企業の経営資源を一元管理し、業務効率を高めるための統合基幹業務システムとして昨今、特にクラウド型/SaaS型ERP(Enterprise Resource Planning)の需要が高まっています。従来のオンプレミス型に対してクラウド型はどんなメリットがあるのでしょう、そして、どんな成果が期待できるのでしょう。
この記事では、クラウドERPパッケージの重要性、メリット・デメリット、製品の選び方とともに、おすすめ製品(21製品)をご紹介します。
目次
ERPパッケージとは?
ERP(Enterprise Resource Planning)とは、企業活動に必要となる販売、在庫管理、財務、人事などの情報とプロセスを1つのシステムに集約することで、部門間の連携を強化し、情報の正確性を向上させる取り組み/概念です。これを実現するためのIT製品がERPパッケージ/ERPシステム/統合基幹システムと呼ばれます。
企業活動におけるそれぞれのデータが一元化されることで、経営陣はリアルタイムで正確な情報をもとに意思決定でき、そして迅速な判断・対応が可能になります。重複した作業が減り、標準化されることで業務効率が向上します。コスト削減にもつながります。
クラウド型ERPは特に、“早期”に自社全体の効率、生産性を高め、また競争力を高める有用なシステムとして企業の導入例が増えています。
ERPパッケージのメリット
- プロセス統一による業務効率化と情報の一元管理
- 経営判断の迅速化
- コスト削減と生産性の向上
プロセス統一による業務効率化と情報の一元管理
ERPは、財務、人事、製造、販売、在庫管理など、これまで散らばっていた業務プロセスを統合し、そして各部門のデータもまとめて一元管理します。これにより、データの重複や人的ミスによるエラーを限りなく減らし、情報の整合性を確保します。また、各部門間の連携がスムーズになり、業務フローが効率化されます。たとえば、在庫情報がリアルタイムで更新されるため、販売部門は常に最新の在庫状況を把握できます。
経営判断の迅速化
ERPはリアルタイムでデータを集約・分析する機能を持っています。これにより、経営陣は最新の情報に基づいて迅速かつ正確な判断を下すことができます。例えば、販売データや生産データをリアルタイムで確認し、即座に需要変動や生産計画の変更に対応することが可能です。この迅速な対応力が競争優位性を高めます。
コスト削減と生産性の向上
ERPの導入により、業務プロセスの自動化が進み、手作業による業務・タスクが削減されます。これにより、人的ミスの減少と作業時間の短縮が実現し、生産性が向上します。また、データの一元管理により、無駄な在庫や重複する業務が減少し、効率向上、コスト削減も図れます。例えば、購買部門は在庫状況をリアルタイムで確認し、必要なタイミングで適切な量の資材を調達することができます。
ERPパッケージのデメリット
SaaS型ERPパッケージは多くの企業にとって便利な選択肢ですが、いくつかのデメリットも存在します。
例えば、自社の業務の“独自性”が特に高い場合、パッケージの標準機能だけでは対応できず、多くの場合は自社のニーズに沿ったカスタマイズが必要になります。
SaaS型製品の多くも、ある程度のカスタマイズは可能であり、業種・業界別のニーズに沿った機能を勘案して設計されています。しかし想定以上のカスタマイズは難しく、可能であったとしてもコストが嵩み、システム全体の品質や安定性、将来のアップデート作業や保守性を煩雑になることも考えられます。このような場合、特に「自社の業務に完全に適合する」システムを求めるのであれば、SaaS型に比べるとスクラッチ型、あるいはOSS型での開発が勧められます。
また、スクラッチ型にせよSaaS型にせよ、ERPは特に自社の業務プロセス全体に影響するITシステムのため、一度導入するとベンダーロックイン(特定のベンダーの製品・機能に依存することになり、何か課題があるとしても乗り換えにくくなる/対処しにくくなる現象)が起こることも挙げられます。
ERPパッケージ選定時の確認ポイント
-
自社の業務要件に合うかどうか
-
導入コストと総コスト
-
操作性、ユーザビリティ
-
サポート体制
自社の業務要件に合うかどうか
ERPパッケージは多くの機能を持っていますが、全ての企業の特定のニーズに完全に合致するわけではありません。製品の特徴と搭載機能とともに、それらが自社の目的・要件を満たせるかどうかを確認しましょう。
標準機能で対応できない場合カスタマイズが必要になりますが、これには時間とコストがかかります。カスタマイズ項目が増えると、将来のアップグレードなどが困難になる可能性もあります。
導入コストと総コスト(TCO)
ERPの導入には初期投資がやや高額になることが多いです。ライセンス費用、ハードウェアの調達費用、導入コンサルティング費用などがかかります。また、導入後も運用・保守にかかるコスト(TCO)が発生します。これにはソフトウェアの更新費用やサポート費用、システムの維持管理に必要な人件費などが含まれます。
