DX(デジタルトランスフォーメーション)の勢いが増している中、企業の基幹システムをクラウドへ移行する動きが加速しています。この先、この流れはさらに強まっていくことでしょう。クラウド型の基幹システムは「早さ」「効率化」「コスト」の面で企業のDX化戦略に大きな利点があります。
本記事では、クラウド型基幹システムのメリットとデメリット、選び方をじっくり解説するとともに、おすすめのクラウド基幹システム11選をご紹介します。
ITセレクトは、貴社の課題・目的・予算に合わせてピッタリのERPシステムをご紹介しています。
目次
基幹システムの基礎知識
まずは、基幹システムの基本的な内容と、主な機能について説明します。
基幹システムとは
基幹システムとは、企業や組織の日常業務を支える中核となる情報システムの総称です。ERP(Enterprise Resource Planning)とも呼ばれます。
顧客情報、財務データ、在庫情報などの重要なデータを一元管理し、組織の中心的な業務や意思決定をサポートします。
基幹システムに含まれる主な機能
基幹システムは企業運営に必要な情報を管理するために、様々な機能が備わっています。
主な機能をいくつかご紹介します。
機能 | 詳細 |
---|---|
財務会計システム | 会計や財務関連の情報を管理し、企業の財務状態を管理する |
人事・給与システム | 従業員の情報管理や給与計算など、人事関連の業務をサポートする |
在庫管理システム | 商品や資産の在庫状況を管理し、効率的な物流プロセスをサポートする |
生産管理システム | 特に製造業において重要で、生産プロセスや製品の品質管理を行う |
顧客管理システム | 顧客情報や営業活動を管理し、顧客サービスやマーケティングに関するデータを管理する |
これらの機能、プロセス、情報・データを統合して用いることで組織全体の効率を向上させ、ビジネスの成果につなげます。
基幹システムをクラウド化するメリット、デメリット
企業のデジタル化が進む現代において、基幹システムをクラウド型にするかどうかは重要な検討事項となるでしょう。
基幹システムをクラウド化することで、コスト削減やスケーラビリティの向上といった多くの利点があります。しかしその一方で、セキュリティリスクや依存性といった課題も挙がります。以下よりメリットとデメリットを具体的に紹介します。
クラウド化のメリット
基幹システムをクラウド化する上で、特に期待できるメリットは以下の4つです。
- コスト削減
- 柔軟性とスケーラビリティの向上
- セキュリティと信頼性の向上
- 運用管理の効率化
(1)コスト削減
クラウド化がもたらす特に大きなメリットは「コスト削減」です。物理的なサーバをはじめとするハードウェア、ミドルウェア、ソフトウェア、周辺設備などのITインフラを自社で買い、構築し、そして維持する必要がなくなるため、これらにかかる初期費用やランニングコストを大きく削減できます。
また、クラウドサービス、特にSaaS型製品は使用した分だけ支払うサブスクリションモデルが一般的であるため、不要なリソースに投資するリスクを避けることもできます。
特に高額となりがちなサーバの購入や設置費、メンテナンスにかかるコストを削減できることは、特に中小企業にとって効果的とされます。
(2)柔軟性とスケーラビリティの向上
クラウド化により、基幹システムは企業の変化に柔軟に対応できるようになります。
まず、需要変動への対応が容易になります。
クラウドサービスはリソースの増減に柔軟に対応できるため、必要に応じて迅速かつ柔軟に拡張、縮小できます。例えば、急にアクセスが増加するイベント時にリソースを即座に拡張し、その後必要がなくなれば元に戻せます。こういった柔軟性、スケーラビリティの高さは、すぐに拡張できるわけではなく、しかもいったん拡張したら元へ戻すのは簡単ではないオンプレミス型システムに対する大きな利点です。これにより企業はビジネスの成長、そして激しく変動する昨今のビジネスニーズに即応できるようになります。
(3)セキュリティと信頼性の向上
