連結会計システムは、親会社とその子会社、関連会社などの複数の企業の財務情報を統合して一元化するためのIT製品/ITシステムです。複雑な企業グループ構造において透明性を確保し、また経営者や投資家へ正確で包括的な財務情報を提供していくにはどうするか。本記事では、連結会計システムで実現する効果、導入メリットと主な機能、そして検討ポイントを詳しく解説します。あなたの会社とビジネスに適する連結会計システムを見つけるための一助となれば幸いです。
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目次
連結会計システムとは?
連結会計システムとは、複数の子会社や関連会社を持つ企業グループが、個々の会社の財務情報を一つの報告体系に統合するために用いるITシステム/IT製品のことです。
このシステムを使用することで、グループ内の内部取引の消去や通貨換算などの複雑な処理を自動化し、企業全体の財務状態を正確かつ迅速に把握することが可能になります。企業の経営戦略策定や投資家への情報提供に不可欠となっており、特に速度感と効率向上を軸に成果創出を望む企業を中心にクラウド型/SaaS型製品を導入するシーンが増えています。
連結会計システムの必要性
連結会計システムは企業グループ全体の財務状況を正確かつ迅速に把握するためにあります。具体的には、以下のような状況でその必要性が高まります。
例えば「海外に子会社を持つ」場合、その子会社の財務情報は異なる通貨で記述されます。これを母体企業の通貨に換算する必要があり、連結会計システムの通貨換算機能が重要になります。
さらに「企業グループ全体の税務計算を行う際」にも連結会計システムは役立ちます。各国・地域の税制は異なるため、その複雑さを解消し、正確な税務計算を可能にする機能が必要です。例えば子会社Aが子会社Bに商品を販売した場合、これは企業グループ全体としては取引が発生していないとみなせます。このような内部取引を自動的に消去する機能も連結会計システムには求められます。
これらの機能を持つ連結会計システムを導入することで、企業全体の経営をより効率的かつ正確に行うことが可能となります。
連結会計システムが求められる企業、業種・業態
連結会計システムが特に求められるのは、多国籍に展開する大企業や、複数の子会社・関連会社を持つ企業グループです。
例として、グローバルに製造業を営む企業グループが挙げられます。このような企業では、生産拠点や販売子会社が世界各国に点在しており、それぞれが異なる通貨で会計を行います。連結会計システムを有効に用いることで、これら多様なデータを一元管理し、グループ全体の財務状態を正確に把握することが可能です。
また、金融業界では投資関連の子会社や海外の関連会社を多く持つケースがあり、これらの企業においても連結会計システムが必要とされます。金融市場の変動に迅速に対応し、リスク管理を行うためには、正確な財務情報の把握が必須であり、連結会計システムがその役割を果たします。
テクノロジー業界においても、特許や技術のライセンスを受ける子会社などが国際的に展開している場合、連結会計システムが重要となります。技術ライセンスに関連する収益やコストを正確に管理し、企業グループ全体の収益性を評価するために連結会計システムが用いられます。
このように、企業がグローバルに展開している場合や、多岐にわたる業種・業態に事業を持つ企業グループでは、連結会計システムが経営戦略の策定やリスク管理において中心的な役割を果たします。
連結会計システムの主要機能
連結財務諸表作成機能
連結財務諸表作成機能は、企業グループ全体の財務状況を一覧できる重要な機能です。母体企業と子会社、関連会社それぞれの財務データを統合し、1つの財務諸表として出力します。これにより、企業全体の財政状況や収益性を評価することが可能となります。また、管理者はこの情報を利用して、事業の拡大や縮小、投資などの経営戦略を立案します。
自動消去処理機能
自動消去処理機能は、連結会計において重要な役割を果たします。これは、企業グループ内での取引(内部取引)による利益や負債を、連結財務諸表から除外するプロセスです。これにより、企業グループ全体としての真の経済的状況を反映した財務諸表を作成することができます。このプロセスを自動化することで、手間と時間を大幅に節約し、また計算ミスを防ぐことができます。
通貨換算機能
通貨換算機能は、多国籍企業にとって必要な機能です。これは、異なる通貨で経理が行われている海外の子会社や関連会社の財務情報を、母体企業の通貨に換算する機能です。換算レートの変動による影響を管理するため、通貨リスクを適切に評価・管理することができます。
税務計算機能
税務計算機能は、連結税金の計算を自動化する機能です。企業グループ全体の税務計算を効率的に行うことができます。国や地域によって税制が異なるため、その複雑さを解消し、正確な税務計算を可能にします。これにより、税務リスクを管理し、企業のコンプライアンスを維持することができます。
