近年多くの企業が労務管理の効率化に悩む中、クラウド勤怠管理システムの需要が急速に高まっています。この背景には、単純に従来のアナログで手作業の多いタスクを毎回毎月行うのはもう大変という業務効率化へのニーズととともに、働き方改革や労働基準法の改正に伴う正確かつ迅速な勤怠管理が不可避となっている現状があります。
そこで本記事では、クラウド勤怠管理システムの基本的な特徴や具体的なメリット、さらに導入する際の重要なポイントを解説します。企業運営における新たな労務管理を取り入れて一緒に改善していきましょう。
目次
クラウド勤怠管理システムの基礎知識
クラウド勤怠管理システムとは、従来の勤怠管理方法を効率化し、クラウド技術を利用してデータ管理を行う勤怠管理のためのITシステム/IT製品のことです。まず、スマートフォンやパソコンからリアルタイムでアクセスでき、出退勤管理や休暇申請などをスムーズに行える特徴があります。この仕組みにより、人事管理業務の負担を大きく軽減することが可能です。以下より、もう少し具体的に特徴を掘り下げていきます。
クラウド勤怠管理システムとは?
クラウド勤怠管理システムは、従業員の勤怠データをクラウド上(インターネット上の記録スペース)でリアルタイムに記録して管理し、また勤怠管理を実際に行うためのソフトウェア機能を利用できるサービスです。このようなクラウド上で提供されるソフトウェアのサービスは「SaaS(Software as a Service)」と呼ばれます。
クラウド勤怠管理システムによって、従業員はスマートフォンやPCを使って簡単に勤怠状況を記録でき、そのデータは自動的にクラウドに保存され、そして正確な出退勤記録として即時にシステムへ反映されます。これにより従来の紙媒体や手作業のあるローカル管理に比べてデータの正確性が高まり、手動での入力ミスなどを防ぎ、そして労務管理の効率向上や業務工数の削減が実現できます。
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クラウド勤怠管理システムが重要視されている背景
現代の企業において、労務管理の効率化と正確性の向上は欠かせません。この背景には労働環境の多様化や働き方改革といった社会的動向も挙げられます。会社は人手不足が深刻化する中で、限られたリソースを効果的に活用し、労務管理の複雑化する課題にも対応することが求められています。
例えば、リモートワークやテレワークが急速に普及した今日、「多様化する勤務形態や勤務地に依存しない、柔軟な勤怠管理を」のような、これまで高かった壁を容易に超えられるクラウドサービスは特に重要な選択肢としてもう一般的になっています。昨今は特に、リモートワークや複雑な勤務形態を取り入れるようになった企業に「クラウド勤怠管理システムはとても有用な解決策だ」と認識されたことで需要が増えていると推定されます。
さらにクラウド勤怠管理システムを活用することで、頻繁に行われる法改正への対応も迅速に可能となり、法令順守の問題に柔軟に対処できます。変化し続けるビジネス環境に柔軟に適応しながら、業務効率を向上させることができるのです。
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クラウド勤怠管理システム導入のメリット
クラウド勤怠管理システムの導入は、現代のビジネスにおいて効率的な労務管理を実現する重要なステップです。ここでは、クラウド勤怠管理システムの導入による主なメリットについて掘り下げ、その具体的な影響や活用方法を確認していきす。
- 初期コストを抑えられる
- 手軽に導入できる
- 運用管理を省力化できる
- 法改正に正しくスムーズに対応できる
- さまざまな勤務体系に対応しやすい
- 給与計算を効率化できる
初期コストを抑えられる
クラウド勤怠管理システムは、初期コストを大幅に抑えることができる点が大きなメリットです。従来型のオンプレミス方式は、自社でサーバ設備を調達し、ソフトウェアライセンスなどを取得し、そこからソフトウェアの機能を開発していく工程で、これには物理コストとしても時間コストとしても高額な初期投資が求められました。
クラウド型システムならばこの負担の多くがスッとなくなります。またクラウドサービス(SaaS型サービス)の料金形態は、多くが従量課金制やサブスクリプション形式を採用しています。実際に利用する分だけ料金が発生するシンプルな仕組みのため使い続ける期間はコストもかかり続けはしますが、他方では運用コスト管理がしやすいととらえることも可能です。この初期投資とコスト面の障壁の低さが、大企業はもちろん、小規模企業やスタートアップにとっても導入しやすい特徴となっています。