セキュリティと信頼性の観点でもメリットがあります。ほとんどのクラウドプロバイダー/クラウド事業者はサービスに高度なセキュリティ対策を施しており、データのバックアップや災害対策も標準的な機能として提供しています。
例えば、データは複数の地理的に分散したサーバに保存される仕様であることで、物理的な障害や災害時でもデータが失われにくくなっています。これは企業のBCP(事業継続計画)対策も同時に強化できることを意味します。クラウド化によって安全で信頼性の高いデータ管理を提供し、企業の安心感を高めます。
(4)運用管理の効率化
クラウドサービスは、クラウドサービスプロバイダーがインフラの管理や保守を代行してくれます。その分、企業内のITリソースを他の重要な業務に割り当てることができます。例えば、サーバの定期メンテナンスやソフトウェアのアップデートが自動で行われることで、IT部門の作業負担を大幅に軽減できます。
また、クラウド化によって、いつでもどこからでもアクセスでき、業務・事業を継続できる環境が整います。リモートワークなどへの適応とともに従業員へ柔軟な労働環境を提供でき、またBCP(事業継続計画)対策として、災害や事故など予期せぬ事態が発生した際にも、自社としてその影響を最小限に抑えて事業を継続できる体制を整えられます。
クラウド化のデメリット
基幹システムのクラウド化には、メリットだけでなく、一部に課題やデメリットも存在します。
- セキュリティ上の懸念
- 依存度の増加とベンダーロックイン
- ネットワーク帯域幅とパフォーマンス
セキュリティ上の懸念
基幹システムのクラウド化は、セキュリティと信頼性の向上というメリットがあると説明しました。
しかし、それはクラウドプロバイダー側で適切な対応がされている前提があってのものです。
クラウド環境を利用する場合、企業の重要なデータはクラウドプロバイダーのサーバで処理、保存されます。
これは、企業がデータを直接管理できないリスクになってしまいます。
業種や業態によってはデメリットになり、場合によっては不正アクセスやデータ漏えいのリスクが増加する可能性があります。
そしてこのリスクは、クラウドプロバイダーの信頼性やセキュリティ対策に依存します。
クラウド型の基幹システムを検討する際は、どのような、どのレベルのセキュリティ対策が行われているかを調査した上で導入することが大切です。
依存度の増加とベンダーロックイン
基幹システムのクラウド化を行う際、依存度の増加とベンダーロックインも懸念点に挙がります。
クラウドサービスを利用することで、組織のシステムやデータが特定のクラウドプロバイダーのプラットフォームや技術に強く依存する場合があります。
この現象をベンダーロックインと呼び、他のプロバイダーへの移行や切り替えが困難になる問題を引き起こす可能性があります。
また、クラウドサービスの契約条件や料金体系は複雑であることが多く、適切な理解と認識が不可欠です。
契約の詳細を正確に把握していないと、誤った契約条件の適用や予期しない経済的な影響を招く可能性があるため、慎重な検討と確認が必要です。
ネットワーク帯域幅とパフォーマンス
ネットワーク帯域幅とパフォーマンスの問題も考慮する必要があります。
クラウド環境では、基幹システムとクラウドプロバイダー間でデータのやり取りがインターネット経由で行われるため、ネットワークの帯域幅がパフォーマンスに影響を及ぼします。
特に大量のデータを処理する際や、データ集中型のアプリケーションを使用する際に影響を与える可能性があります。
また、特定の地域にクラウドプロバイダーのローカルデータセンターが存在しない場合、データの送受信に遅延が生じ、パフォーマンスが低下する可能性があります。
併せて基幹システムのクラウド化においては総じて、以下の課題が挙がります。
- 業務の根幹を支えるシステムを外部に委託するリスク
- 自社システムより劣るカスタマイズ性
- インターネット障害時の使用トラブル
これらの課題を解決するためには、企業のサービス要件を満たしていることが必要不可欠です。
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