操作性、ユーザビリティ
ERPシステムは多機能である反面、操作が複雑になることがあります。ユーザーが新しいシステムに慣れるまでに時間がかかり、生産性が一時的に低下することがあります。また、直感的でないインタフェースや複雑な操作フローは、ユーザーの抵抗感を招く可能性があります。これに対処するためには、適切なトレーニングが必要です。
サポート体制
ERPシステムは高度な専門知識が必要なため、導入後のサポート体制が重要です。しかし、サポートが十分でない場合や対応が遅い場合、問題が発生したときに迅速な解決が難しくなります。また、サポート契約には追加の費用がかかることがあり、これもTCOを増加させる要因となります。
日本企業に導入例の多いERPパッケージ11選
日本企業に導入例があり、主要と位置付けられるおすすめのERP製品を紹介します。(製品名abcあいうえお順/2024年7月時点)
COMPANY
特徴と概要 | ・人事・給与管理に特化
・幅広いカスタマイズ性に強み ・大企業人事部門での導入例 |
利用形態 | クラウド型 |
ベンダーのWebサイト | https://www.works-hi.co.jp/ |
GRANDIT
特徴と概要 | ・販売管理、購買管理、財務会計、経費精算のようなモジュール型で提供
・製造業、流通業、サービス業など多様な業種に対応可能できるカスタマイズ性 ・中堅から大企業での導入例 |
利用形態 | クラウド型 |
ベンダーのWebサイト | https://www.grandit.jp/ |
HUE
特徴と概要 | ・日本の大手企業向けに設計された国産ERP
・高い業務網羅性を実現し、企業運営に必要な機能を標準で搭載 ・追加コスト不要のバージョンアップ体制 |
利用形態 | クラウド型 |
ベンダーのWebサイト | https://www.worksap.co.jp/hues_features/ |
Infor CloudSuite
特徴と概要 | ・特定業界向けのカスタマイズメニューに強み
・高度なデータ分析とAI機能を搭載 ・製造業、ヘルスケア業界などに導入例 |
利用形態 | クラウド型 |
ベンダーのWebサイト | https://www.infor.com/ja-jp/products/cloud-strategy |
Microsoft Dynamics 365
特徴と概要 | ・グローバルでの導入例が多い
・Office製品とのシームレスな統合が可能 ・中堅企業向けの機能・モジュールも豊富 |
利用形態 | クラウド型 |
ベンダーのWebサイト | https://www.microsoft.com/ja-jp/dynamics-365 |
Oracle NetSuite
特徴と概要 | ・クラウドベースのERPソリューション
・幅広い業務プロセスをカバー ・中小から大企業まで導入例 |
利用形態 | クラウド型 |
ベンダーのWebサイト | https://www.netsuite.co.jp/ |
PCAクラウドERP
特徴と概要 | ・クラウド特化で手軽な導入を支援
・幅広い業務プロセスに対応 ・中小企業での導入例 |
利用形態 | クラウド型 |
ベンダーのWebサイト | https://pca.jp/area_product/cloud/index.html |
SAP S/4HANA
特徴と概要 | ・グローバル市場での高いシェア
・リアルタイムデータ処理と高度な分析機能 ・大企業での導入例が多い |
利用形態 | クラウド型 |
ベンダーのWebサイト | https://www.sap.com/japan/products/erp/s4hana.html |
SAP Business One
特徴と概要 | ・中小企業向けの手頃な価格設定を設定
・財務、販売、在庫管理の機能に強み ・中小企業に導入例 |
利用形態 | クラウド型 |
ベンダーのWebサイト | https://www.sap.com/japan/products/erp/business-one.html |
SuperStream
特徴と概要 | ・国産パッケージとして多数社の導入実績
・バックオフィス業務(会計、給与計算、労務管理など)の最適化に強み ・日本の法制度に正しく対応 |
利用形態 | クラウド型 |
ベンダーのWebサイト | https://www.superstream.canon-its.co.jp/ |
マネーフォワードクラウドERP
特徴と概要 | ・会計、給与、経費の統合管理
・幅広いメニュー、カスタマイズ性に強み ・中小・中堅企業での導入例 |
利用形態 | クラウド型 |
ベンダーのWebサイト | https://biz.moneyforward.com/erp/ |
(無料版あり/中小企業向けも含む)その他 ITセレクトおすすめのERP製品10選
(製品名 abcあいうえお順/2024年7月時点)
\ITセレクトおすすめERP製品の資料を一括ダウンロード(無料)/