手軽に導入できる
クラウド勤怠管理システムは特に導入が手軽です。従来のオンプレミス型システムのように高額なハードウェア費やシステム開発費を必要とせず、インターネット環境と適当な表示デバイス(PCやスマートフォン)があればすぐに使用を開始できます。勤怠管理のためのソフトウェア機能としてWebブラウザや専用のスマートフォンアプリを利用する形態が多く、煩雑な操作はなくスムーズに始められます。
運用管理を省力化できる
クラウド勤怠管理システムを利用することで、これまで紙やエクセルを使用して手動で行っていたような面倒な作業がスッとなくなります。データを一元管理し、リアルタイムでデータを更新し、また自動化された計算機能なども持つため、人為的なミスを減少させ省力化を可能にします。
具体的には、勤怠データの収集、従業員の残業時間の計算を自動的に行うなど、担当者がこれまで手動で試行錯誤しながら行っていた業務の負担を軽減する事例が挙げられます。この運用管理の効率化により、労働力や時間のコストが削減され、その分のリソースを他の重要な業務に振り向けることが可能になります。
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法改正に正しくスムーズに対応できる
クラウド勤怠管理システムは、法改正による労務管理の変更へ迅速に対応できる利点も挙げられます。SaaS型サービスはソフトウェアの「機能」を提供するサービスです。サービス・製品の提供会社(サービスベンダー)によって定期的にソフトウェアがアップデートされ、新しい法令や規制があればそれを反映する機能を率先して追加するためです。例えば2019年に施行された働き方改革関連法に伴い、多くの製品で「自動で有給休暇管理」や「残業時間の上限設定機能」などが追加更新されました。このような機能アップデートの仕組みにより、ユーザーも法規に沿った対応を比較的簡単に行える体制も整うわけです。
さまざまな勤務体系に対応しやすい
クラウド勤怠管理システムは「多様な働き方」への対応にも適しています。昨今会社にはこれまでのようなオフィスへ出社して勤務する働き方だけでなく、リモートワークやフレックスタイム制のような複数の柔軟な働き方への対応も強く求められます。こうした多様性へのニーズに適切に応じ、クラウド勤怠管理システムは従業員の状況、勤務スケジュールや労働時間を柔軟かつ効率的に把握できる機能が提供されます。
一例として、日勤、シフト勤務、フレックスタイム制を同時に運用するような企業も、複雑だったスケジューリングが簡素化され、正確な労働時間管理を記録する体制を実現できます。この柔軟性は、多種多様な雇用形態に対応を求められる企業にはとても有利です。
給与計算を効率化できる
クラウド勤怠管理システムは、給与計算を効率化するニーズにも効果的です。従業員の勤怠データを一元化して正しく収集し、正しく処理されていることで、このデータを連携すればそのまま給与計算ソフトや給与計算システムを用いた給与計算のプロセスも効率化、かつ自動化できます。具体的には、勤務時間や残業時間、有給休暇の取得状況などのデータが自動集計され、税計算や控除額の計算までも自動的に行うことができます。手作業に頼る作業をなくし、計算ミスのようなリスクも大きく低減できるでしょう。これにより運用コストが削減され、事業運営の効率向上にアップに直結することが期待できます。また、紙やアナログ手段ベースの運用を脱却し、デジタル化で一元管理する体制は、従業員数の多い企業や複雑なシフト管理を必要とする企業で特に利用価値が高まります。
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クラウド勤怠管理システムのデメリット
クラウド勤怠管理システムは多くのメリットを提供する一方で、導入に際して注意すべきデメリットも存在します。このセクションでは、クラウド勤怠管理システムに関連する代表的なデメリットと、それらに対する対策や注意点について詳しく解説します。
インターネット環境が必須となる
クラウド勤怠管理システムを利用するためには、安定したインターネット接続が欠かせません。クラウド技術がデータ処理やアクセスをインターネットを介して行う仕組みだからです。クラウドサービスは、オフィス外からでも勤怠管理にアクセスできる利点がある一方で、通信環境がなければ運用は困難になります。運用には安定したインターネット環境を確保することが重要であり、オフライン利用には限界がある点に注意が必要です。
