DX(デジタルトランスフォーメーション)が進む現代、売上管理は旧来の方法だけでは十分ではなくなっています。これまで担当者手作業での経験やカン・コツ、単純な表計算ソフトなどで行われていた売上管理は、技術革新によってさらなる効率化と高精度化を実現できるようになっています。DXの概念が広がる中、売上管理もこのようなデジタル化の波に乗り遅れないよう企業として進化していくことが求められているともいえるでしょう。
この記事では、改めて売上管理の目的を振り返り、効率のいいやり方、エクセル/会計ソフトの違いとともに、売上管理の重要性を分かりやすく解説します。併せて、売上管理の効率化と高精度化を望む企業担当者の皆さんの参考になるよう、クラウド型のおすすめ会計システム(全6製品/2024年8月時点)も紹介します。
目次
売上管理とは?
売上管理とは、自社あるいは自身・チーム・部門担当範囲の売上を的確に把握し、それを効率的に増加させるための一連のプロセスのことです。
目的は、売上高や販売実績データ、顧客情報などを分析し、事業の現状を把握することです。これにより将来の売上予測や適切な戦略の策定が可能となります。特定の部門や製品ごとのパフォーマンスを評価し、必要な改善点を見つける上で極めて重要な業務です。
売上管理の目的
売上管理は、当然ですが自社の売り上げを増やす、伸ばすために行います。例えば、自社が扱う商品のうち売れ筋の商品は何か、いつ何が売れるのかといった傾向をデータとして把握できれば、売り上げをさらに伸ばしていくための戦略を立てやすくなります。また、過去の実績や予算との差を分析することで、売り上げが低迷する原因の発見や課題の設定、好調な要因を元にした新たな営業戦略の立案なども可能になります。
長期的に、繰り返しながら売上管理を続け、データが多く蓄積されるようになれば、やがてより高精度の売上予測なども可能となるでしょう。
売上管理に必要となるデータ/項目
売り上げ管理では、売り上げの状況をさまざまな角度から分析します。管理対象となる主な項目は以下の通りです。
項目 | 内容 |
売上高 | 商品やサービスを提供した対価として得た金額 |
売上目標の達成率 | ある期間ごとに定めた目標金額に対する達成率 |
売上の前月比・前年比 | 前月・前年との売り上げ対比 |
売上に対する原価 | 提供した商品やサービスの仕入・製造・開発にかかった費用 |
予算の消化状況 | 期初に定めた予算の消化状況 |
売上高
売上高は、商品やサービスを提供した対価として得た金額の総額です。取引先や品目、数量、価格、販売時期などのデータを紐付けておくと、後にデータを分析しやすくなります。
売上目標の達成率
売り上げ目標の達成率は、期間ごとに定めた売り上げ目標金額と実際の売り上げを比較して算出する割合です。分析により、目標を上回っているときは好調の要因を、下回っているときは課題を洗い出し今後の営業活動に反映させます。
売上の前月比・前年比
売り上げを同年前月や前年同月と比較することで、売り上げの推移を把握しやすくなります。また、現在と過去の売り上げを比較することで、売り上げに影響を与える要因が分析しやすくなり、今後の営業戦略を立てやすくなるでしょう。
原価
原価は、商品やサービスの仕入・製造・開発にかかった費用です。原材料費や人件費、販売管理費など、項目ごとに分けて管理します。利益を圧迫する要因を分析しやすくなるため、コストカットによる利益増への施策を打ちやすくなります。
予算や経費の消化状況
予算の消化状況や経費の使用状況を管理することで、会社経営の妥当性を判断できます。例えば、消化された予算に対して売り上げが上がっていないようなら、効果が出るような経費の使い方ができていないと判断できるでしょう。
売上管理の主な方法
売り上げ管理にはいくつかの方法があり、企業の規模や予算によって適した方法が異なります。それぞれの方法にあるメリット・デメリットを踏まえ、自社にあった売り上げ管理の方法を選択しましょう。
売上管理が求められる部門・区分
売り上げ管理は、社内のあらゆる単位ごとに行われます。大きい単位での分析では埋もれてしまう課題もあります。さまざまな方面から小さな単位で分析を行うことで課題を発見しやすくなります。
部門別
「部門別の売上管理」は、企業内の各部門(営業部、マーケティング部、製造部など)の売上を個別に把握する方法です。各部門の業績を明確にすることで、どの部門が最も利益を上げているか、またはどの部門が改善を必要としているかを分析できます。この情報は、リソース分配や戦略的な意思決定に役立ちます。
商材別
「商材別の売上管理」は、製品やサービスごとに売上を追跡します。これにより、どの商材が最も売れているか、どの商材が利益率が高いかなどをを分析できます。商材別のデータは、在庫管理やマーケティング施策の最適化に活用され、売上向上のための具体的なアクションを導き出すことができます。
顧客別
「顧客別の売上管理」は、各顧客ごとの売上を追跡する方法です。これにより主要顧客の特定や、リピーター率の分析が可能となります。顧客ごとの売上データは、CRM(顧客管理)に活用され、顧客満足度の向上やクロスセル、アップセルの機会を見つける手助けとなります。
地域別