予算・予測機能
予算・予測機能は、過去の財務データを基に未来の財務状況を予測する機能です。これにより、企業の収益性、財政状況、キャッシュフローなどを予測し、効果的な経営戦略を立案することができます。また、各種シミュレーションを行うことで、異なるビジネスシナリオに対する企業のパフォーマンスを評価することができます。
連結管理システムの導入で得られるビジネス成果
- 全体財務状態の把握
- 親会社/子会社の関係の明確化
- 合併および買収の影響の評価
- 税務上メリットの最大化
- 投資家や株主への情報提供
全体の財務状態を把握
連結管理システムを利用することで、企業グループ全体の財務状態をリアルタイムで正確に把握することが可能になります。
例えば、複数の子会社を持つグローバル企業が各子会社の財務データを一元管理し、企業全体の資産、負債、収益性を総合的に評価できます。これにより、企業はより効果的な資本配分やリスク管理を行い、経営戦略の策定に役立てることができます。
親会社と子会社の関係の明確化
連結管理システムにより、親会社と子会社間の財務的関係が明確になります。内部取引の自動消去機能を通じて、グループ内での取引が企業全体の結果にどのように影響しているかを把握できるため、不透明だった親子関係が透明化します。これは、子会社の業績が親会社の財務状態に与える影響を正確に評価するのに役立ちます。
合併および買収の影響の評価
企業の合併や買収(M&A)は、企業成長の重要な戦略ですが、その影響を評価することは複雑です。
連結管理システムを使用することで、M&Aによって新たに加わった子会社の財務データを迅速に統合し、その影響を全体の財務状態に即座に反映させることができます。これにより、M&Aの成果を評価し、将来の経営戦略に生かすことが可能になります。
税務上のメリットの最大化
連結管理システムは、税務計算の自動化と最適化も支援します。グループ全体の税負担を最小限に抑えるための戦略を練る際、各国の税法に基づく計算を自動で行えれば、税務上のメリットを最大化する取り組みにつながります。例えば国際的な税務戦略を立てる際に、異なる税制を持つ国々での最適な利益配分を計算し、全体の税負担を軽減できます。
投資家や株主への情報提供
連結管理システムによって、投資家や株主への透明性の高い情報を提供する体制も実現できます。企業グループ全体の財務状態を正確に把握し、一貫性のある報告書を作成することができるため、投資家や株主からの信頼を得やすくなります。企業価値の向上に直結し、資本市場での評価を高める効果が期待できます。
連結会計システムの導入で得られるメリット
連結会計システムの導入による上記「得られる成果」は、自社/自社グループに多くのメリットを提供します。その中でも日本の上場企業視点でニーズとして挙がる具体的なメリットを8つ挙げて解説します。
- 法的コンプライアンスを確保、強化できる
- グループ全体の財務可視性を向上できる
- 経営の透明性を高められる
- 効率的な経営と資源の最適化を図れる
- 迅速な意思決定をサポートできる
- リスク管理を強化できる
- 税務戦略を最適化できる
- データの整合性と正確性を確保できる
法的コンプライアンスを確保、強化できる
連結会計システムを活用することで、国内外の法令や会計基準に基づき、法的なコンプライアンスを確保できます。主業務とは異なる領域で事業を展開する場合でも、各地域や分野の要件に適合した連結財務諸表を生成でき、規制要件を満たすことができます。
グループ全体の財務可視性を向上できる
連結会計システムは、親会社と子会社など複数の企業の財務データを統合し、一元的かつリアルタイムな可視性を提供します。これにより、グループ全体の財務状態や業績を把握でき、迅速かつ正確な意思決定が可能になります。
経営の透明性を高められる
経営の透明性は、投資家や株主からの信頼を得るために重要です。特に上場企業にとっては、財務状況の透明性を高めることが企業の評価を向上させるための重要な要素です。
効率的な経営と資源の最適化を図れる
連結会計システムにより、企業グループ内での情報共有が円滑になります。これにより、効率的な業務を実現すると共にムダな作業を削減できます。業務プロセスの自動化と合理化により、効率的な経営が可能となります。
迅速な意思決定をサポートできる
市場の変化に迅速に対応するためには、リアルタイムでの財務データの把握と分析が必要です。迅速な意思決定は、競争力を維持・強化するための重要な要素です。
リスク管理を強化できる
上場企業は多くのステークホルダーに対して責任を負っています。連結会計システムは、グループ全体のリスク情報を一元管理し、潜在的なリスクを早期に発見・対応することができます。リスク管理の強化は、企業の持続可能性を確保するための重要な要素となります。
税務戦略を最適化できる
