現代のビジネス環境において、進化したモバイルデバイスや先進技術を活用して従業員がいつでもどこでも、安心して働ける環境を“会社として”適切に整備する体制がますます重要になっています。しかしそんな従業員のニーズや利便性と引き換えにセキュリティリスクや管理の複雑さのような課題も増大するので、対応に頭を抱えている企業は多いのではないでしょうか。
本記事では、従業員のデバイス・ツール・体制を統合管理するITツール「EMM」の基本から、関連機能であるMDMやMAMなどとの違い、導入のメリットや選定ポイントまで、自社従業員のデバイス管理を一元化し、セキュリティを強化しながら業務効率を高める適切な解決策がみつかるよう分かりやすく解説します。
目次
EMMとは?
EMM(Enterprise Mobility Management/エンタープライズモビリティ管理)は、企業が従業員のデバイス、アプリケーション、コンテンツ、そしてアクセスを統合的かつ効率的に管理する考え方、およびそれを実現するITツールです。EMMは、企業が従業員のモバイルデバイスを効率的に管理し、セキュリティを確保しつつ、業務効率を向上させるためのツール群を提供します。
Q:EMMって何のこと? 何の略語?
A:EMM(Enterprise Mobility Management)は、企業がモバイルデバイス、アプリケーション、コンテンツ、そしてアクセスを統合的に管理するツールのことです。デバイス管理(MDM)、アプリケーション管理(MAM)、コンテンツ管理(MCM)、IDとアクセス管理(IAM)、統合エンドポイント管理(UEM)などの機能が含まれます。
Q:EMMの導入による主なメリットは何?
A: EMMの導入により、デバイスの一元管理、セキュリティポリシーの統一適用、業務アプリケーションの配布と更新、データ漏洩リスクの低減、リモートワークの効率性向上など、多くのメリットを享受できます。
Q:EMMとMDMは何が違うの?
A:EMMはモバイルデバイス、アプリケーション、コンテンツ、そしてアクセスを統合的に管理するための統合ツールとして分類され、その中にMDM(モバイルデバイス管理)、MAM(モバイルアプリケーション管理)、MCM(モバイルコンテンツ管理)、IAM(IDとアクセス管理)、UEM(統合エンドポイント管理)など固有の機能も含まれます。一方、MDMはそのうち主にデバイスの管理(設定、リモートワイプ、セキュリティ設定など)に特化した機能、ツールのことを指します。
EMM(エンタープライズモビリティ管理)の定義と役割
EMMは、企業が従業員のデバイス、アプリケーション、コンテンツ、アクセスを統合的に管理するためにあります。管理対象はデバイスの設定やセキュリティ管理、アプリケーションの配布と更新、データ保護、ユーザー認証などで、企業の業務効率を向上させ、同時にセキュリティリスクをなくすことが主な目的です。EMMには、モバイルデバイス管理(MDM)、モバイルアプリケーション管理(MAM)、モバイルコンテンツ管理(MCM)、IDとアクセス管理(IAM)、統合エンドポイント管理(UEM)などの機能が含まれます。
EMMに含まれる主な機能
EMMには、企業がデバイスとその周辺環境を効率的に管理するための多様な機能が含まれています。それぞれの機能について詳しく見ていきましょう。
- MDM(Mobile Device Management/モバイルデバイス管理)
- MAM(Mobile Application Management/モバイルアプリケーション管理)
- MCM(Mobile Content Management/モバイルコンテンツ管理)
- IAM(Identity and Access Management/IDとアクセス管理)
- UEM(Unified Endpoint Management/統合エンドポイント管理)
MDM(Mobile Device Management/モバイルデバイス管理)
MDMは、企業が従業員の使うデバイス(ノートPC、スマートフォン、タブレット、その他作業・業務用端末など)をリモートで管理するための機能です。例えばデバイスの設定、ファームウェアの更新、リモートワイプ、紛失や盗難時のロックダウンなどの機能が含まれます。MDMは、デバイスのセキュリティとコンプライアンスを確保し、企業データの保護を強化します。
MAM(Mobile Application Management/モバイルアプリケーション管理)
MAMは、従業員が使用するアプリケーションを管理するための機能です。これには、デバイスへのアプリケーション配布、更新、アクセス制御、データの保護などが含まれます。企業が業務アプリケーションを効率的に管理し、セキュリティを確保するための重要なツールです。
MCM(Mobile Content Management/モバイルコンテンツ管理)