「地域別の売上管理」は、地理的な地域ごとに売上を追跡する方法です。異なる地域での売上パフォーマンスを分析することで、地域ごとの市場特性や需要の違いを把握できます。このデータは、新しい市場への進出や地域特化型のマーケティング戦略を立案する際に有用です。
担当者別
「担当者別の売上管理」は、各営業担当者ごとの売上を追跡する方法です。これにより、どの担当者が最も成果を上げているか、またはどの担当者が追加の対策やトレーニングを必要としているかを明確にできます。不調な担当者の営業成績が振るわない原因を突き止め、改善に導くことで、長期的な売り上げの回復や担当者自身の業務効率アップが期待できるでしょう。部門やチームの売り上げ向上に有効です。
時系列
「時系列の売上管理」は、日別、週別、月別、年別などの時間軸で売上を追跡します。これにより、季節変動やトレンドの変化を把握しやすくなり、売上のピークや谷を特定できます。時系列データは、需要予測や生産計画、マーケティングキャンペーンのタイミング決定に重要な役割を果たします。
表計算ソフトで売上管理表を作成する
もっとも手軽に導入できる方法が表計算ソフトウェアによる管理です。Microsoft ExcelやGoogle Spredsheetは低価格/無償で導入でき、多くの企業が既に活用しているソフトウェア/サービスのため、コストをかけずにすぐに売り上げ管理をはじめたいシーン向けです。こちらは既に実践している人がほとんどでしょう。
表計算ソフトウェアの大きなメリットは、基本的な使い方は大抵は理解していることを前提に、フォーマットや入力項目を自社やチームのフローに合わせて作りやすいことです。
その一方で、データの手動入力や更新が都度必要になる体制に「入力ミスや更新漏れが発生しやすい」ことが大きな課題になります。また、データ量が多くなるにつれてファイルサイズが大きくなり、挙動が重くなったり、ファイル間の同期が進まず操作に時間がかかったりもします。複数人での同時編集が難しく、バージョン管理やデータの整合性が保ちにくいことも挙げられます。大規模な分析になるほど荷が重くなり、データの可視化や高度な分析も限られるため、タイムリーな意思決定が難しくなることが難点です。
専用機能を持つITシステムを利用する
企業の規模や売り上げに関するデータが大きくなるにつれて、システムやツールを使った売り上げ管理が求められるようになっていきます。自社にとって適切な売り上げ管理機能を持ったシステムやツールを利用することで、数字の「正しい」管理だけでなく「分析」や「共有」といった機能による恩恵、効果も受けられます。
会計システム
会計システム/会計ソフトウェアは、会社経営に関係するあらゆる金銭の動きを記録・管理するためのIT製品です。扱う情報は売り上げに限定されませんが、仕入や販売管理費、営業外費用など、売り上げに関係が深い費用も含めあらゆる金額を集計する機能があります。
表計算ソフトウェアなどと併用することも可能です。csvなどにエクスポートしたデータを表計算ソフトで分析することで売り上げ管理の正確性向上を期待できます。会計ソフトの導入にはある程度のコストがかかりますが、クラウド型/SaaS型製品には月額数千円程度から利用できるものも多くあります。
なお、売上管理の目的が本格的な売上分析であるならばエクセルなどの利用・併用に代え、「製品に高度な売上分析機能が含まれる/分析機能に強みを持つ特徴のある製品」を軸に製品候補を絞り込んでいくことが勧められます。以下のに挙げる製品群にもデータ分析機能が含まれることが多いです。
SFA、CRM
SFAとCRMはいずれも売り上げに深く関係するデータの管理と分析を目的としたツールです。それぞれ役割が若干異なります。
SFA(Sales Force Automation)は営業活動の支援を目的としたデータの管理・分析・共有を行うためのツールです。売り上げ管理に必須である予算と実績の比較(予実管理)や案件ごとの進捗管理、見込み客の情報管理といった機能が揃っています。
CRM(Customer Relationship Management)は顧客管理を目的としたデータの管理・分析・共有を行うためのツールです。SFAが見込み客を対象にした獲得戦略や立案を支援するのに対し、CRMは取引開始後の顧客の継続化を対象とするといったイメージです。適切なプロモーションのための顧客動向の分析とともに、顧客関係の強化・向上のために利用します。
両ツールとも、顧客情報の分析結果を表やグラフ化するダッシュボード機能や、他のツールとの連携機能といった売り上げ管理に有効な機能を多く備えています。
販売管理システム
販売管理システムは、受注した商品の販売過程を管理し、お金や商品の流れをデータ化するシステムです。受発注管理、入出庫管理、在庫管理、請求書管理、入金管理といった機能により、商品とお金の出入りを一元管理します。売り上げ管理に必要な機能を多く取り揃えており、分析に必要なデータの抽出も可能です。
管理会計システム
管理会計システムは、自社の経営活動に関わる情報を管理し、会計分析を可能にするためのシステムです。予実管理やセグメント(分類)別の損益管理など、あらゆる観点での数字から企業の状態を分析し、経営管理に活用します。売り上げ管理に必要な機能が概ね揃っていることから、管理会計システムを売り上げ分析に活用する企業も多くあります。
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