BtoC(B2C/Business to Customer)向けビジネスのマーケティング活動を効率化するMAツールについて、基本的な情報や主な機能、具体的な製品などを紹介します。MAツールは「より効果的なマーケティング活動を行いたい」「顧客満足度を高めたい」「メッセージの開封率や広告の閲覧数などを分析できるようにしたい」といった課題を解決したい人におすすめです。導入時に気を付けたいポイントも解説しているので、ぜひ参考にしてください。
目次
BtoC向けMAツールとは?
BtoC向けのMAツールは、消費者向けビジネスのマーケティング活動を自動化し、効率化するためのツールです。導入することで、個々の消費者に向けて的確な販売戦略を立てることができ、より効果的なマーケティング戦略の実現をサポートしてもらうことができます。
そもそもMAツールとは?
MAツールとは利益を向上するためにマーケティングを自動化するツールです。見込み客の獲得や選別に特化しており、営業活動の効率化を図れます。
例えば、見込み顧客からの連絡を得られるようWebフォームやランディングページを作成できたり、見込み顧客を特性によって分類することで関心度合いに応じたアプローチができたりします。そのため、見込み顧客へのマーケティングにかかるコストを削減し、より費用対効果の高いアプローチができるようになるのです。従来は契約につながるか分からない見込み顧客に対して時間をかけて一人ひとりに併せたアプローチを考える必要がありましたが、MAツールの登場でより効率的なマーケティング活動ができるようになりました。
ちなみに、BtoCの「C」はCustomer、つまり「一般消費者/主に個人」を対象にした会社→個人の商いのことです。私たちがプライベートで買い物するシーン、例えばコンビニでおにぎりを買う、スーパーで食材を買う、家電量販店でスマホを買う、ネット通販でお水を定期買いする、動画・音楽配信サービスを契約する、目的地へ行くために電車に乗る、旅行先でホテルに泊まる……などさまざまある消費行動全般が対象です。自社の業態としては、Eコマース、小売業、飲食業、旅行観光業、エンターテイメント業界など、大手から個人経営店まで、こちらもざまざま挙げられます。
一方のBtoBは、Business to Businessの略で「会社間取引」のことです。
BtoC向けとBtoB向けの違い
MAツールの活用シーンとしてBtoC向けとBtoB(BtoB/Business to Business)向け、それぞれ顧客の特性に合わせた機能の違いを理解しておきましょう。
決済に関わる人数 | 購入までの期間 | 顧客の数と濃度 | チャネルの種類 | データ分析方法 | |
---|---|---|---|---|---|
BtoC | 購入者と決済者が同じ | 短い | 多い/薄め | メールやWebサイトをはじめ、LINE、SNSアプリなど多岐にわたる | メールやLINE、SNSでの各種アクションデータを分析(いいね数、PV数など) |
購入者の興味・関心がポイントになる | 一人で購入を決定すれば良いので購入までの期間が短くなる | 企業と出会う機会がある人全員が顧客となり得る | |||
BtoB | 購入者と決済者が異なる
決済者が複数人いる |
長い | 少なめ/濃い | メールやWebサイトが中心 | メールの開封率やWebサイトでのクリック率を分析 |
関わる皆が納得できる利益や合理性がポイントになる | 購入するまでに複数の担当者が関わるため購入までの時間が長くなる | BtoCに比べると企業ごとになるので少なくなる |
BtoB向けビジネスのマーケティング目的は「商談機会の創出」。MAツールは飛び込み営業やテレアポのコストを減らし、展示会やセミナー、Webサイトで興味を持ってくれた見込み顧客に効果的にアプローチする役割を持ちます。必要になる情報は対象企業やその企業の担当者。分析に利用するチャネルの種類も仕事で利用するメールやWeb媒体がメインです。
一方、BtoC向けビジネスのマーケティング目的は「個々に合わせたコミュニケーション」「それぞれに合った課題の解決」。MAツールを利用して興味・関心に合わせたサービスや商品を紹介し、購入意欲を高めます。生活に寄り添ったアプローチが重要になるため、利用されるチャネルもSNSやLINEなど私生活で活用している媒体がメインです。
BtoBかBtoCかで目的やアプローチ方法が異なるため、搭載される機能にも違いがあります。
BtoC向けMAツールの主な機能
BtoC向けのMAツールの主な機能を4つ紹介します。多くの顧客に対してパーソナライズされたアプローチを実現するための機能が備わっている点がBtoC向けツールの特徴です。