MCMは、従業員が使用するデバイス上のコンテンツを管理するための機能です。これには、ドキュメントの配布、アクセス制御、データ暗号化、コンテンツの同期などが含まれます。企業が重要なビジネスドキュメントを安全に管理し、従業員が必要な情報に迅速かつ安全にアクセスできるようにするために用います。
IAM(Identity and Access Management/IDとアクセス管理)
IAMは、従業員のユーザーIDとアクセスを管理するための機能です。これには、ユーザー認証、アクセス制御、シングルサインオン(SSO)、多要素認証(MFA)などの機能が含まれます。企業がユーザーのアクセスを制御し、企業データのセキュリティを確保するために、昨今特にニーズの高まっている機能です。
UEM(Unified Endpoint Management/統合エンドポイント管理)
UEMは、従業員のすべてのエンドポイント(スマートフォン、タブレット、PCなどでの作業やプロセス)を統合的に管理する機能です。デバイスの設定、セキュリティ管理、アプリケーション管理、コンテンツ管理などが含まれます。企業が統一された管理環境を提供し、すべてのデバイスのセキュリティとコンプライアンスを確保するためにあります。
EMMが求められる背景
モバイルデバイスや通信網、クラウドサービスの発展、普及とともに、昨今はどこからでも業務できてしまう技術的な環境が概ね整ってきています。しかし企業視点では「できるからといって自由に使わせる」のではいけません。デバイスの紛失や盗難、データ漏洩、マルウェア感染などのセキュリティリスクの増加が大きな課題となってくるためです。
同時に、リモートワークの普及と働き方改革、感染症の流行などをきっかけに、企業によっては従業員がオフィス外で業務するシーンも当たり前になりました。これにより企業は従業員が使用するデバイスやアプリケーションの管理を適切かつ強化する必要性がより強く求められるようになりました。EMMは、リモートワークを効率的にサポートし、企業の生産性を向上させるための重要なツールとなります。
EMM導入のメリット
EMMを導入することで、企業はデバイスやアプリケーションの管理を効率化し、またセキュリティを強化することができます。ここでは、具体的なメリットを詳しく解説します。
- デバイスの一元管理を実現する
- セキュリティポリシーの統一適用を可能にする
- 業務アプリケーションの配布と更新を容易にする
- データ漏洩リスクを低減する
- リモートワークの効率性を向上させる
デバイスの一元管理を実現する
EMMは、企業内で用いられるデバイスを一元的に管理するための機能、ツールを提供します。これにより、デバイスの設定や更新、セキュリティポリシーの適用などを簡単に行うことができます。
セキュリティポリシーの統一適用を可能にする
EMMは、企業がセキュリティポリシーを統一して適用する対策のための機能も備えます。これによりすべてのデバイスに対して一貫したセキュリティ対策を講じることができ、セキュリティリスクを大きく低減できます。例えば、デバイスのロックアウトポリシーやパスワード強度の設定、リモートワイプ機能などを統一して適用することが可能です。
業務アプリケーションの配布と更新を容易にする
EMMは多くの場合、企業がOSアップデートや業務アプリケーションを効率的に配布し、更新するための支援ツールも用意します。これにより、アプリケーションのインストールや更新作業を自動化し、IT部門の負担を軽減することができます。また、従業員が最新のアプリケーションを使用できるよう体制を整えることで業務効率を向上させる効果も期待できます。
データ漏洩リスクを低減する
EMMによるデバイス上のデータを保護するための機能も重要です。これにはデータの暗号化、不正アプリの検出、リモートワイプ機能などが含まれます。これにより、デバイスの紛失や盗難時においても企業データが漏洩するリスクを低減することができます。
リモートワークの効率性を向上させる
EMMは、統合的にリモートワークを支援する機能も備えます。リモートデバイスの管理、セキュリティポリシーの適用、業務アプリケーションの配布などが含まれます。これにより、従業員がどこからでも安全に業務を進行できる環境が整い、結果として企業全体の生産性を向上させることが期待できます。
EMMとMDM、MAM、MCMの違い/管理対象範囲とセキュリティ管理の特徴
ソリューション | 管理対象範囲 | セキュリティ管理の特徴 |
---|---|---|
EMM | デバイス、アプリケーション、コンテンツ、IDとアクセスの統合管理 | 全体的なセキュリティポリシーの適用と統合管理 |
MDM | 主にデバイスの管理(配布、更新、アクセス制御など) | デバイスセキュリティの強化(統一設定、デバイスロック、リモートワイプなど) |