税務戦略の最適化は、税負担の軽減やキャッシュフローの改善に役立ちます。これにより、企業の財務健全性を保ちつつ、経営効率を向上させることができます。
データの整合性と正確性を確保できる
データの整合性と正確性の確保は、信頼性の高い財務報告を行うために必要です。「データが正しい」ことで内部統制や監査対応が強化され、企業の信頼性が向上します。
これらのメリットにより、連結会計システムは企業グループが総合的なビジネス戦略を策定し、効果的に管理するための不可欠なツールとなっています。
連結会計システム導入時の主な注意点
連結会計システムの導入には多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリット/注意点も存在します。
まず、導入費用が高額になる傾向が挙げられます。システムの初期費として導入費、設計・カスタマイズ費、データ移行などがあり、このほかにベンダーへのサポート/コンサル費、従業員のトレーニングのような追加コストが発生することも考えられます。
また多くの場合、慎重に導入すべき重要なシステムであるがゆえ、導入までの時間が長くかかります。システムの設計やテストなどに多く必要で、実装に数カ月から場合によっては1年以上かかることもあり得ます。既存のシステムとの互換性やデータの整合性を確保するための技術的な課題も存在します。新しいシステムの操作に慣れるための従業員のスキルアップなども必要で、これがスムーズにいかないと一時的に業務効率が低下するリスクがあります。これらの要因を考慮し、十分な準備と計画を立てた上で導入を進めることが重要となるでしょう。
連結会計システムを選ぶポイント
連結会計システムを導入する際に、どのようなシステムを導入したらよいのか、またその時に気を付けておくポイントは何かを解説します。主な注意点は以下の通りです。
- データ品質と整合性の確保
- 法的要件と規制への適合
- スタッフのトレーニングと変更管理
- システムの柔軟性と拡張性
- サイバーセキュリティとデータ保護
データ品質と整合性の確保
連結会計システム導入時に最も重要なのが「データの品質と整合性」です。各子会社から提供される財務データの正確性、完全性、一貫性を整える必要があります。データの不整合や誤りは、誤った財務報告につながり、企業の信頼性を損なう可能性があるためです。
この対策として、データクレンジングや検証プロセスを確立し、定期的な監査を行う体制を併せて整えましょう。データソースの標準化や統合プロセスの自動化により、データの品質を一貫して維持する取り組みを継続して行う体制も必要となるでしょう
法的要件と規制への適合
連結会計システムは、国際的な会計基準や地域ごとの税法、その他の法的規制に準拠している必要があります。特に多国籍企業の場合、異なる国や地域での法的要件を網羅的に理解し、それに適合するシステムであることが重要です。
適合性を確保するためには、法務部門や外部の専門家と連携し、最新の法改正や規制の動向を常に監視し、システムのアップデートを行う体制を整える必要があるでしょう
スタッフのトレーニングと変更管理
新しい連結会計システムの導入は、組織にとって大きな変化をもたらします。従業員/スタッフが新システムを効果的に利用し、そのメリットを最大限に引き出すためには、適切なトレーニングとサポートが不可欠です。また、変更に対する抵抗を最小限に抑えるために、変更管理プロセスを計画的に実施することが重要です。スタッフの意見を聞き、適切なコミュニケーションを取ることで、変更への理解と受け入れ体制を促進できるでしょう
システムの柔軟性と拡張性
企業は成長し、事業は進化し、変化します。そのため、連結会計システムは将来の変化に柔軟に対応し、必要に応じて拡張できる設計であることが望ましいです。
例えば、新たな子会社の追加、事業領域の拡大、法的要件の変化などに迅速に対応できるシステムを選択することが重要です。このことにより、長期的な投資としての価値を確保し、組織の成長を支援できます。
サイバーセキュリティとデータ保護
連結会計システムには、企業の財務に関する機密情報が大量に含まれます。システム導入において、データの保護とサイバーセキュリティへの対策は特に注意すべき点となるでしょう。
データの暗号化、アクセス管理、ネットワークのセキュリティ強化などを通じて、データ漏洩や不正アクセスから情報を守る必要があります。また、定期的なセキュリティ監査や従業員へのセキュリティ意識の啓発も、有効な対策となります。
そして、自社グループの求める要件をカバーしている製品/ベンダーであることの確認も必要です。料金プランやオプションプランの有無とともに、これらを提言し、適切にサポートしてくれるベンダーを選定するのも一案となるでしょう。
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(製品情報更新順/2024年7月時点)