セグメントごとの情報発信機能
BtoCのMAツールに備わっている主な機能として、顧客をWebサイトの閲覧履歴や特徴で分類し、ターゲット別に情報を発信できる機能が挙げられます。セグメントは「区分」や「部分」など一定のまとまりを意味する言葉で、任意のセグメントを利用することでより効率的なマーケティング活動が可能です。例えば、年齢や性別、関心を持っている情報などの特性が分かれば、発信する内容や媒体を適切に調整し、企業への関心を高められます。
シナリオ作成機能
シナリオ機能とは、指定した条件下において予め設定した行動を実行する仕組みのこと。シナリオ作成機能を利用すれば、「特定のページを閲覧した人に対して自動でイベント情報やクーポン情報を載せたメッセージを送る」といったアクションを自動化できます。一人ひとりの行動を分析してアクションを起こす必要がないため効率的。関心が高まっている顧客を取りこぼすリスクを減らせたり、適切なタイミングで購入やサービス利用の後押しをできたりといったことが可能です。複数のシナリオを組み合わせて設定でき、工数をかけずにパーソナライズされたコミュニケーションを叶えられます。
トラッキングによるデータ収集機能
トラッキングとはWebサイト訪問者の行動を記録し、データ収集できる機能です。「どのページを何分かけて見たか」「特にどんなコンテンツに興味を持ったか」などを分析でき、次のアクションにつなげられます。高機能なMAツールだと複数のサイトにまたがって行動を解析できる機能も搭載されています。また、何に興味を持ったかだけでなく、離脱したページの解析で興味を感じなかった情報や購入に至らなかった課題も明らかにできます。一人ひとりへのアプローチ方法を施策するだけでなく、広告の打ち出し方や商品購入までの想定アクションを見直す機会にもなります。
SFAやCRMとの連携機能
SFAは「Sales Force Automation」の略で、日本語でいうと営業支援システムです。主に、営業部門の情報や業務工程を自動化し、データの整理・分析をスムーズにするシステムです。CRMは「Customer Relationship Management」の略で、日本語でいう顧客管理システムのこと。顧客の氏名や年齢、購買履歴などを一元管理し、マーケティングやマネジメントを円滑に進めます。
MAツールにはこれらのツールと連携できる製品があり、顧客へのアプローチだけでなくデータの管理や直接的な業務をスムーズにして部署全体での作業効率化、費用対効果の拡大を図れます。CRMはMAツールと似ている部分がありますが、CRMが「顧客との関係維持」を目的にしている面で差があり、細かな機能に違いがあります。
BtoC向けMAツールの選び方/機能のチェックポイント
MAツールを活用するためには、どのようなマーケティング戦略を立案するかが大切です。基盤が整うことで、はじめて便利な機能の効果が発揮されます。「どんな顧客をターゲットにしたいのか」「どのような広告・コンテンツでアプローチするのか」といったマーケティング戦略を明確にし、それを叶えられるツールを選びましょう。選定において注目すべきポイントを紹介します。
- 自社の使用目的に合う機能を搭載しているか
- コンテンツを作りやすいか
- データ量とコストのバランスは適正か
- データの管理機能が充実しているか
- 配信チャネルの種類に不足はないか
- 自社の既存のシステムと連携しやすいか
- サポート体制が充実しているか
自社の使用目的に合う機能を搭載しているか
MAツールの機能は多岐に渡り、製品によってその種類や特徴もさまざまです。ツール導入の目的である個人に合わせたアプローチの実現や、より効果的なマーケティングを叶えるためには、自社に合った機能を搭載している製品の選択が重要です。
例えば、メルマガ配信をはじめとするメールマーケティング施策に注力する場合はメール管理機能が充実しているもの、ジオマーケティング施策に注力する場合は位置情報を把握・管理できるものを選びましょう。位置情報を把握できれば、オンラインからリアル店舗や展示会といったオフラインへユーザーを誘導するOtoO(Online to Offline)マーケティングも展開できます。
コンテンツを作りやすいか
MAツールを選ぶ際は、Webサイト/ランディングページやアプリといったコンテンツ作成支援機能を持つものもおすすめできます。自社の商品は「こんな魅力がある」「この希望や悩みを解決できる」といったことをアピールできるコンテンツは、顧客が自社を認知するきっかけになる重要なものです。ゼロから作るとなると専門知識や時間、手間、人手が必要ですが、MAツールに作成機能があれば複雑な知識は不要です。誰にでも使いやすく設計してあるため、新規コンテンツの追加もしやすくスピーディーな施策が可能です。コンテンツの閲覧状況もツールで分析でき、PDCAを回しやすい利点もあります。