カスタマイズに制限がある
クラウド勤怠管理システムは多く場合、ユーザーの声を聞き、アップデートしながら、大抵の会社で勤怠管理に必要とされるニーズの高いものを標準機能として備えています。しかし、標準機能だけでは自社の独自のニーズ、要望、課題解決に対応できない、機能が足りないこともあり得ます。しかしこのようなカスタマイズ、特殊な仕様変更や機能追加のような個別対応は難しい場合も少なくありません。SaaS型製品は特に、提供側がシステム全体を統一的に開発することで利用者全体の安定性やコストパフォーマンスの向上を目指しているため、個別仕様には対応しにくい側面があるためです。
例えば特定の業界における特異な就業規則や特有の勤務体系を完全に反映させたい場合、システム上の制約が別の問題を引き起こす可能性があります。システム導入において、自社に必須の機能が標準で搭載されているか、またカスタマイズがどの程度期待できるかを十分に検討することが重要となるでしょう。
セキュリティに一定のリスクがある
クラウド勤怠管理システムはインターネットを介してデータを処理および保存します。この特性のため、セキュリティリスクを完全に排除することはできません。特に、不十分なセキュリティ対策や外部からの不正アクセスによって、データが漏洩する可能性は存在します。「セキュリティ対策を全て自社の管理下におけない」と、特に大規模/グローバル企業や金融業のようなミッションクリティカル分野の業種の企業でクラウド型のデメリットに挙がることもあります。
クラウドサービスの利用において、選定時に、どのようなセキュリティ対策を行っているかを確認したうえで、定期的に社内に向けて呼びかけたり、セキュリティ対策の研修を行ったりすることが有効です。
その一方で、クラウド型としてサービスを提供するサービスベンダーははほとんどの場合、セキュリティに関する最新の技術や知見を持ち、データを保護するための高いセキュリティ対策を施しています。専門知識を持つクラウドサービスベンダーによる厳重なセキュリティ管理体制を“含めて”自社のセキュリティ対策ができる、という考え方の方が多くの企業にとってはメリットといえるかもしれません。
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クラウド勤怠管理システムの選び方
クラウド勤怠管理システムを選ぶ際には、自社の業務内容や規模に適したものを見極めることが重要です。本セクションでは、適切なクラウド勤怠管理システムを選定するための具体的なポイントを解説します。
今後の運用管理がよりスムーズに進むよう、有用なチェックポイントをもとに最適なシステム選びを検討していきましょう。
- 自社の就業形態に対応できるか
- 導入前のトライアルは可能か
- サポート体制は十分か
- データの分析は可能か
- 操作性が自社に合っているか
自社の就業形態に対応できるか
クラウド勤怠管理システム選定の際、自社の就業形態へどれだけ適切に対応できるかを確認することがまず必要です。企業ごとに正社員、契約社員、アルバイト、パートタイマーといった異なる雇用形態や勤務体系が複数あると思います。さらに、リモートワークやフレックスタイム制、直行直帰などの柔軟な働き方に対応してほしいニーズも増えています。システムには、これらの多様な勤務形態や労働時間管理に対応できる柔軟性のある機能が求められます。
例えば、フレックスタイム制を導入している企業であれば、その制度に合わせて労働時間の記録や残業時間の自動計算が可能な機能があると管理の効率化が図れます。シフト制を採用している場合にはシフト管理機能が充実していて、従業員ごとの勤務スケジュールを簡単に作成および調整できる機能があると利便性が増すでしょう。従業員への負担も大きく軽減できます。
勤怠管理システムには「特定の業種に特化・強み」を持つことを強みにする製品もあります。自社の要件や働き方に合う機能を備えたシステムを見極めることで、導入後の問題を未然に防ぐことができるでしょう。
導入前のトライアルは可能か
クラウド型・SaaS型製品の一部には「無料版」が、例えば一定の機能制限のある「月額無料プラン」や一定期間無料で使える「無料トライアル」が用意されています。
ITシステムの検討において、この無料トライアルが可能かどうかはかなり重要といえます。「使い勝手を実際に試せる」ためです。製品の使用感や機能を実際の業務を模しておいて確認でき、自社の勤怠管理ニーズに対応できるかを評価できます。検討する製品が無料トライアルが可能ならば、ぜひ遠慮なく活用しましょう。
