ビジネスを取り巻く環境は日々変化しています。急速に変化する市場で生き残るため、企業には業務効率化と的確な経営判断が求められており、それをサポートする有力なツールとして「ERP」が注目されています。
本記事では、ビジネスをより効率的に運営したい、的確な経営判断がしたいと考えている経営者や情報システム部門の方々に向けて、ERPの基礎知識をはじめ、ERPの主な利用形態、システム導入の流れ、おすすめのERP製品(全25製品/2024年10月時点)まで幅広く解説します。
ERPの基礎知識
多くの企業が採用している「ERP」ですが、ERPは具体的にどんな業務をサポートしてくれるのか?基幹システムとは何が違うのか?という疑問をお持ちの方もいるかもしれません。ここでは、ERPの概要と基幹システムとの違いについて解説します。
ERPとは?
ERPとは企業資源計画(Enterprise Resource Planning)の略で、企業活動に必要不可欠な経営資源であるヒト・モノ・カネ・情報を一元管理し、有効活用するという考え方のことです。現在では、ERPの実現を支援するために作られた一元管理システムを指すことが多く、業務プロセスの効率化や経営判断のサポートツールとして重宝されています。
ERPと基幹システムの違い
ERPと基幹システムの大きな違いは範囲です。ERPは企業全体の情報を一元管理し、基幹システムを統合するシステムであるのに対し、基幹システムは各部門の中核となる業務の効率化に特化しています。
企業は、部門ごとにさまざまなソフトウェアを使って業務を効率化しています。その中でも、部門のコアとなる業務や情報を管理する専用のソフトウェアやシステムを基幹システムといいます。基幹システムは一つの業務領域に特化しており、生産管理システムや財務会計システムなどが該当します。
一方、ERPは、企業が抱えるさまざまな基幹システムを統合するシステムです。ERPを導入することで、部門を超えた情報連携やデータ分析が可能になります。
ERPを導入するメリットとデメリット
企業の業績を向上させる手段の一つとして導入されているERPには、明確なメリットもあれば一定のデメリットも存在します。ここでは、ERPを導入するメリットとデメリットについて紹介します。
ERPを導入するメリット
ERPは、会計・販売・精算・人事など、企業運営の中核をなす情報を一元管理するシステムです。ERPを導入することでさまざまな部門の情報が一目で確認できるようになり、データの不整合を防ぐことができます。結果として、データの整合性や透明性が向上し、ヒューマンエラーの減少やコストの削減に繋がります。
さらに、リアルタイムで情報参照が可能となるため、問題点や課題の早期発見が可能です。経営陣やマネージャーはデータに基づいた意思決定を迅速に行えるようになり、市場の変化や新しいビジネスチャンスにもすばやく反応し、企業の競争力を高められます。
ERPの活用は、企業の競争力向上や経営の信頼性強化、コンプライアンスの確保にも寄与するでしょう。
ERP導入の注意点
ERPを導入する際には、初期費用だけでなく、カスタマイズや保守などの継続的なコストが発生します。企業はシステム導入および運用の費用を計画的に捻出する必要があります。
また、ERPは企業の重要情報を一括で管理するため、セキュリティ対策が不十分な場合は情報漏えいのリスクが増大します。情報漏えいは企業の信頼やブランド価値を損なうだけでなく、法的なリスクや損害賠償責任が生じる重大問題です。セキュリティ強化には専門的な知識や技術が必要で、継続的なセキュリティ対策とアップデートが必要です。
さらに、ERPの導入は単なるシステム変更に留まらず、業務プロセスや組織文化の変革を伴います。全社員が新しいシステムやプロセスに適応するまでは、業務効率が一時的に落ちる可能性も考慮する必要があるでしょう。
ERPの主な種類
ERPの種類は多岐にわたり、システムを構築する場所、開発方法、扱う業務範囲の違いによってさまざまな形態が存在します。ここでは、ERPの主要な種類を紹介します。
システムを構築する場所で分けた場合の種類
ERPはシステムの構築場所によってオンプレミス型とクラウド型に分けられます。どちらを選ぶかは、システムの安全性や利便性をどこまで求めるかで異なります。
