詳細に把握することで、コストの透明性を高められます。
例えば、製品Aと製品Bを生産する場合を考えてみます。製品Aの組み立てには5人の作業員が必要で、製品Bの組み立てには3人の作業員が必要な場合、ABC型で判断することで、それぞれの製品に対する作業コストを個別かつ明確に算出できます。どの工程がどれだけのコストを占めているのかをはっきりと把握でき、経営判断がより適切になる利点があります。
ABC型のアプローチによって全体の活動をより詳細に分析できれば、無駄や非効率な部分を特定しやすくなり、また製品ごとの収益性分析も可能です。
バランス・スコアカード型
バランス・スコアカード型は、多角的な視点から企業のパフォーマンスを評価するアプローチとその機能を取り入れたシステムです。財務指標に加えて、ビジネスプロセス、顧客、学習と成長の4つの視点を含めて評価します。
これによって、売上高だけでなく、顧客満足度や内部プロセスの効率、従業員のスキル向上なども評価基準に含めて判断材料にできます。自社のパフォーマンスを多面的に評価することで、より緻密な経営戦略を立てていくため体制づくりに大きく寄与します。
リーン会計型
リーン会計とは、効率的な資源管理とコスト削減に焦点を当てた管理会計手法のことです。リーン会計型には例えば、特定の業種・業界に特化した機能を特徴とする製品が分類されることが多いです。
例えば製造業でリーン会計を導入することで、生産ラインの無駄を削減し、在庫管理の改善によりコストを削減することが可能です。小売業では、仕入れ業務の効率化や在庫回転率の向上を通じてコスト効果を実現します。これにより効率的な運営が可能となり、収益性が向上する効果が期待できます。
リーン会計型あるいはその機能は、このような生産プロセスや業務の無駄を最小限に抑えることを目的に、全体の効率を向上させることを重視するシーンに向きます。リソースの適切な利用が促進され、コスト削減の実践化が期待できます。
管理会計システムの導入で得られるビジネスメリット
管理会計システムの導入により、企業・組織にさまざまなメリットを得られる可能性があります。その中でも大きなメリットを3つ挙げます。
- 意思決定の速度が向上する
- 資源の最適化とコスト削減を実現する
- 組織全体の透明性とコミュニケーション性が向上する
意思決定の速度が向上する
管理会計システムは、組織の経営者や管理者にとって迅速かつ正確な情報を的確に提供します。具体的には「実績と予算の比較」「コスト構造の分析」「パフォーマンス評価」などのデータを通じて、意思決定をより合理的かつ効果的に行えるようになります。
また、即座に欲しい情報へアクセスできることで、迅速な対策や調整も可能になり、結果として組織が変化に迅速かつ適応的に対応できるようになります。
資源の最適化とコスト削減を実現する
管理会計システムを用いたコスト計算や予算管理を通じて、組織はどの活動にコスト効果が高く、どの部分に改善の余地があるかどうかを特定できます。
詳細なコスト分析により、不必要な経費を削減し、生産プロセスやプロジェクトの効率を向上させることができます。また、資源の最適な配置や使用効率の向上により、組織は持続可能な成長を促進し、競争力を高めることができるでしょう。
組織全体の透明性とコミュニケーション性が向上する
管理会計システムは、企業の資産である「情報」を組織内で共有しやすくします。
その効果として、各部門やプロジェクトのパフォーマンスや進捗状況に関するデータが透明になり、組織全体での理解が深まります。透明性が向上すれば、組織内のコミュニケーションが強化され、異なる部門やチームが共通の目標に向けて協力しやすくなります。「属人化」の課題も解消できるでしょう。
これらのメリットにより、管理会計システムは組織の効率性や競争力向上に寄与し、持続可能な成長をサポートする役割を果たします。
日本で導入例の多い管理会計システム/会計システム10選
ここからは参考例として、日本で導入例の多いクラウド型/SaaS型の管理会計システム・会計システムを10製品紹介します。(製品名 abcあいうえお順/2024年7月時点)