データ量とコストのバランスは適正か
自社に合った機能の選定が難しければ、できるだけ機能が充実したMAツールを選ぶのも1つの手です。しかし、その分コストがかかることに注意してください。ツールによって無料プランの有無や初期費用の有無、料金体制はさまざまです。とくに課題に感じている部分を洗い出し、ツールの導入でどれだけの効果が期待できるか、費用対効果は適切かを確認しましょう。無料トライアル期間が設けられているツールもあるため、実際に使用して確認する方法もあります。
データの管理機能が充実しているか
マーケティング活動において顧客のデータは必要不可欠。どれだけ細かなデータを管理できるかによって実行できるマーケティング方法が変わります。扱えるデータの規模や管理体制はMAツールによって異なるので、ツールを選ぶ際に注目してみてください。顧客の基本情報だけでなく、購入履歴やWebサイトの閲覧履歴も一元管理できると便利です。分析や管理の際に直感的な操作・確認ができるかも選定のポイントになります。
配信チャネルの種類に不足はないか
BtoC向けのMAツールを選ぶ際には対応している配信チャネルの種類もポイントになります。今やスマホの普及により、メールだけでなくLINEやX(旧Twitter)をはじめとするSNS、アプリなど、日々さまざまなチャネルを通してコミュニケーションが行われるようになりました。ターゲットに合わせたアプローチの際に、複数のチャネルを柔軟に使い分けられる対応力が強みになります。
自社の既存のシステムと連携しやすいか
MAツール導入以前に、別の顧客管理システムやデータ管理ツールを利用しているケースもあります。MAツールが既存システムと連携できるものだと、データの移行や活用が簡単で、より効率的なマーケティングにつながります。そして、顧客への効果的なアプローチを図れるだけでなく、企業全体の作業効率向上にも役立ちます。
サポート体制が充実しているか
ツールの機能だけでなく、提供企業のサポート体制を確認するのも大切です。MAツールは高度な技術を用いて作られているシステムのため、不具合が生じた際は専門家のサポートが必要になります。問題が発生してもすぐに解決できる環境であれば、もしもの時に慌てません。特に外資系のシステムはサポートが日本語に対応していない場合があるため、サポート範囲や対応時間、対応言語などの確認をおすすめします。
BtoC向けMAツールおすすめ11選
BtoC向けのおすすめMAツールをいくつか紹介します。特徴や料金プランをまとめているので参考にしてください。(製品名 abcあいうえお順/2024年7月時点)
Adobe Marketo Engage
特徴 | ・マーケティングタスクとワークフローの自動化
・メール、SNS、オフラインイベントに対応 ・BtoBおよびBtoC企業の豊富な導入実績 |
主な料金プラン | 無料トライアル:要問い合わせ
無料プラン:なし Growth:要見積り Select:要見積り Prime:要見積り Ultimate:要見積り |
ベンダーのWebサイト | https://business.adobe.com/jp/products/marketo/adobe-marketo.html |
AIMSTAR
特徴 | ・100種類以上の分析テンプレートを提供
・メール、LINE、アプリなど多チャネル対応 ・BtoCの売り上げ向上を目指した機能に強み |
主な料金プラン | 無料トライアル:要問い合わせ
無料プラン:要問い合わせ 利用料金:要見積り |
ベンダーのWebサイト | https://aimstar.net/ |
b→dash
特徴 | ・ノーコードでデータの統合・加工が可能
・CMS、CRMなど多様なシステムと連携が容易 ・メール、LINE、SMSなど複数チャネルに対応 |
主な料金プラン | 無料トライアル:要問い合わせ(デモリクエスト可能)
無料プラン:要問い合わせ 利用料金:要見積り |
ベンダーのWebサイト | https://bdash-marketing.com/ |
CustomerRings
特徴 | ・EC事業に特化した機能を多数搭載
・メール、LINE、SMS、アプリ連携など複数・多様の配信チャネルに対応 ・BtoCの売り上げ向上を目指すツールに強み |
主な料金プラン | 無料トライアル:要問い合わせ
無料プラン:なし 利用料金:要見積り |
ベンダーのWebサイト | https://www.customer-rings.com/ |