MAM | 主にアプリケーションの管理(配布、更新、アクセス制御など) | アプリケーションレベルのセキュリティ管理(アプリケーションのアクセス制御、データ保護など) |
MCM | 主にコンテンツの管理(ドキュメントの配布、アクセス制御、データ暗号化など) | コンテンツレベルのセキュリティ管理(ドキュメントの保護、アクセス制御など) |
IAM | 主にユーザーのIDとアクセスの管理(ユーザー認証、アクセス制御、シングルサインオンなど) | ユーザー認証とアクセス制御の強化(ユーザー認証、アクセス制御、多要素認証、シングルサインオンなど) |
UEM | すべてのエンドポイントデバイスの統合管理(スマートフォン、タブレット、PCなど) | すべてのエンドポイントデバイスの統一セキュリティ管理(デバイスポリシー、エンドポイント保護など) |
(参考)MDMの主な機能
デバイス管理機能
MDMのデバイス管理機能は、従業員のモバイルデバイスをリモートで管理できるようにするものです。これには、デバイスの設定、ファームウェアの更新、リモートワイプ、ロックダウンなどが含まれます。
セキュリティ管理
MDMのセキュリティ機能はデバイス単位のセキュリティを強化するための機能です。これには、デバイスのリモートロック、データの暗号化、不正アプリの検出などが含まれます。これによりデバイスの紛失や盗難時においても、企業データのセキュリティ性を高めることができます。
アプリケーション管理
MDMのアプリケーション管理機能は、業務アプリケーションの配布と更新を効率的に行えるようにする機能です。これによりIT部門はアプリケーションのインストールや更新作業を自動化し、従業員が最新のアプリケーションを利用できるようにすることができます。
MDM導入の選定ポイント
MDMソリューションを選定する際には、自社のニーズに合った機能を備える製品を選ぶことが重要です。ここではMDM導入の際にまず考慮しておきたい選定ポイントを解説します。
- デバイスおよびOSの対応範囲
- セキュリティ機能の充実度
- 操作性と管理の容易さの評価
デバイスおよびOSの対応範囲
MDMソリューションを選定する際には、対応するデバイス(スマートフォン、タブレット、PCなど)やOS(iOS、Android、Windows、macOSなど)の種類が企業のニーズに合っているかを確認することが重要です。これにより、すべての従業員が使用するデバイスを一元管理できるようになります。
セキュリティ機能の充実度
MDMソリューションを選定する際には、セキュリティ機能が充実しているかを確認することが重要です。これには、デバイスのリモートワイプ、データ暗号化、不正アプリの検出、デバイスのリモートロックなどの機能が含まれます。これにより、デバイスの紛失や盗難、マルウェア感染などのセキュリティリスクを軽減し、企業データの保護を強化することができます。
操作性と管理の容易さの評価
MDMソリューションの操作性と管理の容易さも重要な選定ポイントです。管理者が使いやすい管理コンソールを備えているか、設定や運用が容易であるか、ユーザーサポートの体制が整っているかを評価する必要があります。使い勝手の良い管理コンソールは、管理者の負担を軽減し、運用効率を高めることができます。また、サポート体制が充実しているかどうかも、導入後のトラブル対応や運用サポートにおいて重要な要素です。
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EMMやMDMは、従業員のため自社のために必要なIT環境の最適化ソリューション
EMMは、企業として従業員のPCやモバイルデバイス、アプリケーション、コンテンツ、そしてアクセスを統合的に管理することで、“効率・快適性”と“リスクヘッジ”をITで実現できる解決策の1つです。EMMは、デバイスの一元管理、セキュリティポリシーの統一適用、業務アプリケーションの配布と更新、データ漏洩リスクの低減、リモートワークの効率性向上など、多くのメリットを提供します。
EMMには、MDM(モバイルデバイス管理)、MAM(モバイルアプリケーション管理)、MCM(モバイルコンテンツ管理)、IAM(IDとアクセス管理)、UEM(統合エンドポイント管理)などの機能が含まれており、それぞれが異なる役割を果たしています。企業がEMMソリューションを選定する際には、対応デバイスおよびOSの範囲、セキュリティ機能の充実度、操作性と管理の容易さを考慮することが重要です。適切なEMMソリューションを選定し、導入することで、企業は従業員が使用するデバイスに関するセキュリティリスクを軽減し、リモートワークや働き方改革も同時に支援することができるでしょう。
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