オンプレミス型とクラウド型の特徴やメリット・デメリットは以下の通りです。
・オンプレミス型
オンプレミス型ERPは、従来から広く使われている方法で、企業が独自のサーバーやソフトウェアを保有し、運用や保守まで自社で手掛ける形態です。「自社専用」「自社のニーズに応じて」構築できること、そしてデータはPC上、サーバ内、いずれも「自社内」で管理されることがポイントで、自社セキュリティの要件に応じて「データはインターネットへは出ない」設計にもできます。自社専用に構築するので、相応に初期コストや開発フローや期間の管理、管理運用のためのコストもすべて自社にかかります。
・クラウド型
クラウド型ERPは、インターネット上でサービス提供事業者(ベンダー)が提供するサービスを利用する形態です。運用や保守の手間はベンダーが受け持ってくれます。主なメリットは、クラウド型の多くが定額制/サブスクリプション型の料金体系を採用しているため、スモールスタートや導入計画の迅速化が可能なことです。初期費用やランニングコストを抑えやすく、導入後も自社でシステムの更新やバックアップなどを行う手間がかかりません。また、インターネットが使える場所ならどこからでもアクセスできる利便性も強みです。
デメリットは、製品やベンダーの持つ機能がベースになるので、カスタマイズは「要相談」「対応できない」となる可能性があります。セキュリティ対策もベンターの方針に多くを依存することになります。
この記事では、現在主流の方法となっている「クラウド型」の導入シーンを想定して解説していきます。
システムの開発方法で分けた場合の種類
ERPの種類は、システムの開発方法によって分けることも可能で、「パッケージ型」と「フルスクラッチ型」があります。どちらを選ぶかは、業務の特性や求める機能によって異なります。
パッケージ型とフルスクラッチ型の特徴やメリット・デメリットは以下の通りです。
・パッケージ型
パッケージ型とは、サービス提供元が作成した標準的なシステムパッケージを組み合わせて採用する方法です。
最大のメリットは、あらかじめ設計されたシステムを使用するため、導入が容易でコストを抑えやすいことです。
一方、デメリットはカスタマイズ範囲が限定的であることです。事前に用意されている標準機能が自社の要件や業界の特性などと合わない可能性があります。また、サービス提供元の方針変更やサービス終了の影響を受けるリスクもあります。
・フルスクラッチ型
フルスクラッチ型は、自社の細かな要望に応じてシステムをオーダーメイドで構築できる形態です。
最大のメリットは、自社の要求を盛り込んだカスタマイズができ、業界の特性や特別なニーズにぴったりのソリューションになることです。フルスクラッチ型であれば、どんな特殊な業務であっても最適化したERPシステムの導入が実現します。
その反面、システムをゼロから設計・構築していくことになるため多くのリソースや知識が必要です。大抵の場合は長い時間とコストを掛ける大きなプロジェクトとして進めていく必要があるでしょう。
扱う業務の幅で分けた場合の種類
全事業のうちERPがどれくらいの範囲をカバーするかによっても、選ぶべきシステムの特性は変わってきます。ERPを導入する場合は、扱う業務の幅によって以下の3つから選ぶことになります。
- 完全統合型
- コンポーネント型
- 業務ソフト型
それぞれの特徴やメリット・デメリットは以下の通りです。
・完全統合型
完全統合型ERPは、業務のあらゆる情報を1つに統一して管理するシステムです。
完全統合型ERPの導入により、情報の重複や不整合が減り、業務プロセスの最適化や効率化に繋がります。一元的に情報を管理することで、部門間の情報共有や連携がスムーズになり、迅速な経営判断や効率的な業務プロセスの構築が可能になります。
ただし、すべてのシステムを連携させるためには詳細な要件定義ともに多くの作業が必要になります。
・コンポーネント型
コンポーネント型ERPは、必要なシステムや機能を選んで組み合わせていく形態です。
コンポーネント型のメリットは、機能を取捨選択できるので自社の要望、要件に合わせやすく、不要な機能を省ける分コストの抑制にもつながることです。またビジネスの成長に応じて機能を拡張したり、業態の変化に沿って機能を削減したりすることも可能です。