この期間中に従業員へ直接システムを試用させてみるなどユーザー目線の操作性や利便性の検証を行ってもよいでしょう。そしてトライアル評価を踏まえて、機能や操作感、どこまでカスタマイズが可能か/応えてくれるか、などを遠慮なくベンダーに聞いて、納得いくまで確認します。
これらのことに寄り合ってくれる/信頼できるベンダーかどうかなども見極めつつ、導入する製品を絞り込んでいくといでしょう。
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サポート体制は十分か
クラウド勤怠管理システムを選ぶ際には、導入後のサポート体制やメニュー確認も忘れずに行いましょう。特に導入初期にはシステムの設定や運用方法について専門知識が求められることが多いはずです。この時にベンダーによる適切なサポートが得られるとスムーズに対応できます。
具体的には、トラブルや疑問点が発生した際に即時対応が可能かどうか、電話での相談窓口やチャットサポートはどうか、法改正や労務関連の新しい規定への対応はどうかなどが考えられます。
データの分析は可能か
クラウド勤怠管理システムにはデータ分析機能を備える製品もあります。従業員の勤務状況や残業時間、休暇取得状態などを詳細に可視化するのに役立ちます。管理者は実際の労働時間についての正確なデータを基に計画を立て、必要な改善を行うことが可能となり、さらに、データ分析により現場の実態を把握し、リソース配分の最適化を行う、といった改善策への対応が期待できます。
また、法令順守の監視や年次有給休暇の取得促進などにもこの機能が貢献するでしょう。
操作性が自社に合っているか
クラウド勤怠管理システムの検討において、利用料金、料金プランと提供される機能が、自社のビジネス規模とニーズに適しているかどうかも重要な確認ポイントです。特にユーザー数単位/商品数単位/機能数単位など昨今のニーズに応じて細かく料金プランが設定されるクラウド型製品は特に「機能全部入りが正解ではない」のです。
多機能で全部入りのツールは一見便利そうです。しかし自社の業務に必要のない機能が多くあれば使いこなせず、結局そのツール自体を敬遠してしまうことになりかねません。機能が多いものほど高額になる場合があるため、コスト面の無駄も多くなります。また「有名な製品だから大丈夫だろう」といった過信も失敗のもとになります。
勤怠入力の画面が直感的で分かり設計になっているか、スマートフォンアプリの動作がスムーズで軽快であるかを確かめる、などからでも大丈夫です。「自社にとって使いやすいかどうか」を見定めることが目的なので、機能性を確認する工程は、導入後に発生しがちなトラブルや不満を未然に防ぐことに大きくつながります。また、システムの導入前にはトライアル期間を利用し、実際の使用感を確認することで、より適切な選択をする助けとなるでしょう。
費用対効果は見合うか
クラウド勤怠管理システムは、比較的初期費用を抑えられるとしても、運用費・ランニングコストは相応に発生します。その費用対効果が自社の業務や予算に適しているかを注意深く検討することも求められます。
費用対効果を明確にするためには、まず自社の運用ニーズを整理し、システムがその解決や効率化に具体的に貢献できるかどうかを確認してみることです。この上で適すると判断されたシステムによって労務管理における課題の多くを解決し、結果的に長期的なコスト削減と業務効率化を実現することが可能になるでしょう。
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まとめ:クラウド勤怠管理システムで、アナログだった労務管理の悩みと課題を一気に解決
クラウド勤怠管理システムは、多くの企業が抱える労務管理に関する課題を効率的に解決する力を持っています。例えば、法改正へのスムーズな対応、異なる勤務体系への柔軟な適応、さらには給与計算や労働時間の管理効率化まで、多岐にわたるメリットがあります。これによって企業は、従業員の健全な働き方を促進しつつ、業務プロセス全体の効率を向上させることができます。
特に、自社に適するクラウド勤怠管理システムかどうかを見定める一手として「無料版」を遠慮なく試していくこともおすすめします。提供会社との充分なコミュニケーションを行い、自社の利用目的と期待する成果についてしっかりと伝えることが成功のカギとなるでしょう。
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