一方、コンポーネント型はその特性上、そのベンダーから離れるのが難しくなる「ベンダーロックイン」が起こりやすくなります。
・特化型/業務ソフト型
特化型/業務ソフト型は、会計・人事・生産管理といった特定の業務に特化したパッケージ製品群の形態です。その業務特有のニーズや要件に最適化された機能を持ちます。
主なメリットは手軽に導入できることです。一方で、特定の業務に特化しているため、企業全体のデータ管理や業務プロセスの統合といった需要に対応するのが難しいケースもあります。ERPとして全社的な視点から業務の一貫性を求めるシーンには制約を感じるかもしれません。
ERPを導入する流れ
ERPを導入する際には、詳細な計画と複雑なプロセスが必要です。各ステップを適切に進めることで、導入後にはERPの性能を最大限に生かせるでしょう。ここでは、ERP導入時に押さえるべき7つのステップについて紹介します。
- 導入目的の明確化
- プロジェクトメンバーおよび各部署の担当者を選定
- 該当する業務プロセスの把握・整理
- 製品の評価と選定
- 新業務フローの構築
- システムの切り替え準備・テスト運用・社内マニュアル作成
- 本格運用
Step1. 導入目的の明確化
ERPを導入する際は、最初に「どんな課題を解決したいのか?」という目的をしっかりと定めることが大切です。導入目的が明確になることで、必要な機能を特定できるため、システムの選定もスムーズに進められます。
Step2. プロジェクトメンバーおよび各部署の担当者を選定
責任者の役割を持つ人物や各関連部署からの代表メンバーでプロジェクトチームを編成します。また、必要に応じて外部のコンサルタントやベンダーと連携する担当者の選定も行います。
Step3. 該当する業務プロセスの把握・整理
ERP導入を進める前に、関係部署とのコミュニケーションを通じて業務の現状や課題を明確にしておきましょう。このプロセスを踏むことで、どこを改善するべきかが明らかになり、効果的なERPシステムの設計や導入計画を策定できます。
Step4. ERP製品の選定と評価
さまざまなERPベンダーのデモや提案を比較し、現状の課題やERP導入目的と照らし合わせて、自社の要件に最も合致するERPシステムを選定します。
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Step5. 新業務フローの構築
ERPの多彩な機能を駆使して、新しい効率的な業務フローを構築します。ERPには業務の効率化を実現する機能が豊富に備わっているので、その特長を生かして最適な業務手順を設計しましょう。
Step6. システムの切り替え準備・テスト運用・社内マニュアル作成
新しいERPシステムへの移行をスムーズに進めるために、まずはデータの移行準備とユーザーアカウントの設定を行います。予期せぬトラブルに備えて、バックアップ計画も立てておきましょう。
次に、新システムが実際の業務で適切に機能するかどうかを確認するためにテスト運用を行います。テストで問題が出なければ、従業員向けの社内マニュアルを作成します。新システムの業務手順やトラブル発生時の手引きなどの整備を進めましょう。
Step7. 本格運用
ERPシステムを業務で最大限に活用するため、本格的に運用をスタートします。導入後は定期的にシステムの効果を評価し、調整や改善を行いながら最適化を目指しましょう。
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・会計基本 ・資金繰表 ・消費税申告書 ・CF(キャッシュフロー)計算書 ・支払調書 ・内訳書・事業概況所 ・配賦機能 ・固定資産管理 ・経費精算ライセンス(限定ユーザー) 販売・仕入・在庫 ・受注管理 ・売上・納品管理 ・発注管理 ・仕入・検収管理 ・入出金管理 ・EDI(電子データ交換) ・プロジェクト別収支管理(案件管理) ・在庫管理 ・承認ワークフロー ・複数倉庫管理 給与・勤怠 ・給与計算 ・勤怠管理 ・賃金台帳管理 ・算定基礎届 ・月額変更届 ・労働保険年度更新 ・賞与支払届 ・離職票発行 ・Web給与明細ライセンス(限定ユーザー) その他 ・マイナンバー ・グループ管理 |
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